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ドレイクが一挙に発売した3つのアルバムの全容:ずっと聴かれる強さと氷のように冷酷なラップ

カナダ・トロント出身のドレイク(Drake)が2026年5月15日に3つのアルバムを一挙に発売し、全米アルバムチャートでは史上初となる1位から3位を独占するという快挙を果たした。
この3つのアルバムについて、音楽ライター/翻訳家の池城美菜子さんに解説いただきました。
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三つのアルバム同時発売
18曲、14曲、11曲。
69分、45分、36分半。
ドレイクが予告通りに9作目『ICEMAN』をドロップした。と思ったら、前日になってほかに2つのアルバムも一斉に投下する、と予告。10作目は「花嫁の付き添い人」を意味する『MAID OF HONOUR』、11作目はアラビア語で「最愛の人」である『HABIBTI』。関連性がない3つのアルバム・タイトルに端的に表れているように連作ではなく、それぞれが独立した作品だ。ドレイクの新作は、いつだって歓迎だ。それでも、彼の「いま」を知るために、2時間半を要するのか、と解読する前にひるんだ。
もともと、ストリーミング・キングと呼んで差し支えないほど、ドレイクは高い再生回数を誇る。その角度からのライヴァルはケンドリック・ラマーではなく、バッド・バニーだとも言える。3作品同時に5月15日にドロップされた途端、驚異的な聴かれ方をしたのはさすがだし、それだけ彼の動向に注目が集まっている。いくつかの傾向、リリックから3部作の全容を浮き彫りにしていこう。
3部作の内訳とタイトルの意味
今回のメインとなる『ICEMAN』では、ケンドリックとのビーフのあと、孤立感を強めている現状と想いを吐露しつつ、新たな火種を投下している。『MAID OF HONOUR』は、ダンス・アルバム。これまでも組んできたEDMの人気DJ/プロデューサー、ゴード(Gordo)を大抜擢し、新しいサウンドの方向性を示す。R&Bに寄った『HABIBTI』は、実在の女性たちとの恋愛の顛末を歌っている。
ドレイクの熱心なファンは、さまざまな敵をこき下ろす『ICEMAN』で狂喜しているものの、音楽メディアや批評筋の評価は低い。代わりに評価が高いのはトラックが凝っている2枚目の『MAID OF HONOUR』だ。ただし、メディアやファン以外の一般的なヒップホップ好きの評価はさておき、ずっと聴かれているのが近年のドレイクの強さだ。
『ICEMAN』の聴きどころ
最初に筆者の立場を書くと、『ICEMAN』には当惑した箇所が多い。ドレイクはビーフに負けても聴かれ続け、今回も記録的な再生回数を叩き出した時点で、ルーザー(Loser/敗者)ではない。だが、負けた事実の受け止め方と引きずり方が、これまでヒップホップ史上、舌戦に負けたあと、復活した先輩たちのだれよりも拗らせている。
タイトルの『ICEMAN』は、冬が厳しい出身地のトロント、ダイヤモンド(=アイス)まみれの大富豪、氷のように冷酷なラップの3つをかけ合わせたのだろう。映画『トップガン』の登場人物の造形でもわかるように、感情を殺して冷静な判断を下せるタイプに使われる名前で、アスリートでも「アイスマン」と呼ばれる選手は多い。自分の感情の話が好きな彼のイメージに合わない、と思うのだが、このアルバムの最後の「Make Them Know」でこう締めるので、「いままでの俺とはちがう」と伝えたいのかもしれない。
What happened to Drake from 2009
When all of the moments was intimate?
What happened to Drake with the innocence?
I don’t think we’ll be seein’ him again
2009年から知っていたドレイクに何があったの?
すごく仲良くしていたときもあったよね?
純真だったドレイクに何があったの?
あの彼にはもう会えないんじゃないかな
そして、アウトロでこう締めるのだ。
Iceman, baby, why are you so cold?
Freeze the world, freeze the world
アイスマン。ベイビー どうしてそんなに冷たいの?
