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東京ディズニーランド®の楽曲「Reach for the Stars」に込められた想いとは?
東京ディズニーランドの夜に体験できる夢のような時間といえば、2024年9月にスタートした、東京ディズニーランドナイトタイムエンターテイメントReach for the Stars。さまざまなキャラクターたちが星に手を伸ばして未来を切り開いていく姿を描き出し、多くのゲストに感動を与え続けています。
シンデレラ城に映し出されるあざやかな映像、夜空いっぱいに広がる光の演出やパイロ、そして壮大な音楽も、欠かすことのできない大切な要素です。
そんな東京ディズニーランドナイトタイムエンターテイメントReach for the Starsのテーマソング「Reach for the Stars」を、クリス・サーネルとの共作で書き下ろし、歌唱も担当したグレイソン・デウォルフに、このたび独占インタビューが実現。
初めて来日して東京ディズニーランドを訪れ、自身が携わったプロジェクトをその目で観て大興奮した直後だという彼に、制作時のエピソードや、日本のファンへの思いを語っていただきました。
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「Reach for the Stars」ができるまで
―― 日本へようこそ!日本での滞在はどうですか?
信じられないくらい満喫している。日本は最高だよ。
――どんなことをしましたか?
着いてまず東京ディズニーランドに行った。それが最初の日。それから代々木公園と明治神宮を散策した。すごく美しくてワクワクしたよ。野球の試合も観に行って、みんなが推しのチームを熱く応援するのを見たのが、今のところ日本に来て一番楽しかったことかな。
――東京ディズニーランドでは「Reach for the Stars」が大人気ですが、その音楽を作ることになった経緯を教えてください。
これまで世界中のディズニーパークのための音楽を提供したり、一緒に仕事をしたりする機会があったけれど、ここまでの規模のものは初めてだったよ。「Reach for the Stars」の音楽を担当したことは、自分にとって大きな意味を持つ出来事だ。一緒に楽曲を制作したクリス・サーネル、通称Oh, Hush!は、僕よりもずっと前からディズニーの音楽に携わっているけれど、彼からショーのために楽曲を作る話を聞いて、その内容にピンときて、僕の本当にやりたかったことだと思ったんだ。
僕が子供の頃に観たディズニー映画に出てくるテーマに通じるものがある曲だから、どうしても書きたかった。夢を実現するために、あるいは窮地を救うために、飛躍して、限界を越えていくことは、僕が大好きなディズニー映画において常に大切にされているテーマだ。だから、僕が「Reach for the Stars」に込めた思いというのは、子供の頃に感じた未来への無限の可能性だ。自分には無限の未来があって、星をつかむくらいに不可能を可能にする力があると信じることなんだ。
――どのようなアイデアやテーマで取り組み始めたのでしょうか?
人々に勇気を与えるようなポップ・ソングを作るためにベストを尽くしたよ。とりあえずピアノとごく軽いオーケストレーションを入れた状態で曲を提出したんだ。「こんなアイデアがあるけど、どうですか?」という感じでね。
そして、ディズニーには才能豊かなアレンジャーや演奏家がたくさんいることも知っていたから、ストリングスや他のパートのアイデアも伝えたんだ。そうすれば、万が一僕の曲が「Reach for the Stars」の楽曲に選ばれた暁には、曲に携わる他の才能ある人たちが、曲を構築していく上で何をすべきかわかるし、彼らのアイデアを活かすツールやリソースにもなると思ったんだ。それも、「Reach for the Stars」がこれほどまでにみんなが楽しめる、感動的な曲に仕上がった理由のひとつだと思う。
―― 曲はどの部分から書いていったのですか?
