ダブリン発新人バンド“Bleech 9:3”:アルコール依存や喪失、痛みを轟音へと変える4人
アルコール依存からの回復で出会った二人
新人バンド、Bleech 9:3(読み:ブリーチ・ナイン・スリー)の始まりには、アルコール依存からの回復を目指す2人の出会いがあった。ソングライター兼ギタリストのバリー・クインランとサム・ダフィーは、ダブリンで別々のバンド活動を続けていたが、10代の頃から飲酒に苦しみ、回復の途上でアルコール依存症の自助グループ、AA(Alcoholics Anonymous)を通じて知り合った。2人は互いのスポンサーとなり、12ステップのプログラムを支え合うなかで、一緒に曲を書き始めた。
バリーは20歳の頃にリハビリ施設へ入り、退所後に再発した経験も持つ。サムも、何度も断酒を試みては再び飲酒することを繰り返し、ついにバリーへ助けを求めた。Guardianのインタビューでバリーは、サムをAAの12ステップの過程で支えたと語っている。バリーにとって、回復はただ酒を断つことではなく、自分自身や家族を壊していく依存の連鎖から抜け出す道でもあった。
同じ街で、同じ夢を抱きながら、同じ問題に苦しんできた相手と出会ったことに、サムは「そんな出会いがどれほど珍しいことか、考え続けていると気が変になりそうだ」と振り返る。バリーも、回復と断酒を通じて互いを深く理解できたと話す。2人は人目を避けて曲を書き、音楽を作ることを新たな人生の目的にしていった。
バリーの弟でベーシストのジェームズ・クインラン、ドラマーのルーク・オニールが加わり、バンドは4人編成に。バリーとサムは2024年夏にロンドンへ移り、活動を本格化させるため、ジェームズとルークにもロンドンへ来るか、バンドを離れるかの決断を求めた。そして2人も2025年初めにダブリンを離れ、4人は新しい街で音楽に賭ける道を選んだ。
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そのサウンド
活動の初期には、ロンドンの小さな会場で、観客がほとんどいない日も演奏を続けた。ライブに通い、プロモーターと出会いながらステージを重ねるうちに評判が広がり、2025年にはKeoやShameのサポートを務めた。ロンドンのブルー・ベースメントでは3夜連続公演を行い、ライブ・アクトとして注目を集めていく。バリーのステージ上での強烈な存在感は、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスに例えられている。
バンド名の「Bleech」はバリーによると、「洗浄」「漂白」あるいは「新たな始まり」を象徴しており、「9:3」はアルコール依存症からの回復を通じて出会ったメンバーたちが歩んだ変容のプロセス、そして聖書の一節(キリストの変容:マルコによる福音書9章3節)に由来しているとしているが、具体的な解釈についてはあえてリスナー自身に委ねている。
Bleech 9:3のサウンドは、90年代のオルタナティブ・ロックを思わせる厚いギターと、鋭く耳に残るメロディー、そして一気に押し寄せる歪んだ轟音が特徴だ。レディオヘッド、デフトーンズ、ニルヴァーナに加え、フォンテインズD.C.やスリープ・トークンからも影響を受けている。
ブレイクのきっかけとなったシングル「Jacky」は、依存症がもたらす破壊と、その渦中に取り残された人々を容赦なく描いた曲であり、Bleech 9:3の強さを鮮やかに示している。ミュージック・ビデオは、イングマール・ベルイマン監督作『第七の封印』に着想を得たものだ。大学で美術史と哲学を学んだジェームズは説明する。
「俺たちは音楽のなかで生き、その言葉を自分たちの声で語れるようになりたい。ロック・バンドを愛し、そこから影響を受けている。でも、音楽以外の場所にも目を向けることが、俺たちにとって大切なんだ」
2人が一緒に書いた最初期の曲のひとつが、バンドの猛烈なデビュー・シングル「Ceiling」だ。回復の道を共にしていた友人を失った経験を歌ったこの曲を、バリーは「新しいページの始まり」と言い、次のように語る。
「自分自身の真実に触れることで、最もつらい状況を曲にできた。回復と、正しく生きることは切り離せない。創作がよい状態にあると感じるには、その両方のバランスが欠かせない」
サムもこう語る。
「自分の世界はずっと広がった。酒や薬物を使い続けていたら、こんなことは何ひとつできなかった。人生はめちゃくちゃになっていたはずだ。別の国で暮らす責任も、バンドの練習にきちんと参加する一貫性も、よいアイデアを持ち寄る力もなかっただろう。断酒は、ペンのカチッと押す部分のようなものだ。自分のなかにはほかの要素もあるが、断酒がなければそれらは機能しない」
そして2026年のハロウィーンに合わせて発表された最新リリースは、ザ・キュアーの名曲「Lullaby」のカバーだ。バンドはこの曲について、次のようにコメントしている。
「“Lullaby”は、俺たちに大きな影響を与えてきた曲で、恐怖を歌を通じて生き生きと描き出している。(デビューアルバム)“Bleed”の制作に取りかかるにあたって、自分たちのスタイルでこの曲を再現することは、新たなサウンドの方向性を探る助けになった。この道のりの今の段階で、この曲とバンドの両方に敬意を表したかった」
現在の評価
デビュー・アルバム『Bleed』は2027年にリリース予定であり、バンドは同年の大規模なツアーも発表している。そして既にUKのメディアからは次のように絶賛の声が上がっている。
Dork
「厚みのある90年代志向のギター、危うさをはらんだ鋭さ、そして実体験によって研ぎ澄まされた歌詞の視点が、特別な何かを生み出している」
Rolling Stone UK
「現在活動するなかで、最もエキサイティングな新バンドのひとつ」
NME
「Bleech 9:3は、依存症と喪失の経験を、轟くような大音量のオルタナティブ・ロックへと昇華させる。その曲は感情をたたきつけ、きしむように響く」
Clash
「音楽シーンで、最も強く心を引きつける新たな名前のひとつ」
The Guardian
「カムデンのパブのステージで、アイルランドのロック・バンドBleech 9:3のフロントマン、バリー・クインランは、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを思わせる強烈な存在感を放つ」
So Young
「Bleech 9:3をめぐる評判が高まるなか、彼らはまだ音源を発表する前から、『次にライブを観るべきバンド』を語る会話のなかで、常に名前が挙がる存在となっていた」
アルコール依存からの回復を経て生まれ、4人がロンドンで音楽に賭けることで進んできたBleech 9:3。その歩みには、痛みや喪失だけでなく、そこから新たな表現を生み出そうとする意志が刻まれている。
Written By uDiscover Team
2026年10月30日発売
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