グレイト・アメリカン・ソングブック、第1巻:TOP11ジャズ

9月 3, 2017


グレイト・アメリカン・ソングブック、第1巻:TOP11ジャズ

グレイト・アメリカン・ソングブック(訳注:アメリカで影響力をもち、重要なトラディショナル・ポップ、ジャズのスタンダードなど定番となっている楽曲の総称)は1920年代に始まり、その全盛期は40年間に及んだ。コール・ポーター、アーヴィング・バーリン、ガーシュウィン兄弟、リチャード・ロジャースとロレンツ・ハート、ジェローム・カーン、ヴィンセント・ユーマンス、ハリー・ウォーレンとハロルド・アーレンらのソングライティングの舞台は、ティン・パン・アレー、ブロードウェイ、そしてハリウッドだった。大部分の人にとり、グレイト・アメリカン・ソングブックの黄金期はロックン・ロールの到来により終焉を迎え、それに伴いジャズ史にはっきりとしたピリオドが打たれた。

この作曲家達のアンバサダーとして協力したのは、ジャズ・ミュージシャンだった。その理由のひとつとして挙げられるのは、素晴らしいメロディが音楽を愛する全ての人にアピールするだけでなく、ミュージシャンが即興で演奏することにより、オーディエンスをユニークで創造力に富む旅へと誘うからだ。

これはレコーディング・スタジオで特に著明で、大概の場合は異なるタイプのミュージシャンから成るグループがレコーディングの為に集められ、グレイト・アメリカン・ソングブックから提供される素材は、共通の場として彼等の出発地点になることが多かった。同様に、ノーマン・グランツによって‘Jazz At The Philharmonic’(以下、JATP)の垂れ幕の元に開催された一連の行事では、グレイト・アメリカン・ソングブックの曲が起用され、ミュージシャンがそれぞれジャムりながら魔法を生み出す機会を与えた。

1:ヴァリアス:「Tea For Two(邦題:二人でお茶を)」(1944-1949、1998年『The Complete Jazz At The Philharmonic On Verve』より)
1944年7月開催の初JATPコンサートで招集された、ピアニストのナット・キング・コール等ミュージシャン達は、ヴィンセント・ユーマンスの「Tea For Two(邦題:二人でお茶を)」を思い切り演奏。翌年フィーチャーされたのは、ジョージとアイラ・ガーシュウィンが同名ミュージカルの為に書き下ろした「Oh, Lady Be Good」等だ。

2:ヴァリアス:「How High The Moon」(1944-1949、1998年『The Complete Jazz At The Philharmonic On Verve』より)
彼等は1940年ブロードウェイ作品『Two For The Show』で使用され、モーガン・ルイスが作曲し、後に‘Jazz At The Philharmonic’の非公式アンセムとなったナンバー「How High The Moon」も演奏した。その歴史を通して、JATPのレパートリーはザ・グレイト・アメリカン・ソングブックからの曲が溢れていた。

3:ヴァリアス:「What Is This Thing Called Love?(邦題:恋とはなんでしょう)」(1953年、ノーマン・グランツの『Jazz Session #2』より)
ジャズ・ミュージシャンは、曲を自分達のスタイルと特徴的な即興演奏で染め上げ、解釈していくことで、片足をしっかりと過去に根付かせながらも、個性的な音楽を創作していった。マーキュリー及び自己レーベルのクレフとのレコーディング時、ノーマン・グランツはリハーサルに時間と金を無駄にするタイプではなかった。彼は周到な計画よりもジャムを好み、40年代末にLPの時代が来た時、アルバムをリリースするに当たり、ミュージシャン達をスタジオに入れ、出来るだけ短期間で魔法が生み出されるのを期待した。

1952年7月、ノーマン・グランツはトランペッターのチャーリー・シェイヴァースとサクソフォニストのベニー・カータージョニー・ホッジスチャーリー・パーカーフリップ・フィリップスベン・ウェブスター、そしてリズム・セクションとしてオスカー・ピーターソン(ピアノ)、バーニー・ケッセル(ギター)、レイ・ブラウン(ベース)、J.C.ハード(ドラムス)をロサンゼルスのラジオ・レコーダーズに集め、クレフからリリースのアルバム2枚をレコーディングし、『Norman Granz`s Jam Session #1 and #2』と名づけた。バラード・メドレー収録の1枚目には、ザ・グレイト・アメリカン・ソングブックの最も美しいナンバーが幾つか登場し、『Jam Session #2』ではコール・ポーターの「What Is This Thing Called Love?(邦題:恋とはなんでしょう)」を15分に渡るこの上ない詩へと発展させた。