普段は曲を書くときはサビから始めるんだけど、この曲に関しては、リスナーに対して会話のように語りかけ、鼓舞することがより大事だと思ったんだ。だから<夢を抱いたことはある?>という歌い出しから書きはじめた。子供のころに自分が抱いた、夢を持っていても、それがあまりにも大きくて、高くて手が届かないと感じた様子を描きたかった。
僕にとってはその感覚を曲に込めることこそが、何よりも大事だった。そうして思いを募らせることで<星に手を伸ばしてごらん><夢見ることができれば 実現できるよ>というサビへと自然とつながっていった。これをサビにするのは決めていたんだ。
―― 子供の頃に観たディズニー映画という話がありましたが、思い出に残る作品、今回参考にした作品などはありますか。
たくさんあるよ。お気に入りは、『ライオン・キング』。『カールじいさんの空飛ぶ家』も大好きな作品だ。『レミーのおいしいレストラン』は、実は一番のお気に入りなんだ。『レミーのおいしいレストラン』のテーマである「誰だって料理はできる」にすごく共感するんだ。実は料理は苦手なんだけどね。料理に関係なく、自分が望めばなんだってできるというメッセージが、田舎から出てきて、音楽業界に何のコネもない僕にとって、すごく背中を押してくれるものだった。
他にも、『トイ・ストーリー』や『アラジン』もそう。必ずしも存在感があるわけじゃないような人たちが、偶然も重なってなのか、自分で道を切り拓いてなのか、偉大な存在になる方法を見つけるという物語がたくさんある。とても刺激になる。
―― 『カールじいさんの空飛ぶ家』や『トイ・ストーリー』は、「Reach for the Stars」にも登場しますが、曲を作る前に、どの映画やキャラクターが登場するのか知っていたのですか?それは作曲をする上で参考になりましたか?
もちろん。空を飛ぶというテーマがあったから、いくつかの映画作品が登場することはわかっていた。ショーが「魔法の絨毯」に乗っているような感じだという話をされたと思う。だから、曲のブリッジ部分に<もっともっと高く もっともっと軽やかに 雲を越えて まるっきり新しい世界へ>という意味の歌詞を書いたんだ。願わくは、誰かがこれを聴いて「よし、ここでアラジンを登場させよう」と思ってくれたら完璧だと思った。
そして実際にパークでショーを観たら<もっともっと高く もっともっと軽やかに 雲を越えて まるっきり新しい世界へ>の部分で、まさにアラジンとジャスミンが雲の上を飛んでいくんだ!あの歌詞を思いついてから長い月日を経て、多くの人たちの手を借りて、そこに命を吹き込んでくれたのを目の当たりにして信じられなかったよ。ショーの中で一番好きなパートさ。
―― この曲を書くのに、どれくらいの時間を要しましたか。
基本的な部分は、たぶん2日くらいで書いたんじゃないかな。さらに、それをプロデュースして、ベースとドラムとピアノを少し加えたデモ・バージョンを作るのに1日か2日かかった。相棒のクリス・サーネルが、プロデュースしてデモに命を吹き込むという素晴らしい仕事をしてくれたんだ。
さらにそこに、素晴らしいオーケストレイターやアレンジャー、音楽チームの皆さん、オーケストラと合唱隊のミュージシャンたちも加わって、僕の想像を超えるレベルまで引き上げてくれた。僕の歌録りは、素晴らしいミュージック・ディレクターのロン・コルバードとともに、ロサンゼルスで行ったんだけど、レコーディングを始める前に、オーケストラとコーラスを入れてアビーロードから戻ってきた曲の新しいバージョンを聴きたいかとロンに言われたんだ。あまりのことにとても驚いた。
アビーロードといえば、超有名で、10歳くらいで初めて音楽の世界に魅了されたときに最初に存在を知る、雲の上のスタジオだから。そしてロンは僕を座らせて、再生ボタンを押して、曲を聴かせてくれた。彼は親切にも僕のほうを向かずにいてくれた。
僕は部屋の後方にいたんだけど、よかったよ。涙があふれて、ソファに溶け込んでしまったから。特に、コーラスが入ってきて、金管楽器と弦楽器を盛り上げるところ。一生忘れないよ。コーラスとオーケストラが入ったバージョンを初めて聴いて、自分の曲がこんな壮大なものになるんだって実感した瞬間だった。
―― 歌には、どのような思いを込めましたか。
