ラナ・デル・レイのベスト・ソング20曲:映画的で嘘のない感情に満ちた名曲の数々

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Photo: Chuck Grant, courtesy of Interscope Records

映画的で嘘のない感情に満ちたラナ・デル・レイの名曲の数々からは、彼女が実力とオリジナリティを兼ね備えた、世代を代表するアーティストであることがわかる。


この20年ほどにデビューしたアーティストの中でも注目すべき人物のひとりが、ラナ・デル・レイだ。彼女は誰もラジオで聴いたことのないような音楽でその名を残した。ハスキーで深い特徴的な声で歌われる映画的な楽曲は、2012年に無名だった彼女をメインストリームに押し上げた。ブレイクのきっかけとなったのが「Video Games」だ。それ以来、暗いサイケデリック調の楽曲からライトなラヴ・ソングまで、彼女は独自のスタイルをさまざまに変化させてきたが、自身のルーツを忘れることはなかった。豊富な楽曲の数々から、我々はデル・レイがリリースしてきたすべての楽曲を分解し、彼女のベスト20曲を選出した。

あなたのお気に入りの楽曲が抜けているとお感じになったら、コメント欄から是非その曲を教えていただきたい。

 

20位「Beautiful People Beautiful Problems」(『Lust For Life』、2017年)

コーラスの前でストリングが入るが、ほとんど単純なピアノのコードで進んでいく非常にシンプルな楽曲。この曲「Beautiful People Beautiful Problems」でラナは、ほかならぬスティーヴィー・ニックスと共演している。

「あのレコードに何かをもたらしてくれる女性を思い浮かべたとき、私たちはいつも彼女を思い出していた」デル・レイはFLAUNT誌にそう語っている。フリートウッド・マックのシンガーである彼女の特徴的なヴォーカルが同曲の聴きどころだ。

 

19位「Young And Beautiful」 (『The Great Gatsby soundtrack』、2013年)

F・スコット・フィッツジェラルドによるジャズ・エイジを代表する小説を原作にした2013年のバズ・ラーマン監督映画『華麗なるギャッツビー』のために書き下ろした作品。この曲「Young And Beautiful」では、ラナの多くの楽曲とは違うアプローチがとられている。ふだん、彼女は毒のある関係や報われない愛を歌うことが多い。

だが『華麗なるギャッツビー』のロマンスに触れた同曲で彼女は、自分が若さと美しさを失ってしまっても恋人は愛し続けてくれると美しいメッセージを伝えている。メジャー・デビュー作のリリースから1年というキャリアの初期に大作映画に纏わる仕事を得たことは、デル・レイの才能の証左だろう。

 

18位「13 Beaches」 (『Lust For Life』、2017年)

手持ちマイクでライヴのように歌い、たった数テイクでレコーディングを終えてしまうことで知られるラナだがこの曲「13 Beaches」では違っていた。「何テイクもついやしてしまった」と彼女はニュー・ミュージカル・エクスプレス誌のインタビューで語っている。「出したかったような良いムードが出せなかった。一本の矢みたいに率直に歌わないと、と思っていた」。出来上がったのは、パパラッチから逃れようとする彼女の実体験を歌った楽曲だ。「暑い日に13の浜辺を回って、ようやく誰もいない場所を見つけたんです」。

同曲は1962年のホラー映画『恐怖の足跡』の独白「私はこの世のものじゃない、でもそれが事実。私は他の人とどこか違う。どこで曲がっても、何かが逃げ道を塞ぐ」で始まる 。ラナが名声を常に心地よいものとは感じていないことが想像できる。

 

17位「Summer Bummer」 (『Lust For Life』、2017年)

5枚目のアルバム『Lust For Life』は、ラナが初めて他のアーティストとコラボしたアルバムだ。この曲「Summer Bummer」のゲストにはエイサップ・ロッキー (彼は同じアルバムの「Groupie Love」にも参加)とプレイボイ・カルティを迎えている。

