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有名ソングライターのリンダ・ペリーがリンゴ・スターとの仕事について語る

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Cover: Courtesy of Universal Music Enterprises

4ノン・ブロンズのブレイクのきっかけとなったヒット曲「What’s Up?」が1992年にラジオで大きな人気を呼んで以降、リンダ・ペリー(Linda Perry)はこの20年ほどのあいだに大ヒット曲をいくつも作曲/プロデュースしてきた。

グウェン・ステファニーの「What You Waiting For?」、P!NKの「Get The Party Started」、クリスティーナ・アギレラの「Beautiful」などを手がけたのも彼女だ。さらに、彼女はドリー・パートン、ブリトニー・スピアーズ、アリシア・キーズ、コートニー・ラヴ、セリーヌ・ディオンといった業界屈指の大物とも仕事をしてきた実績を持つ。

近年ではリンゴ・スター(Ringo Starr)ともコラボし、2024年のEP『Crooked Boy』では全曲の作詞・作曲とプロデュースを担った。ロサンゼルスにある自宅スタジオから取材に応じてくれた彼女は、とても嬉しそうにこのEPの制作について語ってくれた。そんな彼女は「リンゴの話を嫌う人がいると思う?」と話す。

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Ringo Starr – Crooked Boy

 

リンゴとはどのような経緯で仕事をすることになったのですか?

それが一番気になるところですよね。あるとき突然、彼の友人でプロデューサーのブルース・シュガーからメッセージが届いたのです。「やあ、リンゴがきみと電話したいらしい」と書いてあったので、私は「いいですよ」と返しました。それで電話が来たのですが、あの独特なアクセントで話す彼はものすごく面白かったです。時々、話が冗談なのか本気なのか分からないときもありましたが。彼は私の作る曲を気に入ってくれたようで、彼のEPに入れる曲を書くことに興味はあるかと聞かれました。

彼は「だいたい6か月ごとのペースで4曲入りのEPを作ろうとしているんだ。とにかく楽しく音楽を作れればいい。プレッシャーは感じなくていいよ。1曲書いてみてもらえないか?」と言ってくれました。そんなふうに始まったのです。

子どものころ、将来ザ・ビートルズのメンバーに曲を提供するなんて想像できたでしょうか?

言葉の意味すら分からなかったと思います(笑)。私が育った60年代後半のサンディエゴでも、ザ・ビートルズは大人気でした。近所には素晴らしいレコード店があって、ブースに入ってレコードをかけ、ヘッドフォンで聴いてから買うかどうかを決められたのです。家族と外出したときにもよく試聴をして、兄弟がビートルズのレコードを買って帰ったりしていました。私は小さいころ、なぜかミュージカルが大好きだったのですが、そのうちいろいろなレコードを聴くようになりました。

ザ・ビートルズは私の心をつかんで離しませんでした。当時は理由がよく分かりませんでしたが、とにかく彼らのメロディーが好きだったのです。私は歌詞の中身にはあまり関心がなくて、メロディーやバックの演奏にとても敏感でした。それに、ポール・マッカートニーよりもジョン・レノンの歌声のほうに心を惹かれていました。まだ幼いうちから、そういうことには気づいていたのです。今となっては理由も分かります。私にとっては歌詞よりもメロディーのほうが重要なのです。

それからいろいろな音楽を聴くようになり、いろいろな映画を見るようになって、すっかりのめり込んでいきました。そしてリンゴはいつも私のお気に入りのメンバーでした。風変わりで面白い人だったからです。見た目もクールだと感じていましたし、親しみを持てる特別な魅力がありました。彼のドラミングも大好きでした。

あなたが参加プロジェクトを話題性で選ぶタイプのプロデューサーではないことは明らかです。このEPで、リンゴからは何を引き出したいと考えていましたか?

正直に言うと、私はただ彼に良い曲を提供したかっただけです。彼は良い曲を歌うべきだと感じていたからです。そして私は、彼の声に合わせて曲を書くことを心がけました。誰かに楽曲提供するときに大事なのは、その人の声域や能力に合わせないとうまくいかないということです。

ですから彼と話すときも声をよく聴くようにしましたし、彼の声を深く知るために、「Octopus’s Garden」や「Photograph」での声域も確かめました。彼には奥行きのある曲を提供したかったのです。彼の声域と能力の範囲の中で、よりシリアスでメロディアスなリンゴの新たな一面を見せたかったのです。

最初のコラボ曲は2021年のEP『Change The World』に収録された「Coming Undone」でしたね。この曲はどのように出来上がっていったのですか?

