デレク・トラックスが語る新作『Future Soul』とテデスキ・トラックス・バンドの来日

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マイク・エリゾンドとの共同プロデュースで心機一転、風通しがよく親しみやすい作品になった最新アルバム『Future Soul』リリース後のジャパン・ツアーが、いよいよ11月に迫ってきたテデスキ・トラックス・バンド。

7月にスーザン・テデスキが虫垂炎で倒れ、ライヴが何本かキャンセルになってファンを心配させたが、その後ツアーに復帰してホッとひと安心。今回は47歳の若さで早くも初孫に恵まれたばかりのデレク・トラックスに、近況や気になる来日公演の見どころを中心に訊いた。

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『Future Soul』はライヴで演奏していても楽しい曲ばかり

――スーザンの体調はいかがですか? 虫垂炎から回復されました?

ああ、タフなんだよ、彼女は。手術の10日後にはツアーに戻ってたよ(笑)。最初の1週間は少し違和感があったようだけど、今は完全に元通りだ。

――最新作『Future Soul』はリリース後のレビューが好評ですね。マイク・エリゾンドと組んで新しい試みを多く盛り込んだアルバム、あなたとしても満足度は高いのでは?

うん。僕たちの場合、 長いことツアーを続けるから、新しいアルバムを作るなら「どうしても作りたい」と思える理由が必要になってくるんだと思う。たとえば「世に出るのを待ってる曲がたくさんある」…とかね。今回は、ジム・スコット以外のプロデューサーと仕事をするのが10年ぶりくらいだったので、少し違うアプローチを試してみたかった。すごく楽しめたよ。マイク・エリゾンドは超クリエイティヴで、才能のある人だ。素晴らしいアイデアをたくさん持っている。

実際、今は米西海岸ツアーの真っ最中だけど、ライヴで演奏していても、すごく楽しい曲ばかりだと実感しているよ。まだ新しい曲なのに、みんなもう曲を知ってくれていて、すっかり自分たちの曲として受け入れてくれている。それは僕たちにとっても新しい発見だ。ツアーを始めたばかりの頃は、ある意味、客とのバトルというか、彼らの心を勝ち取らねばならなかった。でも今、会場を見渡して、新曲まで知ってくれているお客さんばかりだとわかるのは、すごく嬉しいね。今、バンドがすごくクリエイティヴな場所に戻ってきたと感じている。また曲を書いて、レコーディングを始めてもいい時期なのかもしれない。

――ツアーで演奏する中で「育ってきた」と感じる曲はありますか?

アルバム1曲目の「Crazy Cryin’」はライヴのオープナーにも最適なんで、多くのライヴがこの曲でスタートする。バンドにとっても、一気にリラックスできて、演奏していて楽しい曲だ。「Who Am I」も、やってて「おや?」と思うような展開になったことが何度かある。

「Future Soul」も短いけど、愛らしくて楽しい曲だ。「Devil Be Gone」はスーザンがギターで思い切り羽根を伸ばせる1曲。「Shout Out」のアウトロでのスーザンの歌も、個人的なお気に入りだ。「What In The World」も結構やってるよ。このアルバムの曲はどれも好きな曲ばかりで。実際、このツアーではもうほぼアルバム全曲を演奏したよ。

 

僕たちを繋いでいるのはボブ・ディランとフランク・ザッパ

――最近のライブではフランク・ザッパの「Willie The Pimp」をたびたび演奏していますが、これは誰のアイデア?

アフターショーのパーティで、誰かがフランク・ザッパのアルバムをかけていて、あのリフを耳にしたんだ。すぐに「明日の夜、これをやらないと!」ってことになり、それで「High & Mighty」と繋げてやることにした。その数日後、ギターコレクターの友人がフランク・ザッパのメインギターだったギブソンSGを2本持ってきてくれたんで、そのBaby Snakes SGで「Willie The Pimp」を弾いたよ。ファズトーンが内蔵されてて、ロケットみたいだった。楽しかったよ。

――ちなみに、あなたが好きなザッパのアルバムはどの辺ですか?

『Apostrophe (‘)』と『Over-Nite Sensation』はよく聴いたよ。親父がフランク・ザッパの大ファンで、フィルモアで彼らを観てるんだ。彼は初期のライヴを何度か観てるよ。スーザンの親父さんなんて、ザッパと何度か会ったことがあって、その時の話とかも最高なんだ。僕とスーザン、そして親父たちを繋いでいる共通項が、ボブ・ディランとフランク・ザッパを愛してたってことさ。

それに、僕もスーザンも尊敬するカーネル・ブルース・ハンプトンは、ザッパのアルバムで演奏したことがあった(『We’re Only In It For The Money』『Lumpy Gravy』で客演)。カーネル・ブルースとザッパは性格が似ていて、いつも冷静で真面目な人だったけど、ものすごく風変わりな一面もあった。周囲は彼らが酒や薬物をやっていると思っていたけど、実はそこにいる誰よりも、どんな時もシラフだった。僕らにとってカーネルは、米国南東部のフランク・ザッパだよ。

 

毎晩、少なくとも数曲は“綱渡り”のような演奏をしている

―― ツアー中は毎日のようにセットリストが変わるけど、バンドとは予めかなり多くの曲数をリハしてあるのでしょうか?

