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プログレッシヴ・ロック界のベスト・ドラマー25:ジャンルを代表するミュージシャンたち

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Photos: Gems/Redferns (Bill Bruford), Ed Perlstein/Redferns/Getty Images (Carl Palmer), Fin Costello/Redferns/Getty Images (Neil Peart)

ロック界におけるドラマーは、バンドの中でも荒々しく手に負えない人物というイメージが強い。確かに、ザ・フーやレッド・ツェッペリンに関してはそれが当てはまるだろう。だがプログレッシヴ・ロックの世界において、そのステレオタイプはまったく意味をなさない。

プログレッシヴ・ロック界のドラマーは、器用で好奇心の強いミュージシャンたちばかりだ。中にはバンドの中でも特に知性に溢れ ―― 少なくともここで紹介するうちの一人は ―― グループの作詞担当を兼ねていることさえあるのだから。

今回ランキング形式で紹介するドラマーたちは、ほぼ例外なく強い探究心を持っていた。その多くはジャズやクラシックに挑戦することで、プログレッシヴ・ロック界のドラマーとしてさらなる成長を遂げていった。このランキングの中には見過ごされがちな名手もいれば、プログレッシヴ・ロックの世界に限らず音楽界屈指の影響力を持つドラマーも含まれている。

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25位: スティーヴ・スミス (ジャーニー)

確かに、スティーヴ・スミスが加入した1978年、ジャーニーのプログレッシヴ・ロックの期は終わりに差し掛かっていた。しかしスミスが加わったことで、プログレッシヴ・ロック色が完全に消え去ることはなかった。

彼は二度に亘りジャーニーに在籍したが (2010年代半ばに彼はグループに舞い戻っている)、優れたジャズ・ドラマーがアリーナ・ロックを演奏するのは聴いていて痛快だった。というのも、ほかのメンバーは彼がいることで、自分たちのスタイルに固執してしまうことがなかったのだ。

スミスはまた、長きに亘り率いてきたヴァイタル・インフォメーションでの活動を通して、フュージョンをやらせても一流であることを証明した。他方、アルバム1作のみ参加したフォーカスでは、実にプログレッシヴ・ロックらしい演奏を披露している。

Journey – Steve Smith Solo (Live in Osaka 1980) HQ

 

24位: ロン・ハウデン (ネクター)

ネクターというバンドがもっと有名だったなら、ロン・ハウデンはプログレッシヴ・ロックというジャンルを代表する名ドラマーとして広く認知されていたに違いない。彼は、ピンク・フロイドのニック・メイスンが得意としていたような重厚なビートを刻むこともできたし、驚くようなフィルを入れたり瞬間的にエネルギーを爆発させたりすることもできた。

まずは、『Remember The Future』の第一部を締めくくる「Confusion」での嵐のようなドラミングを聴いてみてほしい。いまでは70代半ばとなったハウデンだが、2020年前半に行われたネクターの貴重なアメリカ・ツアーでは、衰えることを知らないパワフルな演奏を披露してくれた。

Remember The Future, Pt. 1

 

23位: トニー・フェルナンデス (ストローブス、リック・ウェイクマン)

敢えて言葉を選ばずに言うなら、リック・ウェイクマンがソロ・アーティストとして率いるバンドには、主役から注目を奪うことがなさそうなミュージシャンが集められる傾向にあった。だが、派手やかなスタイルのドラマーであるトニー・フェルナンデスはその中でもめずらしく ―― ウェイクマンと彼のデュオで演奏するときはとりわけ ―― 確かな存在感を放っていた。

例えば「Montezuma’s Revenge (モンテ・ズマの雪辱)」 (映画”ホワイトロック”のサウンドトラックより)では、ただでさえ激しい曲調の同曲が彼のドラミングによりいっそう激しさを増している。現在、彼はかつてウェイクマンの所属したストローブスに在籍。直近で発表されたアルバム『Settlement』に明らかな通り、ストローブスはプログレッシヴ・ロック黄金期から活躍しながら現在でもトップクラスの作品を世に放っている数少ないグループの一つだ。

