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カニエ・ウェストのベスト・サンプリング20曲:ヒップホップに革命をもたらした楽曲

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Photo courtesy of Def Jam

カニエ・ウェスト(Kanye West)ほど長い音楽の歴史を深く、あるいは巧みに掘り下げたアーティストはほとんどいないだろう。ジェイ・Z、リュダクリス、アリシア・キーズらのプロデューサーとして活躍したキャリアの初期から、ヒップホップ界で最も影響力のあるアーティストとしての華々しい経歴に至るまで、カニエはラップというものの構成要素を再定義し続けてきた。

よく知られたクラシックを魅力的な繰り返しに編集したり、ヒップホップのサンプリング曲選びに全く新たな視点を取り入れたことで、若い世代のリスナーたちにソウル、ファンク、サイケ、ハウスやゴスペルのクラシックを紹介してきたと同時に、彼の革新性はいつも私たちを驚かせている。その証拠に、これからカニエ・ウェストの最も優れたベスト20のサンプリングを使った楽曲を見ていこう。もしあなたが考えるベストがここになかったら、記事下部のコメント欄を通じ、是非知らせて欲しい。

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20位 ロイヤル・ジェスターズ「Take Me For A Little While」

カニエの2018年のアルバム『Ye』のラストから2番目のトラック「Ghost Town」で、彼は自身の成功の原点であるソウルフルなグルーヴへと回帰した。ヴァニラ・ファッジのヴァージョンで広く知られる「Take Me For A Little While」のロイヤル・ジェスターズによる録音は、カニエのヴァースをより力強いものにしている。

・このサンプリングを使ったカニエの曲は「Ghost Town」

Ghost Town

 

19位 ジェームス・クリーブランド&ザ・サザン・コミュニティ・クワイア「God Is」

カニエ・ウェストの2019年のアルバム『Jesus Is King』の核心はゴスペルである。ゴスペルが彼の新曲群にインスピレーションを与え、またいくつかの楽曲のサンプリングの元ネタにもなっていることもこの点を裏付けている。”キング・オブ・ゴスペル”として名高いジェームス・クリーブランドの同名の楽曲に素材を求めたこの「God Is」は、ウェストがポップ、ジャズ、ソウル、さらにはゴスペルをも見事に融合させることができると実証している。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「God Is

God Is

 

18位 ティアーズ・フォー・フィアーズ「Memories Fade」

アルバム『808s & Heartbreak』で、カニエ・ウェストは原点に立ち返り、自身のプロデュースによるヒップホップとR&Bの融合のためにサンプリングを援用している。もっとも同作には例外もあり、その数少ない例の一つが「Coldest Winter」だった。彼はここで、ティアーズ・フォー・フィアーズの哀愁漂うシンセ・ポップをベースに、深い喪失感を表現している。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Coldest Winter

Kanye West – Coldest Winter

 

17位 24カラット・ブラック「I Want To Make Up」

プシャ・Tが2018年に発表し、広く成功を収めたアルバム『Daytona』を、カニエは単独でプロデュース。サンプリングの最高の手本と言い得るトラックを作り上げた。シンシナティ出身のグループ、24カラット・ブラックによる忘れられたクラシックの悲しげなソウル・フレイヴァーは、『Daytona』収録曲「Infrared」を効果的に彩っている。

・この曲をサンプリングに使ったカニエによるプロデュース曲はプッシャTの「Infrared

Pusha T – Infrared (Audio)

 

16位 ホール・トゥルース「How Can You Lose By Following God」

アルバム『Jesus Is King』に収録した「Follow God」で、カニエは、自身にインスピレーションを与えたゴスペルのよりファンキーな側面に焦点を当てている。カニエは知名度が高いとは言いがたい、信仰心に溢れた「How Can You Lose By Following God」 (1974年) をベースに、躍動感に富んだリズムのヒップホップ・チューンを作り上げた。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Follow God

Kanye West – Follow God

 

15位 パスター・TL・ベネット「Father I Stretch My Hands」

2010年代に入るまでどちらかといえば知られざる存在だったシカゴの牧師が1976年に発表したゴスペル・クラシック「Father I Stretch My Hands」、この曲はスティーヴィー・ワンダー風のあたたかさを備えたソウルフルな楽曲だ。カニエはアルバム『The Life Of Pablo』で、この曲を重用し、同曲をサンプリングした2部構成の作品「Father Stretch My Hands Pt. 1」と「Father Stretch My Hands Pt. 2」を収録した。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Father Stretch My Hands