世界を凍らせろ 世界を凍らせろ
アートワークは、ダイヤがびっしりの白い手袋で、トロントを意味する「6」を形作っている。白い手袋は、バイオピックで改めて話題になっているマイケル・ジャクソンを想像させる。キャリアのピークでマイケルと自分を重ね合わせるのは、ケンカしたり仲直りしたりと忙しい仲の、イェこと元カニエ・ウエストが2010年に先にやっている。
『ICEMAN』は、18曲中15曲のプロモーション・ヴィデオ(以下、PV)を制作、ほぼ同時に公開した。タイトルに沿って青や灰色が強い冷たい映像が多いが、トロントでひたすらポーズを取ったり、あいかわらず自分自身に酔っているダンスを見せてくれたりする。私は、ドレイクには笑いも求めているので、アルバムが重い分、PVの数々でナルシシストぶりを発揮してくれたのはありがたい。どれも映像がきれいなので、できれば高画質で観てほしい。
「Make Them Cry」
ほぼ、スポークンワードの「Make Them Cry」で、アルバム全体で言いたいことはだいたい伝わる。ケンドリック・ラマーとのビーフで辛かったのは、負けた事実より、地球規模の騒ぎになったことだそう。
What died back in 2024 was a big piece
So it’s like, this shit is me, but it isn’t me
Y’all keep on asking me what it did to me, that’s what it did to me
When I dig deep, they say dig deeper
Tell us how it felt to meet the grim reaper
This album better have some big features
Well, sorry to burst your bubble, but I’m all alone for my mental
2024年に失ったものは大きかった
なんていうか 俺の話なのにちがう、みたいな
お前ら全員 どう影響したかって聞くけど それが一番きついんだって
十分掘り下げてみたけど もっと掘り下げろとか
死神に会った気分はどうだったとか
新しいアルバムは大物をいっぱい呼んだほうがいいとか
あのさ 戯言を潰して悪いけど 精神状態を保つために一人でいるんだ
「Not Like Us」の「A-マイナー」の部分はちがうのに、という気持ちはわかる(本気にした人も少ないと思うが)。だが、そもそも仕かけたのは彼である。また、ケンドリック・ラマーを死神と呼ぶのはラッパーとしてはむしろ、ほめ言葉のような気がする。あと、この新作シリーズに協力してくれる人がいなかったようなことを言っているが、アトランタからフューチャー、21サヴェージ、イギリスのセントラル・シー、ジャマイカのポップカーン、セクシー・レッドやモリー・サンタナ、スタンナ・サンディー、アイコニック・サヴィー、ロー・シミーといった多くのフィメール・ラッパーを呼んでいるから、十分にセンスがよく、心強い客演リストだろう。
安定の「孤独な俺様」節で曲を始め、話題になっているBTSとソウルのダブル・ミーニングで切れ味を見せている。BTSの名前を出すとバズるため、頭で名前を出すという計算をしているあたり、冷静かもしれない。2分過ぎたところでジェイ・Zの「Song Cry」(2001)とよく似たソウルフルな曲調に変わり、タイトルからもオマージュした曲だとわかる。曲の後半で自分の年齢に言及し、実父の癌を打ち明ける。たしかに、その話のほうが深刻だ。
ケンドリック・ラマーに対するジャブ
ケンドリックへの敵対心は衰えていない。アルバムをドロップする前の4つの予告編『ICEMAN Ep』で、ケンドリック・ラマーを嘘つき認定して、ピノキオになぞらえる。ユニバーサル ミュージック グループ(以下、UMG)が「Not Like Us」でのストリーミングの再生回数や、ハーフタイム・ショーのYouTubeの再生回数を操作した、というのがドレイク側の主張である。ケンドリックへのディス部分を3曲目の「Whisper My Name」から抜粋しよう。
Whisper my name and don’t say it too loud
‘Cause you gotta come here and you know I pop out
We turnt up Coachella, had boys backin’ down
And we might do the same if we touch Rolling Loud
If you my nxxga, then say that, my nxxga
Like, “What’s up, my crodie? Come hug me right now”
Come up to me and get one of them out
‘Cause you know all these niggas been countin’ me out
こそこそ俺の名前を囁くだけ 大きな声では言わないんだ
お前がこっちに来いよ 俺が全力を出すから
コーチェラを盛り上げたのは俺たち ほかの奴らをねじ伏せた
もしローリング・ラウドに出たら同じようにやるかもね
もし俺の仲間なら 俺の仲間だってちゃんと言えよ
「元気? こっちでハグしてくれよ」ってさ
俺のところに来てからねだれよ
あいつら全員俺を仲間はずれにしやがって
赤字の部分、pop outはケンドリック・ラマーの2024年のコンサート「The Pop Out: Ken & Friends」の名前や彼のリリックを拝借し、count me outは『Mr. Morale & the Big Steppers』の曲名である。
もっとも話題になっているのが、「Janice STFU」。オートチューンをかけたような感情を抑えた歌い出しから、ドリルのフローに切り替える。「黙りやがれ」と言われたジャニス・ホセはUMGのブランドパートナーシップ部門の本部長だそう。この曲でもケンドリックへ矢を放つ。
Chi-town, poppin’ a pill, go on a drill, lookin’ for someone to kill
White kids listen to you ’cause they feel some guilt and that’s how your soul gets fulfilled
Handing out turkeys on camera inside of your hood then you go back to the hills
How many houses you build? How many souls did you heal off the back of your deal?