Montezuma's Revenge (From "White Rock" Soundtrack)

 

22位: ニック・デヴァージリオ (スポックス・ビアード、ビッグ・ビッグ・トレイン)

ニック・デヴァージリオは、黄金期の名手たちの背中を見て腕を磨いてきた“プログレッシヴ・ロック第二世代”のドラマーである。デヴァージリオのドラミングはフィル・コリンズやニール・パートのそれを想起させるが、それだけでなく、そこには彼ならではの力強いエネルギーが加わっている。

また、彼はニール・モーズの脱退後、スポックス・ビアードのヴォーカリストを兼任したという点もコリンズに似ている。そのため、ジェネシスの『Calling All Stations』でコリンズの穴を埋めるドラマーの一人に選ばれたのも不思議ではない。彼は現在、ビッグ・ビッグ・トレインに在籍しているが、同グループが2019年に発表したシングル「Alive」は実に爽快な1曲だ。

Alive by Big Big Train

 

21位: ケヴィン・エルマン (ユートピア)

トッド・ラングレンのバンドや彼が率いるユートピアでプレイしたプログレッシヴ・ロック界のドラマーはいずれも実力者揃いだが、ケヴィン・エルマンだけは頭一つ抜けていた。ニール・パートも、影響を受けたドラマーとして彼の名前を挙げているほどだ。

ユートピアのデビュー・アルバムでの忙しなくも正確無比なドラミングを聴けば、その理由がよく分かるだろう。また、彼はそうした実力者たちと比べても特に幅広いジャンルの作品に関わってきた。

例えば、短期間だがスタジオ・ドラマー/ツアー・ドラマーとして活動していたころには、ベット・ミドラーやバリー・マニロウらの作品にも参加している。そんなエルマンだが、現在はファイナンシャル・プランナーとして大きな成功を収めている。

Utopia Theme

 

20位: クライヴ・バンカー (ジェスロ・タル)

ジェスロ・タルに拙いドラマーがいたことはない。そのうち、結成メンバーであるクライヴ・バンカーは、ジャズやブルースを基調としていた初期のサウンドを支えた。そんな彼のスウィング感や、発想力に富んだパーカッション遣いは特筆に値すべきものである。

特に、『Aqualung』に収録されているアコースティック・ナンバー「Up To Me」ではバンカーの操るさまざまな打楽器の音色に耳を奪われる。

Up to Me

 

19位: ピエール・ファン・デル・リンデン (フォーカス)

フォーカスの「Hocus Pocus (悪魔の呪文)」をあれほどの名曲にしているのは、ヨーデルやヘヴィなリフだけではない。一つとして同じものはなく、いずれも強烈な演奏でもある8回 (ぜひ数えてみてほしい) の短いドラム・ソロも同曲の大きな魅力になっている。

しかし、これがピエール・ファン・デル・リンデンの一番の名演というわけでもない。彼のライド・シンバルが計26分に亘って楽曲を推進し続ける「Anonymous II」こそ、彼史上最高のパフォーマンスと呼ぶに相応しい。

Anonymus Two

 

18位: ピエール・ムーラン (ゴング)

“ラジオ・ノーム・インヴィジブル三部作”のころのゴングは、デヴィッド・アレンの奇抜な歌詞世界が展開されるヴォーカル・パートと自由なフュージョン風の演奏を自在に行き来したため、グループにはその手綱をしっかりと握るドラマーが必要だった。

だがピエール・ムーランの能力が真に開花したのは、ゴングが顔ぶれも新たに”第二期”を迎えてからだった。彼はグループの作品からヴォーカルを排し、パーカッションをさらに追加。インドネシアの楽器であるガムランをプログレッシヴ・ロックにいちはやく取り入れたのもムーランだった。

Pierre Moerlen's Gong ► Heavy Tune ◄

 

17位: ジョン・ハイズマン (コロシアム、テンペスト)

