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テイラー・スウィフトとサブリナ・カーペンター:歴史的売上の新作での共演、関係性と楽曲の考察

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from Instagram @sabrinacarpenter

テイラー・スウィフト(Taylor Swift)がニュー・アルバム『The Life of a Showgirl』を2025年10月3日にリリースした。アメリカでは初週のアルバム売り上げはアデル『25』が保持していた記録を抜き、1週間で史上最も売れたアルバムの記録を樹立しており、世界中で今までを超える大ヒットとなっている。

全12曲入りとなっている新作アルバムには1曲タイトル曲「The Life of a Showgirl」にのみ、ゲストミュージシャンが参加している。そのゲスト、サブリナ・カーペンターとテイラーとの関係、そしてこの楽曲で歌われていることについて、ライターの松永尚久さんに解説いただきました。

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歴史的売り上げ新作での唯一のゲスト参加曲

2025年10月にリリースされたアルバム『The Life of a Showgirl』は、音楽史に残る高セールスを記録し、改めて圧倒的な人気を示したテイラー・スウィフト。そんな彼女に追いつきそうな勢いで、8月にリリースしたアルバム『Man’s Best Friend』が全米・全英をはじめ世界のチャート首位に輝き、26年4月に開催されるコーチェラ・フェスティバルにはヘッドライナーとして出演することもアナウンスされた、サブリナ・カーペンター。

現代ポップ・シーンを語るうえで欠かせない存在となったふたりが、テイラー最新作のタイトル・トラックにて奇跡のコラボレーション。ちなみに本作でのコラボ曲はこれが唯一である。現在の彼女たち(ショーガール)のまとう特別な輝きを感じられると同時に、ショウビズを超えたふたりの強い絆を感じさせる仕上がりになっていると思う。なぜ、この特別な関係が結ばれたのか、またタイトル曲「The Life of a Showgirl」にどんな思いを閉じ込めたのかを考察したい。

Taylor Swift – The Life of a Showgirl (Feat. Sabrina Carpenter) (Lyric Video)

 

テイラーへの憧れ

サブリナは、幼い頃からテイラーに魅了され、ディズニー・チャンネル出演で注目を集める前の2008年頃(9歳の頃)には彼女の楽曲をカバーする映像が残されている(ちなみに彼女が自身の動画チャンネルで最初に投稿したものが、2006年発表曲「Picture to Burn」のカバーだった)。

2010年には自身のX(当時Twitter)にてテイラーのライブを観た感想を投稿している。「彼女のショーはアメージングだった。そしていつか絶対に同じステージに立ちたい!」と。

"Picture to Burn" by Taylor Swift – cover Sabrina Carpenter

 

ステージでの共演

その夢は、10数年後に実現する。着実に女優・シンガーとしてのキャリアを重ねていくなかで、2021年にIsland Recordsへ移籍すると、それまでのキュートでガーリーな雰囲気に加え、世界を翻弄させるミステリアスな魅力もまとうように。サウンドもよりエッジの効いたポップ路線へと変更。さらに人気を拡大させた彼女、ついに2023年に開催されたテイラーの「The Eras Tour」でのサポート・アクト出演がアナウンスされたのだった。

このステージを通じてサブリナは、初見のオーディエンスをも魅了させるパフォーマンスを披露。そんなツアーの途中、オーストラリア・シドニー公演は荒天のためソロ・パフォーマンスができなかったものの、テイラーのステージにスペシャル参加し「White Horse」(2008年発表曲)と「coney island」(2020年発表曲)のマッシュアップをデュエットする。

実はこの楽曲、サブリナが幼少期にカバーしている映像が残されている、ふたりを結んだ思い出のナンバー。自身のインスタグラムには「当時の私は、こんなことが実現するなんて夢にも思っていなかった。本当にテイラーを愛しています」と、パフォーマンスの様子を交えて感動と興奮のコメントを残している。

また、ツアー後にもサブリナはインスタグラムに「テイラーに今までで一番ありがとうと伝えたい。あなたと共演ができるという魔法の瞬間を体感できて、私はとても幸運。あなたのような人は本当にいないですし、今後も現れないと思います!心から愛していますし、このテイブリナ(もしくはすべて)の時代を大切にしたい」と投稿。彼女のキャリア・人生にとって、とても大切な時間であったことを伝えたのだった。

ツアー後のサブリナ人気・快進撃は、みなさんご存知のはず。その多忙なスケジュールをこなすなか、2024年のニューオーリンズ公演にサブリナがサプライズで再出演を果たす。テイラーはインスタグラムに

「あの素晴らしい瞬間を思い出すと、今でも笑顔になります。私がきっとずっと覚えているであろう出来事のひとつとして、私たちのポップ・プリンセス、@sabrinacarpenter によるパフォーマンスで観客を驚かせることができたことを。彼女は過密スケジュールのなかで1日だけオフを取っていました。彼女のコンサートは体力的にもハードで華々しいものですし、オフの時間には休むこともできたはず。私がサブリナをとても尊敬している理由のひとつは、それでもこのようなことをしてくれるから。ファンが予想もしていなかったスペシャルな瞬間を提供するために、わざわざ時間を割く。彼女は本物そのものであり、私たちのためにそうしてくれたことにとても感謝しています」

