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ジャズピアニスト/作曲家/ヴォーカリストのレス・マッキャンが88歳で逝去。その功績を辿る
グラミー賞にノミネートされたジャズ・ピアニスト、作曲家、ヴォーカリストで、若き日のロバータ・フラックを発掘し、数え切れないほどのヒップホップ・アーティストにその作品がサンプリングされてきたレス・マッキャン（Les McCann）が、現地時間2023年12月29日に88歳で逝去した。
ワーナー・ミュージック・グループのグローバル・カタログ、レコード・ミュージック部門の責任者であるケヴィン・ゴアは公式声明の中で、レス・マッキャンを“ジャズ界で最も才能に溢れた、影響力のあるアーティストのひとり”として称えている。
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その生涯
1935年9月23日、ケンタッキー州レキシントンで音楽一家のもとに生まれたレス・マッキャンは、4人の弟と妹と共に、シャイロー・バプテスト教会の聖歌隊で歌っていた。また、3歳からピアノを始め、レキシントンのダンバー高校ではマーチング・バンドでドラムとスーザフォンを担当した。
独学で音楽を学んだレス・マッキャンは、ジャズにファンク、ソウル、世界のリズムを融合させたソウル・ジャズ・ピアノ・スタイルの革新者として知られている。あらゆる楽器をマスターした彼は、わずか17歳で故郷ケンタッキー州を離れ、アメリカ海軍に入隊してサンフランシスコに赴任。海軍のタレント・コンテストで優勝し、“エド・サリヴァン・ショー”出演への扉を開くという異例の快挙を成し遂げた。
また彼は、サックス奏者のテディ・エドワーズやジャズ・クルセイダーズなどが率いたパシフィック・ジャズ・レコードのセッションにも参加。1962年にキャピトル・レコードからリリースされた歌手ルー・ロウルズのデビュー・アルバム『Stormy Monday』では、彼のトリオ、レス・マッキャン・リミテッドがバックを務めている。
ソロ名義では、1963年にパシフィック・ジャズからリリースしたトリオでのインストゥルメンタル曲「The Shampoo」が初期のヒットとなった他、60年代後半から70年代半ばにかけてはアトランティック・レコードとより実りある関係を築き、12作のアルバムをリリースした。
この時期、アトランティックからは、レス・マッキャン、彼の頻繁なコラボレーターでレーベルメイトのサックス奏者、エディ・ハリス、トランペッターのベニー・ベイリー、ベーシストのリロイ・ヴィネガー 、ドラマーのドナルド・ディーンによる1969年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ・パフォーマンスを収録した『Swiss Movement』をリリース。
後に ロバータ・フラックの名唱で広く知られるプロテスト・ソング「Compared to What」を収録した同アルバムは、グラミー賞の“最優秀ジャズ・パフォーマンス”部門にノミネートされた。
1971年、レス・マッキャンはウィルソン・ピケット、ザ・ステイプル・シンガーズ、サンタナ、アイク＆ティナ・ターナーら豪華アーティストと共に、ガーナのアクラで開催された14時間に及ぶ歴史的なコンサートに出演。このイベントの模様は、コンサート・フィルム『Soul To Soul』に収められている。
80年代以降の活動
1970年代から80年代にかけて、レス・マッキャンはインパルス！、A&M、ジャムといったレーベルでアルバムを録音。1989年にはピアニスト仲間のマリアン・マクパートランドが司会を務めるNPRのラジオ番組“Piano Jazz”にゲスト出演し、2人は 「Compared to What 」のデュエットで放送を締め括った。
1990年代に脳卒中で倒れた彼の音楽活動は一時的に停滞したが、その間、彼は画家や写真家としても活躍し、2002年の『Pump It Up』で音楽界に復帰。彼の最後のレコーディングは、2018年に自主リリースしたホリデイ・アルバム『A Time Les Christmas』だった。
自身キャリアに加え、彼はソウル・シンガー、ロバータ・フラックを発掘し、自らアトランティック・レコードに推薦。レス・マッキャンの音楽は、エリックB＆ラキム、ア・トライブ・コールド・クエスト、サイプレス・ヒル、ナス、デ・ラ・ソウル、スヌープ・ドッグ、ノトーリアス・B.I.G.、ショーン・コムズなど、300人近いヒップホップ・アーティストにサンプリングされている。
Written By Tim Peacock
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