シカゴみたいに錠剤を口に放り込む ドリルのビート 殺す相手を探している
白人のガキが罪の意識からお前を聴く それでお前の魂は満たされる
カメラの前で感謝祭のターキーを地元でぶら下げてみせて 丘の上に戻っていく
家を何軒建てたんだよ? 契約の裏で何人の魂を癒したんだよ?
感謝祭のターキー(七面鳥)は、カルト的な人気を誇る映画『ニュー・ジャック・シティ』(1991)でドラッグ・ディーラーが地元を気遣うふりをして、七面鳥を配ったシーンから由来する。このリファレンスは気が利いているが、ファンやリスナーの肌の色を持ち出すと、自分のファンまで傷つけてしまう可能性もある。
J.コールとA$APロッキーへのディス
2024年のビーフの発端は「ヒップホップ界のビッグ3」と言われていた、ドレイクとJ.コールの「First Person Shooter」でケンドリックを挑発したことだった。ケンドリックにやり返されたあと、J.コールも「7 Minute Drill」をリリースするも、予告通りすぐ消してしまった。前述した「Whisper My Name」では、ケンドリックに謝罪したあと、中立を守っているコールにもドレイクは矛先を向ける。
I’m doing my big one, you doing a little one
What kinda man are you? A middle one
俺は自分で大仕事をやっている お前はちまちまやっている
どういうタイプの男なんだよ? 中途半端なやつだな
「Make Them Pay」ではこうだ。
My niggas run a phone soon as you check into prison
Your niggas run and talk to Hov for a second opinion
俺の仲間は刑務所に入った途端 電話に飛びつく
お前の仲間はジェイ・Zに駆け寄って意見を聞く
J.コールがジェイ・Zに意見を求めた件を持ち出したのだが、いまどきのビーフは直接の勝ち負け以外に、話題になったあとどれくらい再生回数が回るか、という闘いでもある。その点で、この3人で一番、損をしたのはJ.コールであり、彼のファンとしては巻き込まれ事故みたいで気の毒だと思っている。ケンドリック・ラマーをスーパーボウルのハーフタイム・ショーに呼んだのはジェイ・Zだった。そのため、彼やドクター・ドレー、ファレルまでジャブを打っている。
フラれたリアーナのパートナー、A$APロッキーへのラインは、ほぼ言いがかりだ。
Yeah, your baby mama ain’t post your single, damn
Where she at? Yeah, where she at?
子供の母親はお前のシングルについて投稿さえしない 残念だね
彼女はどこ? まじで彼女はどこにいるんだ?
