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ロッド・スチュワート3年振りのアルバム『Blood Red Roses』の中身とは?

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2018年9月28日に発売となるロッド・スチュワートの30枚目のソロ・スタジオ・アルバム『Blood Red Roses』。この作品についてのロッドはこう語る。

「僕はいつも数人の友人たちのために作るようにアルバムを作る。今作もそんな親密さがある作品になっている。誠実に正直に人生を歩む。作詞・作曲についても同じことが言えるよ」

ロッドが個人的な思いを込めて最近書き上げた楽曲と3曲の新録カバーも含まれているこのアルバム『Blood Red Roses』はロッドの傑作といえる。本作では、紛れもないロッド・スチュワートのスタイルで、素晴らしい曲の数々を堂々と披露している。

愛情、喪失感、切望そして依存のすべてが、スチュワートの妬ましいほど普通の感覚で観察され、ニュアンスや細部にまで気を配った彼の職人技により、アルバムは程良く仕上がっている。世界中で広く愛される彼の歌声は、力強さと優しさが同等にあり、素晴らしい出来上がりだ。ロッドについては、ジェームス・ブラウンが生前にこう断言している。

「ロッド・スチュワートは今も健在する最高の白人ソウル・シンガーだ」

ロッドは、2016年にナイトの爵位を得ている。ロックの殿堂入りを2回果たし、グラミー賞及び米国作曲家作詞家出版社協会より作詞部門で賞も受賞している。50年以上に及ぶキャリアで累計2億枚以上のアルバムを売り上げ、世界中の長年に渡るファンの心をつかんだ。

しかし、より重要なことは、あれだけの称賛を浴び世界的な成功を収めながら、ロッド自身が庶民的なところだ。シンガー、ロッド・スチュワートの心温まるしゃがれた歌声は聞き慣れているが、ソングライターとしての彼の声は今まで断続的にしか聞けておらず、もどかしい思いがする。彼はクラッシック・ロックを作曲しているが、時には考えが浮かばないこともあったと言う。

「でも、数年前に自叙伝を書き終えた時に扉が開いた。その時が僕の転機となったんだ」

最新作『Blood Red Roses』は、創造力や歌が泉のように湧き続け、彼のインスピレーションが復活した作品と言って間違いない。新曲の数々は、初恋の話から、ある友人に贈る最期の言葉まで、人生に起こる悩ましい問題を大胆に取り上げており、苦悶や快楽が音楽を通して感じられる。

彼のアルバムのスタイルは、陽気なフォークから、指を鳴らしたくなるようなモータウン、ロックンロールや心を和ませるバラ-ドなど、流れがいい。アルバムのリード・シングル「Didn’t I」は母親と父親の視点から子供とドラッグについて語っている。

「ロックスターがこんな曲を歌っているのは滑稽だ。アンチ・ドラッグの曲ではないが、そのように解釈もできる。でも、確実に“警告”を促す曲だ」

Rod Stewart – Didn't I ft. Bridget Cady

 

特に優れた曲「Farewell」では、亡くなった親友イーワン・ドーソン対する思いが歌われていて、涙なしでは聞けないほど誠実な曲だ。

「彼を思わない日は一日たりともない。彼は兄弟のような存在だった」。

アルバムのオープニング・トラック「Look In Her Eyes」は現代のモラルを題材にしており、年を重ねた男性の視点から語っている。

「この曲には警告を促す歌詞がある。自分の息子か彼の友人たちに対しての警告かもしれないが、その歌詞がこれだ。『こんな時代に僕らは生きているんだ、あまり調子に乗るな』」

デュエット曲の「Cold Old London」では、彼の年代にしては驚くほど素晴らしい高音が出ている。「僕は老いていくが、女の子たちは若くなっていく。もう遅すぎるかもしれない」と、古き良き時代を物憂げに彼は歌う。

美しく描写された「Julia」は、若者が感じる愛の痛みがためらいなく書かれている。ロッドが10歳の時に体験した失恋の話だ。そうかと思えば、スチュワートは潮の香りがしそうな船乗りの歌をタイトル・トラック「Blood Red Roses」で歌っている。約18メートルのクジラに出くわした船乗りが感じる、沈んだ気持ちを歌にした。

「このご時世、誰がクジラについて曲を書く?そいつは僕だ!僕はそんな人間だよ」

タイミング良く、今日(インタビューしている当日)、スチュワートはナポリ湾のヨットの上で気分は上々だ。

『Blood Red Roses』への好意的な反響があったことで、彼はランチの共にグラス一杯のロゼワインを飲もうか真剣に考えている最中だ。個人的な感情が強いこのアルバムに思いを馳せるのかもしれない。

「このアルバムの曲にはとても特別な思いがあるが、今聞き返すと辛く感じる。録音中は近過ぎて分からなかったが、出来上がった今になって聞くと思う。“あんな思い切った歌詞がよく書けたな”って」

「親友が死んでいくことについて書くのは…」と言葉を詰まらせる。「人々がアルバムの曲を好きだと言ってくれるのを聞くことで、とても励まされてきた。前に進んでいける自信ができた」

ロッドは長年の協力者、ケヴィン・サヴィガーと共同制作を行ったが、このアルバムはロックスターらしくない方法で制作された。ケータリング付きのお城は借りず、法外な値段のする録音施設の一括契約はしなかったのだ。

「ほとんどの曲は大西洋を超えたやり取りで録音したんだ。ケヴィンが曲のアイデアを送り、僕が修正をしてラフ・ボーカルを付ける。そして、バンドで実際に演奏して仕上げていくんだ。素晴らしい伝統的な録音スタジオもいいが、今回はそうしなかった。すべてホテルの部屋か、コンサートの後にバックステージで仕上げたよ。2時間ほど残り、気分が乗れば録音をした。アルバム作りには最高のやり方さ。つまり、何カ月も同じ場所に缶詰にされることはないんだ。今まで退屈なスタジオで長年過ごしてきたし、そんな所にいたくない。特に、バスドラムは音を録音するだけで1時間半も掛かるんだ。その上、膨大な時間とお金の無駄だよ」

ロッドとサヴィガーはソングライティングのプロセスに実用的な方法を取り入れた。偉大な作詞家や作曲家が用いる伝統的な“役割分担”のアプローチだ。「僕がタイトルから始める時もあるし、ケヴィンがトラックを送ってくれる時は、何か言葉が出てくるまで僕が鼻歌を歌うんだ」とロッドが謙遜気味に話す。

しかし、この非科学的な方法が功を奏した。『Blood Red Roses』のアルバムの曲はライブで人気が出る可能性も十分に秘めている。最近ラスベガスで行われたコンサートでロッドが歌った、感傷的な「Grace」やワイルドなロック「Hole In My Heart」は大好評のうちに終わった。

『Blood Red Roses』があれば、ロッドの人生は順風満帆で、文字通りバラ色だ。

「最高だよ」とロッドはささやくように話す。

「ハリウッド・ボールで2夜連続のコンサートを終えたばかりだが、チケットは完売した。来年もツアーをする。友人やファンにまた会えるのが嬉しいよ。僕はこのアルバムを誇りに思う。既に嬉しいコメントも届いているし、すべてが最高だ」

彼は海賊のように笑う。ロゼワインを飲むのは明らかだ。

「グラスをワインで満たしてくれ」


ロッド・スチュワート『Blood Red Roses』
2018年9月28日発売


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