ウィルソン・ピケットを含む「Land Of 1,000 Dances / ダンス天国」の変遷

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「Na na na na na…」というフレーズは、いろいろな名曲に含まれていそうなフレーズだ。しかしそれを「…na na na na na na na na na na」と続け、さらに念のために「na na na na」と付け加え、ソウルフルなしゃがれ声を思い浮かべると、曲はひとつに絞られる。そして、そこはもうウィルソン・ピケット「Land Of 1,000 Dances(邦題:ダンス天国)」になってしまう。

1966年7月30日付のチャートが出た週、アメリカ中のR&Bファンやポップス・ファンはまさに「ダンス天国」にいた。なぜなら、ウィルソン・ピケットがアトランティック・レーベルからリリースしたあの名曲がポップ・チャートに入ったのだ。それ以来、ピケットのヴァージョンは「Land Of 1,000 Dances」の決定版となった。しかしこの曲は、それだけにとどまらない波瀾万丈の歴史を歩んできた。ビルボード誌のポップ・チャート入りを果たした楽曲はピケットのヴァージョンだけでなく、さらにに5ヴァージョンもがランクインを記録しているのである。

クリス・ケナー

この曲のカヴァー・ヴァージョンは他にもたくさんある。たとえばファッツ・ドミノもレコーディングしているが、そのヴァージョンはチャートに入っていない。とはいえ「Land Of 1,000 Dances」のレコードの中には、ファッツを共作者としてクレジットとしているものもある。ファッツ自身は、そのクレジットは作者のクリス・ケナーからもらったものだと語っている。つまり、この曲をレコーディングする見返りとして共作者のクレジットをもらった……ということらしい。

 

「Land Of 1,000 Dances」を初めてチャートに送り込んだのは、そのクリス・ケナーだった。彼はルイジアナ州出身の歌手で、1961年には「I Like It Like That」をヒットさせていた。ケナーのヴァージョンは曲に合った南部風の仕上がりになっており、偉大なるアラン・トゥーサンのアレンジとピアノ演奏もそれを引き立てていた。これは1963年に全米チャートで最高77位を記録している。しかし今回まとめたプレイリストを聴けばわかる通り、この段階では「na na」というフレーズはまだ登場していない。

それからまもなく、たくさんのカヴァー・ヴァージョンが生まれた。たとえばミラクルズ、メジャー・ランス、ルーファス・トーマス、ジョニー・リヴァース、さらにはウォーカー・ブラザーズさえもがこの曲を採り上げている。そして、あの特徴的な「na na」というヴォーカルを初めて盛り込んだのはカンニバル&ザ・ヘッドハンターズだった。このカリフォルニア州出身のラティーノ系ヴォーカル・グループが吹き込んだヴァージョンは、1965年にアメリカのポップ・チャートで最高位30位を記録している。またメキシコ系アメリカ人のロック・バンド、ジー・ミッドナイターズが同時期にリリースしたレコードも、最高位67位にまで達した。

そして1966年、ピケットがマッスル・ショールズのフェイム・スタジオに入り、ご自慢の喉でこの曲をレコーディングした。彼がフェイム・スタジオを使うのはこのときが初めて。バックについたのは、スプーナー・オールダム(キーボード)やジミー・ジョンソン(ギター)を含む豪華なスタジオ・バンドだった。そうしてできたピケットの「Land Of 1,000 Dances」は大ヒットし、それによってフェイム・スタジオの名声も高まることになった。やがてアトランティック・レーベルはこのスタジオをソウルのレコーディングで好んで使うようになり、ロック・ミュージシャンの多くもそれに続いた。

ピケットのシングルは1966年7月30日にアメリカのボップ・チャートで初登場76位を記録。最終的には最高6位にまで上がった。またソウル・チャートには1週遅れてランク入りし、9月には首位にまで到達している。その後もこの曲は数え切れないほどカヴァーされており、トム・ジョーンズ、リトル・リチャード、ロイ・オービソン、ティナ・ターナーなども採り上げている。そうしたカヴァーの中でチャート入りした例としては、エレクトリック・インディアン(1969年)とJ・ガイルズ・バンド(1983年)のヴァージョンが挙げられる。

Written By Paul Sexton

プレイリスト『Land Of 1,000 Dances


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