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ブライアン・イーノのベスト・ソング20曲:アートとアヴァンギャルドの重要性
ブライアン・イーノのアートの重要性を、20曲で要約することができると考えるのは、勘違いもはなはだしいと思われるだろう。しかし、イーノの最も素晴らしい功績のひとつは、インスパイアされる、刺激的でアヴァンギャルドなアイディアを広め、楽しく自由な感性をポップ・ミュージックとロック・ミュージックにもたらしたことだ。彼の名前がアルバムのクレジットに入っていれば、リスナーは喜んで聴くであろう。
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ロキシー・ミュージック時代
われわれの多くは、1972年の夏に、ロキシー・ミュージックの「Virginia Plain」が突如チャート入りを果たした時に、この美術学生と出会った。ロキシー・ミュージックはそのルックスもサウンドもどこから来たものかわからないほどだった。この湿っぽくって貧窮した我々の世界よりも、この上なくセクシーで、まるでパラレル・ワールドにあるかのようにアート的で、破壊的にマジカルなものであったからだ。
陽気で堂々と「ノン・ミュージシャン」を自称するイーノの仕事は、バンドの行く手に光り輝く音を投入することだった。初期のVCS3シンセサイザーをいじって、驚きを生み出すこと。しかし、彼のキャリアの曲がり角はそれほど遠くなかった。
イーノとロキシー・ミュージックのヴォーカリスト、ブライアン・フェリーとの関係は音楽の好みの違いが長く続いたせいで、最終的には終わりを迎えた。しかし、彼らが意気投合した短期間の間に、創造的なコンビであることを証明していた。1972年のロキシーのセルフ・タイトル・デビュー・アルバム収録の「Re-make/Re-model」でイーノがかぶせている音や、翌年の『For Your Pleasure』収録の「Editions Of You」の見事なシンセに注目して欲しい。
脱退してソロへ
スターへの道には興味がなく、快楽主義の若者と熟年の博識な教授が和解するのは難しいと発言したイーノは、その気になれば最高のポップ・スターになれたであろう。彼の捻くれた実験的精神がそれを許容できたならば。
1973年のイーノのソロ・デビュー・アルバム『Here Come The Warm Jets』は、数曲びっくりするような前衛的グラムの曲があったが、ミニマルで緊迫した「Baby’s On Fire」には、ロックの過剰さをパロディ化すると同時にそれを評価するギター・ソロが入っている。一方、「Dead Finks Don’t Talk」は、彼の過去のバンド・メイトに向けられた曲のようであった。
しかしイーノはこういう作品を作りながら、それ以上に成長していた。そして70年代半ばまでに、キング・クリムゾンの名ギタリスト、ロバート・フリップや、ハンス・ヨアキム・ローデリウス、ディーター・メビウス、ミヒャエル・ローターからなるドイツ人バンド、クラスター/ハルモニアといった気の合うミュージシャンとつるみ、共演もした。イーノのキャリアにおけるこの特徴的な試みが、オーソドックスな音楽とメインストリーム受けから離れたいという欲求につながった。
1975年発表のアルバム『Another Green World』のシンプルで悲哀に満ちた、胸に響くタイトル曲が、BBCチャンネルの長年の人気番組“Arena”の主題曲として、この世代の人達のDNAに組み込まれることになったのも、記しておくべきことだ。
クラスターの分かりにくい自制された精神に夢中になったイーノは、彼らとレコーディングをするためにロウワー・サクソニー(ドイツ)まで旅した。そして彼らの影響が響き合った成果が、1977年の「Before And After Science」の B面に反映されている。(ローデリウスと メビウスも、軽やかで静かな「By This River」に参加している)。
ボウイとのコラボレーション
ドイツの最もフレッシュで、最高に型破りのロックのはるか先を行っていたのは、デヴィッド・ボウイだった。それは、ベルリン三部作、1977年の『Low』と『Heroes』、1979年の『Lodger』の大胆さを見れば明らかだ。そしてイーノは、この時期のボウイの重要なコラボレーターであった。彼は、偶発性の追求と意思を組み合わせるという作曲法を行っていた。
この時までに、イーノは‘オブリーク・ストラテジーズ’という カードのセットを、アーティストのピーター・シュミットと考案している(訳注:カードに文章、フレーズが書かれている)。それは、ライターが煮詰まった時に、新しい考えを刺激して創作活動の壁を乗り越えるために使われた。このプロセスの驚きの成果として、自由にのっとった(しかし決して甘くはない)アイディアと独創力が生まれたのだ。
