トニー・ベネット&レディー・ガガ、ライヴレポ:レジェンドの最後となったコロナ禍でのステージ

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2021年8月3日で95歳となったトニー・ベネット(Tony Bennett)が、レディー・ガガ(Lady Gaga)と2作目となるコラボ・アルバム『Love For Sale』を10月1日に発売することを発表。そしてこのアルバム発売を記念して2021年8月3日、5日にこの二人のよるコンサート『One Last Time: An Evening With Tony Bennett and Lady Gaga』が行われた。

トニー・ベネットはこの8月5日のステージを最後にコンサートからの引退を発表。まさに“One Last Time”となったコンサートについてニューヨーク在住で、アメリカのエンタメに直に触れられているMegumi Hamuraさんに、コロナ禍で行われたコンサートについてレポートいただきました。

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トニー・ベネットとレディー・ガガによるコンサート『One Last Time: An Evening With Tony Bennett and Lady Gaga』が2021年8月3日、5日にニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで行われ、5日に参加してきた。2014年にリリースされたコラボレーション・アルバム『Cheek to Cheek』はグラミー賞を受賞し、ベテラン歌手トニーと、ポップモンスターガガの60歳差コンビは“トニーガガ”の愛称でも親しまれている。ニューヨーク生まれという共通点を持つ二人のラストステージがマンハッタンの中心地で行われると発表されたのは公演日の17日前で、第一夜の3日はトニーの95歳の誕生日だった。

コンサートの参加条件は、ワクチン接種完了の証明書“ワクチンパスポート”を提示すること、16歳未満の子供はPCR検査の陰性証明に加えてワクチン接種が完了している大人が同行すること。待機列でもその旨のアナウンスとマスクの着用が逐一アナウンスされた。

近年は紙チケットでなく電子チケットが主流のアメリカのライブだが、今日はチケットの印刷が必須。収録が入るなどの理由により会場内で携帯電話が使えないためだ。入場前に特殊マグネットが付いたポーチ(Yondr Pouch)に携帯電話を入れ、ロックがかかって自分では取り出せない仕組みになっている。

会場に集まったのは、クラッチバックを片手にドレスアップした女性やタキシード姿の男性…クラシックな会場の雰囲気にマッチした客層だ。場内はなかなか前へ進めないほどに人が密集していたが参加者の大半はマスクを着けていて、ニューヨーカーたちのモラルを感じた。バーカウンターで乾杯する親子や客席で肩を寄せ合う老夫婦など年齢層は幅広い。

開演直前、突然拍手と歓声が起こり何事かと思ったら、ビル・クリントン元大統領が一般席の通路を抜けて前方の席へと向かっていた。日本人ではコメディアンの渡辺直美やYouTuberのKemioも会場に訪れていたことが各々のSNSで公表されている。

いよいよショータイム。段幕が上がってビッグバンドの豪華サウンドをバックにガガが登場。ドレスをひらつかせてピンヒールでステージを可憐に行き来しながらも時折見せるダイナミックなパフォーマンスはやっぱりガガ様。

トニーとガガの出会いは10年前。「チャリティーイベントに出演した時、トニーに“一緒にジャズのレコーディングをしないか?”と誘われてね」。当時を振り返りながら、彼の生まれ年である1920年代のジャズナンバーたちを歌い上げてゆく。デザイナーの妹が作ったという黒のドレスに衣装を替え、フランス語で「La Vie en Rose」を披露し、ラストはフランク・シナトラの「Theme From New York, New York」で会場全体が大合唱だ。

トランペットとサックスソロのインターバルを挟んでトニーにバトンタッチ。ピアノに寄りかかりながらもチャールズ・チャップリンの「Smile」を堂々と歌う姿は貫禄そのもの。曲が終わるごとにスタンディングオベーションが起こり、その度にトニーは優しい笑顔で「Beautiful!」と叫んだ。

ステージの装飾が夜空に広がる星のように煌めく中でジャズのスタンダード・ナンバー「Fly Me To The Moon」をしっとりと歌唱すると、金色のドレスでガガが再び登場してトニーへバースデーソングを捧げた。互いにアドリブを効かせながらも息を合わせる二人の掛け合い、それをサポートするピアニストや指揮者たちのアイコンタクトとムードで創り上げる1秒1秒はジャズライブの醍醐味。ステージを去る最後の一瞬まで拍手は止むことなく、二人のラストステージの幕が降りた。

終演後、外には観客を目当てに自転車タクシーたちがガガの曲をガンガン鳴らして待ち構えていた。

LGBTQコミュニティーの味方でもあるガガなので、ファンの中には華やかなコスチュームに身を包んだグループも多く見られた。

後日、トニーは今秋に予定していた自身のツアーを中止することを発表。今宵が彼にとって人生最後のステージとなった。

少しずつ日常が戻りつつあるニューヨーク。エンターテイメント離れしていた日々から目が覚めた気分だ。10月にリリースされる二人のニュー・アルバム『Love for Sale』まで、この高まりを継続させたい。

Written and Photo By Megumi Hamura


One Last Time: An Evening With Tony Bennett and Lady Gaga, August 5, 2021

[Lady Gaga Solo] ()内はオリジナルアーティスト
1. Luck Be a Lady (Frank Loesser)
2. Orange Colored Sky (Nat King Cole)
3. Call Me Irresponsible (Jackie Gleason)
4. Someone to Watch Over Me (George Gershwin)
5. I Can’t Give You Anything but Love, Baby (Jimmy McHugh)
6. Bang Bang (My Baby Shot Me Down) (Cher)
7. Coquette (Fats Domino)
8. What a Diff’rence a Day Makes (Dinah Washington)
9. La vie en rose (Édith Piaf)
10. Nature Boy (Nat King Cole)
11. Theme From New York, New York (John Kander)

[Tony Bennett Solo]
12. Watch What Happens (Michel Legrand)
13. Steppin’ Out With My Baby (Irving Berlin)
14. This Is All I Ask (Gordon Jenkins)
15. The Lady’s in Love With You (Frank Loesser)
16. Last Night When We Were Young (Harold Arlen)
17. Because of You / The Good Life / Who Can I Turn To?
18. Just In Time (Dean Martin)
19. One for My Baby (And One More for the Road) (Johnny Mercer)
20. Smile (Charlie Chaplin)
21. When You’re Smiling (The Whole World Smiles With You) (Seger Ellis)
22. Fly Me to the Moon (In Other Words) (Kaye Ballard)

[Lady Gaga & Tony Bennett]
23. Happy Birthday to You (Mildred J. Hill & Patty Hill)
24. The Lady Is a Tramp (Rodgers & Hart)
25. Anything Goes (Cole Porter)
26. It Don’t Mean a Thing (If It Ain’t Got That Swing) (Duke Ellington & His Orchestra)

[Encore]
27. I Left My Heart in San Francisco (Ceil Clayton)



トニー・ベネット&レディー・ガガ『Love For Sale』

2021年10月1日発売
CD&LP / iTunes / Apple Music / Amazon Music



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