Father Stretch My Hands Pt. 1

 

14位 ミスター・フィンガーズ「Mystery Of Love」

カニエはアルバム『The Life Of Pablo』の収録曲のひとつ「Fade」にディープ・ハウスの古典曲2曲の要素を取り入れ、ヒップホップとの融合を試みた。そのうち1曲はハード・ドライヴの「Deep Inside」、もう1曲はラリー・ハードがミスター・フィンガーズ名義で発表したこの伝説的なナンバーだ。こうした試みの結果、彼は、きらびやかで斬新なトラックを仕上げたのだった。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Fade

Kanye West – Fade (Explicit)

 

13位 シャーリー・バッシー「Diamonds Are Forever (ダイアモンドは永遠に)」

それがどれほど有名な楽曲であっても、カニエはサンプリングすることに躊躇いを覚えない。そんな彼だからこそ、シャーリー・バッシーが歌った”007”映画のテーマ曲に新たな命を与え、自身のヒット曲「Diamonds From Sierra Leone (Remix) 」を生み出したのだった。

そしてカニエは、今日のダイアモンド貿易の倫理について徹底的に調べ上げた末にこれを完成させている。そして同曲は、グラミー賞で最優秀ラップ・ソングに選ばれ、かのバッシー本人からの賞賛という最高の栄誉を得たのである。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Diamonds From Sierra Leone (Remix) 

Diamonds From Sierra Leone (Remix)

12位 アーサー・ラッセル「Answers Me」

カニエ・ウェストはしばしば意外な楽曲をサンプリングしてみせるが、アーサー・ラッセルが1980年代半ばに発表したこの前衛的な楽曲がヒップホップに馴染むと予測できた者はほとんどいなかったにちがいない。アルバム『The Life Of Pablo』に収録された「30 Hours」で、ウェストは「Answers Me」の風変わりなエコーがかかったヴォーカル・パートとチェロの響きを、彼のキャリアの初期に思いを馳せた駆り立てるようなヒップホップ・ナンバーに溶け込ませている。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「30 Hours

30 Hours

 

11位 アレサ・フランクリン「Spirit In The Dark」

カニエ・ウェストのデビュー・アルバム『The College Dropout』サウンドを決定付けていたのは、オリジナル音源よりもテンポとピッチを上げてサンプリングされたソウル・ナンバーだった。そうした手法が用いられたトラックの中でもとりわけすばらしい「School Spirit」は、彼の天才的な技量を印象付ける。彼は、「Spirit In The Dark」に聴けるアレサ・フランクリンのゆったりとしたブルージーな歌唱と悲しげなピアノ・プレイを活用し、ユーモラスで陽気な”チップマンク・ソウル”に仕立てたのだ。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「School Spirit

School Spirit

 

10位 スティーリー・ダン「Kid Charlemagne」

アルバム『Graduation』のハイライト・チューン「Champion」で、ウェストは、スティーリー・ダンの1976年のフュージョン風のアルバム・トラックのエネルギッシュなフックをサンプリングしている。迫力のあるビート、レゲエ調のシャッフル・リズム、1980年代のシンセサイザーのサウンドが現代のヒップホップ・クラシックに結実している。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Champion

Champion

 

9位 カーティス・メイフィールド「Move On Up」

アルバム『Late Registration』からの4番目にして最後のシングル曲「Touch The Sky」は、カーティス・メイフィールドによる1970年のソウル・クラシックのピッチを落として使用。その魅力的なフックが、ウェストとその仲間のラッパー、ルーペ・フィアスコの、自らの経験のみを信じるという自己実現的なリリックを後押ししている。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Touch The Sky

Kanye West – Touch The Sky (MTV Version) ft. Lupe Fiasco

 

8位 キング・クリムゾン「21st Century Schizoid Man」

サンプリングというものの最高の例の一つともいうべき「POWER」には、コールド・グリッツの「It’s Your Thing」やコンチネントNo.6の「Afromerica」といった楽曲が巧みに活用されている。しかし、それらの中でもキング・クリムゾンが1969年に発表したこのサイケデリック・ロックの名曲の使用は白眉だ。狂気をはらんだヴォーカルとドラムの激しいビートは、「POWER」に勢いを与え、これを圧巻のトラックにしている。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「POWER

Kanye West – POWER

 

