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全ては『Heartbreaker』から始まった。ライアン・アダムスのデビュー作

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オルタナティヴ・カントリー界のスターであったバンド、ウイスキータウンは熱狂的なファンを惹きつけることに成功していた。2000年にフロントマンのライアン・アダムスがソロ・アーティストとして活動を始めるとすぐにファン層が出来上がり、彼をまるで戻ってきたヒーローのように歓迎したことは驚きではない。デビュー・アルバム『Heartbreaker』は、発売時にライアン・アダムスが行ったソロ・ライヴを観た幸運な者たちから今でも静かに尊敬され続けている。それは親密なライヴで、ライアン・アダムスと増え続けていく信奉者たちの間に生まれた揺るぎない絆を築いた。

アルバムが2000年9月5日に発売された時、ウイスキータウンは混乱状態に陥っていた。最後の作品となった『Pneumonia』は前年にレコーディングされたが、レーベル内で起こっていた混乱のせいで2001年まで発売されなかった。しかしやっと発売になった時にはライアンのソロ『Heartbreaker』がメディアの見出しを飾っていた。ライアン・アダムスをオルタナティヴ・カントリーの先駆者(その後のキャリアを考えると、彼をひとつのジャンルにくくるのは無駄なことであるが)にした15曲を含む『Heartbreaker』は、決定的な別れをテーマとしたアルバムであり、ライアン・アダムスが愛するニューヨーク市への賛歌となった。

Ryan Adams Heartbreaker Pax-Am Vinyl Label

「Oh My Sweet Carolina」や「Come Pick Me Up」などの楽曲を聴いた者にそれが記憶として永遠に刻まれたことを考えると、アルバムからシングルが発売されなかったことは信じがたい。USチャートにも登場しなかった(UKトップ200には何とかランクイン)。その『Heartbreaker』が今では傑作として扱われ、ライアン・アダムスの曲作りの素晴らしさを証明している。あのエミルー・ハリス(グラム・パーソンズと組んだことを考えれば、彼女は才能ある作曲家をちゃんと聴き分けられる)も「Oh My Sweet Carolina」のデュエットで参加している。

しかし、それは作品の素晴らしさのほんの一部にしか過ぎない。直後に素晴らしい作品『Time (The Revelator)』をリリースするギリアン・ウェルチとデイヴ・ローリングスがライアン・アダムスにぴったり合う曲を提供し、プロデューサーのイーサン・ジョンズも少しだけ協力している。“心をさらけ出すシンガーソングライター”のモードに入りながら、作品を通じてライアン・アダムスは音楽スタイルの幅広さを披露した。「My Winding Wheel」はカントリー・ロックの素晴らしい見本であり、パット・サンソンの心地よいオルガンが曲に更に深みを与えている。

My Winding Wheel

「Call Me On Your Way Back Home」の始まりではその心をむき出しにし、後からバンドがその苦悩を沈めていく。その優しいシンバルとオルガンで「Amy」はライアン・アダムスの傷ついた心に直接訴えかける。バンジョーと繋がり合うドラムで「Bartering Lines」は、命をかけた男の不幸をつづる手紙となっている。

同病相哀れむと言うが、悲しみに溺れたいのであれば、この作品の中で癒やしを見つけられるだろう。しかし、ロカビリー調でライアン・アダムスの初期の冒険心を表す元気さとメランコリーのバランスで奏でられる「To Be Young (Is To Be Sad, Is To Be High)」の次に激しい「Shakedown On 9th Street」を聴けば、どっちかひとつだけではなく、両方のタイプの曲を聴きたくなるだろう。

Shakedown on 9th Street

アルバムの1曲目「(Argument with David Rawlings Concerning Morrissey)」では、ライアン・アダムスとデイヴ・ローリングスがモリッシーのある曲が『Bona Drag』と『Viva Hate』の両方に収録されているかどうか言い合っている。ソロ・キャリアをこのようなお喋りから始めるのは不思議なのかも知れないが、その内容には後の音楽を予告する部分も含まれており、「Love Is Hate」や後のパックス・エーエムからのシングル等ではザ・スミスのようなギターが使用されている。そのようにして『Heartbreaker』を始めることは、彼の少しだけずれたユーモアのセンスを表しており、それはライアン・アダムスらしいステージ上でのキャラクターでもある。

そしてその後に生まれる音楽の種を植え付けた作品でもある。それは、増え続けていくライアン・アダムスの作品のコレクションの中だけではなく、世に存在するすべての素晴らしい作品とくらべても、正当に傑作として認められている。

Written By Jason Draper

Ryan Adams performing "Come Pick Me Up" on KCRW


ライアン・アダムス / Heartbreaker

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