もう長いこと一緒にやってきているので、かなり膨大なレパートリーが、全員にとって共通の記憶になってる。それとは別に、僕らの楽屋には、小さなアンプやドラムセットを置いたミニ・リハーサル室も用意してある。だから、ちょっとあやふやな時は、いつでもそこに入ってランスルーできるんだ。

でも、みんな覚えは速いし、記憶力もいい方だからね。勘を取り戻すのに数日かかることもあるけど、大抵は毎日のサウンドチェックで、しばらくやってなかった曲を数曲合わせる。その結果次第で、その晩にやる曲を決めているよ。あるいは、もう少しリハーサルを重ねるか…。それがバンドの緊張感のためにも、ツアーを興味深く、刺激的なものにし続けるためにもいいんだと思うよ。バンドの活気を保っていられるのも、そのおかげだ。毎晩、少なくとも数曲は“綱渡り”のような演奏をしていることが、いい刺激になってるんじゃないかな。つまり、リハーサルしすぎないってことが。

―― 若いメンバーも含む今のバンド、各人の「ここを見て!」というポイントを挙げてもらえますか?

まずリズムセクションのブランドン・ブーンとアイザック・イーディ。ブランドンがベースで、アイザックがドラム。二人とも超・超・音楽的だ。ブランドンの父親はゴスペルクワイアの指揮者、兄貴のロバートはカウント・ベイシー楽団の一員。音楽一家で育った、正統派のミュージシャンだ。ブランドンはここ1年くらいで、音楽的に一気に開花して、ベーシストとして積極的になったと思う。

オールマンの初期のアルバム(『フィルモア・イースト』とか)で、ベリー・オークリーがまるで「デュアンのもう一人のギタリスト」のようにベースを弾いていたことを、ブランドンに話したことがある。あの頃のオークリーは、即興の中でバンドをどこへ進めるかを決める重要な存在だった。それをブランドンはうまく汲み取ったんだと思う。そこから一気に開花したんだ。素晴らしいタイム感を持ったプレイヤーだよ。

アイザック・イーディも超才能があるドラマーで、ニューオーリンズ近くのテネシー州トゥラホーマ出身だが、いとこやおじさん、親父さん、おじいさんを合わせて、12人近く全員がミュージシャン。昔からブルースのレコードを出していたような音楽一家で育った。音楽に精通しているし、ギター、キーボード、ベースも弾くし、歌も上手い。なんでもこなせるタイプだ。でもドラムセットの前につくと、他の楽器のこともわかってるからこそのドラムを叩く。単にリズムを刻むだけではない、メロディアスで、息をするようなドラムを叩くんだ。もう一人のドラマー、ファルコン(タイラー・グリーンウェル)との相性も抜群だよ。その成長ぶりを見てこられて、すごく楽しかったよ。

もう一人の新加入のエマニュエル・エッチェムは、マイク・エリゾンドを通じてスタジオで会った。なんでも演奏できるやつだけど、トランペットに関しては“キラー”だね。

 

孫のヘンリーが誕生

――スーザンとはステージ上では常に真剣勝負ですが、変わらず夫婦円満のようですね。オフでは一緒にフィッシングを楽しんだりもするそうですが、オン/オフの切り替えはうまくできてますか?

ああ。でも僕たちにとってはオンもオフもないというか、ほとんど同じことなんだ。人間なら誰しも、良い日も悪い日もあるけど、問題は長引かせないように、どんな時も話し合うようにしてる。二人でいる時間が長くなるにつれ、うまくやれるようになってきてるよ。

でも一旦ステージに立てば、ステージは神聖な場所だ。プライベートの問題は持ち込まないようにはしてる。とはいえ、僕らは人間だ。苛立つことがあったり、感情的になれば、それは演奏に出てしまう。でもそれを含む余地さえ僕らの音楽にはあると思うし、むしろ出してしまっていいんじゃないかと思う。その時に演奏している曲が、気持ちを整理するセラピーになってくれることもある。ステージを降りたオフの時間も、僕らは一緒に過ごすことが多い。そういう夫婦ばかりじゃないと思うから、ラッキーだよね、僕らは。

――ところで、フィッシングでは主に何を釣るんですか?

ジョージアの農場には小さな湖と小川があるので、そこで釣れるもの。海外にツアーで行った先でも、よく釣りをするよ。中南米では沖釣りをしたり。携帯の電源を切って水辺で過ごしたり、山歩きをしたり。フライフィッシングも大物釣りも、両方やる。

20年くらい釣り船を持ってたんで、兄貴とよく船を操縦して釣りに出た。スーザンも船に慣れていて、まったく船酔いしない。本当にタフだよ。沖に出て、みんなが船酔いで気分悪くなってても、下ではスーザンが平気で朝飯を作ってる。彼女はニューイングランド育ちだから、昔から水辺が身近でヨットにも慣れてるし、水が大好きなんだよ。そういえば、息子を連れて東京湾でスズキを釣ったことがあったな。

――いいですね! ちなみに、お孫さんはもう生まれましたか?

