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カラム・スコットが語った新作アルバムやライヴ、日本への想いと未来

ニューアルバム『Avenoir』を提げてヨーロッパ、南アフリカ、アジア、北米を巡るワールドツアー中のカラム・スコット(Calum Scott)。2026年1月28日には大阪・なんばHatch、1月29日には東京・豊洲PITにて約2年ぶりの来日公演を実施。この東京公演のステージ前に実施したインタビューを掲載。
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日本でのライヴ
―― 昨日の大阪でのライブはどうでしたか?
カラム:もう最高でした。大阪のライブは本当にすごかったです。観客が本当に素晴らしくて。ミート&グリートから始まったんですけど、みんな本当に素敵で、礼儀正しくて、可愛らしくて。プレゼントも持ってきてくれたり、本当に特別な時間でした。パフォーマンス中も、観客が僕の一言一句を待っているような感じがしたんです。日本の観客はあまり盛り上がらないって言われることもありますけど、みんなすごく楽しんでくれていて、ジャンプしたり、手拍子をしたりしてくれました。本当に素晴らしい観客だと思いました。
―― 日本では、東京の観客は静かだけど、大阪は違うと言いますよね。
カラム:大阪はとても楽しかったですね。すごく楽しんでくれました。前回東京で演奏した時も、とても素晴らしい観客だと思ったんです。だから、今夜もきっと同じ感じになるんじゃないかな。
―― 新作アルバムからの新曲も披露しましたよね? 観客の反応はどうでしたか?
カラム:ライブには『クライング・コーナー(泣きのコーナー)』と僕が呼んでいるパートがあるんですが、そこでは観客を泣かせるために全力を尽くすんです。その時、会場は本当に静まり返っていて、誰一人話したり、音を立てたりする人はいませんでした。曲に集中してくれていたからだと思います。みんなが新しい音楽を気に入ってくれていると感じました。例えば「Lighthouse」では、みんなが熱狂してくれて。自分の音楽がどれだけ遠くまで届いているか、ファンが1曲のためだけに来ているんじゃないってことを実感させてくれます。みんな、新しいアルバムを、新しい音楽を聴きに来てくれているんです。本当に素晴らしい反応でした。
―― 数時間後には東京でのライブが控えていますね。今のお気持ちは?
カラム:本当にワクワクしています。すごく興奮しています。昨日の大阪で感じたのと同じ気持ちを今日も感じています。故郷からこんなに遠く離れた場所で、僕の演奏を楽しみにしてくれている人たちでいっぱいの会場で演奏できるなんて、本当に光栄なことです。僕にとっては、これができることを本当に光栄に、そして恵まれていると感じています。だから、今夜は最高の時間を過ごすつもりです。
―― 昨夜の大阪のライブとは何か違うことをする予定はありますか?
カラム:スペシャルゲストがいたら最高だったんですけどね。一時期、林俊傑 (JJ Lin)さんと話していたんです。彼とは、2024年に東京ドームでエド・シーランと一緒に出演した時に初めて会いました。それで、一緒に曲を作ろうって話をしたんです。彼が過去にYouTubeで「You Are The Reason」をカバーしてくれて。だから、一緒に何かできたら最高だったんですが、彼が今東京にいるかわからないので、また次の機会にでも。
新作アルバム『Avenoir』
―― 新しいアルバムのリリース、おめでとうございます。『Avenoir』は“記憶が逆流するのを見たいという願望”という意味の詩的な言葉ですが、なぜこの言葉をタイトルとして選んだのですか?
カラム:『Avenoir』は、僕に強く響いた言葉なんです。未来について考えさせてくれるコンセプトだと思います。自分の人生が目の前に広がっているのを見ることができたらどうなるか。結婚式の日がどんな風か、子供たちがどんな風か。人生で最悪の日に備えることもできます。でも、僕自身の人生に『Avenoir』のコンセプトを当てはめてみると、僕は10年間この仕事をしていますが、僕がやってきたことすべてが魔法のようになっています。なぜなら、それが来るとは予期していなかったからです。だから僕は、『Avenoir』とは逆のことをしているようなものですが、人々に今を生きてもらうためのコンセプトとしてこの言葉を使っています。未来を心配しすぎず、過去を後悔しすぎず、今を生きること、周りの人々を大切にすること、彼らを愛すること、今の自分の状況を愛すること、あるいは人生の次の章に向けて野心的になること。だから僕にとって『Avenoir』はとてもリアルに感じられたんです。
―― 新作アルバムは、過去を振り返るというよりは、未来に進むために過去を受け入れるという内容なのでしょうか?
