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クイーン、オリジナル・アルバム全15作[リミテッド・エディション]おすすめの3枚 by 増田勇一

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クイーン結成50周年を記念して、長らく入手困難だったオリジナル・アルバム全15タイトルのリミテッド・エディションの再発が2021年5月19日に日本のみで決定。またシリーズ全15タイトルと後日発表される対象カタログ作品の中から、1タイトル購入毎に、先着購入者特典として、全50種類の特製トレーディング・カードがランダムで1枚プレゼントされる。購入はこちら

そんな15タイトルの中で、オススメの3枚を音楽評論家の増田勇一さんがセレクト、それぞれを解説いただきました。

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2011年、クイーンの結成40周年を記念して、最新リマスターを経た彼らのオリジナル・アルバム全15作が、ボーナスEPを伴った2枚組仕様で同時発売された。こうしたリリースは、長年のファンにとっては嬉しさとちょっとした困惑が入り交じるもの。かつて擦り切れるほど聴いたレコードは当然のごとく針飛びしまくるようになり、1980年代後半に初めてCD化された頃にも当然飛びついたけども、当時に比べればCD自体の音質も向上し、SHM-CDなる通常のプレイヤーでも聞ける高音質CDが開発されていたりもして、なおかつ音源自体が改めてマスタリングし直されているとなれば、単純により良好な音質で鑑賞できるというのみならず「従来の盤を聴いていても気付かなかったような音が聴こえてくるのではないか?」といった期待感も頭をもたげてくる。

そうした意味においては当然こうしたアイテムは即買いすべきなのだが、少しだけ躊躇が伴うのは、すでに自宅の棚に同じ名盤が何枚も並んでいたりする現実があるからだ。参考までに筆者の場合、かならずしも収集癖が強いほうではないにも拘らず、これまでの人生におけるベスト・アルバムのひとつである『Queen Ⅱ』については2枚のLPと3枚のCDを所有している。日本ならではの住宅事情を踏まえれば、この数は明らかに多すぎるだろう。ただ、それでもこうした新装盤に手が伸びてしまうのは、やはり基本的には好きな作品をより良い音で聴きたいという気持ちを抑えきれないからであり、同時に、ボーナス・ディスクという強烈な磁力を持った付属物に引き付けられるからでもある。

そんなわけで、2011年に登場した全15作品の2枚組新装盤は当然のようにファンの注目を集め、品切れが相次ぐことになった。そのためこの仕様のCD自体が結果的にレア・アイテム化し、入手困難な状態が続いていたのだが、この5月19日にリミテッド・エディションとして日本のみで再リリースされることになった。気が付けばあれから10年。つまりバンドの結成50周年を記念しての特別再版というわけだ。これはめでたい。10年前に手に入れ損ねてしまった人たちの心の隙間というかCD棚の隙間を埋めるばかりではなく、映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)の公開を機にクイーンの音楽にのめり込み始めた人たちにとっては、あらかじめ入手困難だったこれらのアイテムを一気に揃えるチャンスなのだから。

とはいえ、さすがに15作品を同時に手に入れるというのも大変なことだろう。そして実はここからが本題なのだが、筆者は4月下旬のある日、ひとつの原稿の依頼を受けた。ボーナス・ディスクの内容を踏まえた形で「このタイミングに買うならばこの3枚」というのを選んで欲しい、というのだ。シンプルな注文のようでいて実に難しい。なにしろすべてのリスナーが同じ条件にあるわけではないのだから。

今、改めてクイーンの歴史を丁寧に紐解いてみたいという人たちには、デビュー・アルバム『Queen(戦慄の王女)』(1973年)から年代順に聴いていくという選択もあるだろうが、映画を興味の入口とした人たちには、あの物語と関係の深い作品、たとえばあの農場スタジオで制作された「Bohemian Rhapsody」が収録されている『A Night at the Opera(オペラ座の夜)』(1975年)や、映画のクライマックスとなったLIVE AID開催の前年にあたる1984年発表の『The Works』(同イベントで演奏された「RADIO GA GA」や「Hammer To Fall」を収録)といったところを薦めるべきかもしれない。「Crazy Little Thing Called Love(愛という名の欲望)」や「Another One Bites the Dust(地獄へ道づれ)」といった大ヒット曲を生んだメガ・ヒット作『The Game』(1980年)も、わかりやすさという意味において入門編になり得るものだ。

また、初期のクイーンにあまりにも思い入れが深すぎて80年代の作品を素通りしてしまった方々というのも少なからずいるはずで、そうした向きにはこの機会に同作以降のアルバムに改めて触れてみることを勧めてみたい気もする。