同曲はソフトなピアノのメロディから始まり、コーラス部分ではトラップ・ビートが入ってくるという同アルバムでも指折りの見事なプロダクションだ。BBCの取材にラナは、「少しの炎と少しのエネルギーをレコードに加えるため」エイサップ・ロッキーと共演したと語った。

 

16位「Off To The Races」 (『Born To Die』、2012年)

ラナの他の曲と異なり「Off To The Races」では歌唱でなくラップが取り入れられている。違ったスタイルになったのはおそらく、ラナと長らく仕事をしているプロデューサー、エミリー・ヘイニーとともに、パトリック・バーガーがこの曲のプロデュースに携わっているためだ。バーガーはこのアルバム『Born To Die』のその他の収録曲には関わっていない。

 

15位 「Doin’ Time」 (2019年)

ラナのこれまでの曲で最もライトで明るいサウンドの楽曲。「Doin’ Time」はスカ・バンドのサブライムの楽曲のカヴァーである。彼女らしくないサウンドの明るさに比して、歌詞は相変わらず暗いものだ。「I’d like to hold her head underwater / 彼女の頭を水に沈めたい」といった歌詞は、恋人を苦しめたいというシンガーの欲望を表している。

自らの性的指向を反映させるために歌詞の中の性別を変えてカヴァーするミュージシャンは多いがラナのヴァージョンのすばらしいところは、オリジナルの視点をそのままにし、こんな風に歌っていることだ

「Me and my girl, we got this relationship, I love her so bad, but she treats me like s__t / 俺と彼女は恋人同士になった, 彼女を愛しているのに彼女はおれを貶める」

 

14位「The Blackest Day」 (『Honeymoon』、2015年)

ドラムのトラップ・ビートを取り入れたスローでロック調のバラード。「The Blackest Day」はアルバム『Honeymoon』で最も長尺の曲で、演奏時間は6分を超える。歌詞の中でジャズ・シンガーのビリー・ホリデイの名前に言及しているように、壊れた恋愛関係の悲しみを歌った歌詞の楽曲「Ever since my baby went away, It’s been the blackest day / 恋人が去ってから, ずっと真っ暗な日々」には哀愁漂うジャズの影響が垣間見える。シングル・カットはされていないが「The Blackest Day」はファンから確固たる人気を得ている。

 

13位「Shades Of Cool」 (『Ultraviolence』、2014年)

耳に残る美しい1曲「Shades Of Cool」 (及びアルバム『Ultraviolence』に収録されている大半のトラック) からは、ダン・オーバックの影響が感じ取れる。ブラック・キーズのフロントマンであるオーバックは、同アルバムでギターとプロデュースを担当している。同曲でラナはふだんより高い音域を歌い上げているが、これが彼女のヴォーカルのベスト・パフォーマンスとの声もある。ブリッジ部分のギター・ソロは同曲の最もパワフルな瞬間だ。

 

12位「F__ked My Way Up To The Top」 (『Ultraviolence』、2014年)

同じく『Ultraviolence』収録の「Money Power Glory」と同様に皮肉のこもった「F__ked My Way Up To The Top」でラナは、批評家たちのことを歌っている。批評家たちの自身への評価はわかっているが気にしない、というのが同曲の本質的なメッセージだ。同曲は「Blue Jeans」の作曲にも参加したダン・ヒースとラナの共作である。

 

11位「High By The Beach」 (『Honeymoon』、2015年)

4作目のスタジオ・アルバム『Honeymoon』からの1枚目のシングル。「High By The Beach」はギターやストリングスではなく、シンセを中心に進む数少ない楽曲のひとつだ。コーラス部分ではヒップホップ調のパーカッションに乗せて単調ともいえるメロディが歌われるが、同曲はラナの楽曲で最もポップなサウンドである。

ビルボード誌のレビューでジェイソン・リップシュッツは同曲が「 (ラナの)キャリアの中で最もラジオ向きな曲だろう」と書いている。手持ちカメラで撮られた編集の余地の少ないビデオは、「Shades Of Cool」のビデオと同じくイギリスの監督のジェイク・ナヴァが手掛けた。

