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ダーティ・ループス『Phoenix』:デイヴィッド・フォスターが見初めたスウェーデン発3人組久々の新作

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ダーティ・ループス

ヨーロッパ最古の音楽学校である王立ソードラ・ラテン音楽学校からスウェーデン王立音楽アカデミーで音楽を学び、プロデューサーであるデイヴィッド・フォスターがほれ込み米レーベルのVerve Recordsと契約して2014年にデビュー・アルバム『Loopified』を発売したダーティ・ループス(Dirty Loops)。

日本でも来日公演を実施した彼らが6年ぶりとなる新作EP『Phoenix』を2020年11月18日に発売した。この新作について、ライターの佐藤 英輔さんによる解説を掲載。

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PHOENIX NOVEMBER 18

ついに、ダーティ・ループスの新作がリリースされる。名クリエイター/プロデューサーにして米ヴァーヴ・レコードの会長であったデイヴィッド・フォスターの肝入りのもと発表したデビュー作『Loopified』から、なんと6年ぶり。セカンド・アルバムのレコーディングに入ったものの、メンバー間の意見の相違が顕在化して、活動休止に入ったというニュースが流れたこともあった。

ファースト作で多大な支持を得たバンドだけに、普通ならきっちりと次作のリリース/プロモーションの予定が決められてしまうところ、彼らはそこから逃れた。面々が生き馬の目を抜くアメリカの音楽界から距離を置く、スウェーデンに住むミュージシャンたちであったというのが幸いしたのか否か。なんにせよ3人は無理して作ることはせず、個人の音楽活動や生活を優先させることにした。だが、それは正しかったことは、新作『Phoenix』の仕上がりが示している。

ヴォーカルとキーボードのジョナ・ニルソン。エレクトリック・ベースのヘンリック・リンダー。ドラムのアーロン・メルガルド。という、構成員はもちろん不動。ジョナは1人でシンフォニックなサウンドを作り出すとともに、伸びのあるハイトーンのヴォーカルで聞き手を魅了する。ヘンリックは音域の広さを持つ5〜6弦のエレクトリック・ベースを巧妙に操るとともに、ギタリスト不在であることをカヴァーするスラッピングのベース奏法も随時披露。そして、アーロンはと言えば、ブラインドで聞いたなら絶対に米国人の敏腕ドラマーだと思わせるとってもタイトで立体感を持つ叩き口でバンドの屋台骨を担う。そうした彼らのスキルの高さを知れば、面々が確かな音楽教育を受け、本国では腕利きのスタジオ・ミュージシャンをしていたという事実にも頷くはず。そんな3者が強い信頼関係のもと、ガチで重なる三位一体表現。それこそが、北の国からインターナショナルな音楽界に飛び出したダーティ・ループスの黄金の方程式である。

DIRTY LOOPS – Hit Me

だが、彼らの表現はそれを前面に出すのではなくメロディアスな楽曲を介することで、まずは親しみやすいビート・ポップ表現として受け手に届けられる。それこそがダーティ・ループスの強みであり、彼らをアルバム1作で人気者の座に押し上げてしまった理由だろう。一皮剥くと、そこには壮絶な技量やクリエイティヴィティが渦巻いている。しかし、それに留まらない、聞き手に両手を広げたポップ・ミュージックとしてアピールしてしまうというのがダーティ・ループス表現の肝であるのだ。

さて、新作『Phoenix』は3人ががっちり噛み合う5曲で成り立つ。演奏、作曲、編曲、プロデュースのクレジットにはダーティ・ループスの名前が出され、当然録音は自国スウェーデンで行われている。その基本路線はファースト・アルバムを引き継いでいるが、しっかり時間をかけたことを知らせる変化も見て取れて、それが耳を引くのは間違いない。

たとえばアルバムの1曲目に置かれた、ちょいセクシャルな比喩を持つエネルギッシュなラヴ・ソングの「Rock You」を聞いてみよう。あれれ、ジョナのヴォーカルがよりソウルフルになっている! 聞く者はそう思わせられるはず。また、ジョナが歌声を重ねるコーラスも新たな感興をもたらす。

Dirty Loops – Rock You

さらに驚かされるのは、「Work Shit Out」と「Next To You」という続く2曲がなんと8分前後の尺を持つ曲であることだ。実は前作に入っていた曲はどれも3~4分の長さを持つ曲であったから、これは大きな変化と言えるし、彼らの新たな創造意欲が注ぎ込まれていると指摘できる。

たとえば、「Work Shit Out」はブラジルの民族打楽器であるビリンバウの音が基調に置かれ、どんどん曲種が広がっていく。そこには、冴えたストーリテリングの手腕あり。そして、少し静かなサウンドになった中盤には現代ジャズ・ピアノの第一人者であるブラッド・メルドーを思い出させるようなジョナのピアノ・ソロが入れられてもいる。新たなエスニック性やジャズ性も前に出した同曲は本当に聞くべきポイントが盛りだくさん。また、一方では「Breakdown」のようなバラード美曲も新作にはある。

Dirty Loops – Work Shit Out

そして、注目したいのが日本盤ボーナス・トラックとして収録された4曲だ。それらは、なんとインストメンタル。実は彼らがYouTubeに発表した曲群であるのだが、それらがまた興味深い。

アヒルや牛の擬音も入る「Old Armando Had A Farm」はバンジョーやスティール・ギターのような音も確認できて、彼らならではの“アメリカーナ”曲と言いたくなる? その曲をはじめ、どれも遊び心とクリエイティヴィティに満ちていて、彼らのもう一つの顔を伝える楽曲群と言えそうだ。

SONGS FOR LOVERS – OLD ARMANDO HAD A FARM

四方八方に広がる豊穣な表現を、3人は送り出そうとしている。そうした『Phoenix』に触れていると、彼ら一流の風通しの良さと、審美眼の高さ、しなやかな好奇心の在りかを痛感させられること請け合い。そして、それらは“Loopified”と海外では形容される、彼ら一流の鮮やかなポップネスに鮮やかに結実する。

3人を見初めて送り出したデイヴィッド・フォスターはすでにヴァーヴを離れた。だが、現在はさらに米国ポピュラー音楽界の大物であるクインシー・ジョーンズが彼らを応援。音楽作りは3人の手に委ねられているが、ダーティ・ループスの現在のマネージメントは“ビッグ・Q”のプロダクションが行なっている。あぁダーティ・ループス、前途洋々なり。

Written by 佐藤 英輔



ダーティ・ループス『Phoenix』
2020年11月18日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music




 

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