同世代の多くのドラマー (ジンジャー・ベイカー、ビル・ブルーフォードといったプレイヤー) と同様、ジョン・ハイズマンはジャズ界で腕を磨いたあとでロックの世界へと身を投じている。時代が違っていたなら、ビッグ・バンドでリズムを刻んでいたことだろう。

彼の功績としてもっともよく知られているのは、英国フュージョン界の草分けにしてその最高峰に君臨するコロシアムでの活動だ。だが熱心なプログレッシヴ・ロック・ファンなら、若きアラン・ホールズワースがギターを弾くテンペストの二つのアルバムもチェックしておきたいところ。

また、ジョン・メイオールのキャリア史上屈指に野心的なブルース・ナンバー「Bare Wires Suite」(アルバム『Bare Wires』のA面全体を占める組曲) に、ロックやジャズの影響を持ち込んだのもこのハイズマンだった。

Tempest – Gorgon

 

16位: チェスター・トンプソン (ジェネシス、フランク・ザッパ、ウェザー・リポート)

ジェネシスはウェザー・リポートからチェスター・トンプソンを獲得したが、トンプソンが彼らをジャズの世界へと引き込むことはなかった。彼はむしろ、フィル・コリンズが叩いていたドラム・パートをはるかに力強く演奏してみせたのである。

いつだってトンプソンは、リズム隊を構成するほかのミュージシャンと息を合わせることに長けていた。コリンズとともにライヴでツイン・ドラムを叩くときも、ウェザー・リポートでベーシストのアルフォンソ・ジョンソンとの絡みをみせるときも、フランク・ザッパのバンドでパーカッションのルース・アンダーウッドと手を組んだときも、その点が彼の大きな強みになっていたのである。

Weather Report – Mysterious Traveller (Live in Berlin 1975)

 

15位: ニッセ・ビールフェルト (パル・リンダー・プロジェクト)

プログレッシヴ・ロック新世代のドラマーたちの中で、パル・リンダー・プロジェクトに所属したビールフェルト (残念ながら近年は鳴りを潜めている) はスラッシュ・メタルの影響を特に強く受けているように思える。ツーバスの轟音を響かせる彼は、メタリカのオーディションを受けたとしても難なくパスするに違いない。プログレッシヴ・ロックの世界でこうしたスタイルの演奏を聴けるのは、実に喜ばしいことである。

例えばパル・リンダー・プロジェクトのアルバム『Veni Vidi Vici』の表題曲では、パワー全開のドラムのイントロに続いて荒々しいハモンド・オルガンの演奏が始まる。そして、そのエネルギーが8分以上に亘って持続するのである。まるで、かつてのELPにカール・パーマーが二人いるかのようなサウンドだ。

Veni Vidi Vici

 

14位: デイヴ・マタックス (フェアポート・コンヴェンション、ジェスロ・タル)

厳密に言えばデイヴ・マタックスはプログレッシヴ・ロック界のドラマーではない (この順位にとどまったのはその点を加味したからだ)。だが実に芸達者な名手である彼は、ほかの多くのジャンルと同様にプログレッシヴ・ロックのドラミングも巧みにこなしてみせた。

また、フェアポート・コンヴェンションに長く在籍したことでよく知られるマタックスだが、彼はソングライターたちにとって最高のドラマーだった。彼は世界最高峰のアーティストたちの作品に参加し、それぞれの曲に最適なプレイをすることができたのだ。

プログレッシヴ・ロック界での経歴を振り返ると、ジェスロ・タルと1年のあいだ共演していたほか、キャメルのいくつかの楽曲で演奏したり、ゲイリー・ブルッカーやフィル・マンザネラらのレコーディングに参加したりもしている。

また、意外なことに彼は、ビル・ネルソン率いるレッド・ノイズによる革新的なアルバム『Sound-on-Sound』―― そこではプログレッシヴ・ロックとパンクを融合させた未来的なサウンドが展開される ―― でもドラムを叩いている。

Time Will Show The Wiser

 

13位: アンディ・エドワーズ (IQ、フロストなど)

