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ポリスの名曲「Every Breath You Take / 見つめていたい」ができあがるまで:「ピアノの前に座って、30分で曲を書き上げたんだ」

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スティングの作品はどれも力強く、深遠であるから、代表的なヒット曲を一つに絞り込むことは難しい。しかし、最近のBMI(米国作曲家作詞家出版者協会)の発表によれば「Every Breath You Take」はラジオで最も再生された曲(1500万回)だという。もし1つ選ぶとするならば、この名曲こそが代表曲だろうという多くのファンの意見を裏付けた。

そもそも「Every Breath You Take」の評判は凄まじいものだった。ポリスのオリジナル版は、リリース当時の1983年に英米両国で大ヒットし、USビルボード・チャートでは8週連続、イギリスのシングル・チャートでは1ヶ月間1位を取るという記録を残した。それ以来この一見愛らしいが、執着的でもある愛についての曲は、数多くの音楽賞を獲得してきた。またよく知られているように、パフ・ダディーの1997年のミリオン・ヒット曲、「I’ll Be Missing You」のサンプリング・ビートとしても使われた。

Puff Daddy [feat. Faith Evans & 112] – I'll Be Missing You (Official Music Video)

「この曲は30分で書き上げた」

この象徴的な曲には手を加える必要がないと認めつつ、スティングは「Every Breath You Take」を2019年の彼の新作『My Songs』に加えるにふさわしいものとして尊重した。曲自体が非常に人を惹きつけるものであるから、彼は曲の再構築にあたって、メロディ、アレンジやニュアンスはそのままにした。一方で、彼の感動的なボーカルはまさしく、彼が音楽界の最もダイナミックなパフォーマーの一人であり続けていることを証明している。

Sting – Every Breath You Take (My Songs Version/Audio)

実に多くの人によって賞賛されたこの曲の秀逸さからは、これが実際には短時間で書かれたとはにわかに信じがたい。曲の大部分は、カリブ海で静養中のスティングが、ある晩突然閃いたものだ。多くの記録に残っているが、ポリスのフロントマンは1982年、私生活のごたごたに耐えかねてジャマイカで静養していた。彼がジャマイカ北岸にある、ジェームズ・ボンド・シリーズの著者イアン・フレミングの別荘、ゴールデン・アイに滞在していたとき、閃きが舞い降りた。

「夜中に目が覚めて、頭の中にあの一節が思い浮かんだ。”君の息づかいも、行動もすべて、僕は見ているよ(Every breath you take, every move you make, I’ll be watching you)”」1993年のインタビューでスティングはこのように回想している。「ピアノの前に座って、30分で曲を書き上げたんだ」。

ポリス・ヴァージョン「特別な曲が出来たと直感した」

イギリスに戻ったスティングは、ロンドン北部のユートピア・スタジオでデモを録った。ハモンド・オルガンで弾き語りしたものだ。1982年、ポリスのメンバーはプロデューサーのヒュー・パジャムと共に5枚目のアルバム『Synchronicity』の録音のためにモントセラトに集り、そこでスティングは「Every Breath You Take」のデモ音源をメンバーに聴かせた。

スティングが「Every Breath You Take」の大枠を書き上げたのはあっという間だったが、アレンジをまとめ上げるには更なる挑戦が待ち受けいた。このときは幸運なことに、アンディ・サマーズが印象的なギターのフレーズを思いついた。ハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラに影響を受けて出来たこのフレーズがパズルの最後のピースとなって、曲が完成したのだ。

「ロバート・フリップとアルバムを作っていて、バルトークのヴァイオリン・デュエットを試していた。そのとき新しいリフを作り上げたんだ」サマーズは言う。「スティングが『自分なりにやってみろ』って言うから、それであのフレーズを曲に合わせてみた。その時すぐに、僕たちは特別な曲が出来たと直感した」。

The Police – Every Breath You Take (Official Video)

 

「悪意に満ちた曲だってことに気がつかなかった」

ポリスの直感は確かなものだと証明された。1983年5月20日にリリースされた「Every Breath You Take」が大成功を収めると、それがアルバム『Synchronicity』の売れ行きを決定づけた。アルバムはアメリカで800万枚以上も売り上げ、3つのグラミー賞を受賞。これらのことがポリスを世界的なビッグ・バンドに変えた。

今日では、この並外れた存在抜きにポピュラー音楽の歴史について考えることは難しい。ただしスティングは、リスナーがこの曲のジョージ・オーウェル風の歌詞をロマンチックなものとして信じていることに少しばかり驚いている。
「メロディ自体はよくあるもので、他の何百という曲と変わりはないが、歌詞は面白い」。1993年インデペンデント紙のインタビューでスティングはこのように述べている。「心地よいラブソングみたいに聞こえるけど、悪意に満ちていることに気がつかなかったんだ。きっと”ビッグ・ブラザー”のことを考えていたんだと思う ―― 監視と支配をうたっているんだってことにね」。

Written By Tim Peacock


スティング『マイ・ソングス – スペシャル・エディション』
2019年10月4日発売
日本盤ボーナス・トラック1曲収録(全20曲) + 2019マイ・ソングス・ツアー
スティングによる全曲解説掲載(日本語訳付)



 

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