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メガデス 『Super Collider』:バンドが新時代に突入したことを印象付けた14枚目のアルバム

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メガデス(Megadeth)はそのキャリアを通じて、大きな音楽性の転換を何度か経験してきた。『Super Collider』がリリースされた2013年6月4日時点でのメタル界の様相は、彼らがスラッシュ・メタルの旗手だった30年前とは見違えるように変化していた。

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伝統的な意味でのスラッシュ・メタルは、ミュニシパル・ウェイストやガマ・ボム、イーヴァイルといったバンドの活躍で00年代後半に復活の兆しをみせた。しかし2010年代前半になると、同ジャンルの特徴であった精密な演奏テクニックは、マストドンやゴジラなどプログレ寄りのバンドに受け継がれていく。他方、スラッシュ・メタルはアンダーグラウンド・シーンに属すようになり、ブラック・ブレスやトラップ・ゼムなどが粗削りなサウンドでその担い手となった。

新時代の始まり

そんな中でメガデスがリリースした14thアルバム『Super Collider』は、ある意味で彼らの新時代の始まりを告げたといえる。そう、何度目かの”新時代”である。スラッシュ・メタル界の重鎮となった彼らは、実績あるレコード・レーベルに所属する安定した環境から脱却。ムステインは自身のレーベルであるトレードクラフト・レコードを興し、ユニバーサル ミュージック グループと配給契約を交わした。しかしムステインは羽を伸ばして自ら築いてきたジャンルの限界を押し広げようと試みるのではなく、別の責任を果たそうとした。

メガデスを率いるムステインが『Super Collider』で目指したのは、ビジネス・パートナーの信頼に報い、商業性に重きを置いたアルバムを作ることだった。彼はClassic Rock Revisitedの取材で、同作の表題曲についてこう話している。

「この曲“Super Collider”は俺たちの新しいレコード・レーベルが扱う最初のトラックで、それはメジャー・レーベルなんだ。彼らはこのバンドを愛してくれているし、俺たちは彼らに対して、商業的なメタル・ポップの曲が書けることを示した。もう他のヤツらにはそういう曲が書けない。怖がっているか、過去の栄光にすがっているのさ。とにかく、他のヤツらには書こうと思っても書けないんだ」

実際ムステインは、メガデスならメタル・ファンでないリスナーをも引き込めると考えていた。そして彼は、『Super Collider』に向けて書いた楽曲の魅力でそれを成し遂げようとした。

「あの曲は門戸を開くきっかけにもなったと思う。あの曲を聴いた人は、『この曲が気に入ったから、アルバムを買って他の曲も聴いてみよう』って考える。そうすれば、『ああ、自分ってこういう音楽も好きだったんだ。ずっと聴こうとしなくて損したな』って思うだろう」

このような場合、本来の熱心なファンが離れていってしまう可能性も付きまとう。だが彼らには、洗練されたサウンドへの転換が功を奏した『Countdown To Extinction (破滅へのカウントダウン) 』の前例があった。同作は現在でも、メガデス最大のヒット作であり続けているのだ。

Megadeth – Super Collider

 

目指したのは“不朽の名作”

『Super Collider』では前作『Th1rt3en』に続き、ジョニー・Kがプロデュースを担当。ディスターブド、セヴンダスト、ステインドなどの作品を手がけてきた彼には、商業性の高いメタルに関するノウハウがあった。

しかし、ムステインがそうしたバンドのようなラジオ向きの作風に傾くと予想していたファンは、アルバムの冒頭を飾る「Kingmaker」のハイスピードなスラッシュ・サウンドに度肝を抜かれたことだろう。同曲は、ベーシストのデヴィッド・エレフソンがバンドへの復帰以来初めて作曲に加わった1曲だ (2001年作『The World Needs a Hero』を最後に彼はグループを離れていた) 。そう考えると、以前のメガデス作品のような猛烈な演奏スピードに仕上がったことにも納得がいく。

Megadeth – Kingmaker

だが、続く「Super Collider」では早くもテンポがグッと遅くなる。ムステインはその言葉通り、高速のリフでリスナーを圧倒することをせず、オーソドックスな構成のヘヴィ・チューンを書き上げたのだ。

他方、「Burn!」や「Off The Edge」は、メガデスのルーツのひとつであるNWOBHM (ニュー・ウェーヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル) のグループを思わせるミドル・テンポの楽曲。変拍子を取り入れた「Built For War」は、バンドの創造性が発揮されたグルーヴ・メタル調のナンバーだ。

Built For War

ディスターブドのデヴィッド・ドレイマンがゲスト参加した「Dance In The Rain」と「Beginning Of Sorrow」はいずれも、曲中でのテンポ・チェンジを経て予期せぬ展開へと流れ込む点で、メガデスの過去の名曲「In My Darkest Hour」を想起させる。

Dance In The Rain

「The Blackest Crow」では、バンジョーの演奏から始まるイントロにヴァイオリンも加わり、リスナーを驚かせる。だが完全なカントリー/フォーク・ソングになってしまう寸前で、ムステインがメタルの世界へと引き戻してくれる。軍隊の音楽を思わせる同曲のアレンジは、途中に差し挟まる歯切れのいいリフも相まって、クセになる魅力を備えている。

The Blackest Crow

「Forget To Remember」や「Don’t Turn Your Back…」では、ムステインが目指していた通りのメロディックなメタル・サウンドを披露。そのうち後者は、メガデス・ファンには馴染み深い猛スピードで突き進む1曲だ。

『Super Collider』を締めくくる最終曲には、何よりも、作り手がアルバムに込めた想いがよく表れている。ここでシン・リジィのカヴァー曲である「Cold Sweat」を取り上げたことからは、メガデスにとって14作目となるスタジオ・アルバムに“不朽の名作”の息吹をもたらしたいというムステインの意図が感じられるのだ。

 

Written By Caren Gibson



メガデス『Super Collider』

2013年6月4日発売
CD&LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


最新アルバムメガデス『Rust In The Sick, The Dying…And The Dead!』
2022年9月2日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Amazon Music



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