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アンスラックスの20曲:唯一無二なスラッシュ・メタル四天王

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Anthrax In 20 Songs Artwork

スラッシュ・メタル四天王のひとつであるアンスラックスは、1980年代に君臨し、後続するメタルの枠組を築いたメタル・スタイルの先駆者である。同じく4大スラッシュ・メタルに入るメガデスメタリカ、スレイヤーが西海岸出身だったのに対し、アンスラックスはニューヨークで結成された。彼らと他の3バンドとの違いは、NY独自の感覚—特にCBGB(*訳注:パンク・バンドが多数出演したライヴ・ハウス)の影響を受けたパンクの強烈さを楽曲に取り入れながら、現代の最も著名な東海岸メタル・バンドであり続けていることだ。加えて、アンスラックスの魅力的なメロディは、その攻撃性と驚異的に正確でスピーディな演奏の割に、強力なフックが満載であることであり、そのこともまた、彼らを四天王の中で唯一無二な存在にしていた。

Spreading The Disease Cover

1981年にバンドを結成したアンスラックスは、それから数年間はラインナップが定まらなかったが、インディペンデント・レーベルのメガフォース・レコードから初のアルバム『Fistful Of Metal』を発表した時には、ほぼ編成が固まっていた。ギタリストでバンドの創始メンバーでもあるスコット・イアンとダン・スピッツ、そしてドラマーのチャーリー・ベナンテの3人を中心に制作されたアルバムによって、彼らはアンダーグラウンドのメタル・シーンで名を上げ、メジャー・レーベルのアイランド・レコードが彼らに目をつけて、セカンド・アルバムのための契約を結んだ。ヴォーカルのジョーイ・ベラドナとベースのフランク・ベロがニール・タービンとダニー・ライカーに取って代わり、アンスラックスのクラシックなラインナップが整った。そして1985年、『Spreading The Disease(邦題:狂気のスラッシュ感染)』が発表され、スラッシュメタルの決定盤のひとつとなった。

Madhouse Picture Sleeve

まだやや荒削りなバンドの姿を捉えた『Spreading The Disease』は、落雷のようなリズム・セクション、スコット・イアンとダン・スピッツの熱狂的なギター、ジョーイ・べラドナの高揚感のあるヴォーカルといった、その後のアンスラックスが長年かけて磨き上げることになった全ての要素を披露していただけでなく、「Madhouse」のイントロでは、彼らの捻りの利いたユーモアのセンスも垣間見せている。しかし、このアルバムでは主に、彼らの多様性が確立された。ドラムとリフが衝突し、ジョーイ・ベラドナが「自立とは自分の決断の責任を取ること」と主張する怒濤の「A.I.R.」はその一例だ。一方「The Enemy」は、再度ジョーイ・ベラドナのヴォーカルのレンジを披露する曲だが、その裏でバンドはヘヴィなグルーヴを鳴らしている。また「Madhouse」は、そのタイトルに相応しく、主人公の悪夢を通して凶暴なスリルを提供する。「Armed And Dangerous 」はオープニングのリフの急襲に続き、バラードで始まって、「俺は邪悪なのか? それとも狂ってるのか?」とジョーイ・ベラドナが問い、チャーリー・ベナンテの獣のようなビートとスコット・イアンとダン・スピッツのツイン・ギターが炸裂する荒々しいスラッシュ・アンセムへと変貌する。

Indians Picture Disc

その答えが何であれ、アンスラックスは盛り上がりを見せていた。このアルバムで彼らはメタリカの前座を獲得し、ツアー後は3枚目のアルバム『Among The Living』(1987年)のレコーディングに取りかかった。リード・シングルの「I Am The Law」は、初めて全英チャート入りした曲となり、32位を記録。セカンド・シングル「Indians」も同様にヒットし、44位を達成した。どちらの曲も、アンスラックスのデビュー以降の進歩を開示しており、「I Am The Law」での彼らは、シンプルさを追求する音楽を軽蔑するかのように、楽々と拍子を切り替えた。パフォーマンスはよりヘヴィーで、全体的により自信に満ちている。そしてジョーイ・ベラドナが5分間もアクロバティックなヴォーカルを披露し、抑制部分との対比をより効果的に表現している。一方「Indians」は、アメリカの先住民族の運命を語る曲で、チャーリー・ベナンテがトライバルなドラムから、短く、鋭く炸裂するビートまで、あらゆる手を尽くして、バンドを前に駆り立てている。彼らの音楽の幅は非常に広く、「Caught In A Mosh」、「Efilinikufesin (N.F.L)」といった他の収録曲も、シングルとして発表できたであろう出来であり、特に前者は、サビでハードコアの影響を受けたコール&レスポンスのヴォーカルが聞ける強力な曲だ。

