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Classical Features

清塚信也インタビュー|ピアノとトークの両輪で魅了する4年ぶりの新作『KIYO-LOGUE』を語る

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ピアニストの清塚信也は、コンサートホールのステージだけでなく、映画、ドラマからバラエティ番組まで、幅広いメディアで活躍している。そんな清塚が4年ぶりとなるアルバム『KIYO-LOGUE』をリリースした。演奏とトークを織り交ぜたユニークなアルバムは、ピアニストとしてクラシック音楽界の第一線で活躍しながら、芝居やトークでも高い評価を受ける清塚の活動を象徴するような1枚となっている。

清塚が演奏とトークを織り交ぜたアルバムを制作したのには、どのような狙いがあったのだろうか。

「前作のリリースから数年が経ち、クラシック音楽のアルバムを改めて作りたいと思っていましたが、アルバムを出すからには、出す意義のある、必然性のある内容にしたいと考えました。そこで思いついたのが、私の強みであるトークを織り交ぜたアルバムでした。MCを務めるNHK Eテレ『クラシックTV』も6年目に入りましたが、私はいつも、舞台に立つ以上、トークも演奏と同じようにプロフェッショナルでなくてはならないと考えてきました。私にとってトークは演奏と同じ表現のツールであるという想いが、今回のアルバムには込められています」

今ではトークのみでバラエティ番組に出演するほど、高度な語りの技術を持つ清塚だが、そうしたトーク力はどのように培われたものなのだろうか。

「子供の頃はピアノばかり弾いていて、話すことが得意という意識はありませんでした。高校では、自分と同じように音楽漬けで育ってきた人たちとならもっと上手にコミュニケーションが取れるのではないかと期待しましたが、彼らともうまく話すことはできませんでした。そんな中でコミュニケーションに対する渇望のようなものが大きくなっていったように思います。

中学生、高校生くらいになるとさまざまなコンクールで入賞するようになり、コンサート等で演奏する機会も増えてきました。コンクールでは審査員に評価してもらうことが重要ですが、コンサートに来てくださるお客様は審査員とは違った聴き方をしますし、ホールのなかの空気も変わります。

次第に、コンクールで評価される作品をコンクールと同じように弾いているだけでは、お客様の心は動かせないのではないかと危機感を抱くようになりました。そこである入賞者コンサートの際、演奏の前にひとこと作品について話してみたんです。そうしたらそれがとても好評で、お客様に伝わっている確かな手ごたえがありました。先生にはそういうことはするもんじゃないと叱られましたが、この出来事が私のトークの出発点だったと思います」

『KIYO-LOGUE』では、バッハとスカルラッティ、ベートーヴェンとシューベルト、シューマンとブラームス、ドビュッシーとガーシュウィンといった具合に、ふたりの作曲家の関係性のなかでトークと演奏が進んでいく。

「“クラシック音楽は時代を超えて連なっている”ことを伝えるために、作曲家を過去から現在へ向かって、できる限り時代順に取り上げていくというのが最初のコンセプトでした。作曲家を、人間関係を通して紹介するアイデアは『クラシックTV』でも好評だったもので、今回のアルバムにも取り入れてみました。

クラシック音楽に馴染みの薄い人にも、先輩後輩やライバル、師弟や恋敵といった人間関係は身近なものですよね。こうした人間関係から作曲家を紐解いていくことで、遠く感じられた作曲家にも少しずつ親しみを抱くことができるのではないかと期待しています」

アルバムで取り上げられる作曲家のなかで異彩を放っているのがショパンと組み合わされた瀧廉太郎である。瀧廉太郎の絶筆となったピアノ独奏曲《憾(うらみ)》を取り上げたのにはどのような意図があったのだろうか。

「瀧廉太郎の遺作である《憾》が近年再評価されていることは以前から気になっていて、『クラシックTV』でも取り上げたところ、予想以上の反響がありました。アルバムでショパンと組み合わせる作曲家を誰にしようかと悩んでいたときに、同じ肺結核で若くしてこの世を去った瀧廉太郎をショパンと並べてみたら新しい発見があるのではないかと思いついたのです。

《憾》というウェットなタイトルはとても日本的で、そこには死を覚悟した人間にしかなしえない音楽表現が聴かれます。《憾》を聴いてもわかるように、クラシック音楽は死や病といった重いテーマを描くのにとても適したジャンルです。

