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ヘイリー・スタインフェルドは俳優?ミュージシャン?最前線で活動する23歳の経歴と自身の言葉

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俳優として、そしてミュージシャンとして活動している1996年12月11日生まれ、現在23歳のヘイリー・スタインフェルド(Hailee Steinfeld)。最近では映画『バンブルビー』や、Apple TV+のドラマ『ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~』で主役に抜擢された彼女は、今年は音楽を中心に活動し、最新EP『Half Written Story』が5月8日に配信となりました。そんな歌と演技の世界の最前線で活動する彼女について、ライターの新谷 洋子さんに解説いただきました。

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歌が先か、演技が先か? ミュージシャンと役者を兼業するエンターテイナーたちにとってそれは往々にして、選択というよりも成り行き。もしくは、最初からふたつを区別していないというのが真相に近いように思う。

元々シンガー志望で『アメリカン・アイドル』に出場した経験もあるジェニファー・ハドソンは、オーディションを勝ち抜いて出演した映画『ドリームガールズ』で、いきなり主要映画賞の助演女優賞を独占。念願のデビュー・アルバムを発表したのは、それから2年後だ。

レディー・ガガの場合は、高校時代を通じてカフェやライヴハウスで歌う傍ら、学校では演劇の舞台に立ち、ミュージシャンとして大成功を収めたのちに『アリー/スター誕生』で演技力でも賞賛されたことは、ご存知の通り。そのガガも通ったニューヨーク大学芸術学部出身のチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーはと言えば、学生時代はラッパー兼プロデューサー活動に勤しんだ。そして卒業後は脚本家を経て俳優業に乗り出し、ここにきて一気にラップでも演技でも才能に花を咲かせている。

同じく、音楽界と映画・テレビ界をまたにかけて活躍するヘイリー・スタインフェルドの場合もやはり、「成り行き」に該当するのだろう。彼女が子役として活躍し始めたのは10歳の時。3年後に出演したジョエル&イーサン・コーエン監督の映画『トゥルー・グリット』(2010年公開)で早くもアカデミー賞助演女優賞候補に挙がっただけに、音楽活動を始めて5年が経つ今も、ミュージシャン業は“オマケ”だという印象を持つ人が少なくない。だが2016年春に初めてミュージシャンとして来日し、「POPSPRING 2016」で初の本格的なライヴ・パフォーマンスを行なった際、ヘイリーは次のように話していた。

「幼い頃から私はいつも家で歌ったり、友達や家族のために何らかのショウをやって見せたりしていました。そういったことを真剣にやりたいと思い始めた私に、母はこう告げたんです。“だったら演技か歌のレッスンを1年受けて、最大限に努力して、本気だと証明して”と。それでまずは演技のほうに全力で取り組んで、そちらが先に軌道に乗った。音楽も同じ頃にスタートしたんですが、当時はまだ歌を通じて自分を表現する準備が出来ていなかったから、後回しにしてよかったと思うんですよね」

つまり遅かれ早かれミュージシャン・デビューを狙っていた彼女、『トゥルー・グリット』以降は売れっ子となり出演作が次々公開されたが、この間、選ぶ役柄を通じて音楽との距離を縮めていた感がある。音楽プロデューサーの娘を演じた2013年公開の『はじまりのうた』には、バンドに交じってエレキでソロを弾くシーンがあった。続く2015年公開のミュージカル・コメディ『ピッチ・パーフェクト2』では、大学生のアカペラ・チーム“ザ・ベラーズ”の一員として、確かな歌唱力をいよいよ初披露。劇中でオーディションに臨み、映画の主題歌「Flashlight」を伴奏なしで歌う場面は、まさにシンガーとしてのイントロダクションだった。

Pitch Perfect 2: Emily Junk (Hailee Steinfeld) auditions to be a Bella [Scene]

 

こうして着々と道筋をつけたヘイリーは、『ピッチ・パーフェクト2』の公開から間もない2015年夏に、デビュー・シングル「Love Myself」を発表。ミュージック・ビデオで、地元LAのストリートで踊りながら歌う姿は堂に入ったもので、どこから見てもモダンな女性ポップスターだったが、リスナーの反応も上々。早速大ヒットを記録し(アメリカでのセールスは200万枚)、同年11月には4曲入りEP『Haiz』を送り出した(日本では他の曲を追加したミニ・アルバムとして2016年夏に発売)。

同作では、ソングライター(ジャスティン・トランターとジュリア・マイケルズの人気コンビ)とプロデューサー(テイラー・スウィフトのアルバムへの参加などで知名度を上げていたマットマン&ロビン)を各1組に限定することで、トーンを統一。クリーンでシンプルなエレクトロニック・サウンドは、のびやかな高音を誇りながらも切ない余韻を醸す声を引き立て、自立した女性像を刻む歌詞は強く主張し、まずは自分のキャラを印象付けることに成功していたと思う。

Hailee Steinfeld – Love Myself (Official Video)

 