 

10位「In My Feelings」 (『Lust For Life』、2017年)

恋愛中ではなく、関係が終わった後のことに焦点を当てた楽曲「In My Feelings」でラナは「Sobbin’ in my cup of coffee,  ‘Cause I fell for another loser / コーヒーを手に涙を流す,  またダメな男に騙された」と歌い、その後で「You wanna make the switch, Be my guest, baby / 私と代わりたいなら,  歓迎するよ」と歌い上げる。歌詞には彼女の罪深い喜びであるコーヒーが登場する。ちなみに彼女はコンプレックス誌の取材に「一日13杯は飲んでいるはず」と明かしている。

歌詞の中にでてくるこのダメな男は、ラナが付き合っていたというラッパーのジー・イージーのことだ多くのファンは信じている(Spotifyによる『Lust For Life』のリリース・パーティで同曲を披露した際、彼女は手でGのサインを作っていた)。同曲のリリースと同じ年にジー・イージーは「Nothing Wrong」という曲を発表。その中で彼は「Lana think I’m crazy, and I maybe am / ラナはおれがイカレていると思ってる、あるいはそうかもしれない」とラップしている。

 

9位「Heroin」 (『Lust For Life』、2017年)

「Heroin」にはメタル・バンドのモトリー・クルーや殺人犯のチャールズ・マンソンなどカリフォルニアにゆかりのある人物が多く登場する。歌詞はラナの曲の中でも暗く、「Writing in blood on my walls and s__t / 壁に血で落書きをして」という描写の鮮烈なものだ 。ラナらしいスタイルの同曲は、約6分と長くラジオ向きとは言い難いが、名曲には変わりない。

 

8位「Video Games」 (『Born To Die』、2012年)

ラナ・デル・レイの名曲ランキングからこのメジャー・デビュー曲は外せないだろう。同曲は評判を呼んだミュージック・ビデオをきっかけに、彼女をメインストリームに押し上げた。ビデオはラナ本人がWebカメラを使って撮影、編集したもので、唇をすぼめて歌う彼女の姿にロサンゼルスの資料映像が挿入されている。

彼女は同曲を「World Of Warcraft」というゲームに興じる当時の彼氏を見ながらロンドンで書いた。同曲は「私の目から見たある男と、当時のふたりの関係について」歌ったものだとラナはNMEに話している。「当時の私は、自分のキャリアへの野心を捨てて、家で彼といることをただ楽しんでいた」。

 

7位「Ultraviolence」 (『Ultraviolence』、2014年)

ラナの3枚目のアルバムの表題曲は、「You’re my cult leader, I love you forever / あなたは私のカルト・リーダー,  いつまでも愛し続ける」といった服従的な歌詞で一部の大衆の怒りを買った。ラナの多くの曲と同じく、歌詞の一部は事実に基づいている。

ニューヨーク・タイムズに対し彼女はかつてカルトに属していたことを認め、「人を一度壊し、一から立て直すことを信奉していた」指導者のもとにいたと話した。「変な話に聞こえるけどそれがポイントでした。従ったり、離れてみたり、身を任せてみたりする中で恋愛感情が生まれてしまう」と彼女は語る。タブー視されうる歌詞を除いて、楽曲自体は『Ultraviolence』の中で傑出している。シンプルなピアノのコード弾きや重厚なストリングス、鼓動のようで軽やかなドラムの上に、息を飲むようなラナの優しい歌声が重なる。

 

6位「Summertime Sadness」 (『Born To Die』、2012年)

「Summertime Sadness」もラナのロマンティシズムが表れた楽曲だ。2010年代前半のチャートはEDMが席巻していたため、フランスのDJ、セドリック・ジャヴェイのリミックスは時機を捉えたものといえる。同リミックスはオリジナル・ヴァージョンよりヒットし、ラナに新たなリスナーをもたらした。