若い頃の自分、あるいは東京ディズニーランドに家族で遊びにきていて、この曲を耳にするかもしれない子供たちに向けて歌っている感覚で歌いたいと思った。もちろん大人でも構わないんだけど、星に手を伸ばしたっていいんだってことを知らない人に届けられたらいいなと思ったんだ。何度もテイクを重ねて、ワクワク感と同時に優しさを込めるようにした。そして、誰かを誘うような、扉を開けてあげられるような、そんな曲になればいいと思った。
実際に自身の目でみた感想
―― 今回、実際に東京ディズニーランドで「Reach for the Stars」を観て、聴いてこられましたね。ショーを観るまでのパークでの1日の様子を教えてください。
パークは本当に最高だったよ。アトラクションも、オーディオアニマトロニクスも、パークを訪れる人たちが最高の体験ができるように細部にまで気を配られていることに感動した。一目瞭然だったよ。みんなで「美女と野獣”魔法のものがたり“」、「モンスターズ・インク”ライド&ゴーシーク!“」、「プーさんのハニーハント」、そしてもちろん「カリブの海賊」にも乗った。
そうやって日中を過ごしながら、最後の締めくくりにショーを観ることへの興奮と期待が徐々に高まっていった。一日を通して大勢の人たちや子供たちのアトラクションに対する反応を見ていたから、ショーに対する自分以外の人たちの反応を見るのを一番楽しみにしていた。実際、周りを見渡してみると、たくさんの子供たちが観ていたし、撮影して、大事な思い出として家に持って帰る人たちもいて、魔法のようだと思ったよ。
―― 自分の曲が流れた時はどんな気分でした?
感情が込み上げてきた。信じられなかった。これまで何度も何度もSNSで投稿された動画で見たけれど、実際に来て自分の目で観て、自分が東京ディズニーランドにいて体験できていることが信じられなかった。だから、ひたすらその瞬間を味わって、他のことは一切考えず、ただただ楽しもうと思った。
―― 口ずさんだりしましたか?
いや、いや、いや。あまりの興奮と感動でそれどころじゃなかったよ。アニメーションも全部観たかったし。SNSでずっと観ていたから、何が起きるか、展開はだいたい把握していた。でも、実際に生で観ると違った。お城のいろいろな場所に照らされる照明とマッピングが目に飛び込んでくるし、音楽とのタイミングも絶妙だった。だから、ショーに夢中で、一緒に口ずさむことなんてできなかった。でも、それでいいんだ。
―― 録画はしましたか?
一部サビの部分は録画した。でもやっぱり、その瞬間をじっくり味わいたかった。実際に生で観られるのは人生に何度あるかわからない。また機会があることを願うけど、今回は、できる限り自分の目に焼きつけたかった。
―― ちなみに一番お気に入りのアトラクションは?
美女と野獣“魔法のものがたり”だね。
―― どうしてでしょう?
オーディオアニマトロニクスがとてもよくできていたからかな。乗っている間中、本当に楽しめた。列に並んで待っているとき、アトラクションに乗る前から物語が始まっているのも本当にクールだった。それからライド中、音楽がミュージカルの一部になっているのも良かった。
―― 音楽に関して、東京ディズニーランドで感じたことは他にもありますか?
「ディズニー・ハーモニー・イン・カラー」を観て、その音楽を体験したよ。みんなが手拍子をして、ダンサーたちとも交流しているのを見て、すごくワクワクした。それから、アトラクションの列に並んでいる間も、様々なディズニー映画の音楽がスピーカーから流れてくることに感動した。こういったことが、より特別な体験を生むし、アトラクションに入る前から、違う世界にいるような気分にさせてくれるよね。
―― 東京ディズニーランドを楽しめたようで、何よりです。最後に、「Reach for the Stars」の音楽を楽しんでいる日本のゲストにメッセージをお願いします。
僕の音楽を聴いてくれて本当にありがとう。この曲ができるまで、多くの時間と多くの人の愛情が注ぎ込まれました。ですので、皆さんがこの曲を楽しんでくれていることは、僕をはじめ、この曲に携わってきた関係者全員にとって、とても大きな意味を持ちます。この曲は、作曲した僕にとっても、心に刺さる曲です。皆さんの心にも同じように刺さっていると知って、感無量です。
Written by uDiscover Team
『Reach for the Stars』
2024年11月6日発売
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