ロッキーとリアーナの仲の良さは有名なので、逆にSNSの使い方くらいしか突っ込めなかったのかもしれない。ドレイクはほぼ毎作でリアーナに触れているものの、黙殺されている。ロッキーは、5月にリリースした『Don’t Be Dumb』の「Stole Ya Flow」で「First you stole my flow, so I stole yo’ bitch/お前が先に俺のフローを盗んだから、お前の女を奪ってやった」と、とうとう言い返した。ほかにドレイクの美容整形疑惑にも触れ、なかなかのハード・モード。
ただし、ドレイクは人のフローを取り入れるのを「技」にしている人でもある。たとえば、このアルバムだけでもプレイボーイ・カーティや、客演もしている21サヴェージに寄せたフローを披露している。ロッキーとドレイク、ついでにケンドリックはほぼ「同期」だが、スタイルやフローについては、ロッキーとケンドリックはオリジナリティ重視型、ドレイクは憑依して使い倒す型という違いがある。
最大の敵はUMG
ジェイ・Z、DJキャレド、リック・ロス、NBAスター・プレーヤーのレブロン・ジェームス、デマー・デローザン、元交際相手でもあるヴィーナス・ウィリアムスらアスリート、移り気なファンまで、ドレイクは乱射状態で攻撃している。「Make Them Cry/泣かせてやる」「Make Them Pay/代償を払わせてやる」「Make Them Remember/覚えてろよ」「Make Them Know/わからせてやる」と18曲中、4曲にあえて似た曲名をつけて、挑発している最大の敵は個人ではなく、裁判を仕かけたUMGである。
正直、3枚分の48曲を1/3に絞って1枚のアルバムにまとめて、しっかり流れを作ったほうが名作になったように思う。だが、そもそもドレイクはそこを狙っていないのだろう。とにかく、言いたいことを言い切って、再生回数を稼ぐために弾を増やすこと。それが目的であれば、3つを同時に出すのは理に適っている。そして、アルバムを大量に出した真の狙いは、UMGとの契約を早く終わらせるためではないか、という憶測も飛び交っている。マイケル・ジャクソンの白手袋をオマージュしたアートワークも、マイケルがキャリアの後半に入ってソニーと揉めていた件と、いまの自分を重ねている可能性が高い。
リリックにもはっきりそれが現れている。7曲目「Make Them Pay」のコーラスは「I just wanna be free/ただ自由になりたいだけ」だし、10曲目の「B’s On The Table」の意図は、「交渉したいならミリオン(M)ではなく、ビリオン(B)単位だ」という意味だ。この文章の名前を出したバッド・バニーは大手の配給会社を窓口にしているものの、ほぼインディペンデントの形で活動して、成功を収めたお手本だ。いまのドレイクだったら、大手のレーベルに属していないほうが取り分は多いだろう。
彼が主張する再生回数のケンドリック・ラマーの水増し操作は、ケンドリックの曲だけにされているとは考えづらく、勢いのあるヒットには以前とちがう方法でブーストをかけているのかも、とは思う。今後の争点の鍵は、ドレイクの「大企業と戦う俺」という構図を、どれだけ多くの人が信じるかだろう。「ビーフに負けて孤独な俺」を演出しながら、意外としたたかな戦略をもって裁判を起こしているのかもしれない。
『MAID OF HONOUR』の聴きどころ
2作目の『MAID OF HONOUR』は、ダンス・ミュージックが得意なラッパー、という珍しい立ち位置を強化するアルバムだ。『ICEMAN』は怒りのエネルギーを放っていたため、ここでチャラいドレイクが戻ってくるのはうれしい。3部作でもっとも、ジムでのワークアウトに向いてもいる(実験済み)。セピア色のアートワークは、ブーケを手にしたドレイクの母親のサンディさんと、目元が似ているお父さんと本人の子供時代の写真が重ねられている。
とはいえ、結婚につながるような女性関係がテーマではなく、以前の『Certified Lover Boy』『For All The Dogs』のように独身貴族の自慢話が中心。インタールードの「Where’s Your Stuff」では、経済的にプラスがない結婚は意味がない、とまで言わせている。ルル・レモンのスポーツウェアを着て、ピラティスに行くライフスタイルを全肯定するあたり、ドレイクは実年齢より若い。
いまの時点でMVは作られていないが、話題になっているのはセクシー・レッドを招いた「Cheetah Print」。女性のお尻を強く叩くという、好き嫌いが分かれるテーマだ。今回、多用しているビート・スウィッチのあと、DJキャスパーの「Cha Cha Slide」のパロディーが始まる。チャ・チャ・スライドは英語圏の人なら、一度は踊ったことがあるおそろいのダンスである。「左足、右足」をセクシー・レッドが「左臀、右臀」と言い換えている。
このあと、ドレイクが好きなダンスホール・レゲエを取り込んでいく。イギリスのセントラル・シーを招いた「Which One」は、ダンスホール・レゲエのパイオニアのひとり、タイガーの代表曲「When」のフローを意識しているだろう。セントラル・シーは父がガイアナ出身で、パトワ混じりのコックニーが目印だから、うまくはまっている。つぎの曲は、ジャマイカの人気者でOVOサウンドに所属しているポップカーンとの「Amazing Shape」。
