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1990年代を彩った映画サウンドトラックと大衆文化に与えた影響

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Photo: Eric Robert/Sygma/Sygma via Getty Images

『パルプ・フィクション』の有名なダンス・シーンでは、ループタイをつけたジョン・トラヴォルタと黒髪で裸足のユマ・サーマンがチャック・ベリーの「You Never Can Tell」に合わせてツイストを踊る。

Pulp Fiction "You Never Can Tell" [HD]

ユアン・マクレガーが人生を変える行動を取る『トレインスポッティング』のラストをアンダーワールドの「Born Slippy」が彩るシーンでは、優雅さすら感じるシンセの音色がやがて激しいダンス・ビートへと変わる。

また『クルーレス』では、ブリタニー・マーフィが大変身を遂げるシーンでジル・ソビュールによる皮肉たっぷりのオルタナティヴ・ロック・ナンバー「Supermodel」が流れる。

Clueless – Supermodel

これらは私たちの脳裏に焼きついている90年代映画のシーンのごく一部にすぎない。そうした場面では、印象的な映像とその瞬間を飾るのに最適な楽曲が合わさることで大きな効果が生まれている。この時期の映画はその方程式を使い、さまざまな方法で私たちを楽しませてくれた。ここでは、90年代を代表する画期的な映画サウンドトラックの数々と、それらが大衆文化に与えた影響を振り返っていこう。

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ダニー・エルフマン旋風

ダニー・エルフマンはもともと、ロサンゼルス出身の型破りなニュー・ウェーヴ・バンド、オインゴ・ボインゴを率いる狂気じみたフロントマンとして世に出てきた。グループは皮肉のこもった歌詞や、サーカスのような珍奇な雰囲気、思わず目を見張るようなパフォーマンスなどで80年代に話題を呼んだ。

実際、その時期に公開された『ときめきサイエンス』や『バック・トゥ・スクール』などの映画は、彼らの音楽がなければ成り立たなかっただろう。だがディーヴォのマーク・マザーズボーが映画音楽家に転身して大成功を収めたように、エルフマンも風変わりなロック・ミュージシャンから、広く尊敬される映画音楽の大家へと変貌したのだ。

ティム・バートンは長編デビュー作である『ピーウィーの大冒険』の音楽に、作曲家としては新米だったエルフマンを起用。これは実のところ、そのときマザーズボーの都合がつかなかったからだった。しかし独創的で捻くれた2人の世界観が合わさることで魔法のような相互作用が生まれ、両者は実りある協力関係を結んだ。

そして90年代最初の2人のコラボ作となった『シザーハンズ』で、エルフマンは自らの音楽の新境地を開いた。優雅なオーケストラの演奏に幻想的かつ不気味な空気感を加えた彼の劇伴は、異形だが愛すべき主人公の心揺さぶる物語を完璧に引き立てたのである。

この作品によってエルフマンは人気作曲家として揺るぎない地位を確立。ニューヨーク・タイムズ紙は彼とエルフマンの協力関係(2人はその後も数十年に亘って手を組むこととなる)を、デヴィッド・リンチとアンジェロ・バダラメンティのそれに準えたほどだった。

Ice Dance

 

タランティーノ効果

クエンティン・タランティーノが90年代半ばに監督した『レザボア・ドッグス』と『パルプ・フィクション』の2作は、70年代にマーティン・スコセッシが起こした現象を再現した。つまり、現代映画のトレンドや、映画と音楽の関係性を一変させたのだ。

タランティーノはスコセッシが『ミーン・ストリート』でそうしたように、スクリーン上の出来事を補足、あるいは引き立たせる目的で過去の有名楽曲を使用。そうすることで、”古代ギリシャ劇における合唱隊のポストモダン版”のような効果を生み出したのである。

タランティーノは1992年のデビュー作『レザボア・ドッグス』にて、オールディーズ専門のラジオ番組という仕掛けを通して70年代の名曲の数々を劇中に使用した。その中にはジョージ・ベイカー・セレクションの「Little Green Bag」のように忘れられつつあった楽曲もあれば、スティーラーズ・ホイールの「Stuck In The Middle With You」のような不朽の名品もあった。

Reservoir Dogs Intro – Little Green Bag

マイケル・マドセンが恐ろしい残虐行為に興じるシーンで、思わず口ずさみたくなるようなあの人気フォーク・ロック・ナンバーが流れるとは誰も想像しなかっただろう。同様に、タランティーノの次作『パルプ・フィクション』でジョン・トラヴォルタがヘロイン中毒の殺し屋を演じたことも予想外だった。つまりこれらの作品により、世界中の人々は同曲やトラヴォルタに対してこれまでとは違う見方をするようになったのだ。

絶大な影響力を誇るタランティーノの『パルプ・フィクション』には、スタットラー・ブラザーズが60年代に発表したカントリー・ポップ・ナンバー「Flowers On The Wall」からチャック・ベリーによる上述のロック・ナンバーまで多様な楽曲が使用されている。同作は映画サウンドトラックの選定に意外性やノスタルジーといった観点を持ち込み、その考え方は現在まで脈々と受け継がれているのである。

