DJ SPINNAが語るモータウン「成功を遂げていたアーティストみんなが僕たちの希望となっていた」

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1973年、米国ニューヨーク・ブルックリン生まれ、DJ/プロデューサー/リミキサーとしてジャンルを横断して活躍し、マイケル・ジャクソン、デ・ラ・ソウル、メアリー・J ブライジのリミックスや、エミネムとコラボレーションをおこなってきたDJ SPINNA(DJスピナ)。2014年のモータウン創立55周年の際には公式ミックスCD『motown 55th anniversary UNDISPUTED SOUL mixed by DJ SPINN』を発売、2019年の創立60周年の時には、『Motown Presents DJ Spinna: Marvin Gaye Mix』や『Motown Presents DJ Spinna: Diana Ross Mix (DJ Mix)』といった公式DJ MIXを配信している彼に、モータウンについて聞いたインタビューを公開します。


 

——音楽人生の中で初めて“モータウン”というレーベルを意識したのはいつですか?

SPINNA:モータウンを意識し始めたのは幼少期の頃だね。3歳の時からレコードを聴き始めて、そのほとんどがモータウンだったよ。

——その時のシチュエーションは?

SPINNA:子供の頃、父がソウル・ミュージックのレコードを沢山持っていてね。早い段階でモータウンというレーベルを意識してたよ。読み書きができる前からそうやって音楽を識別してた。青年期には家族の集まりでかけるレコードを選んでいたんだ。例えば、グラディス・ナイト&ピップス、マーヴィン・ゲイ、オリジナルズ、シュープリームススティーヴィー・ワンダー、スピナーズ、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズなど、60年代後半から70年代前半のアーティスト達だね。子供の頃に聴いていた音楽の約50パーセントはモータウンだったよ。

——そう意識させた曲は何でしょうか。

SPINNA:当時はアンディスピューテッド・トゥルースの「Smiling Faces Sometimes」かな。子供だったので曲の意味なんて知らなかったけど“スマイリング(笑顔)”がタイトルに含まれていたから、楽しい曲だと思ってたんだ。でも、実際はインチキな人達についての曲だった。面白いよね。

——モータウン25周年の時、あなたは10歳頃だったと思いますが、その時の思い出があれば聞かせてください。

SPINNA:1984年、13歳だね。一番印象的だったのは、家族と一緒にテレビで「MOTOWN 25」を観ていた時、マイケル・ジャクソンが初めてムーンウォークを披露したんだ。当時マイケルは世界一ビッグなアーティストだったからみんなが夢中だったよ。当時ソウル・トレインのダンサーたちがやっているのを見てて、ムーンウォークのことは知ってた。ブレイクダンス界でも人気が出てきて、ポップ・ロッカーだった僕もその世界にいた。

もう一つその年の特別な出来事としては、DJになった最初の年に「Billie Jean」を2枚使いして何時間も練習したこと。マイケル・ジャクソンは僕のヒーローだった。常にジャクソン5のアルバムを聴いていたな。ちなみに僕のお気に入りのアルバムは『Get It Together』だよ。

——あなたの家庭の中で「MOTOWN」という名称はレコード・レーベル以上のものを感じたりすることはありましたか?

SPINNA:アメリカの声の象徴だった。特にブラック・アメリカの声。成功を遂げていたアーティストみんなが僕たちの希望となっていた。父は家でモータウンの曲を祈るように歌っていたよ。DNAに組み込まれているんだね。

——初めて買ったモータウンのシングル・レコ―ドは?

SPINNA:初めて買ったシングルは、ジャーメイン・ジャクソンの「レッツ・ゲット・シーリアス」。7インチで持ってたよ。

——初めて買ったモータウンのLPは覚えていますか?

SPINNA:自分のお金で初めて買ったアルバムはスティーヴィー・ワンダーの『Stevie Wonder Original Musiquarium I』だった。彼のベスト・アルバムで、当時爆発的人気だった新曲の「That Girl」と「Do I Do」も収録されてた。小5で11歳だった僕がレコードを買っていたって結構すごいことだよね(笑)。僕にとってはお菓子を買うのと同じくらいの大事だったんだ。

——ご両親やご兄弟に薦められたモータウンのアーティストやレコードはありましたか?

SPINNA:あまりなかったな。もう既に音楽に浸っていたから薦められる必要がなかった。DJを始めてレコードを集めるようになってから、選び抜く感覚が研ぎ澄まされたよ(笑)。特にサンプリング用の素材を探している時はね!

——モータウンに絞って60年代や70年代のレコードを掘った経験はありますか?

SPINNA:今となってはカタログ全てを掘ってるよ(笑)。60年代のノーザン・ソウルから70年代のファンキー・ソウルやディスコ、80年代のブギーまでもね。僕は常に素晴らしい曲やあまり知られていないアーティストを見つけ出してる。普通の人が聴いたことのないようなモータウンのレコードがたくさんあるってことがびっくりだよ。

——学校の友人の間でモータウンが話題になることはありましたか?