ドレイクがいつものなんちゃってパトワを炸裂させるのが、「New Bestie」。
You can’t beat dem tings through a speaker
Yeah, Addi, yah mi daddy, yah di teacher
Yeah, big up the teacher
Make Kartel get one line for the teacher
Gaza grim reaper
スピーカーを通すだけでは相手を倒せない
そうアディ 俺の父さん 先生
そう ティーチャーを称える
先生のカーテルのために1行作る
ガザの死神
「アディ」も「ティーチャー」もダンスホール・レゲエDJのヴァイブス・カーテルのニックネームだ。00年代前半に大人気を博したあと、2011年に殺人教唆で有罪になり、2024年に釈放されたばかり。パッと見、ドレイクのダンスホール・レゲエ愛があふれたパートに見えるが、じつはカーテルの長年の宿敵はマヴァードだ。
マヴァードとは、2020年の「Enemy Line」でドレイクにたいしてダンスホール・レゲエを利用するな、と責められてビーフになった過去がある。ドレイクがジャマイカおよびレゲエ・コミュニティを煽っているのかな、と思ったが7月18日にカーテルとマヴァードが18年ぶりに同じステージに立つのが話題になっているので、言ってみたかっただけかもしれない。
『MAID OF HONOUR』に話を戻すと、最後のインディー・ロック風の「Princess」のフローがキッド・カディみたいに聴こえるなど、これから話題になりそうな箇所がたくさんある。
『HABIBTI』の聴きどころ
今回の3部作の最後は、もっとも短く、ほとんどラップしていない。もともと、R&B寄りのラップが好きな人だが、通算11作目は、37分弱に渡って歌い続けている。テーマは、「近年の俺のデート事情」。みんなが知りたがっている前提で、特定できそうな曲を作れるドレイクは強い。「WNBA」はタイトル通り、女性のバスケット・ボール・プレーヤーとデートした話だし、フランスのシンガー、Qendresaが参加している「Slap The City」はクィーンズ大卒の女性に本気になった話である。
ドロップしてから1週間強現在、このアルバムでMVがあるのは、「Slap The City」と「High Fives」、「Gen 5」。セクシー・レッドやロー・シミーなどフィメール・ラッパーも参加しているが、オートチューンをかけてあえてトーンを揃えているため、ずっと同じ話を聴いているような気がしてくる。この「安定の変わらなさ」がいまのドレイクの見せたい姿なのかもしれない。
3部作がリリースされてから9日が経ったが多く再数回数と話題を集めている。改めてドレイクの人気について考察すると、ほかの音楽ジャンルより帰属意識が重視されるヒップホップにおいて、その点がとても薄いからではないか。トロントと自分のチームであるOVOは押し出すが、莫大な税金を納めているにもかかわらず、優遇してくれないトロント市や、仲間の忠誠心への猜疑心を定期的に曲にしてもいる。ライヴァルのケンドリック・ラマーはつねに黒人男性の視点からラップし、黒人社会をテーマにしている、ヒップホップが誕生した理由そのものを体現するようなアーティストだ。
今回、ドレイクは自分のルーツについて、「Make Them Remember」でこう言及した。
Is it the fair skin or the Jewish roots?
Why people wanna not see me on top of the mountain like I do the Dew
俺の肌の色が薄いから? それともユダヤ系が入っているから?
なぜ、限界に挑戦して山頂に立っている俺を見るのがそんなに嫌なんだ?
ユダヤ系とアフリカ系が入っているのは知られているが、こう訴えるほどユダヤ系を押し出してきたわけではない。その点で、たとえばビースティー・ボーイズとはまったくちがう。自分の都合で設定を変える身軽さが彼の持ち味であり、それがサウンドやフロー、ダジャレのようなリリックに現れている。この変わり身の早さと引き出しの多さが、さまざまなタイプのリスナーを惹きつける理由かもしれない。有名無名にかかわらず、ネット社会に生きる私たちはみな、複数のペルソナを持っている。3人のラッパーがひとりの中に存在しているような『ICEMAN』、『MAID OF HONOUR』、『HABIBTI』は、そういう意味でも非常に2026年らしい作品だろう。
Written by 池城美菜子 (noteはこちら)

2026年5月15日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
ドレイク『HABIBTI』
2026年5月15日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

ドレイク『MAID OF HONOUR』
2026年5月15日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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