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ビーチ・ボーイズ『Stack o’ Tracks』解説:名曲のインストを収録したカラオケの先駆け

「世界的に有名なヴォーカルをフィーチャーしていないビーチ・ボーイズ(Beach Boys)のアルバム」。そう考えれば、1968年8月19日にリリースされた『Stack o’ Tracks』が、彼らにとって初めて全米アルバム・チャート入りを逃した作品になったのも、さほど意外ではないのかもしれない。
キース・バッドマンの著書『The Beach Boys』では、本作を“1960年代のメジャーなロック・グループが発表したアルバムの中でも、最も奇妙な作品のひとつ”と評している。後年、Mojo誌はさらに、本作を「カラオケの先駆け」とも呼んだ。しかし、この一風変わったアルバムは、ビーチ・ボーイズの熱心なファンにとっては、それまでに発表されたヒット曲や重要なアルバム収録曲の数々を、自分たちでリード・ヴォーカルを取って歌える絶好の機会を提供する作品でもあった。
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歌いたくなるアルバム
収録された15曲のインストゥルメンタル・ヴァージョンは、1963年の「In My Room」「Catch A Wave」「Surfer Girl」までさかのぼり、同年のクリスマス・アルバムからは「Little Saint Nick」も選ばれている。
一方、『Stack o’ Tracks』には、わずか6週間前にリリースされたばかりのシングル「Do It Again」のバッキング・トラックも収録された。アルバムが発売された時点で、「Do It Again」は全英チャートの頂点に到達するまで、あと2週間というところまで来ていた。
ビーチ・ボーイズのファンは、歌詞のなくなったこれらの名曲における優れた演奏、アレンジ、プロダクションを味わうだけでなく、その一部になることを大いに促されていた。アルバムには、ベース・ラインやリード・ライン、コード記号、そして一緒に歌うための歌詞を詳しく記したブックレットが付属していたのだ。
たとえば「Wouldn’t It Be Nice」の壮麗なバッキングを聴いてみてほしい。自分もビーチ・ボーイズの一員になったつもりで歌いたくなる誘惑に、果たして抗えるだろうか。
1971年、Creem誌のインタビューで、カール・ウィルソンはこのアルバムについてこう述べている。
「ヴォーカルの下に何があったのかを知ったら、たぶん驚くと思う。それは、実際にヴォーカルを支えているものでもあるんだ。僕たちのレコードから音楽トラックだけを取り出したもの――僕はそれが好きなんだ」
しかし、『Stack o’ Tracks』はその後、急速に人々の記憶から遠ざかっていった。当時はアメリカにおけるビーチ・ボーイズの商業的な人気がかなり低迷していた時期でもあり、アルバムはほどなく廃盤となった。それからわずか6か月後には、彼らの次の新作アルバム『20/20』がリリースされている。
インストゥルメンタル・アルバムだった『Stack o’ Tracks』がイギリスで再び発売されたのは、1976年12月になってからだった。新しいジャケットを採用し、ビーチ・ボーイズ再評価の新たな波に乗ることを狙った再発だった。その猛暑の夏、「Good Vibrations」が再び全英TOP20に返り咲き、さらにベスト盤『20 Golden Greats』が見事に10週にわたって首位を記録していた。
コレクターにとって夢のような作品
残念ながら、この再発盤にはオリジナル盤に収録されていた楽曲に関する音楽的な情報が掲載されていなかった。同様に、Capitolが1990年と2001年にCDで再発した際にも、その情報は収録されなかった。ただし、1976年のUK盤には、再発の意図を説明するためにQ&A形式で書かれた、ユーモアたっぷりのライナーノーツが付属していた。その一部には、こんなやり取りがある。
Q:確かにコレクターにとっては夢のような作品に思えますが、なぜ今になってリリースするのですか?
A:理由は“山ほど(Stack o)”あります。廃盤になったアメリカ盤の中古価格が馬鹿げたほど高騰しているうえ、再発を求める手紙が大量に届いています。でも、それ以上に重要なのは、これがこれまでにリリースされたインストゥルメンタル・アルバムの中でも、最も興味深い作品のひとつだからです。
Q:なるほど、興味深くて、珍しくて、パーティーやディスコにも必携の作品だということは分かりました。ただ音楽的にはどう評価されるのでしょう?
A:あなたは「Sloop John B」を、ヴォーカルなしで聴いたことがありますか?
最後の一言には、ビーチ・ボーイズの楽曲がヴォーカルだけで成り立っているわけではなく、その下にある緻密な演奏やアレンジこそ聴きどころなのだという、このアルバムの魅力が端的に込められている。
Written By Paul Sexton
ビーチ・ボーイズ『Stack o’ Tracks』
1968年8月19日発売
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ビーチ・ボーイズ『Wouldn’t It Be Nice』
2026年4月17日発売
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ビーチ・ボーイズ『The Pet Sounds Sessions Highlights』
2026年5月15日発売
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