カイル・ニューマンの監督したビデオはホーム・ビデオような質感で撮られ、ラナとその恋人 (ニューマンの妻で女優のジェイミー・キングが演じた) が心中するまでを描いている。

 

5位「Cola」 (『Paradise』、2012年)

ラナの楽曲でよく取り上げられるいわゆるパトロン的関係をテーマにした同曲の冒頭の歌詞「 My pu__y tastes like Pepsi cola / 私のアソコはペプシコーラの味」は、そのサウンド以上にメディアに取り上げられただろう。同曲リリースの数年後、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが業界の女性に性的嫌がらせをしていたという告発があり、「Harvey’s in the sky with diamonds and he’s making me crazy / ダイヤをつけて空を舞うハーヴェイが私を狂わせる」という歌詞は再注目を浴びた。ラナはMTVニュースに「あの曲を書いたとき、ハーヴェイ・ワインスタインやハリー・ウィンストンのような人物が頭に浮かんでいたんだと思う」と話している。

 

4位「Ride」 (『Paradise』、2012年)

EP『Paradise』のリード・トラックで、「Video Games」や「Born To Die」もともに手掛けたジャスティン・パーカーが共作しており、フランク・オーシャンやシャキーラなどを手掛けたリック・ルービンがプロデュースを務めている。

同曲のビデオも物議を醸し、その中でラナはバイク乗りやバンダナをした年配の男などとの恋多き女を演じている。監督したのはラナがビデオ制作におけるソウルメイトと語るアンソニー・マンドラーだ。ラナによれば同ビデオは、彼女の人生をそのまま表現したものだという。ガーディアン誌に彼女は「フェミニストが眉をひそめかねない」ビデオだと話している。彼女はまた、electronicbeats.netに対しこうもコメントしている。

「私は自由恋愛を信じている。それが私の考え方。私は色んな男性と過ごしてきたし、特定の好みのタイプもない。私にとっては、これが多くの違う人との愛を求める私の物語。そしてそれが、私の音楽への2番目に大きな影響になっている」

 

3位「West Coast」 (『Ultraviolence』、2014年)

ラナの楽曲で最もロック色の強い楽曲「West Coast」は彼女のトレードマークといえるストリングスがない点でも、コーラス部分でゆっくりになりテンポが変わる点でも珍しい1曲である。

18歳のとき酒を断ったラナは、オーストラリアのラジオ局トリプルJに、同曲の冒頭の歌詞はあるビーチ・パーティに行った際にある男に言われた言葉だと明かしている。「They’ve got a sayin’: if you’re not drinkin’ then you’re not playin’ / 彼らはこう言った:飲まなきゃ遊んでいることにならない」という一節がこの曲のテーマになった。

 

2位「Blue Jeans」 (『Born To Die』、2012年)

特徴的なギター・フレーズに力強いストリングス、ヒップホップ調のビートが印象的な1曲。「Blue Jeans」はラナの愛したいという欲望が題材になっている。「I will love you ‘til the end of time, I would wait a million years / この世の終わりまであなたを愛し続ける,  百万年でも待っている」という一節は、彼女にとっての生きる意味、つまり恋をすることを端的に表している。これは、ラナがヴィンテージの車やハリウッドの全盛期などをしばしば歌詞に登場させることにも表れる50年代の精神性への回帰でもある。

 

1位「Born To Die」 (『Born To Die』、2012年)

ラナ・デル・レイらしいスタイルの「Born To Die」の歌詞は曲名にも表れている通り、彼女ならではの消沈した物憂げなものだ。同名アルバムからのサード・シングルである同曲のビデオには、それまでの楽曲より多額の予算が掛けられ、それが映像にも表れている。ヨアン・ルモワンヌが監督したビデオでは、ラナが脇に2頭のベンガルトラを従え、フォンテーヌブロー宮殿の玉座に座っている。彼女のビデオでも特に印象的な場面のひとつだ。

 

Written By Sorrell Forbes


ラナ・デル・レイ『Norman Fucking Rockwell!
 2019年8月30日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify



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