ボウイと、イーノと共同プロデューサーのトニー・ヴィスコンティは、深遠な感じと抽象的な決断が全体の明晰さに繋がる音の文脈を作り上げた。その成果は、ボウイが時々コンサートのオープニング曲にしていた『Low』収録の感動的な「Warszawa」や、ボウイが日本の琴を弾いている「Heroes」収録の「Moss Garden」など、ボウイの最も美しい曲のいくつかに反映されている。
一方、『Lodger』は、ビートの効いたクールな「Boys Keep Swinging」を収録している。この曲でボウイのバンドは楽器を交換し、見事に思い切った実験をしている。オブリーク・ストラテジーズ’作戦の好例である。
他アーティストのプロデュース
イーノの作品プロフィールは広がっていったが、オブリーク・ストラテジーズ’カードの展開に誰もがついていけたわけではない。ディーヴォは、イーノが1978年の『Q: Are We Not Men? A: We Are Devo! (邦題:退廃的美学論)』に参加した時、彼の期待を抑制したようだ。
イーノに言わせると、ディーヴォがオリジナルのデモから外れることを嫌がったために、彼の創造力が束縛されたように感じたとのこと。何にしても、バンドはバリ島の猿の合唱のテープを、「Jocko Homo」に継ぎ目なく織り交ぜるイーノの能力に感嘆した。
1979年のトーキング・ヘッズによる、非の打ち所のないアルバム『Fear Of Music』で、イーノはよりずっと調和のとれたタッグを組んだ。イーノのエレクトロニック・サウンドが、アルバムにゾクゾクするような興奮を加えていた。(筆者にとっては「Mind」「Electric Guitar」「Drugs」は今でも未来的に聞こえる)。
イーノとトーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンは、1981年に影響力のある『My Life In The Bush Of Ghosts』をリリース、(ダイナミックな「America Is Waiting」など)新サウンドとサンプルを主体にした曲を生み出した。
アンビエント・ミュージックと大物ロック・バンド
有名な作品群と同時に、イーノは長年、アンビエント音楽への強い興味を追求し続けていた。他とは違うニュートラルなサウンドスケープは、1978年のアルバム『Ambient 1: Music For Airports』にも含まれている。
この作品は、リスナーのムードを反映し、聞く環境によってサブリミナル的になったり、夢中になったりと、様々なレベルで機能するように慎重に作られた。そして時折、1982年リリースの『Ambient 4: On Land』収録の「Shadow」のように、直接、悪夢のような霧の中に一筋の光が心に浮かぶムードを生じさせようとした。
近年、イーノはU2と長年にわたり、実りのある共同プロデュース関係を強化している、またこれは、コールドプレイにとっても非常に有効な働きをもたらすことになった。U2の1991年のアルバム『Achtung Baby』(ダニエル・ラノワが共同プロデュース)収録の「One」は、建設的に曲を解体し、余計な物をそぎ落として、根底にある意味を明らかにするという彼の比類無き才能の絶好の一例である。
イーノはまた、コールドプレイの2008年のアルバム『Viva La Vida Or Death And All His Friends(邦題:美しき生命)』の「Yes」に、明らかなヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響を入れている。
彼の全ての魔法のような作品の数々を思うと、イーノは慣れ親しんだサウンドに戻ることを嫌っているのだと推測したくもなる。2010年の『Small Craft On A Milk Sea』は、サウンドトラックの作曲家ジョン・ホプキンズとレオ・アブラハムとコラボレーションしたアルバムだ。ほのかに主題を匂わせてアンビエントな要素(「Calcium Needles」)に手を伸ばしていた。
2014年の『Someday World』は、アンダーワールドのカール・ハイドと組んで作られ、80年代風の曲(「Daddy’s Car」)をいくつか生み出した。
一方、今年リリースされた『The Ship』は、入念に作られた雄大なアンビエント・ミュージックと心に響くメロディを合わせており、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Set Free」の見事なカバーで締めくくられる。この曲にある、「現実は他人に対する誤解から生じる希望的な観測でしかない」という考えは、非常にイーノらしい。
Written by Oregano Rathbone
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