カラム:両方ですね。『Avenoir』は、そのコンセプト自体が、今この瞬間を振り返るということなんです。僕たちは未来を心配しすぎたり、過去を後悔しすぎたりします。だから時には、今を生きること、自分が持っているものや周りの人たちを大切に思うこと、そしてその瞬間に感謝することが本当に重要だと思うんです。なので、僕にとって『Avenoir』は、過去を振り返り、過去と和解し、そして未来を見据えることです。でも一番大切なのは、今を生きることなんです。
―― 前作『Bridges』から数年経ちましたが、新しいアルバムでサウンドやソングライティングへのアプローチはどのように進化しましたか?
カラム:より自信が持てるようになったし、全体的に人生がより幸せになりました。今、僕は犬のお父さんになったので、今は世話をする相手がいます。そして、僕の犬のエルヴィスが、僕に欠けていた部分を埋めてくれたと確信しています。僕は本当にお父さんになりたいんです。ライブでもその話をしますし、未来の赤ちゃんについての曲も書きました。「Mad」という曲です。だから、自分の未来を見据え、人生で次に何をしたいかを考えている今の時期は、とても充実した気持ちになりますね。家族を持つこと、子供ができて学校に連れて行くことを考えると…普通の生活を送っているとは言いたくないんです。なぜなら、これこそが僕にとっての普通だからです。でも、もし音楽をやっていなかったらやっていたかもしれないことをするのは、ええ、なんだかワクワクします。音楽は続けますよ。でも、それが僕を幸せで満ち足りた気持ちにさせてくれて、それが音楽にも、僕の書き方にも影響を与えているんだと思います。セカンドアルバムの時にあったかもしれない、創造的な壁を取り払ったような感じです。ええと、僕はもっと幸せになったと思います。音楽全体がより幸せな感じがします。今回はあまり泣くことはありませんでした。それが良いことなのか悪いことなのかはわかりませんが。
―― 今回は何か新しいことに挑戦しましたか? スタジオで新しい実験をしたりとか。
カラム:故ホイットニー・ヒューストンの素晴らしい声と一緒に「I Wanna Dance With Somebody (Who Loves Me)」で共演できたことは、僕にとって本当に大きな出来事でした(*ホイットニーのオリジナル音源が使用されたのは今回が初めてであり、ホイットニー・E・ヒューストン遺産管理団体の公認を得て録音された楽曲)。それから、カントリーミュージックのジャンルでも挑戦してみたかったんです。今までやったことがなかったですし、ビヨンセやポスト・マローン、その他カントリーをやっている人たちの真似をしているように見られるんじゃないかと少し心配でした。でも、カントリーミュージックが好きだから、やってみようと思ったんです。それで「One More Drink」というデュエット曲を作りました。ステージではカウボーイハットをかぶって、カントリーミュージックの雰囲気に浸れるようにしていて、本当に特別な瞬間です。
―― レコーディング中に特に感情的になった瞬間や、書くのが難しかった曲はありましたか?
カラム:「Gone」という曲がアルバムにあって、大切な人を失うことについての曲です。このアルバムで一緒に作業した作曲家の中には、最近喪失を経験した人がいます。僕も祖父母を全員亡くしていますし、最近喪失を経験した友人もいます。それは僕たち全員に関わることの一つです。でも、ただの喪失についての曲だと感じられるような曲は書きたくありませんでした。だから僕にとって「Gone」は、今周りにいる人々を大切にすることへの希望についての曲でもあるんです。ある意味で悲しい曲ではありますが、お母さんをハグする時にもう少し強く抱きしめたくなったり、仲違いしてしまった人たちと仲直りしたくなったり、愛する人へのメールの文末にキスをいくつか追加したくなったりするような曲なんです。僕たちが持っているものを思い出させてくれるものだと思います。書くのは難しかったですが、実際にはかなりカタルシスを感じるものになりました。
ステージでのパフォーマンス
―― あなたの曲は非常に感情的ですが、毎晩ステージでその深い感情を追体験するのは疲れませんか?パフォーマンス中にどのように自分の心を守っていますか?