瀧廉太郎の無念が込められた日本最古のクラシックピアノ曲【憾(うらみ)】

また西洋の作曲家だけでなく、日本の洋楽の発展に大きな貢献を果たした瀧廉太郎の作品を加えることで、このアルバムをより身近に感じて欲しいという狙いもありました。世界史のなかに日本史の出来事を置いてみると、歴史の見え方がより立体的になるように、瀧廉太郎という存在を通して、クラシック音楽を異なる角度から捉え直してみると、西洋の作品も普段とは違った聴き方ができるのではないでしょうか」

清塚はピアニストとして古典的なレパートリーを演奏するだけでなく、作曲家として新たな作品も生み出す演奏家であり創作者でもある。アルバムの最後には自作《Serendipity》と《人生の光》が収められ、清塚の創り手としての仕事にも接することができる。

「これまではクラシック音楽の作品に自作を混ぜるのはあまり好きではありませんでした。今回も自作をアルバムに加えるべきか悩みましたし、入れるにしても、アンコールのような役割として《Serendipity》1曲で良いと思っていました。しかし、今の時代、アルバムを制作できる機会は貴重ですし、せっかくのチャンスなので、《Serendipity》のほかに、《人生の光》も録音することにしました。

予期せぬ出会いや目に見えないものをテーマにした《Serendipity》も、生きることを肯定する《人生の光》も、音楽の核には人の心を支えたいという想いがあります。音楽を通して人の心を支えることは、ピアニストが社会のなかで求められている大切な役割です」

【serendipity / セレンディピティ】

ピアニストにとどまらない活動を展開し、クラシック音楽の魅力をさまざまな角度から発信する清塚に、クラシック音楽がこれからもエンタテインメントとして愛され続けていくために必要なことを聞いてみた。

「これからのクラシック音楽になにより必要なことは、新作を発表し続けていくことだと思います。新しい作品を生み出すことで、古典の価値も増していきますし、音楽は考古学であってはならないのです。ピアニストが作品を生み出さなくなったことはとてももったいないことです。

かつてピアニストはみな作曲家でした。今では作曲と演奏が分業化されていますが、それも長い音楽史のなかのほんの一時代の常識に過ぎないかもしれません。だから私は曲を書き続けていきたいと思っていますし、私より若い世代のピアニストたちは、再び曲を書き始めています。

クラシック音楽は演奏家よりも作曲家や作品が重要視されるジャンルです。ですから演奏家としてショパンの株を上げてばかりいるのではなく、ショパンの同業者、ライバルであるという気概でピアニストも新曲を生み出すべきなのです。それが古典や先人へのリスペクトを欠くことにはならないでしょう。

AIが発達した今日では、音を加工することはAIに任せられるようになりました。だからこそ、音楽家の身体ひとつで完結できるクラシック音楽のプリミティブな側面はこれからますます注目されていくと思っています」

クリエイティビティこそがクラシック音楽を前に進める原動力であるという考えは、前作『Transcription』から一貫している清塚のスピリットだが、それは最新作の『KIYO-LOGUE』でさらに広がりをみせた。

清塚信也 – ロンド・カプリチオーソ / Rondo Capriccioso (Official Music Video)

2025年から続けられている全国47都道府県を巡るツアーも、いよいよ7月12日のサントリーホール公演でファイナルを迎える。インタビューの最後にこのツアーについても語ってもらった。

「今回のアルバムは全国ツアーと結びついたものですが、全く同じ内容ではつまらないので、作曲家や作品は、アルバムとツアーそれぞれにふさわしいものを選んでいます。これまでのツアーはタイトなスケジュールで、駅や空港とホールを往復することが多かったのですが、今回は演奏する街の名所をできる限り訪れて、その土地の空気を感じながら、お客様と対話することを大切にしています。

伊勢では伊勢神宮の神聖な空気がホールのなかにも漂っていましたし、大阪ではお客様の笑いへの期待をひしひしと感じました。ホールによって異なるお客様とのコミュニケーションは、私のパフォーマンスにも確かなエネルギーを与えてくれるのです。ツアーの残された公演でも、新しいお客様と出会えることを楽しみにしています」


■リリース情報


清塚信也 『KIYO-LOGUE』
2026年6月3日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


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