映画『ロケットマン』が伝えるエルトン・ジョンについての10の事実

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伝説的なアーティスト、エルトン・ジョンの半生を描いた映画『ロケットマン』は、ミュージカル・ファンタジーでありながら多くの事実を明らかにしている。


監督のデクスター・フレッチャーや脚本のリー・ホール、制作総指揮のエルトン・ジョン自身に至るまで、制作陣は誰もエルトンの半生を描いた大ヒット作『ロケットマン』を伝記映画とは表現していない。あえてミュージカル・ファンタジーと表現される同作では、随所に彼の代表曲を散りばめながらエルトンの人生の転機となる出来事を印象的に描いている。<実際のファンタジーに基づく>という謳い文句はまさにぴったりだろう。しかしこの映画では、我々の知らなかったエルトン・ジョンにまつわる多くの事実が明かされている。

この映画に向けられる賛辞の数々は主演陣の演技によるところが大きい。特にエルトンを堂々と演じたタロン・エガートンや、半世紀以上に亘り彼の音楽的パートナーを務めるバーニー・トーピンを熱演したジェイミー・ベルの好演が光る。そして不朽の名曲ばかりのサウンドトラックも重要だ。音楽を監修したジャイルズ・マーティンは、威厳と想像力を持って大ヒット・アンセムの数々をスクリーンに蘇らせた。

『ロケットマン』では助演陣の活躍も見所だ。やり手のマネージャーでエルトンの恋人でもあったジョン・リード役のリチャード・マッデンや、エルトンが初めて契約したレコード会社の重役、ディック・ジェームス役のスティーヴン・グレアム、エルトンの最愛の祖母アイヴィを演じたジェマ・ジョーンズなどはそのごく一部だ。

『ロケットマン』はもちろんエルトンの人生や活動を漏れなく時系列で追ったものではない。だがその中には、出生名をレジナルド・ケネス・ドワイトという男にまつわる裏話や知られざる秘話がある。ここでは『ロケットマン』で明かされる10の事実をまとめた。

 


1. 「Your Song (僕の歌は君の歌)」は、母親のアパートで短時間に書かれた曲だった

『ロケットマン』で瑞々しく描かれるキャリアの転機の中でも、特に印象的なのがこのエピソードだ。バーニーがコーヒーのシミのついた書いたばかりの歌詞をエルトンに手渡し、初期の名バラードは生まれた。ふたりの感覚的な繋がりが顕著に表れた出来事である。

自分の感情を表現しようとする若者についての歌詞を見たエルトンの頭には、すぐにメロディが浮かんだ。結果として完成したのが、ブレイクのきっかけになったシングル「Your Song」だ。同曲が彼のキャリアや、世界中の人々に強い影響を与えたことに疑いの余地はない。

 

2. エルトンの父は英国空軍に在籍し、家にはなかなか帰ってこなかった

映画では有名なイギリス人俳優のスティーヴン・マッキントッシュが演じたスタンリー・ドワイトは英国空軍の飛行中隊長だった。『ロケットマン』の序盤に彼が家にいるシーンを見られるが、そこでは父子の溝や難しい関係性が描かれる。一方で母のシェイラ (映画ではブライス・ダラス・ハワードが演じた)は、ロックンロールに熱中するレジナルド少年の背中を押していたことがわかる。

(下の写真:一番左はスタンリー、一番右がエルトン。二人の間の子供たちはスタンリーがエルトンの母と離婚した後に再婚した人との間の子供)

 

3. 2001年のヒット曲「I Want Love」は、時間軸を変えて50年代の家庭を描いた楽曲として使われている

2001年、エルトンは全英トップ10ヒットを記録した「I Want Love」でグラミー賞にノミネートされた。この曲はアルバム『Songs From The West Coast』に収録された力強いバラードで、映画の中ではミドルセックス州ピナーで過ごした彼の幼少時代の家庭のシーンで、キャストがアンサンブルで歌う形で使用されている。これは『ロケットマン』がエルトンの人生を実際の時間軸とは違ってユニークに描いている好例と言えるだろう。その家庭でエルトンの父は「dead in places other men feel liberated / 誰もが解き放たれる場所で死んだようにして」いたのだろう。

 

4. エルトンの祖母アイヴィは、エルトンを献身的に支えていた

シェイラの母、エルトンの祖母であるアイヴィは、一家の大黒柱であるはずのスタンリーがあまり家にいなかったこともあり、孫のレジナルド(エルトン)に近い存在だった。アイヴィは成長したエルトンに、昔から好きだったピアノを続けるよう勧め続けた人物である。劇中では、エルトンを王立音楽院に初めて連れて行き、帰りのバス代を手渡したのも彼女である。

