ジェームス・ブラウンのベストソング20:ファンク/ソウル界に燦然と輝く名曲選

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Photo: David Redfern/Redferns

合理的な考えを持つ人であれば、“ジェームス・ブラウンは20世紀以降でもっとも影響力あるアーティストの一人である”という意見にまず反論はしないに違いない。1933年5月3日にサウスカロライナ州バーンウェルで生まれ、その後ジョージア州オーガスタで育てられたブラウンは、若いうちからゴスペル・グループに所属して歌に親しみ、アメリカ南部の各地で歌を披露したという。そして、友人のボビー・バードを中心としたパワフルなR&Bグループ、フェイマス・フレイムズに加入したことで、ブラウンはスターへの階段を上り始めた。

刺激的なパフォーマンスで知られ、常に革新性を追い求めてきたジェームス・ブラウン。そんな彼が残した作品群は、音楽史に類を見ないほど多様性に溢れている。1950年代には感動的なバラード、60年代には熱烈なR&Bナンバー、70年代には社会問題にも切り込んだ最高にファンキーな楽曲、そして80年代にはポップなソウル・サウンドのヒット曲と、彼は時とともにその作風を変化させてきた。

だがそれは、移りゆくポピュラー・ミュージック界の潮流にただ合わせていたわけではない。むしろほとんどの場合、彼こそがその潮流を先導していたのだ。

1980年代に入ると、ヒップホップがアメリカ文化に革命を起こし、メインストリームの音楽として爆発的に広まっていった。そしてそれとともに、先鋭的かつ革新的な新技術としてサンプリングが登場した。そこで、魅惑的なグルーヴ、強烈なドラムのブレイク、エネルギッシュなヴォーカルや管楽器のリフなどを取り入れたいヒップホップ界のプロデューサーやDJたちは、自然とブラウンの作品に目を向けるようになった。それ以来、数え切れないほどのDJやプロデューサーたちが、ジェームス・ブラウンの代表曲の断片を自分たちの新曲に使用している。それにより、ブラウンの音楽的なDNAはどこまでも広がり続けているのである。

彼が発表したスタジオ・アルバム、ライヴ・アルバム、コンピレーション・アルバムは数十作に上り、それ以外にも彼は、レイ・コリンズやJ.B.s、ヴィッキー・アンダーソン、ボビー・バードなど関わりの深いアーティストたちのヒット曲を数多くプロデュースしている。そのため、膨大なジェームス・ブラウンの作品群をすべて網羅したリストはどこにも存在しない。そこで、ここでは彼の驚くべきキャリアへの入門編として、20の代表曲を紹介することにしよう。

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バラード・ナンバー

1. Try Me / 2. Please, Please, Please / 3. Bewildered / 4. I Love You, Yes I Do

ジェームス・ブラウンは、深い感情を込めてソウルフルなバラード曲を歌い上げることができた。ゴスペルやブルースの伝統に親しむことで身につけたこの技術は、彼のもつ大きな武器だったのである。ヒット曲であり紛れもない名曲である「Try Me」や「Please, Please, Please」はもちろん、彼は同じような凄まじいエネルギーを「Bewildered」や「I Love You, Yes I Do」などのバラードにも込めることができた。

また、ブラウンは重々しく張り詰めた声で歌うことで、荒々しさや訴えかけるような切迫感をそうした楽曲に加えてみせた。バラード歌手としての彼は、心の痛みと喜び、愛情と喪失感といったものが入り混じる気持ちを歌で表現できたのである。

 

 

ファンクの原点

5. I Got You (I Feel Good) / 6. Papa’s Got A Brand New Bag / 7. I Got The Feelin’

ジェームス・ブラウンのキャリアにおいて、60年代中〜後期は驚くほど多作で革新性に満ちた時期だった。その中でブラウンは「I Got You (I Feel Good) 」「Papa’s Got A Brand New Bag」「I Got The Feelin’」といった自身の代表曲を生み出しただけでなく、リズムに対する新たなアプローチや新たな作曲方法を取り入れた。

8. Cold Sweat

この新しいアプローチは結果として、音楽の歴史そのものを変えることになったのである。例えば1967年に発表した「Cold Sweat」では、各小節の一拍目を大きく強調することで、本来はメロディを奏でる楽器でリズムを刻んでみせた。こうした型破りな手法の開発によって、現在のようなファンクが誕生したのである。

9. Superbad Pt. 1&2 / 10. Ain’t It Funky Now / 11. Get Up (I Feel Like Being a) Sex Machine / 12. Get Up Offa That Thang

その後も彼は、魅惑的でノリの良いグルーヴが特徴の「Superbad Pt. 1&2」や「Ain’t It Funky Now」などの楽曲のほか、「Get Up (I Feel Like Being a) Sex Machine」や「Get Up Offa That Thang」のようにド派手なアンセムも世に送り出してきた。そのすべてにおいてブラウンは、自身が単なるファンクの開発者ではなく、常にそのサウンドを進化させていく革新者であることを証明してきたのだ。

 

メッセージ性の強い楽曲

13. Say It Loud – I’m Black And I’m Proud / 14. It’s a Man’s Man’s World

ジェームス・ブラウンの人気と創造性の絶頂期が (彼の楽曲に触発された部分も大いにあるのだろうが) 公民権運動やブラック・パワー運動の時期と重なっていたことは、運命のいたずらといえるだろう。

ブラウンは、アメリカを代表するその他の偉大なミュージシャンたちと同じく楽曲に社会的なメッセージを込めることで、抑圧される人びとの苛立ちや希望を表現しようとした。例えば、「Say It Loud – I’m Black And I’m Proud」では白人優位の世界における黒人としての誇りを歌い、「It’s a Man’s Man’s World」では女性たちの功績を称えている。

15. The Payback

また、「The Payback」に代表されるように、ブラウンはストリートで生活する同胞たちに語りかけるように歌うことも多かった。そうして彼は、黒人労働者たちの苦しみを代弁していたのだ。

 

ヒップホップのDNA

16. Give It Up Or Turn It Loose / 17. Blues And Pants / 18. Mind Power / 19. Papa Don’t Take No Mess 

ヒップホップが誕生したばかりの70年代前半、DJたちはジェームス・ブラウンのファンキーなグルーヴや強烈なドラムのブレイクのほか、彼の代表曲に影響を受けた多くのバンドの作品を自分たちの楽曲に取り入れていた。その後、サンプリングの技術が発達すると、プロデューサーたちは再びブラウンの作品に目を向けるようになった。彼らは管楽器のリフ、ベース・ライン、叫び声、ギターのフレーズ、ドラムといった断片を取り出して繋ぎ合わせることで、まったく新しいサウンドを生み出していったのである。

「Give It Up Or Turn It Loose」「Blues And Pants」「Mind Power」「Papa Don’t Take No Mess」など魅惑的なグルーヴが延々と繰り返される楽曲群は、どれもサンプリングの素材としての人気が高い。

20. Funky Drummer

だが、ブラウンの楽曲の中でもっともサンプリングされているのは、おそらく「Funky Drummer」だろう。何千とはいかなくとも何百もの楽曲に使用されている「Funky Drummer」は、現在に至るまで、音楽シーンの未来を形作ってきた1曲なのである。

ここにタイトルの挙がっていないジェームス・ブラウンの代表曲があると思われたなら、ぜひ下のコメント欄から教えてほしい。

Written By John Morrison



ジェームス・ブラウン『Live At Home With His Bad Self  (2019 Mix)』
2019年10月25日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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