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ケイティ・ペリー『MTV Unplugged』:アーティストとしての真価を証明した特別なステージ

MTVが開局から数年を経て成長期を迎えると、24時間ミュージック・ビデオを流し続ける編成から次第に脱却し、チャンネル独自の個性や、変化し続ける視聴者の嗜好に応えるさまざまなオリジナル番組が制作されるようになった。『The Real World』のような、後にリアリティ番組の原型となる作品が誕生したのもこの時期である。そうした新たな試みの一つとしてスタートしたのが『MTV Unplugged』だった。
MTVの原点である「音楽」に立ち返ることをコンセプトにしたこの番組は、アコースティック・スタイルによるライヴ・パフォーマンスを軸に人気を博し、その後はニルヴァーナ、R.E.M.、ジョージ・マイケル、そして2009年には当時ポップ界を席巻していたケイティ・ペリー(Katy Perry)など、実に幅広いアーティストによるライヴ・アルバムを生み出していった。
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新たな世代へ向けて再始動した『MTV Unplugged』
1990年代半ば、ニルヴァーナによる歴史的名演『MTV Unplugged In New York』が放送された頃、『MTV Unplugged』への出演は、多くのアーティストにとって一流の証ともいえる通過儀礼となっていた。
しかし、21世紀に入るとそうした状況は変わる。視聴者の中心層は世代交代を繰り返し、MTVもそれに合わせて番組編成を変化させていった。その結果、『MTV Unplugged』というコンセプトは次第に存在感を薄め、放送される機会も散発的なものとなっていった。
そこで2009年、番組を新たな世代へ向けて再始動させるため、MTVが白羽の矢を立てたのがケイティ・ペリーだった。デビュー・アルバム『One Of The Boys』で大ブレイクしてから、わずか1年。彼女にとって『MTV Unplugged』への出演は、派手なミュージック・ビデオやステージ演出の陰にあるシンガーソングライターとしての実力を披露する絶好の機会だった。
当時の彼女は、デビュー・シングル「I Kissed A Girl」は、2008年春に世界中で大ヒットを記録する一方、その挑発的な内容で賛否両論を巻き起こしていた。だからこそ、アコースティックというシンプルな形式で楽曲そのものの魅力を伝える『MTV Unplugged』は、ケイティ・ペリーの音楽性を改めて印象づける舞台となったのである。
アーティストの素顔を映し出す特別な機会
番組の基本的な構成は、それまでの『MTV Unplugged』と変わらない。アーティストが主にアコースティック編成で演奏を披露し、その合間に楽曲や制作の背景について語るというスタイルである。
2009年7月22日、ニューヨークのスタジオで小規模なオーディエンスを前に収録されたこの日のステージで、ケイティ・ペリーはデビュー・アルバム『One Of The Boys』から5曲に加え、当時未発表だった新曲、そしてファウンテインズ・オブ・ウェインが2003年に発表した「Hackensack」のカヴァーを披露した。
彼女をしっかりと支えるバンドと、音楽監督のアダム・マルチェロのサポートがあったとはいえ、このショーケースはケイティにとってある種の賭けのようなものだった。
2009年当時、彼女にはまだ“ヒットメーカー”という現在の評価は定着していなかった。「Roar」や「Chained To The Rhythm」といった後年の代表作はまだ存在せず、多くの人々は彼女を、刺激的なデビュー曲「I Kissed A Girl」で一躍脚光を浴びたアーティストとして認識していたのだ。さらに、その成功もマックス・マーティン、キャシー・デニス、デズモンド・チャイルドといった名ソングライター/プロデューサーたちの力によるものだと見る向きが少なくなかった。
だからこそ『MTV Unplugged』でのステージは、派手な演出や豪華なプロダクションを取り払ったシンプルなアコースティック・スタイルで、ソングライター、そしてシンガーとしてのケイティ・ペリー自身の実力を証明する、またとない舞台となったのである。
この日のステージでは、「I Kissed A Girl」「Thinking Of You」「Waking Up In Vegas」という代表曲3曲を演奏したのは当然の選択だった。一方で、アルバムからもう一つの大ヒット曲「Hot N Cold」はセットリストから外され、「Ur So Gay」が選ばれたのも自然な流れだった。
この曲は、ケイティをメインストリームへ押し上げるきっかけとなったEPのタイトル曲であり、彼女の初期を象徴する重要な作品だからである。
ケイティ・ペリーは、このステージによって、それまで定着しつつあった『MTV Unplugged』のスタジオ・ライヴの形式に新たな息吹を吹き込んだ。華やかなポップスターとしてのイメージとは対照的に、より生々しく、より穏やかで、そして強い説得力を持つパフォーマンスを披露したのである。現在ではキャリアを通じて数多くのヒット曲を持つ彼女だけに、より充実したレパートリーを携えて、再び『MTV Unplugged』のようなステージに立つ姿を見てみたいと思わせる内容だった。
芸術的な成功を収めた『MTV Unplugged』
ケイティ・ペリーの『MTV Unplugged』は、2009年11月13日にデジタル配信され、11月17日にはCDなどのフィジカル盤も発売された。本作は商業的な話題性だけでなく、芸術的な作品としても高い評価を受け、ステージ上で自信を深めつつあったケイティ・ペリーの姿を鮮やかに映し出している。
何より印象的なのは、現代的なポップ・プロダクションの装飾を取り払ったことで際立つ、温かみのある人柄と安定感のある歌唱力だ。なかでも「Thinking Of You」は、その魅力が特に際立っている。オリジナルでは壮麗なオーケストレーションをまとったバラードだったが、このライブでは繊細で壊れそうなほど儚い楽曲へと生まれ変わり、シンプルなアレンジの中で美しいメロディと演奏が胸を打つ。
一方、「Brick By Brick」は他の形で正式リリースされることがなかったため、この『MTV Unplugged』こそが、このスケール感あふれるポップ・ナンバーを堪能できる唯一の音源となっている。また、「I Kissed A Girl」はラウンジ・ミュージック風のアレンジへ大胆に再構築された。
オリジナルが持っていた挑発的で自信に満ちた雰囲気はやや後退したものの、その代わりに緊張感や切なさ、ドラマ性が際立つ新たな魅力を獲得している。バンドも終始充実した演奏を聴かせ、当時多くの人が予想していなかったほど完成度の高いパフォーマンスとなった。
この作品への好評価を受け、同ライヴ映像を収録したCD+DVD版も一部地域で発売され、アメリカを含む各国のチャートにもランクインした。その後も、ケイティ・ペリーの人気拡大とともに本作への関心は着実に高まり、本人へのインタビューを収録した映像も話題を集めた。
とはいえ、『MTV Unplugged』は今なお、彼女の華々しいキャリアの中では見過ごされがちな初期の名作と言えるだろう。しかし、後に世界的ポップ・アイコンへと成長していくケイティ・ペリーの原点を知るうえで、この作品ほど彼女の本質を雄弁に物語るものはない。
Written By Mark Elliott
ケイティ・ペリー『MTV Unplugged』
2009年11月13日発売
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