エリカ・バドゥ『Baduizum』、彼女がネオ・ソウルの女王となったデビュー作

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これは本当にかなり昔の作品なのだろうか? さまざまな面で、私たちは大昔からエリカ・バドゥの独特なスタイルや洞察力あふれる歌詞の影響下にあった気がする。それでいて、エリカ・バドゥが『Baduizm』で一躍有名になったのは昨日のことのようにも感じられる。このデビュー・アルバムは1997年2月11日に発表され、アメリカのポップ・チャートで最高2位に到達。R&Bチャートでは見事首位を獲得している。

ジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップを大胆にミックスした『Baduizm』は、まさにエリカ・バドゥならではの作品。彼女は14歳から地元ラジオ局で歌い、25歳にしてヴォーカリストとしての経験を既に一生分積み重ね、ビリー・ホリデイに並び称される存在になっていた。また、シカゴ・トリビューン紙からは多彩な活動を繰り広げていた80年代のプリンスと同じくらい「独創的で自由なヴィジョンの持ち主」という評価も受けていた。この『Baduizm』はグラミー賞の最優秀R&Bアルバム賞を受賞。この年のグラミー賞では、エリカのデビュー・シングル「On & On」も最優秀女性R&Bヴォーカル・パフォーマンス賞を受賞している。さらには、アメリカン・ミュージック・アワードやソウル・トレイン・ミュージック・アワードといった賞も総なめにした。

それから3年後、エリカ・バドゥはさらにヴァラエティに富んだセカンド・アルバム『Mama’s Gun』を発表した。ここでの彼女は前作以上にアーティストとしての幅を広げると同時に、自らの内面を見つめた非常に内省的な歌詞を歌っている。そうした歌詞は、絶えず増え続けるファンの心にも響く内容だった。ここに収められたネオ・ソウルの名曲、「Bag Lady」や「Didn’t Cha Know?」などはこの時代を代表する傑作として評価されており、その新鮮さは今も失われていない。最近では、音楽サイトPitchforkが次のような言葉でこのアルバムを称讃している。「これは単に失恋を描いた作品ではない。むしろ、あるひとつの関係の中だけに留まらない大きな問題を扱ったブラック・フェミニスト・アルバムである」。『Mama’s Gun』は、いまだに画期的な作品であり続けている。

近年になって、これら2枚のアルバムはどちらも2枚組LPで再発されている――特に『Baduizm』の場合、オリジナル盤発売当時のLPは1枚に収めるために全9曲に絞られていたので、この再発で初の2枚組LP化が実現した。実に似つかわしいことに、この2作品の再発はモータウン/UMeの「Respect The Classics」シリーズの一環として行われている。この再発は、エリカ・バドゥが今もネオ・ソウルの第一人者だということを思い出させてくれるタイムリーな企画と言えよう。

Written by Jason Draper



エリカ・バドゥ『Baduizm』

   

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