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発売当時「ジャズらしくない」と批判され「20万枚売れたら大喜び」だった、ノラ・ジョーンズの『Come Away With Me』

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Norah Jones Comes Away With Me Album Cover With Logo - 530

有名なジャズ・レーベル、ブルーノート・レコードが設立から63年を迎えた年に、物議を醸すと同時に才能溢れる一人のアーティストと契約を結んだ。しかし当時は誰もが同じことを疑問に思った…「これって、ジャズなの?」と。

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Norah Jones – Don't Know Why (Official Video)

ノラ・ジョーンズは、強力な音楽一家の出だ。父親は高く評価されているシタール奏者のラヴィ・シャンカールで、母親も同様に高く評価されていたアメリカ人コンサート・プロデューサーのスー・ジョーンズである。1979年にブルックリンで生まれテキサスで育ったノラは、ピアニストとしての素晴らしい才能を発揮し、すぐにビル・エヴァンスビリー・ホリデイなどの作品に夢中になった。

ノース・テキサス大学でジャズ・ピアノを専攻し、初期の頃に行ったジェシー・ハリスやリチャード・ジュリアンとのコラボレーションをきっかけにカントリー・ミュージックへの道を進み始めた。

ノラは2000年にニューヨークへ戻り、EP『First Sessions』とデビュー・アルバム『Come Away With Me(邦題:ノラ・ジョーンズ)』のリハーサルを始めるようになった。誰もがノラ・ジョーンズと契約を結ぶことを望んだが、彼女はブルーノートを選んだ。当時のレーベルの社長、ブルース・ランドヴァルと、レーベルで何十年も働いてきたマイケル・カスクーナは彼女との契約に興奮していた。

「ブルースがノラ・ジョーンズとの契約を結んだ時は本当に嬉しかった」とマイケル・カスクーナは言う。「彼女はピアノが弾けて、アコースティック・ベースとジャズ・ドラマーの伴奏に合わせてスタンダード曲を歌えるジャズ・アーティストだった。デモがポップやカントリー寄りだったので、ブルースはブルーノート全体の一貫性を心配し、もっとポップスをメインとするマンハッタン・レーベルとの契約を彼女に薦めた。でもノラは、“私はブルーノートがいいんです。そもそも契約を結んだのはブルーノートだから。大好きなレーベルだし、ブルーノートを聴いて育ったようなものです。私はブルーノートがいいんです”と言ったんだ」。

ノラのアルバムは世間を沸かせた。ブルース・ランドヴァルとブルーノートの他のスタッフは、20万枚売れるだろうと予想した。マイケル・カスクーナは思い出しながら、「20万枚売れたら大喜びだと思っていたけど、最終的には1,000万枚も売れたんだ。びっくりするようなことで、正に奇想天外だったよ」と話す。彼が言った売り上げ1,000万枚というにはアメリカ国内のみ、そして最初の盛り上がりでの売上数だけで、世界的にはその数が2,500万枚まで上昇し、キャロル・キングの70年代初期の作品『Tapestry(邦題:つづれおり)』と並び、現代の“スタンダード”として知られるようになった。今のところブルーノートからの作品でそこまでの売上を記録した作品は他にない。

NorahJones_(c)DannyClinch

2002年にこのアルバムは全米チャートでトップを飾り、翌年に『Come Away With Me』はグラミー賞にてアルバム最優秀賞を含む8賞を受賞し多方面の評論家から称賛された。

ある評論家はそれを「ブルーノートから発売された最もジャズらしくないアルバム」と評していた。当時を考えると彼は正しかった。でもそれがどうしたと言うのだろうか? デューク・エリントンはこう語っている「音楽には2つのタイプしかない…良い音楽と、悪い音楽だ」。ノラのアルバムを「ジャズらしくない」と記述した前述の評論家は「彼女の声がアルバムを支配している」と書いたが、それが目的なのではないか? 彼女の声は美しく心地よく、「Don’t know why…」と歌い始める瞬間に聴いた者は惹きつけられる。なぜ人はただ素直にそれを受け入れて感謝できないのだろうか。それは美しく作られ、巧妙にレコーディングされ演奏された作品だ。

アルバムに収録された楽曲14曲の親密さこそがアルバムを特別なものにする。誰かの思考をそっと盗み聴きしているかのような感じがする作品で、その成熟した要素は当時22歳という彼女の若さと矛盾しているようだ。全米トップ30入りを果たしたオープニング・トラック「Don’t Know Why」以外の曲では、ハンク・ウィリアムズの「Cold Cold Heart」のカヴァーと繊細な「Come Away With Me」がずば抜けている。

Norah Jones – Come Away With Me (Official Video)

ブルーノートのA&Rであるブライアン・バッカスは当時、「私たちは彼女に自由に自分の方向性を見つけさせた…彼女が曲作りの腕を磨き、私たちの方で素晴らしい曲を見つけることができたら、絶対にうまくいくと思った」と語っている。うまくいったことは間違いない。この作品ほど21世紀という時代に反響した作品は数少ない。今すぐ聴いて魅了されよう。

Written By Richard Havers


ノラ・ジョーンズ『Come Away With Me』


ノラ・ジョーンズ『Begin Again』
発売中
CD / アナログ / iTunes


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