4:チャーリー・パーカー:「Laura」(1950年、『Charlie Parker With Strings』より)
だからと言って、ノーマン・グランツが無頓着だったということでは決してない。彼はとにかく才気溢れるミュージシャンが自分達の愛する音楽をのびのびと演奏することを好んだ。1949年、『Jam Session』のレコーディングの前に、ノーマン・グランツはチャーリー・パーカーをジミー・キャロルのオーケストラと組ませ、戦後ジャズを代表する画期的なアルバム『Charlie Parker With Strings』をレコーディング。「私の知っているジャズ・ミュージシャンはみんなストリングスとレコーディングしたがった」とノーマン・グランツはその当時語っている。

ノーマン・グランツの言葉は少々突飛だったかも知れないが、もし“ザ・グレイト・アメリカン・ソングブックをレコーディングする為に”と付け加えていたら、より真実に近かったかも知れない。バード(*訳注:チャーリー・パーカーの愛称)がレコーディングしたのは、ガーシュウィン兄弟、コール・ポーター、ロジャース&ハート、ジミー・マクヒュー、ジョニー・マーサー、イップ・ハーバーグやブルックス・ボウマン等が作曲した名曲。これはみんなが所有すべきタイプのレコードであり、ジャズとグレイト・アメリカン・ソングブックとの強い関係を見事示した作品だ。

5:オスカー・ピーターソン:「Just One Of Those Things」(1959年、『Oscar Peterson Plays The Cole Porter Songbook』より)
ノーマン・グランツは1950年にオスカー・ピーターソンとレコード契約を交わし、その2年後このカナダ人ピアニストは、グレイト・アメリカン・ソングブックの偉大な演奏者達のソングライティングを探求する一連のアルバムに着手した。シリーズ最初の2作は『Oscar Peterson Plays George Gershwin』と『Oscar Peterson Plays Duke Ellington』。その後数年間に渡り、ハロルド・アーレン、ヴィンセント・ユーマンス、そしてカウント・ベイシーの音楽を追求していった。「Just One Of Those Things」は1959年にコール・ポーターのソングブックの名曲を解釈したもの。

6:エラ・フィッツジェラルド:「Night And Day」(1956年、『Ella Fitzgerald Sings The Cole Porter Songbook』より)
1956年に、ノーマン・グランツがエラ・フィッツジェラルドとヴァ―ヴ・レコードの契約にこぎつけた時、このシンガーとの初メジャー・プロジェクトは『Ella Fitzgerald Sings The Cole Porter Songbook』だった。エラ・フィッツジェラルドとコール・ポーターのコンビネーションは非常に魅力的で、アップテンポであれダウンテンポであれ、エラ・フィッツジェラルドはその3オクターブの音域を伸びやかに出しながら、それぞれの曲に命を吹き込んだ。エラ・フィッツジェラルドは本作及び、後に続く『Songbook』シリーズのアルバムを、ハリウッドのキャピトル・スタジオでレコーディングした。

エラ・フィッツジェラルドはこの後、『Songbook』シリーズのアルバムを8枚レコーディングし、その全てがモダン・アルバムと解釈されるようになるものの誕生に一役買った。ノーマン・グランツによると、この過程は単純だったようだ。「エラに合う曲を50曲用意した。そして一緒に考えながら、そうだな、20曲くらいに減らしていった。と言うのも、『Songbooks』でやっていたことのひとつはソングライターを探ることだったから」と語っている。

7:フランク・シナトラ:「I’ve Got You Under My Skin」(1956年、『Songs For Swingin’ Lovers!』より)
エラ・フィッツジェラルドがコール・ポーターの「I’ve Got You Under My Skin」のエラ・ヴァージョンをレコーディングする2週間前、トランペッターのハリー・“スウイーツ”・エディソンとトロンボニストのミルト・バーンハートは、ネルソン・リドルがアレンジし、トランボニストの素晴らしいソロがフィーチャーされた同曲を、フランク・シナトラと共にレコーディングした。フランク・シナトラはエラ・フィッツジェラルド同様、自らの声を駆使しながら史上最高の男性ジャズ・シンガーになれるか、グレイト・アメリカン・ソングブックを利用しその可能性を探った。

8:エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング:「The Nearness Of You」(1956年、『Ella And Louis』より)
エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングを組ませ、全曲グレイト・アメリカン・ソングブックからのスタンダード・ナンバーによるデュエット作を制作するというアイディアも、ノーマン・グランツが思いついた。アルバム『Ella And Louis』は1956年8月にレコーディングされた力作で、これらの楽曲がオスカー・ピーターソン等関係ミュージシャンの心にどれほど浸透していたかが伺える。リハーサル・タイムはなく、スタジオへ直行し一気に仕上げた作品だ。ホーギー・カーマイケルの「The Nearness Of You」は圧巻、ミュージシャンが音楽の力をフルに発揮した時、どれだけ楽々と演奏をこなせるかが分かる。

9:ジョン・コルトレーン:「I’m Old Fashioned」(1957年、『Blue Train』より)
他の大部分のレーベルとは異なり、ブルーノートはその制作過程に必ずリハーサル時間を設けており、それがレーベルの作品をノーマン・グランツの持つイメージとは正反対の印象を与ていた。ブルーノートの創設者であるドイツ移民のアルフレッド・ライオンは、自らリハーサル代を支払い、結果そのセッションを通してミュージシャン達はグレイト・アメリカン・ソングブック収録曲をリメイクするのではなく、自分自身の素材を作り上げていくことが出来た。しかし、ソングブックがブルーノートの名アルバムに居場所を見出せなかったといったら嘘になる。

ジョン・コルトレーンは1957年に、全5曲中1曲以外全てジョン・コルトレーンのオリジナルから成る極上のブルーノート・アルバム『Blue Train』を制作。唯一のカヴァーはジョニー・マーサーとジェローム・カーンの「I’m Old Fashioned」だが、ジョン・コルトレーンはこの後もたびたびソングブックに立ち戻っている。1963年の『Ballads』はほぼ完全にグレイト・アメリカン・ソングブック・ナンバーから成る作品であり、その後まもなく、グレイト・アメリカン・ソングブックの作曲家達からインスパイアされたアルバムを、シンガーのジョニー・ハートマンと共に制作している。

10:キヤノンボール・アダレイ:「Autumn Leaves」(1958年、『Somethin’ Else』より)
ブルーノートのカタログには、ソングブックを解釈した好例がこの他にも数多くあるが、1958年にレコーディングされマイルス・デイヴィスのトランペットがフィーチャーされた、キヤノンボール・アダレイの『Somethin’ Else』ほど魅力的な作品はない。アルバム収録全5曲中、3曲がマイルス・デイヴィスが選曲したらしいスタンダードのリメイクであり、それぞれの曲から滲み出る極めて快適な雰囲気が更に強くなっている。中でも見事なのが「Autumn Leaves」だ。

11:ロバート・グラスパー:「Stella By Starlight」(2015年、『Covered』より)
過去50年の間、ジャズ・ミュージシャンは繰り返しグレイト・アメリカン・ソングブックに立ち返っている。最近では2015年に、非常にいかした若きジャズ・アーティストの典型的な存在、ピアニストのロバート・グラスパーが取り上げ、ずばり『Covered』と名づけられたアルバムで、ヴィクター・ヤングの「Stella By Starlight」の素晴らしいカヴァーを披露。元々は1944年映画『ゲスト(原題:The Uninvited)』に起用されたこの曲は、『Charlie Parker With Strings』にフィーチャーされ、70年もの間に、アニタ・オデイディジー・ガレスピー、マイルス・デイヴィス、スタン・ゲッツ、エラ・フィッツジェラルド、ビル・エヴァンスズート・シムズ、フランク・シナトラ、そしてタル・ファーロウ等数多くのアーティストがレコーディングしている。

グレイト・アメリカン・ソングブックはアメリカ文化に大いに貢献したとして正当に評価されており、今後もジャズ・ミュージシャン達を鼓舞し続けていくだろう。アメリカが世界に提供し、卓越したアートとしてその地位を築いたジャズは、あらゆる種類のアメリカ音楽の頂点に君臨している。

Written By Richard Havers



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日時:2017年9月29日(金) / 17:00開場 17:30開演(予定)
会場:三越日本橋本店 本館6階 三越劇場
出演:八代亜紀 / 寺井尚子 / 桑原あい (敬称略 / 順不同)
主催:ユニバーサル ミュージック合同会社
協力:三越日本橋本店

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日時:2017年9月23日(土) / 24日(日)    11:00開場 12:00開演
会場:横浜赤レンガ野外特設ステージ
出演:ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズ/上原ひろみ x エドマール・カスタネーダ等
公式サイト


♪グレイト・アメリカン・ソングブックからの名作が数多くフィーチャーされたプレイリスト『It’s OK To Like Jazz 』をフォロー:Spotify

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