と感謝を伝え、ふたりの関係は<憧れ>というものから、お互いに刺激しあえるかけがえのない<友人>となったことを感じさせたのだった。

 

二人の共通部分

今や盟友的な存在となっているテイラーとサブリナ。178cmと152cmの身長差もあるせいかテイラーはスマートでインディペンデントな印象。サブリナはクラシカルでフェミニンなイメージで、ビジュアルの方向性に違いが見られるものの、楽曲的には共通する部分も。まず、彼女たちの音楽的ルーツとしてカントリー・ミュージックがある。

テイラーのデビュー作『Taylor Swift』(2006年)が、まさにその流れをくむサウンド志向で、特定のファン層からの支持を得たことをきっかけに、現在のカルチャー・アイコンへと進化していった。そのデビュー作から影響を受けて音楽の道へと進んだと言えるサブリナも、前作『Short n’ Sweet[Deluxe]』にて、カントリー界の女王と呼ばれるドリー・パートンをフィーチャーした「Please Please Please (feat. Dolly Parton)」(2025年)や、最新作のリード曲「Manchild」(2025年)など、その影響をにじませた楽曲を多数発表している。また、ともにポール・マッカートニーのファンであることを公言しているせいか、どんな楽曲にも流麗でリッチなメロディが根底に流れている印象だ。

【和訳】Sabrina Carpenter – Manchild / サブリナ・カーペンター

サウンドだけでなく、歌詞の部分でも<失恋>という共通点がある。テイラーは、ビジュアル同様、凛としたたたずまいを感じさせながらも、二度と思い出したくないと言いながらずっと頭の中に残っている甘くせつない夏の記憶を綴った「Cruel Summer」(2019年)や、別れた恋人との関係を断ち切りたいのに踏み込めない微妙な心境を描く「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012年)など、断ち切れない思いを表現し、多くの共感を得ている。

【和訳】テイラー・スウィフト – クルーエル・サマー / Taylor Swift – Cruel Summer

サブリナは、恋人に対して従順でピュアな雰囲気を出しながらも、自分を道具のように使い捨てにしようとする男性を軽やかに退治(復讐)していく姿を表現している「Feather」(2023年)など、失った恋やかつての過ちを痛快に吹き飛ばす気分にさせる作品が多く、賞賛を得ている。また、さまざまな比喩を駆使し、パートナーと自分の関係から得られた人生教訓など、リスナーに何かを語り・問いかける要素を持っている楽曲も多い印象だ。

さらにふたりともLGBTQ+に対するメッセージも表現。テイラーは「You Need to Calm Down」(2019年)を通じて性的マイノリティへの権利保護を訴え、さらに差別を禁止する「平等法(Equality Act)」を支持するために議員に書簡を送るなど、政治的な行動も起こしている。

Taylor Swift – You Need To Calm Down

サブリナも、一見すると男女の恋愛関係を連想させる楽曲やビジュアルを展開しているものの、最新作からの「Tears」(2025年)でドラァグ・クイーンらと共演、新たな蜜の<味>を知って新世界へ歩んでいく姿を感じさせた。また、プライド月間に出演したフェスでは彼らの権利を主張するなど、今後はそういったメッセージを積極的に発信しそうな予感がする。

【和訳】Sabrina Carpenter – Tears / サブリナ・カーペンター

 

共演曲の意味

独自の感覚を駆使しながらも、どんなリスナー(人々)も勇気づけたり軽やかな気分にさせる楽曲を提供するテイラーとサブリナ。ついに、ふたりの共演がテイラーの最新作のタイトル・トラック「The Life of a Showgirl」で実現した。本作において唯一のフィーチャリング・ソングであることからも、テイラーにとって特別な意味を持っている楽曲であることに間違いないナンバー。

類いまれな才能と美貌を持つショーガール<キティ>を中心に描かれる物語。どんなステージでも完璧なパフォーマンスを披露する<キティ>に、日々賞賛という花束が贈られるものの、その奥で抱えている葛藤、つまりたくさんの人が経験できるはずの幸せを犠牲にしながら、人々を楽しませることへの苦悩を吐露。だが、それを乗り越えて今後もショーガールとしてステージで多くの人を楽しませようという強い決意を表現している楽曲。ともにエンタテインメントの最前線で、たくさん人々からの視線を常に浴び続けるふたりだからこそ表現できる心象に触れられるナンバーだ。

また、アウトロで響く「Eras Tour」のカナダ・バンクーバー公演の歓声からは、このツアーがテイラーとサブリナにとって、ショーガールとして生きていく覚悟と悦びを与えてくれた大切な時間だったということを感じさせる。そして、今後は盟友そしてよきライバルとして切磋琢磨していきながら、それぞれの解釈でポップ・ワールドを開拓していこうとする力強い足音も響いてきた。ポジティブな意味で、テイラーとサブリナはお互いに火花を散らしながら、音楽シーンをさらに面白いものに変えていきそうな予感がする。

Taylor Swift – The Life of a Showgirl (feat. Sabrina Carpenter) (Visualizer)

Written By 松永 尚久


テイラー・スウィフト『The Life of a Showgirl』
2025年10月3日発売
*国内盤CD12月12日発売
CD&LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music


サブリナ・カーペンター『Man’s Best Friend』
2025年8月29日発売
*国内盤CD10月31日発売
CD&LPiTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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