Make Me Laugh Picture Sleeve

チャーリー・ベナンテはアンスラックスの4作目『State Of Euphoria』の原動力だった。このアルバムからの、推進力の強い2枚のシングル「Make Me Laugh」と「Antisocial」——前者はテレビ宣教師に向けた曲(「イエスは救う/ただし、俺が罰を受けた後にのみ」)、後者は面白い選択のカヴァー曲のひとつで、オリジナルは1980年、フランスのハード・ロック・バンド、トラストがシングルとして発表——が、それを物語っている。実は、アンスラックスの次のアルバム、1990年の『Persistence Of Time』のファースト・シングルも再びカヴァー曲で、もともとはイギリスのニュー・ウェイヴ・アイコン、ジョー・ジャクソンがレコーディングした「Got The Time」を、独自にカヴァーした。フランク・ベロの短く鋭いベース・ソロは、バンドの見事な多様性を改めて証明し、セカンド・シングルの「In My World」とアルバム収録曲「Belly Of The Beast」も、同様の凶暴性を持って迫りくる曲で、彼らのハードコア・パンクの影響が前面に出ている。

Bring The Noise Sleeve

彼らが受けた影響としては意外だったのが、パブリック・エネミーだ。チャック・D率いる扇動的なNYのヒップ・ホップ・グループは、同郷のアンスラックスによる音の襲撃「Bring The Noise」に参加した。チャック・Dとパブリック・エネミーは、この曲のオリジナルを1988年に全英チャートで32位にしたが、1991年に、アンスラックスと再度レコーディングした。アンスラックスは再び、四天王の中でもより冒険的であることを明らかにし、この曲は全英14位を達成して、同チャートでの彼らの最高のヒットとなった。そしてアンスラックスは、『Attack Of The Killer B’s』というコンピレーション・アルバムの発表と、そこに収録されたキッスのカヴァー「Parasite」と共に、スラッシュ・メタルの元祖の中で最も注目されているバンドのひとつとして、90年代に突入した。

しかし、変化は進行中だった。バンドが1993年に新作『Sound Of White Noise』の発表と共にシーンに戻った時、ジョーイ・ベラドナは脱退しており、より伝統的なヘヴィ・メタル・ヴォーカリストのジョン・ブッシュが加入した。90年代の初期はグランジがロック・シーンを新しく塗り替えていたが、アンスラックスは自分達だけのサウンドを維持していることを証明した。よりシンプルな作曲と、パール・ジャムやサウンドガーデンのアリーナ級のスケールのサウンドを意識したアルバムは、全米チャートで過去最高位(7位)を記録し、イギリスでは、ファースト・シングルの「Only」が、レトロで新しいブリット・ポップ勢の中で健闘し、全英チャートの36位を記録した。

オリジナル・メンバーのダン・スピッツが時計屋になるために脱退し、1995年に発表された『Stomp 442』は、より削ぎ落とされたサウンドになった。スリムな4人組編成となったアンスラックスは、「Fueled」をヒットさせた。8年後の2003年、アンスラックスは『We’ve Come For Your All』で正確な高速プレイの達人から、よりラジオ向けのサウンドを鳴らすバンドへの変形を終えた。そのサウンドは、リード・シングルの「Safe Home」などに顕著に現れている。

その後、8年間の沈黙の時期が続いた。しかしアンスラックスがアルバム『Worship Music』を携えて再びシーンに戻った時、彼らは再び爆音をもたらし、スラッシュ・メタル界の最高のバンドのひとつであることを改めて知らしめた。メタリカ、メガデス、スレイヤーと組んだ「ビッグ・フォー・ツアー」を終え、20年の活動休止の後でジョーイ・ベラドナが復帰したアンスラックスは、2011年に「Fight’Em ‘Til You Can’t」を発表して自らを解き放った。6分に及ぶ、反抗的な、80年代のスラッシュの全盛期に回帰するよう命じる曲で、それは彼らがキャリアを通して、モットーとしてきたことでもあると思われる。

Written By Sam Armstrong


アンスラックスのアルバム ⇒ CD&LP / iTunes / Spotify

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