このスタジオでデモを作り、それを彼に送りました。すると彼も曲を気に入ってくれました。それから各パートの録音データを送ると、彼はドラムとヴォーカルを入れて送り返してくれたのです。「よし、あとの仕上げを頼むよ」と言ってくれました。

彼の歌には貫禄がありました。彼はシンガーとしての自信がないからこそ、あの貫禄が出せるのだと思います。とにかくやってみよう、という感じなのです。「自分が最高のシンガーではないのは分かっている。だから心を込めて歌うだけだ」という姿勢なのだと思います。

Ringo Starr – Coming Undone (Audio)

それから翌2022年の『EP3』に収録された「Everyone And Everything」で再びコラボしたことを考えると、彼も「Coming Undone」の仕上がりに満足したんでしょうね?

そのあと彼から「やあ、またEPを作るんだけど、もう1曲書いてみないか?」と連絡がありました。そこで作曲とプロデュースをして彼に送りました。そのあと実際に彼に会いにも行きました。彼と一緒にバック・ヴォーカルも録音しました。新しい親友ができたと思えるくらい、彼とは意気投合できました。

Ringo Starr – Everyone And Everything (Official Music Video)

同曲には「Yellow Submarine」を思わせるパートがありますが、ビートルズのファンとしてあのパートを作るのは楽しかったですか?

分かってほしいのですが、ビートルズのメンバーに曲を書くとなれば、ビートルズの影響を排除するのは無理なのです。あのパートに差しかかったとき、「これは特別な瞬間だ。とにかくやってしまおう」と思いました。リンゴもあれをすごく気に入ってくれていたと思います。

最初はやめておいたほうがいいかとも思いました。でもそのあと、「もう決めた。出来は良いのだし、これを削ることはしない。大切に残しておこう」と決意しました。これはザ・ビートルズへのオマージュのようなものです。

あなたの息子のローズもザ・ビートルズの大ファンだそうですね。彼もすごく喜んでいたのでは?

始まりはこうでした。1歳くらいのころ、ローズがサラの携帯で映画の『Yellow Submarine』を見つけたのです。私たちはあの映画を見たことがなかったので、どうやって探したのかは分かりません。私もあの作品を最初から最後まで見たことはありませんでした。すごく奇妙だと思っていたからです。

それから彼はポール・マッカートニーのようにスーツを着てネクタイを巻きたがるようになりました。本当なのです。その格好で託児所に行くので、本当に可笑しかったです。それから彼は『Yellow Submarine』の内容を覚えて、ほかのアルバムも聴くようになりました。あるときローズに『Yellow Submarine』のお弁当箱を買ってあげて、「この中で誰が一番好き?」と聞きました。そのときのビデオも残っていますが、彼は全員の名前をきちんと言い当てて、リンゴが一番好きだと言ったのです。

リンゴと仕事をしているあいだ、そのことはローズには明かしていませんでした。でもあるとき、「友達の家に行って曲を聴くのだけれど、一緒に来る?」と誘ってみました。現地に着くと、ローズはとても戸惑っていました。リンゴを見て、私を見て、を繰り返していたのです。でもそこにはピーター・フランプトンもいて、私も「まあ、ピーター・フランプトンがいる」と驚いてしまいました。

それから気を取り直して、「この人がリンゴだよ」と彼に紹介しました。それでも状況を飲み込むのに少し時間がかかって、そのあと彼は文字どおりほっぺたを真っ赤にしていました。そのあとはとにかく大興奮でした。リンゴは本当に優しくて素晴らしい人なので、ローズにドラムも教えてくれました。すべてのビートルズ・ファンにとって夢のような出来事です。

Yellow Submarine Original Trailer – 1968 (Beatles Official)

 

そしてあなたは、2024年4月20日のレコード・ストア・デイにリリースされた『Crooked Boy』でEP1枚すべてを手がけることになりました。これはどのような経緯だったのでしょうか?

実は私から話を持ちかけたのです。彼が本気で聞いてくれるとも思わなかったので、さりげなくです。「EP 1枚全部を任せてくれる気になったら連絡してください」と何気なく言ってみました。するとそのあと彼から電話があり、「やあ、きみが俺にとってベストなソングライターだと思うから、EP 1枚全部をやってみないかい? まあ、きみがやりたいと言っていたことだけどさ」と言われたのです。

彼がちゃんと聞いてくれていたとは思っていませんでした。ですから「もちろん、ぜひやります」という感じでした。そうして『Crooked Boy』を作ることになったのです。私は全曲の作詞・作曲とプロデュースを担当しました。最高の経験でしたし、自分自身をとても誇りに思っています。彼の歌とドラムも素晴らしかったです。良い曲ができたと思いますし、彼に楽曲提供するのはとても楽しいです。

「Crooked Boy」はメロディーが難しい曲ですが、リンゴはこれも完璧に歌い上げてくれました。あれは子ども時代の彼のことを歌った曲です。昏睡状態に陥ったことや、結核を患ったことなど、すべてリンゴが子どものころに経験したことなのです。

ほかの楽曲について、リンゴから何か指示などはあったのですか?