祖母のエピソードは昨年にイギリスで放映されて話題となったデパートチェーン、John Lewis & PartnersのCMの最後にエルトンにピアノをプレゼントしたエピソードが登場する(CMの詳細はこちら)。

 

5. レコード会社のレイ・ウィリアムズはエルトンの人生を変えた人物だった

『ロケットマン』では1967年時点でリバティ・レコードのA&R部長だったレイ・ウィリアムズの功績にも、それ相応の焦点が当たっている。ウィリアムズはNME誌に運命的な広告を載せた。それに応募したのがレジナルド・ドワイトと、ポップ音楽の作詞家志望だったバーニー・トーピンである。映画ではチャーリー・ロウがウィリアムズを演じている。

(下の写真:右が本物のレイ・ウィリアムズ、左がレイを演じたチャーリー・ロウ)

 

6. 映画には「I’m Still Standing」の有名なビデオも登場する

1983年の挑戦的なヒット曲「I’m Still Standing」のミュージック・ビデオは、ラッセル・マルケイが監督しカンヌとニースで撮られた。この快活なビデオを、劇中で主演のタロン・エガートンは楽しげに再現して見せている。“人間ドミノ”のシーンや、麦わら帽子をかぶってビーチに立つエルトンの姿は本物と見紛うほどである。

 

7. “空中浮遊”のシーンは実際の写真に着想を得たもの

『ロケットマン』ではエルトンとバーニーが、長らく憧れだったロサンゼルスを訪れる場面がある。エルトンがウェスト・ハリウッドの有名なトルバドールで6公演を行うことになったときだ。1970年8月25日の初回公演は、あまりの衝撃にLAタイムズ紙のロバート・ヒルバーンも「彼はロック界で最大かつ最重要のスターのひとりになるだろう」とエルトンを讃えたほどだった。劇中の“空中浮遊”のシーンは、その日のギグで撮られた実際の写真に基づいている。その写真にはエルトンが、彼のヒーローのひとりであるジェリー・リー・ルイスのように派手に両脚を蹴り上げた瞬間が捉えられていた。

 

8. 『ロケットマン』ではあまり知られていない初期の楽曲も使われている

先んじてリリースされた映画のサントラのトラックリストを見るとわかるように、『ロケットマン』はエルトンのキャリアを代表する大ヒット曲の数々だけでなく、初期の比較的無名な曲も取り上げている。例えば1970年のシングル「Rock And Roll Madonna」や、初期に組んでいたギタリストのカレブ・クエイと共作曲である1968年の「Thank You For All Your Loving」といったアルバム未収録曲である。

 

9. エルトンはのちの妻レネーテとアルバム制作中にスタジオで出会った

サウンド・エンジニアだったレネーテ・ブリューエル (映画ではセリンダ・シューンマッカーが演じた)とエルトンは、彼がドラッグとアルコールの過剰摂取による負のスパイラルに陥っていた頃に出会った。1984年にオーストラリアで行われた彼らの挙式は映画でも取り上げられている。ふたりは1988年に離婚しているが、そのすぐ後にエルトンはゲイであることをカミングアウトした (1976年にはバイセクシュアルだと告白していた)。「僕は良い夫以上の何かになりたかった」と彼はのちに語っている。「けれども僕は真の自分を押し殺していた。それが妻を悲しませたし、僕にも大きな罪悪感や後悔を生んだ」。

10. 『ロケットマン』でエルトンとバーニーは激しい口論をするが、実際にふたりが仲違いしたことはない

劇中では心の離れていくエルトンとの激しい口論の中で、バーニー・トーピンが「Goodbye Yellow Brick Road」を歌い出し、「going back to my plough / 田舎に戻ってやる」と歌詞は続く。エルトンが映画の封切り直後にオブザーバー紙に綴った所によれば、50年来の友人ふたりが言い争いになったことは実際にあるらしい。「口論をしたことはあった。だんだん奇抜になるステージ衣装にとやかく言われたくなかった」彼はそう明かす。「だけど、僕らが仲違いをしたことはない。ばかばかしい出来事はたくさんあったけどね」つまりロケットマン(エルトン)とブラウン・ダート・カウボーイ(バーニー)の関係は今も続いているのである。

 

Written By Tim Peacock


『ロケットマン(オリジナル・サウンドトラック)』
2019年5月24日発売(輸入盤CD / 配信
2019年 8月7日発売(日本盤CD

映画『ロケットマン』8月23日(金)全国ロードショー
公式サイト


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