カラム:僕はファンや観客にできる限りの心を捧げているんです。なぜなら、僕が経験してきたことは、僕だけのものではないと気づいたからです。失恋や喪失、辛い時期など、誰もが経験することです。それを音楽にしてファンに届けたら、それがファンの癒しになるかもしれないと思うんです。ファンは悲しい気持ちや、何かモチベーションが必要だと感じてライブに来るかもしれません。僕の音楽が薬のようになれるなら、それは信じられないほど力強いことで、その責任を真剣に受け止めています。だから、音楽を作り始めたとき、そういう契約をしたようなものなんです。自分の多くを音楽とファンに捧げるという契約に。少し感情的に消耗することもありますが、僕がファンに注いだものを、ファンが僕に注ぎ返してくれるんです。それで、また僕のカップはいっぱいになるんです。
―― ファンとの本当に美しい関係ですね。ツアー中に、その美しい声をどのように維持しているのですか?
カラム:はい、アスリートのように自分の体を扱う必要があります。アスリートは休息やストレッチ、良い食事の時間を確保しますよね。僕も同じようなことをしています。ミュージシャンとして、アーティストとして、自分の体と心を大切にしなければならないと感じています。瞑想をしたり、今は禁酒していて、お酒は飲んでいませんし、食事にも気をつけています。自分自身のための時間も作って、内省しています。健康な体には健康な心が宿ると思いますし、自分の体を大切にしようとしています。ただ、問題は、声にとって本当に助けになる唯一のものが休息だということです。でも僕は話すのをやめないので、僕にとってはかなり難しいことです。
――日本の湿度は喉に良いと言いますよね。
カラム:もちろんです。本当に。それに、たくさんの治療法がありますよね。僕が使っているトローチとか、お茶とか、日本で売られている喉の健康や体、腸に良い自然なものがたくさんあります。なので、それをすごく楽しんでいます。
カラムと日本
―― 大阪と東京のライブの間に、何か日本らしいことを探求したり、体験したりする時間はありましたか?
カラム:(昨日大阪のライヴで)今朝東京に着いたばかりですが、新幹線に乗って、富士山を見たんですが、素晴らしかったです。富士山を見るのは2回目なので、とてもラッキーです。今年は母をツアーに連れてきているので、色々な場所に連れて行こうとしています。インドでお寺を見たり、エジプトでピラミッドを見たり。そして今回は日本で、竹林を見に行ったり、京都のお寺を見たり、地元の食べ物を味わったりしました。それぞれの場所で何かその土地らしいことをしようとしていて、母にも新しいことを試してもらっています。そんな感じで、国から国へと世界を旅しているところです。
―― 今回の日本滞在で一番おいしかった食べ物は何ですか?
カラム:挽肉と米というお店に行きました。今SNSで話題のお店です。ハンバーグのパティで、ご飯の上に乗せてくれて、色々なスパイスや塩、コショウを加えられるんですが、炭火で焼いているので、素晴らしい風味がするんです。昨日は素晴らしいラーメンと餃子を食べました。おいしかったです。日本を離れる前に、できるだけたくさんの食べ物を食べ尽くそうとしています。
―― 日本のカルチャーで好きなものはありますか?
カラム:最近ZEDDのインタビューを見たんですが、彼がドラゴンボールの主題歌を手がけたと話していました。そういうことができたら最高ですね。特にドラゴンボールは、ポケモンや遊戯王と同じで、僕が子供の頃に見ていた番組です。そういう番組をたくさん見ていましたので、その分野で何かできたら本当にクールだと思います。
―― 多くの日本のファンは英語ネイティヴではありませんが、あなたの音楽に感動し、音楽に親近感を覚え、共感しています。音楽が言葉の壁を超えると感じる瞬間はありますか?