彼はいつも愛と平和のメッセージを発信してきました。彼が歌いたいことは基本的にそれなのです。でも私はこう思いました。「リンゴ、それを伝えるやり方はたくさんあるけれど、あなたはもう全部やり尽くしてしまっている」と。

そこで、人間らしさや、どうすれば良い人間でいられるかといったことをテーマにした曲を書こうと思いました。また「February Sky」では、今の世界における厄介な問題について書きました。“I’ve had enough of February Sky”という歌詞は、「今の世界のこの闇にはもううんざりだ」というような意味です。「Adeline」は、ファンや娘、あるいは姪のような関係の人に向けて、リンゴが「きっとすべての人に救いはある」と語りかけるような曲です。

また彼がアップビートな曲も入れたいと言ったので、それに合わせて「Gonna Need Someone」を書きました。この曲は、愛する人が必要だというメッセージを持った純然たるロック・ナンバーになりました。

収録曲はどれもまとまりがあるように思えましたし、雑多な楽曲の寄せ集めという感じにはしたくありませんでした。みなさんに聴いてもらうのが本当に楽しみです。今回はできる限りヴォーカルの質を高めるために、リンゴにも頑張ってもらいました。彼の歌いづらい声域にも挑戦してもらいましたが、期待どおり見事にやり遂げてくれました。彼は、人前で歌えないと意味がないと考えていますし、それは私も理解しています。でもこのレコードは感情豊かなものにしたかったので、その点では私の意見を通させてもらいました。

Ringo Starr – February Sky (Visualizer)

 

このEPでギターにニック・ヴァレンシを起用したのはなぜだったのですか?

1作のEPに4人のソングライターと4人のプロデューサーが関わったら、それはまとまりのない4曲の寄せ集めのように聴こえてしまいます。私はアルバムという形式を重視するタイプですし、1作のアルバムは一貫性を持たせるために1人のプロデューサーが手がけるべきだと思っています。1本の映画に5人の監督が関わることは普通ありません。そんなのはおかしな話ですし、理にかなっていないでしょう。

何曲かでは私が自分でベースを弾きましたが、全体のつながりを持たせるためにニックを呼びました。もちろん、リンゴの歌声とドラムも全曲に共通していますが。ニックも人柄が素晴らしく、才能にあふれていて、とても寛容な人です。彼はこの作品に興味があるかどうかをきちんと聞く前から、「それで、いつ行けばいい?」と前のめりになってくれました。彼は全力を尽くしてくれましたし、素敵なアイデアやフレーズもたくさん提案してくれました。この作品に本気で取り組んでくれたのです。ニックは完成するまで集中を切らしませんし、演奏も最高でした。

Ringo Starr – Gonna Need Someone

リンゴからビートルズ時代のエピソードは何か聞きましたか?

曲について話していたとき、私が「でも、あなたもソングライターではないですか」と言ったのです。すると彼は笑い出してこう言いました。

「いいかい、俺は世界最高のソングライターが2人いるバンドにいたんだ。みんなでスタジオにいるとき、たまに俺がその場を離れて曲を書くこともあった。それでジョンとポールに『なあ、こんな曲を思いついたんだけど』って言うと、彼らは俺を笑ってまた2人の会話を始めるのさ……いくつかは採用されたけどね」

彼がその反応をあれほど気楽に受け止めて、気を悪くしていなかったのは面白いなと思いました。彼のバンドには文字どおり世界最高のソングライターが2人いたわけですから、謙虚にならざるを得なかったのでしょうね。

Ringo Starr – Adeline (Visualizer)

リンゴと仕事をして学んだことは何ですか?

それまでも頭では分かっていましたが、彼がより強く意識させてくれたことがあります。それは、どれだけ大物であっても、他人には常にリスペクトと優しさをもって接する必要があり、謙虚でいなければならないということです。なにしろ、リンゴはビートルズのメンバーなのです。わざわざ誰かのために何かをしてあげる必要などないはずです。

それなのに彼は、手間を惜しまず、積極的に敬意を示して、優しく愛情深く接してくれます。褒め言葉をくれたり、背中を軽く叩いて励ましてくれたり、良い仕事をしていると伝えてくれたりします。彼の近くで彼の人となりを見ていると、自分ももっと気をつけなければならないと思わされます。自分も周囲のすべての人を積極的に鼓舞し、元気づけ、支え、話に耳を傾け、尊重していかなければいけないと痛感させられるのです。

Written By Jamie Atkins


リンゴ・スター『Crooked Boy』
2024年5月31日発売
CD&アナログ / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


最新アルバム

リンゴ・スター『Long Long Road』
2026年4月24日発売
CD・LP



 

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