Pulp Fiction – Flowers on the wall [HD]

 

通なカヴァー楽曲

エイミー・ヘッカーリングが監督を務めた1995年の大ヒット作『クルーレス』は、当時の旬なアーティストの演奏で過去の楽曲を蘇らせた。その手法の元祖が同作というわけではないはずだが、影響力の大きさから(この映画を基にしたテレビ・ドラマまで作られた)、そのアイデアを広める役割を果たしたことは間違いない。

実際、この手法はそれから短い期間で一気に定着していったのである。アリシア・シルヴァーストーン演じる主人公とその仲間たちが観客の前にお目見えするオープニングでは、キム・ワイルドの有名ニュー・ウェーヴ・ナンバー「Kids In America」をオルタナティヴ・ロック調に仕上げたザ・マフスによるカヴァーが流れる。

Clueless – Kids in America

また、サイケデリック・ファーズの「The Ghost In You」をアコースティック調にアレンジしたカウンティング・クロウズの切ない演奏は、私たちに同曲の新たな解釈を提示してくれた。

もちろん、この『Clueless』をきっかけにその名を広めたアーティストも存在する。それは前述のジル・ソビュールにも、同時期に発表した楽曲が劇中で使われたレディオヘッド、スーパーグラス、ルシャス・ジャクソンなどにも言えることだ。

The Ghost In You (Live At KBCO, Boulder, CO/1993)

 

スターを生んだ映画

『クルーレス』の大ヒットによって劇中歌を担当したアーティストたちの魅力が世間に広まったのは確かだが、一方で純然たるヒット曲製造マシンとして機能した90年代映画もある。ジン・ブロッサムズは1995年の映画『エンパイア レコード』が公開される以前から、アルバム『New Miserable Experience』でアメリカ国内におけるブレイクを果たしていた。だがマーシャル・クレンショウも作曲に関わった名パワー・ポップ・ナンバー「Til I Hear It From You」は、この映画の影響もあってグループ最大のヒット曲になった。

Empire Records • Til I Hear It From You • Gin Blossoms

1997年公開の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は、共同で脚本を書き自ら出演もしたマット・デイモンとベン・アフレックの出世作になった。だが同時にこの映画は、エンディングに使用された印象的な1曲「Miss Misery」を静かに歌い上げたエリオット・スミスが世に知られるきっかけにもなった。

Good Will Hunting Music Video – Miss Misery (1997) – Ben Affleck Movie Drama HD

ポートランド出身のシンガー・ソングライターである彼はそれまで、インディーズの世界でカルト的な人気を得ているに過ぎなかった。だが同曲がアカデミー賞にノミネートされ、スミス本人が98年の授賞式でこれをパフォーマンスすると、その才能は公然のものとなったのである。

英国出身のデュオであるアンダーワールドによる「Born Slippy」の”NUXX”ヴァージョンは、1995年の時点ですでに世に出ていた。このトラックが、スタイルのまったく異なる同名曲のオリジナル・ヴァージョンのシングルB面に収められた当初は、いずれのヴァージョンも大きな話題を呼ぶには至らなかったのだ。

しかし1996年作『トレインスポッティング』の劇的なラストに使用されたことで、ムードたっぷりのサウンドと踊り出したくなるビートを組み合わせた前者は彼らのキャリアでもっとも成功した1曲となった。

Underworld – Born Slippy [Trainspotting]

 

ミックステープ方式

映画のサウンドトラックに関しては少なくとも1960年代以降、その音楽や映画の時代を問わず必ず効果を発揮する定番の手法が受け継がれてきた――それが”ミックステープ方式”である。旬のバンドたちによる選り抜きの楽曲をいくつも集めることで、友人がくれた自作のコンピレーション、あるいはクールなDJがまとめたプレイリストのような楽曲集を作り上げるのだ。

この方式を採った好例として、ここでは当時の若者文化を巧みに捉えた90年代初頭と終盤の2作を紹介しよう。それらのサントラはいずれも、当時の最新楽曲とその映画のための書き下ろし楽曲を織り交ぜた構成になっている。

クリスチャン・スレーター主演の1990年作『今夜はトーク・ハード』はそうした映画の典型とも言える1作だ。同作でスレーターは、たった1人で海賊ラジオ局を運営する反抗的な高校生を演じている。そしてレナード・コーエンの「Everybody Knows」を物々しく歌い上げたコンクリート・ブロンドのカヴァーには、聡明だが皮肉っぽく冷笑的なその役柄の本質が見事に捉えられているのだ。

Everybody knows – Leonard Cohen

他方、1999年公開の『アメリカン・パイ』は、性的な描写をたっぷり盛り込んで古典的な思春期コメディの人気を復活させた1作だ。ブリンク 182の「Mutt」やゴールドフィンガーの「Vintage Queen」など同作に使用されたポップ・パンク・ナンバーの数々は、若くてエネルギーを持て余し、溢れんばかりのホルモンに突き動かされていた青春時代を爽やかに思い出させてくれたのである。

Blink-182 – Mutt (Legendado/Tradução) American Pie — A Primeira Vez é Inesquecível (1991)

Written By Jim Allen


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