生まれたよ、リトル・ヘンリーだ! もうすぐ1ヶ月になる。信じられないよね。

――おめでとうございます。小さかったお子さんたちが、あっという間に成長していきますね。

ふたりの子供たちを初めて日本に連れてきたのはクラプトンのツアーの時で、それからまた数年後に連れて来た。その息子が結婚して、新婚旅行先に選んだのが日本だった。今度は孫も日本に連れて行こうかと考えてると思うと、不思議な感じだよね。あっという間だ。子供たちを背負って日本を旅してたのが、ついこの間の気がする。

――まったくです。ところで、最近公開されたグレッグ・オールマンのドキュメンタリー『Gregg Allman: The Music Of My Soul』はもう観ましたか?

ついこの間見たよ。初期の映像が特に良かったね。知らなかったこともたくさんあった。でも一番心に響いたのは、晩年のインタビューだ。グレッグのことはよく知っていたので、自然体で、リラックスしている姿を見られたのは嬉しかった。色々と思わされることもあったけど、うまく描かれていたと思うよ。ただ、あれだけ複雑で、しかも長い付き合いのあった相手だったから、僕だけが知っている物語もあるわけで、語られていない良い話もまだある。でも1時間半〜2時間で人生のすべては語れないからね。そう考えると、よくできていたと思うよ。

来日公演の見どころは

――日本にはオールマンのファンも、エリックのファンもたくさんいるので、あなた方のライヴでも彼らの曲を期待している人たちがいると思います。日本でのライヴはどんな内容になりそうですか?

それを気に留めておくよ。デレク&ザ・ドミノスの曲はかなりの頻度でやってるし、オールマンもたまにやる。教えてもらって助かった。そこらへん、入れるようにするよ!

その時々の気分やインスピレーションごとに演奏する曲を決めるので、今も常に新しい曲を加えながらツアーは進んでいる。日本に行く頃には、思いもしないような曲が加わっているはずだ。僕らは常に進化し続けるバンドで、決められたものは長続きしないというか、皆すぐに飽きちゃうんだよ。

――ではライヴ当日を楽しみにしています(笑)。かつてのあなたのようなプロを目指す若いギタリストたちに、何かアドバイスをするとしたら?

僕がその年齢で演奏してた頃と今とでは、まったく違う世界のようではあるんだけど、同時にまったく同じだと思うこともある。つまり、インスピレーションを持ち続け、自分のスタイルは自分でコントロールし、創作の衝動とひらめきに従うしかないってことだ。

僕が若かった頃、僕の周りには「お前はこういう音楽をやるべきだ」「こう感じるべきだ」と言ってくる人が大勢いた。でも大切なのは、頑固に自分が信じる光を追うこと。だって、自分が何をいいと感じるかは、自分にしかわからないだろ? もしかすると、気の合う音楽仲間が1〜2人はいるかもしれない。でも最終的に決めるのは自分自身だ。みんながアイデアを出し合っても、うまくいかなければ離れていく。その責任を背負うのは自分なんだ。だから、自分の音楽と信念は自分で守るべき。そこだけは頑固でいてもいい。

大切なのは、周りに自分のやることを決めさせないこと。それって、簡単に失ってしまうものだからね。僕自身、すごく才能があるのに、道を間違えてしまう人をたくさん見てきた。そもそも、正しい道が何なのかなんて誰にもわからない。でも、その人がいつの間にか道を外れて、そもそもなぜそれを始めたのかという情熱を失っていると、それはわかるものなんだ。

だから僕も、常に原点に戻るようにしている。何にインスピレーションを感じるのか、そもそもなぜこれをやろうと思ったのか、そこに立ち返るんだ。それは進化したり、変化しても、絶対に変わらない部分だと思う。今もライヴの最中に一度や二度、初めてステージに立った時のあのゾクゾクする感覚を味わう瞬間があってほしい。そのためには、少しばかり頑固でいること、かな(笑)。世の中には、道から外れさせようとする人たちが大勢いるからね。そうならないようにするには、自分が気をつけるしかないんだ。

Written by Masatoshi Arano / Translated by Kyoko Maruyama


テデスキ・トラックス・バンド 2026来日公演

名古屋公演
日程:2026年11月15日(日)開場 17:15 /開演 18:00
会場:COMTEC PORTBASE

大阪公演
日程:2026年11月16日(月)開場 18:00/開演 19:00
会場:フェスティバルホール

東京公演
日程:2026年11月18日(水)開場 18:00/開演 19:00
会場:SGCホール有明

日程:2026年11月19日(木)開場 18:00/開演 19:00
会場:SGCホール有明

企画・招聘・制作:ウドー音楽事務所
https://www.udo.jp/shows/TTB26


テデスキ・トラックス・バンド『Future Soul』
2026年3月20日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music




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