7位 ボン・イヴェール「Woods」

アルバム『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の収録曲のひとつ「Lost In The World」は、複数の異質なものを組み合わせ、予想もしなかったものを作り上げるウェストの手腕を示す好例と言っていいだろう。このトラックで、彼はBon Iverの繊細なアカペラ・ナンバーをヒップホップのアンセムに変化させている。途中に挿入されたギル・スコット・ヘロンの作品のサンプリングもすばらしい。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Lost In The World

Kanye West – Lost In The World (Explicit) ft. Bon Iver

 

6位 ポンデロッサ・ツインズ・プラス・ワン「Bound」

『Yeezus』は、実験的かつ先鋭的なインダストリアル・ミュージックに挑んだアルバムだったが、一方でウェストはソウル・ミュージックの探求も怠らなかった。1971年にリリースされた知られざる名曲「Bound」 (タイラー・ザ・クリエイターの「Boy Is A Gun」にもサンプリングされている) は、『Yeezus』のクロージング・トラック「Bound 2」にきわめて効果的に使用されることで現代に蘇った。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Bound 2

Kanye West – Bound 2 (Explicit)

 

5位 レイ・チャールズ「I Got A Woman」

カニエ・ウェストは、大胆にも、レイ・チャールズのR&Bナンバーの断片を基に、まったく異質の作品を作り上げた。大ヒットしたダンス・ナンバー「Gold Digger」がその作品だ。彼は同曲に、レイ・チャールズの伝記映画『Ray / レイ』 (2004年) でレイ・チャールズを演じ、オスカーを受賞したジェイミー・フォックスを起用している。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Gold Digger

Kanye West – Gold Digger ft. Jamie Foxx

 

4位 ジャクソン5「I Want You Back (帰ってほしいの) 」

ジェイ・Zにその技量を買われた若き日のカニエ・ウェストは、彼のアルバムのプロデューサーのひとりに抜擢された。そのアルバム『The Blueprint』は、モータウンの有名曲の、テンポを上げた断片をサンプリングし、シンプルで歯切れのいいたビートと組み合わせることで、ヒップホップにおけるサンプリングの有効性をあらためて印象付けた1枚だった。

カニエは、同作からシングル・カットされた「Izzo (HOVA)」に、ジャクソン5の色褪せることのない名曲「I Want You Back」を使用。原曲が持つ肯定的な精神を些か損なうことなく魅力ある作品を作り上げている。

・この曲をサンプリングに使ったカニエによるプロデュース曲は「Izzo (HOVA)

JAY-Z – Izzo (H.O.V.A.)

 

3位 ダフト・パンク「Harder, Better, Faster, Stronger」

カニエは、自身にインスピレーションを与えたフランス出身のデュオ、ダフト・パンクによる2001年の大ヒット・ダンス・ナンバーを自身のトラックに使用。影響力を増しつつあったエレクトロニック・ミュージックをヒップホップの世界に持ち込んだ。「Stronger」は、シングルとしてリリースされると世界中で大ヒットを記録。エレクトロ・ダンス・ミュージックとヒップホップの独創的な融合によってカニエは新たな層のファンを獲得した。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Stronger

Kanye West – Stronger

 

2位 ニーナ・シモン「Strange Fruit (奇妙な果実) 」

『Yeezus』収録曲にあってもとりわけ重要な「Blood On The Leaves」で、ウェストはこの上なく大胆に、しかも一切妥協することなく、公民権をテーマにしたニーナ・シモンの人気ナンバーをサンプリング。人間関係の破綻を題材にした苦い物語と重ね合わせた。この組み合わせはきわめて効果的で、「Blood On The Leaves」は今も聴き手を引きつけてやまない。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Blood On The Leaves

Blood On The Leaves

 

1位 チャカ・カーン「Through The Fire」

よく知られている通り、カニエのソロ・デビュー・シングル「Through The Fire」は、彼がきわめて深刻な交通事故に遭ったあと、口の中にワイアーをいれた状態で作られ、レコーディングされた。ピッチを上げたチャカ・カーンの「Through The Fire」のサンプリングも魅力的なこの曲で表現されているのは、真摯に自らを省みて感じた偽らざる思いだ。今を大切に生きる、そんな決意が表明されたこのトラックは、現在もなお、彼のキャリアを決定付けた瞬間の記録であり続けている。

・この曲をサンプリングに使ったカニエの曲は「Through The Fire

Through The Wire

Written By Paul Bowler


カニエ・ウェスト『DONDA (Deluxe)』
2021年11月14日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



 

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