近年のプログレッシヴ・ロック界のドラマーにはめずらしく、アンディ・エドワーズはフュージョンと同じくらいクラシック・ロックを得意としている。

ロバート・プラントのバンドに在籍した90年代終盤には、ジョン・ボーナムが叩いていた重厚なパートから、流れるようなインストゥルメンタル・パートまでを難なくこなしてみせた。それ以来、そうした二面性のあるドラミングがエドワーズの大きな特徴となっている。まずは、ヘヴィで劇的な演奏と自由なフュージョン風の演奏が組み合わさったフロストの長大な力作「Milliontown」をチェックしてほしい。

Milliontown

 

12位: クリス・カトラー (ヘンリー・カウ、ペル・ウブ)

ヘンリー・カウに在籍したすべてのドラマーに当てはまる話だが、クリス・カトラーは積極的に自らの演奏の引き出しを増やそうとしていた。つまり、メロディー性のある音や、夢心地な音、騒々しい音など、パーカッションのあらゆる可能性を探究していったのだ。そのため、彼が直線的なビートを刻むことは ―― 当然、やろうと思えばできたのだが ―― 滅多になかった。

80年代後半のペル・ウブ在籍期には、結成メンバーのスコット・クラウス (ドラムズ) とタッグを組み、自らの作風を”アヴァン・ガレージ”と表現する彼ら史上屈指にパワフルなロック・サウンドを作り上げた。

Nirvana for Mice

 

11位: テリー・ボジオ (フランク・ザッパ、UK)

フランク・ザッパの音楽を演奏するに十分な技術力がどれほどのものかを考慮すれば、ザッパのバンドの歴代ドラマーは全員がこのランキングに入ってもおかしくない。その中でもテリー・ボジオは、UKでビル・ブルーフォードの後任という不可能にも思える大役を務め上げたように、プログレッシヴ・ロック界との繋がりが特に深いドラマーだ (彼はその後、ジェスロ・タルへの加入の誘いを受けたが、ミッシング・パーソンズの活動を軌道に乗せるために断ったといわれている)。

ザッパのバンドでの在籍期間は比較的短かったが、ザッパがドラマーのソロ演奏を一つの楽曲としてリリースした ――『You Can’t Do That Onstage Anymore Vol. 3』収録の「Hands With A Hammer」―― のはボジオだけである。

Hands With A Hammer (Live)

 

10位: B.J.ウィルソン (プロコル・ハルム)

発想力の豊かさだけでみれば、B.J.ウィルソンの右に出る者はいない。彼のプレイは、次に何が飛び出すかまったく予想がつかないのである。「A Salty Dog」での彼のドラムの入り方も実に荘厳だが、全盛期のプロコル・ハルムのビデオを見たことがある人なら、ウィルソンの巧みな腕前が如実に表れた1曲を知っているはずだ。

その「Whiskey Train」で終始聴こえるカウベルの音は、オーヴァーダビングされたものではない。彼はほかの複雑なドラム・パートを叩きながら、同時にカウベルでもリズムを刻んでいるのである。

Procol Harum – Whiskey Train

 

9位: ギャヴィン・ハリソン、パット・マステロット、ジェレミー・ステイシー (キング・クリムゾン)

近年のキング・クリムゾンのようなメンバー構成をとっていたプログレッシヴ・ロック・バンドは未だかつて存在しなかった。そこではステージ前方に3人のドラマーが座り、とても忙しなく演奏しながら全員で一人のドラマーのような役割を果たしているのだ。

このラインナップの大きな魅力は、3人のドラマーが作り出すエネルギーだけにあるのではない。彼らが代わる代わるドラムを叩く中で生まれる完璧なシンクロも実に壮観なのである。彼らはあまりに一体となっているため、このランキングにもまとめて含めることにした。

また、素晴らしいミュージシャンだった故ビル・リーフリンの名前も挙げておかなければならないだろう。彼は3人のドラマーの一角を担ったあとキーボードへと転向したが、最後には病に倒れてしまった。

King Crimson – Indiscipline – Live in Mexico City

 