カラム:はい、特に「You Are The Reason」という曲では、音楽が本当に言葉や文化、世界のどこにいても、それを超えるものだと実感します。音楽は世界共通の言語だと思います。僕も英語以外の言語で歌われている曲を聴きますが、それでも感情は理解できます。それは、心から生まれるものだからだと思います。そして、人の心が他の人の心を感じることができるという事実は否定できないと思います。特にそれが痛みや喜び、思い出を振り返る時や、何か力強いものであれば、理解できると思うんです。僕は世界中のほとんどの場所で「You Are The Reason」を歌ってきましたが、どこの国で歌っても、みんな英語で歌い返してくれるんです。それは、人々がただ理解しているということを示していて、そこには何か力強いものがあります。つまり、音楽は、ある意味で魔法のようなものなんです。
成功と未来
―― さて、デビューから約10年経ちました。デビュー当時と比べて、弱さを見せたり、個人的な話を世界と共有したりすることは、より簡単になりましたか?
カラム:僕はそれしか知らないんです。他のやり方を知らないんです。僕はいつも弱さを見せてきましたし、音楽ではできる限りオープンで正直でいようと努めてきました。そして、それが僕の成功の理由の半分を占めているんじゃないかと思います。正直でいること、真実であり続けること。僕には別人格も、違う個性もありません。僕はいつもこのままです。弱さを見せることは、僕にとってちょっとしたスーパーパワーだと思っています。だから、常に弱さを見せ、常に心をさらけ出しています。そして、それが僕をここまで連れてきてくれました。日本でライブができるなんて、信じられないことです。
―― もし2015年、『ブリテンズ・ゴット・タレント』のオーディション直前に戻って、若い頃の自分にこの新しいアルバムを渡せるとしたら、彼に何と言いますか?
カラム:彼は絶対に信じないでしょうね。「冗談だろ」って言うと思います。若い頃のカラムは、このすべてに対して全く準備ができていませんでした。そして、ここまで来るのに10年かかりました。自分が今の場所にふさわしいと本当に信じられるようになるのに10年必要だったんだと思います。一生懸命努力しました。僕にとって音楽は2015年よりずっと前から始まっています。だから、その時は信じられないだろうけど、10年後なら信じる、そんな感じだと思います。当時26歳だったかな。おかしいと思うだろうけど、心の中では密かに「なんてことだ、これは本当なのか」って思っているでしょうね。「10年後に自分がこれを生み出すのか」って。そして、めちゃくちゃ喜んでいると思います。
―― アーティストとしての次の大きな夢や目標は何ですか?
カラム:アーティストとして、3枚目の『Avenoir』は僕が書かなければならなかったアルバムだと感じています。そして、4枚目のアルバムは、僕が本当に書きたいアルバムになると思っています。違いは、3枚目のアルバムでは、自分が進化し、成長し、適応できることを証明したかったんです。次の4枚目のアルバムでは、世界中にファンがいて、ライブに来てくれて、音楽を聴いてくれるので、森の中の小屋に、大好きなソングライターたちと一緒に行って、本当にリアルでオーガニックなアルバムを書けるという自信があります。これまではヒット曲を追いかけ、共感を呼ぶポップソングを追い求めてきました。今は、特にTikTokやSNSのおかげで、良い曲であれば成功すると思っています。だから、成功を追い求めることよりも、質を追い求めることの方に関心があります。今は、レーベルやラジオ局が何を必要としているかを心配するよりも、自分の心と魂に問いかけ、「何について書きたいのか、どう書きたいのか」を考えることが大切なんです。森に閉じこもるのが、僕にとって一番いいことかもしれません。
―― 最後に、日本のすべてのファンにメッセージをお願いします。
カラム:皆さんと会えるのを本当に楽しみにしていますし、素晴らしいショーになるようにします。まだライブに来たことがないみなさん、機会があればぜひ僕たちのショーを見に来てください。日本のすべてのファンに、お礼を伝えたいです。何年もの間、僕に示してくれたすべての愛に、本当に感謝しています。故郷から遠く離れた場所にいますが、ここにファンがいることが、本当に特別なものにしてくれます。心から感謝しています。また戻ってきます。今回会えなくても、次回会えますから。本当にありがとうございます。
Written by uDiscover Team / Photo by Callum Mills
カラム・スコット『Avenoir』
2025年10月10日発売
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