その後はアルバムを急ぐのではなく、俳優活動と並行して、ソングライティングにも精力的に取り組みつつ多数のシングルを発表。特にダンス系アーティストとのコラボレーション曲・客演曲が目立つが、これはEDMがメインストリームに浸透し、かつシングル主体の時代になってから、多くのポップ・アーティストが踏襲しているアプローチだ。

例えば、現時点での最大のヒット曲であるヘイリー・スタインフェルド&グレイfeaturingゼッド名義の「Starving」、アレッソと連名の「Let Me Go」、ゲスト・ヴォーカリストに起用された大御所シックの「Dance With Me」。マシン・ガン・ケリーとロジックの両ラッパーとも共演し、とにかくこの数年間は常時どこかでヘイリーの歌声が、何かしらファンキーなビートに乗って聴こえていた気がする。映画撮影の合間には、ケイティ・ペリーやチャーリー・プースといった大物のツアーで前座を務めたりもしたものだ。

Hailee Steinfeld, Grey – Starving ft. Zedd (Official Video)

 

また、2018年公開の映画『バンブルビー』と、Apple TV+で昨年11月からストリーミングされているドラマ『ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~』では、ふたつの表現手段を活かして、主演しただけでなくサントラにもオリジナル曲を提供。異なる世界の間をフレキシブルに行き来しながら、マイペースに体験を積んでいく。

Hailee Steinfeld – Afterlife (Dickinson)

 

そして2020年、それまでの1年間はあまり音楽面での動きがなかったのだが、年が明けて間もなくニュー・シングル「Wrong Direction」が登場。従来の路線から一転、ピアノで声を縁取った王道のバラードに仕上げられていた。次いで3月にリリースした「I Love You’s」(1995年に大ヒットしたアニー・レノックスの「No More I Love You’s」をサンプリング)も80年代テイストのエレクトロ・ポップ・ソングで、続けざまに新鮮な方向性を打ち出したヘイリーは、ミュージシャンとしての自分をリセットしたことを感じさせた。

Hailee Steinfeld – Wrong Direction

 

実際、先頃インタヴューに応じてくれた彼女に訊くと、今年は音楽活動に専念するべく、KOZ(デュア・リパの新作『Future Nostalgia』でも活躍したカナダ人プロデューサー)と密にコラボして下準備を進めていたという。

「そもそも私は恵まれた立場にあると思うんです。3~6カ月の期間を映画やTVドラマの撮影に費やし、それが終わると音楽の世界に移る…というサイクルを繰り返すことができるので。でもやっぱり撮影の拘束時間は長く、必然的に曲のリリースが不規則になってしまった。だから今年は、ミュージシャン業にフォーカスすることにしました。たくさん曲を作ってみて、すごく正直な音楽が生まれたことに誇りを感じていますし、まとまった作品を届けられるのを楽しみにしています」

その「まとまった作品」の第一弾は、5月8日に配信された「Wrong Direction」と「I Love You’s」を含む5曲入りのEP『Half-Written Story』だ。彼女が「同じ章に属している」と説明するこれら2曲は、実体験に根差したブレイクアップ・ソングであり、そんなパーソナルな音楽を発信し始めたことも、新しい局面に入ったことを物語っているのかもしれない。

どちらもただ涙ぐんだり、憤慨しているだけの発散型の曲ではなく、自分を省みて成長につなげることをゴールに掲げたエンパワーメント・アンセム。殊に「I Love You’s」に関してはミュージック・ビデオも自ら共同監督して、曲のメッセージ――恋の終わりをプラスと捉え、独りになって自分と向き合う生活を楽しむ――を自分のアイデアに則ったヴィジュアルで表現しており、さらに多方面でクリエイティヴィティを掘り下げている。

Hailee Steinfeld – I Love You's (Official Video)

 

「あのビデオの始まりで私は狭いスペースに閉じ込められていて、怖がっていて、孤独で、混乱している。でもエンディングに至って、自分を取り囲んでいた壁が崩れ落ち、自分を取り戻した――それが今の気分なんです」

ちなみに、ヘイリーがプロデュースにも関わる『ディキンスン』は、19世紀アメリカの詩人エミリー・ディキンソンの人生をモダンな解釈で描くユニークなドラマで、第2シーズンも制作されると報じられているが、女性の自由が制限されていた時代を果敢に生きたこの詩人にも、大いに刺激を受けたそうだ。

「心に浮かんだことを躊躇なく詩に綴った恐れを知らない女性を演じてみて、表現者として得たことは大きいですね。第1シーズンの撮影を終えてスタジオに戻り、私が自分自身のストーリーを綴るにあたって、彼女の影響は間違いなく受けました」

ディキンスン 〜若き女性詩人の憂鬱〜 — 「Afterlife」公式予告編: | Apple TV+

 

マルチな表現手段を持つことを限りなくポジティヴに受け止めて、マイペースに、“俳優/ミュージシャン”というポジションを説得力あるものに確立してきた彼女。このあともう1枚EPが用意されており、フル・アルバムもそろそろ視野に入れているというが、何しろまだ23歳、この調子で行けば可能性は無限大だ。

Written By 新谷 洋子



ヘイリー・スタインフェルド『Half Written Story』
2020年5月8日配信
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music




 

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