8位: ヤキ・リーベツァイト (カン)

カンのヤキ・リーベツァイトは、派手やかなポリリズムを取り入れるようなドラマーではない。だが彼は、機械のようなリズムを辛抱強く刻み続ける独自のスタイルを確立し、そのことによってプログレッシヴ・ロック界でも屈指の影響力を持つドラマーとなった。ブライアン・イーノやジャー・ウォブルなど、1980年代前半に活躍したポスト・パンクの先駆者たちの中にも彼のファンは多い。

そもそも、カンの初期作品における衝撃的なサウンドは、ファンクを演奏しようとして見事に失敗したことで生まれた節もあった。しかし彼らはのちに、『Flow Motion』や『Saw Delight』などのアルバムで王道のファンク・サウンドを完成させている。現在では見過ごされがちなそれらの作品でも、全体の演奏を推進していたのはリーベツァイトのドラムだった。

Can – I Want More

 

7位: アラン・ホワイト (イエス)

イエスのファンは、ビル・ブルーフォードは技巧派、アラン・ホワイトは肉体派と区別する傾向にある。しかしながらそれだけでは些か説明が不十分だ。なぜなら二人には“豊かな発想力”という共通点があったからである。

ホワイトの加入当時、イエスのサウンドは激しさを増していたが、彼はその路線にぴったりのドラマーだった。そして、アリーナに合う大スケールの作風となった『90125』では、彼がその音楽性を大いに楽しんでいることがプレイからも感じられた。

また、強烈なクラッシュ・シンバルの音などが印象的なジョン・レノンの「Instant Karma」におけるドラミングも ―― これは彼がプログレッシヴ・ロックの世界に足を踏み入れる前の演奏ではあるけれども ―― 評価に値するものだ。

YES – Owner of a Lonely Heart (Official Music Video)

 

6位: マルコ・ミンネマン (ソロ・アーティストおよびセッション・ミュージシャンとして)

演奏技術に限って言えば、現代のプログレッシヴ・ロック・ミュージシャンたちはその限界を打ち破ってみせた。ドラマーというカテゴリーにおいて、その最たる例といえるのがマルコ・ミンネマンだ。超絶技巧で知られる彼がライヴで披露するソロは、30分を超えることもある。

ツイン・ペダルを装備したバス・ドラムとハイハットさえあれば、彼はほとんどのドラマーよりはるかに巧みなプレイをみせてくれるはずだ。だが、それだけでこのランキングに入れるわけではない。ミンネマンは、出来のいいメロディアスな楽曲に深く入り込む能力や、豊かな発想力も併せ持っているのだ。まずは、彼のドラムによって激しさを増していくスティーヴン・ウィルソンの大曲「The Watchmaker」をチェックしてほしい。

The Watchmaker

 

5位: フィル・コリンズ (ジェネシスおよびソロ・アーティストとして)

彼のキャリアにおけるほかの側面は一旦忘れて、ここでは輝かしいドラマーとしてのフィル・コリンズに目を向けよう。

はじめに彼は、初期のジェネシスやブランドXでジャズの影響を滲ませたドラミングを披露した。そして、その後に参加したピーター・ガブリエルの3rdアルバムのレコーディングが大きな転機となった。そこで彼はシンバルを一切使用せず、ドラムの音にリバーブをかけることで、80年代のドラム・サウンドを作り上げたのだ。

また、現時点での最新作である『Going Back』も賞賛に値するアルバムだ。同作で彼は、モータウンの名ドラマーたちのスタイルを自分のものにしてみせた。しかも、病気で手が不自由なため、スティックをテープで手に固定しながらこれほど見事な演奏をしたのだ。

Genesis 1992 Firth Of Fifth Phil Collins Cam Drums

 

4位: カール・パーマー (エマーソン・レイク・アンド・パーマー)