SPINNA:それはなかったな。でも特定のアルバムなどは話題になっていたよ。高校時代にブレイク・ビートにはまっていたんだけど、年上のDJたちから教えてもらったレコードを覚えてるよ。マーヴィン・ゲイの「“T” Plays It Cool」、コモドアーズの「Assembly Line」や、ジャクソン5の「It’s Great To Be Here」とかのレコードは、80年代半ばにはあまりお店に無かったから懸命に探さないと見つからなかった。

——その時あなたがモータウンに求めたものは何だったのでしょうか。アーティストそのものを探求すること?それとも何かモータウンに共通するサウンドのようなものを求めていたのでしょうか。

SPINNA:モータウンが70年代にロサンゼルスに移った時、モータウンのサウンドはもう無かった。スタジオ・ミュージシャンは全員解散した。80年代はレーベルの音ではなくて、個々のアーティストが大事になっていった。例えばリック・ジェームス、デバージやライオネル・リッチーは売れていたけど、特にレーベルのサウンドとは関係がなかった。だからあまり期待はしてなかったよ。ある意味そのアーティストたちはモータウンのブランドより偉大になっていたから。

——リアルタイムで夢中になったアーティストは誰でしたか?

SPINNA:僕にとってはマイケル・ジャクソンとジャクソン5がすべてだった。80年代だとスティーヴィー・ワンダーだったね。いつまでも彼は僕のお気に入りのモータウン・アーティストの一人だよ。大人になってからは、昔よりはるかにマーヴィン・ゲイとスモーキー・ロビンソンをシンガーソングライターとして尊敬した。成長と共に耳も変わっていく。でも僕にとってはスティーヴィーが一位かな。

——一般的にモータウンというと60年代のホーランド=ドジャー=ホーランド(3人組のプロデューサー・チーム Holland-Dozier-Holland)によるシュープリームスの「You Can’t Hurry Love」のようなビートだったり、スモーキー・ロビンソンが創り出したテンプテーションズの「My Girl」のような不朽のメロディーだったり、あるいは70年代のマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダー、ジャクソン5のような歴史を彩るスーパースターの活躍だったりがすぐに思い出されますが、あなたがリアルタイムで過ごした80年代はモータウンにとってどんな時代だったと思いますか?

SPINNA:80年代にはもうそれほどモータウンを意識してなかったよ。今となっては昔より気に入っているけどね(笑)。90年代が来るまでモータウンのアイデンティティーは失われているような感じがしたんだ。ボーイズⅡメンエリカ・バドゥ、ジャネイやホレス・ブラウンとかが出てくるまではね。ヒップホップ世代でモータウンは復活を果たした。その時のレーベルには伝統を継承したいという明確なビジョンを持った人がたくさんいたんだ。

——“The Sound Of Young America”という60年代のモータウンが掲げたスローガンについて、何か感じることはありますか?

SPINNA:“The Sound Of Young America”というスローガンは進歩を思わせる。この時代のモータウンの曲はブラック・ラジオだけで広まっていたわけではなく、世界中に広まるポップ・ミュージックだった。彼らは貧困から抜け出すことのできたアーティスト達だ。60年代のモータウンを聴くと、心から幸せを感じる。純粋だった時代を思い出すよ。

——創立者であるベリー・ゴーディについて何か特別な印象は持っていますか。

SPINNA:ベリー・ゴーディは天才で、今までで一番賢いビジネスマンだと思うよ。彼は現在の音楽業界の成り立ちに貢献した人物だ。音楽業界は彼に感謝すべきだと思う。彼が基盤を築いたのだから。

——モータウンが最も偉大だと思う点はどこですか?

SPINNA:モータウンというレーベル自体が最も偉大だと思う。今までで一番偉大なレーベルだよ。常にビッグなアーティストを生み出してきていて、今もそれは続いている。1959年からこれを実行しているレーベルは他にはないよ。

——DJを通して感じられることを教えて欲しいのですが、時代を経ることによってクールに響いたり、フレッシュに耳へ届くようになったりしたモータウンの新たな魅力はありますか?

SPINNA:それについて僕がコメントして良いのかわからないな(笑)。ただ、今でもモータウンが50年前みたいに、若い世代に通用しているのは素晴らしいことだよ。

——あなたにとってオールタイム・フェイヴァリットなモータウンの曲を教えてください。

SPINNA:スティーヴィー・ワンダーの『Songs In The Key Of Life』に収録されている「As」が歴代一位だよ。

——今も探しているモータウンのレコードはありますか?

SPINNA:探しているレコードはどのフォーマット(LP / 45回転 / 12inch / 7inch)でも山ほどあるよ!有名なものは既に持っているから、あまり知られていないものが多いかな。

——ノンストップ・ミックスではなく、あなたが一番組んでみたいモータウンのコンピレーションがあるとしたら、どういったものでしょうか?

SPINNA:何個かアイデアはあるよ。一つは80年代ブギー・ファンク・コンピレーション。もう一つはレア・ソウル・コンピレーション。

——あなたのライフスタイルにモータウンが影響を及ぼしていることがあれば教えてください。

SPINNA:モータウンはスティーヴィー・ワンダーを生み出してくれた。彼は今では友であるけど、今も彼に一番影響を受けている。それより大きいことはないよ。

Interview & Written by JAM


MOTOWN 60th ANNIVERSARY MOTOWN ORCHESTRAL CONCERT
モータウン60周年アニバーサリー モータウンオーケストラコンサート

【出演アーティスト】
ジャーメイン・ジャクソン / BJ・ザ・シカゴ・キッド / シャニース / スピーチ(アレステッド・デベロップメント)

【日程/会場】
11月3日(日)開場17:45 / 開演18:30
奈良県:薬師寺大講堂前特設会場

【チケット代】
全席指定15,000円(税込)
※未就学児入場不可
※チケットで薬師寺の白鳳伽藍・玄奘三蔵院伽藍の二ヶ所拝観も可能
(※公演当日限り拝観時間:8:30~17:00受付16:30まで。西塔、食堂除く)

【プレイガイド】
☆チケット一般発売 10月5日(土)予定
https://eplus.jp/motown/






 

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