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スティング『The Soul Cages』解説:身内の悲劇はいかにしてスティングを芸術的成功へと導いたか

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80年代後半のスティングは、無敵に近い存在に見えた。絶賛を浴びた1985年のソロ・デビュー・アルバム『The Dream Of The Blue Turtles』は、彼がザ・ポリスを離れてもなお成功できることを証明し、多彩なヒット曲を詰め込んだ1987年の『…Nothing Like The Sun』は、ブリット・アワード受賞、グラミー賞ノミネート、そしてマルチ・プラチナム・セールスを記録した。

しかし、この10年が終わりに近づく頃、突如として身内の悲劇がこのアーティストを襲う。それが、ソロ3作目となるアルバム『The Soul Cages』の内容に決定的な影響を与えることとなった。

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スティングの父の死

当時についてスティングは2007年の自選歌詞集に次のように記している。

「1989年に父が他界した。父との関係は難しく、その死は想像以上に私に大きな打撃を与えた。感情的にも創造的にも麻痺して孤立し、喪に服すことさえできなかった。人生から喜びが濾し取られてしまったかのようだった。最終的に、自分を説得して仕事に戻り、その結果生まれたのが、この沈鬱な楽曲群だった」

後に『The Soul Cages』となる素材を練り上げる作業は、困難を極めた。悲しみに打ちひしがれていたスティングは、自分に刺激を与えて活動させようと試みる。プロデューサーのヒュー・パジャム、長年の共演者であるマヌ・カチェ(ドラム)とケニー・カークランド(キーボード)、さらに新ギタリストのドミニク・ミラーと共にパリへ移り、有望な新曲をいくつか作り上げたものの、それに合わせる歌詞を書くことに苦戦した。

実際、スティングがようやく転機を迎えたのは、インスピレーションを求めて自らの遠い過去を深く掘り下げた時だった。

 

幼少期の記憶

彼は1991年の『Rolling Stone』誌にこう語っている。

「最初の記憶から始めたんだ。そうすると、すべてが流れ出した。最初の記憶は船だった。若い頃に造船所の隣に住んでいたから、家の上にそびえ立つ巨大な船は非常に強烈なイメージだったんだ。それを掘り起こせたのは幸運だった。そこから書き始めると、アルバムは自然と形になっていった」

スティングの幼少期の記憶は、『The Soul Cages』のオープニングを飾る哀愁漂う楽曲「Island Of Souls」の歌詞の土台となった。書けない状態を克服すると、一気に溢れ出すように、わずか4週間でスティングは海にまつわるモチーフを散りばめた一連の楽曲を書き上げた。

聖書の「サムエル記」にあるダビデ王の物語に基づいた神秘的な「Mad About You」を例外として、新しい歌詞の随所に、故郷ニューカッスル・アポン・タインや、自身の生い立ちに影響を与えたカトリックの教えへの言及が見られた。

Island Of Souls

 

自らのルーツへの回帰

フォーク界の著名人、キャサリン・ティッケルが奏でる悲しげなノーサンブリアン・パイプが「Island Of Souls」を彩り、本作がこれまでのスティングの作品から連想されるものよりも伝統的な音のパレットで装飾されることを示した。スティングは『St Paul Pioneer Press』紙にこう語っている。

「自分がどこから来たのかを示そうとしたので、このアルバムからはアフロ・カリビアンやその他のワールドミュージックの影響をすべて排除した。そういう音楽は好きだし、作るのも好きだが、今回はふさわしくないと感じたんだ。だから、アルバムの大部分はケルティック・フォークのメロディに基づいている」

しかし、『The Soul Cages』は没入感のある作品である一方で、「Why Should I Cry For You?」や、心に突き刺さるような「The Wild, Wild Sea」、哀歌的な「When The Angels Fall」といった強烈に個人的な楽曲は、より鋭いロックやポップの要素を持つトラックによってバランスが保たれていた。

Sting – Why Should I Cry For You? (Official Music Video)

「もし思い通りになるなら、川からボートを出し、あの老人を葬りたい/海に葬りたい」といった苦悩に満ちた歌詞にもかかわらず、「All This Time」はモータウン風のバックビートと温かみのあるハモンドオルガンが印象的な、ダイレクトでパンチの効いたポップ・ソングだった。

Sting – All This Time

「Jeremiah Blues (Pt.1)」はしなやかなグルーヴを軸に展開し、ドミニク・ミラーがジミ・ヘンドリックス風の過剰な音響表現に興じる余地を与えた。そして、燻るようなタイトル曲「The Soul Cages」は、スティングがザ・ポリスの 「Synchronicity II」以来に書いた最もヘヴィで、純然たるロック・ナンバーであった。

Sting – The Soul Cages (Official Music Video)

 

『The Soul Cages』の評価

全体として見れば、『The Soul Cages』は非常に満足度の高い聴取体験を提供した。それは、1991年1月17日の英国リリース(米国は1月21日)に際して寄せられた、圧倒的に好意的なレビューにも反映されていた。『Rolling Stone』誌はこのアルバムの「聴覚的な広がりと豊かさ」を称賛したが、最も核心を突いていたのは『The Boston Globe』紙だろう。同紙は、「スティングは、心の音楽日記として機能する、バランスの取れた非常に洞察力の鋭いレコードを作り上げた」と評した。

絶賛の声はすぐに商業的な成功へと結びついた。『The Soul Cages』は全英アルバム・チャートで首位を獲得し、米ビルボード200では最高2位を記録。シングル・チャートでは、リード・シングルの “All This Time” が全米5位まで上昇し、印象的なタイトル曲は1992年のグラミー賞で最優秀ロック楽曲賞を受賞した。これほどまでに強烈で魂をさらけ出したレコードにとって、それはふさわしい栄誉であった。

「『The Soul Cages』は喪に服すためのアルバムだった」と、彼は1999年の『Billboard』誌のインタビューで語っている。「両親を亡くした時、自分は孤児なのだと気づかされる。だが、悲しみというのも、喪失を深く感じるという点では良いものだ。無理に元気を出そうとする周囲の言葉に流されてはいけない。私はこのアルバムを非常に誇りに思っている」

Written By Tim Peacock


スティング『The Soul Cages (Expanded Edition)』
2021年1月15日配信
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