超人的なスピードと人目を引くスタイルにかけては、カール・パーマーに勝るドラマーはなかなかいない。エマーソン・レイク・アンド・パーマー (ELP) の一員として激しいドラミングをみせるときも、エイジアのポップな楽曲の中で同じように派手なプレイをみせるときも、その特徴が揺らぐことはなかった。思い浮かべてみてほしい。「Heat Of The Moment」以外で、マリンバを使用したクラシック・ロックのヒット曲があっただろうか。

ELPの結成時に血気盛んな19歳の若者だった彼は、70代になったいまも血気盛んで、そのプレイの力強さは少しも衰えていない。彼の演奏から分かることがもう一つある。それは、ツーバスを踏み鳴らしながらシャツを脱いでもソロの出来がよくなるわけではないが、かといってそれで損をするわけではない、ということだ。

Asia – Heat Of The Moment (Live In Tokyo)

 

3位: マイク・ポートノイ (ドリーム・シアター、トランスアトランティック)

マイク・ポートノイはプログレッシヴ・ロック・メタル界で最高のドラマーだ。新世代のプログレッシヴ・ロック界を牽引する存在である彼は、プログレッシヴ・ロックらしい複雑な演奏をメタルに取り入れることも、逆にメタルの凶暴性をプログレッシヴ・ロックに組み込むこともできた。

彼はまた、楽曲の劇的な展開に合わせたプレイをすることにも長けていた。ドリーム・シアターの「Finally Free」の壮大なフィナーレにおけるド派手なドラミングを聴けば、そのことがよく分かるだろう。そんな彼には限りないエネルギーが宿っている。実際、トランスアトランティックによる至高の大曲「The Whirlwind」では、実に75分間に亘って勢いに満ちたプレイを披露している。

Scene Nine: Finally Free

 

2位: ニール・パート (ラッシュ)

2020年前半にニール・パートがこの世を去ったことはいまでも残念でならないが、感傷に浸ることだけがここでの目的ではない。まだ“腕のあるハード・ロック・バンド”の域を出ていなかったころのラッシュに加入した彼は、同グループを見事に変貌させた。パートはそれほど独創性溢れるドラマーだったのだ。彼が繰り出す多種多様なソロは、その巧みな腕前を如実に表していただけではなく、優れたリフやメロディーの役割を果たすことさえあった。

また、彼は頭の中でリズムを刻みながら、ラッシュの作詞担当として歌詞に使用する言葉を慎重に選びとってもいた。そしてビッグ・バンド・ジャズのファン (彼はバディ・リッチのトリビュート・アルバムを2作プロデュースしている) だったパートは、スウィング感が何より重要であることもよく知っていたのである。

Rush – Tom Sawyer (Live from Exit… Stage Left)

 

1位: ビル・ブルーフォード (イエス、キング・クリムゾン、アースワークス)

ビル・ブルーフォードはロック界でもとりわけ異彩を放つドラマーだ。いつだって、彼のパフォーマンスには特別な何かがあった。スネア・ドラムの強打も、シンバルを滑らかに鳴らす音も、正確無比なリズム感も、一聴するだけでそれが彼のプレイだとわかってしまうのだ。

イエスに在籍していたころは、どれだけ難解なパートでも、彼にかかればいとも簡単に演奏しているように聴こえた。二種類のリズムが並行して進む「Perpetual Change」の中盤のパートはその好例である。

アースワークスではジャズ・ミュージシャンとして、電子ドラムに音楽的な可能性を見出した。彼はついに、リズムを刻みながらメロディーを奏でるようになったのである。そして、キング・クリムゾンやその後に参加したプロジェクトでは、クリムゾンのメンバーに受け継がれる”以前と同じ演奏は二度と繰り返さない”という信条を見事に守り抜いた。

Perpetual Change (2008 Remaster)

Written By Brett Milano



ラッシュ『Signals』(40周年記念エディション)
2023年4月28日発売
2023年5月31日日本盤CD発売


マイク・オールドフィールド『Tubular Bells – 50th Anniversary Edition』
2023年5月26日発売
CD

ムーディー・ブルース『To Our Children’s Children’s Children / The Royal Albert Hall Concert December 1969』
2023年5月12日発売
4CD+ブルーレイ



 

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