こうして考えてみればみるほど収拾がつかなくなってくるのだが、敢えてここで各作品に伴っているボーナス・ディスクの収録内容のみで、僕自身が推薦したい作品を絞り込んでみようと思う。

 

1. 『Queen / 戦慄の王女』

まずは1stアルバム『Queen』だ。こちらのボーナスEPには、まさしくこのアルバムの裏側を伝えてくれるような音源が詰め込まれている。全6曲の収録曲のうち5曲までは、1971年12月にロンドンのディ・レーン・リー・スタジオで録られたデモ音源だ。同スタジオはその年の9月に開業し、まだ結成から間もないクイーンは、そこのテスト・バンドとなっている。つまり、そこに設置された、当時なりの最新鋭のレコーディング機材の“試し役”となり、無償でプロフェッショナルな環境で録音する機会を得たというわけだ。

のちにトライデント・スタジオで正式にレコーディングされたアルバム・ヴァージョンと聴き比べてみても、アレンジ面などでの大きな差異はない。ただ、当時のメンバーたちの若さ(バンド内最年少のジョン・ディーコンはまだ20歳だった)を考えると、この音源の完成度の高さ、個々の技量の高さには圧倒される。いかにプロ仕様のスタジオで録音されているとはいえ、時間や手間を好き放題掛けられたわけではないはずだし、年齢的には大学の軽音楽サークルのバンドと変わらなかったはずの彼らが、これほどの音源を作っていたというだけでも驚きに値する。

また、そうしたデモ音源5曲に加え、1stアルバム用に録音されていながらお蔵入りになっていたフレディ作の「Mad the Swine」が聴けるのも嬉しいところ。実際にアルバムに収録されていたらかなり浮いていたはずのこの曲は、のちに『Queen』がアメリカでCD化された際にボーナス・トラックとして収録されたり、「Headlong」のシングルのカップリングに用いられていたりもするレア楽曲のひとつだ。

 

2. 『Sheer Heart Attack』

続いて推薦したいのは、第3作『Sheer Heart Attack』だ。こちらのボーナスEPには、「Now I’m Here」のライヴ音源(1975年12月、ロンドンのハマースミス・オデオンでの収録)、「Flick of the Wrist」と「Tenement Funster」のラジオ放送用スタジオ収録音源(1974年、BBCセッション)などがフィーチュアされている。まさにこのアルバムの収録曲たちの同時代的な“裸の音源”にあたるわけで、前出の『Queen』のボーナスEPの場合と同様に、当時の彼らのポテンシャルの高さをリアルに裏付ける物証となっている。

当時、多重録音の多用により完成された音源に対する評価が高まる一方で、そうした手法に頼り過ぎているのではないか、オーヴァー・ダブ多用により実力不足を補っているのではないか、といった懐疑的な声も皆無ではなかったわけだが、これらの音源はそうした雑音を蹴散らすに充分な説得力を持ち合わせている。ことに「Tenement Funster」でのロジャーのヴォーカルの生々しくワイルドな響きには、アルバム・ヴァージョンを凌駕するほどの魅力が感じられる。そうした3曲に加え、コーラスワークの見事さが強調される結果となった「Bring Back That Leroy Brown」のアカペラ・ミックスも面白いし、「In the Lap of the Gods… Revisited」のライヴ音源(1986年7月、ウェンブリー・スタジアム公演時)には、この第3作の発表から12年を経ていたクイーンがどれほど巨大な存在となっていたかを改めて思い知らされる。

僕自身はやはり70年代の作品について並々ならぬ思い入れがあるのだが、この2作品に伴うボーナスEPについては、音源自体の貴重さというよりも、アルバムの背景やその時代感を立体的に伝えてくれるもの、として特に評価したい。もちろん他の作品に伴っているレア音源の数々にも聴くべきものは多いが、時代によってはそうした素材があまり豊富には存在せず、いわゆるシングル・ヴァージョン、シングルのカップリング曲、インストゥルメンタル・ヴァージョンなどがかき集められているケースもある。当然ながら、それはそれで貴重なのだが。

 

3.『Made in Heaven』

もうひとつ、ボーナスEPの内容を基準としながら推薦しておきたいのが『Made in Heaven』(1995年)だ。フレディの他界から4年を経て、生前に録音されていたヴォーカル・トラックを用いながら制作されたという特殊な作品でもあるだけに、いまだにこのアルバムに向き合うのが辛い、というファンも少なくないはずだ。が、やはり改めて向き合ってみると再発見めいたものもあるし、ボーナスEPの内容にも興味深いものがある。

こちらに収録されている全6曲のうち半分ほどはシングル用に編集されたヴァージョンなどで、そうしたトラックにはさほど惹かれないが、是非聴いておきたいのが「I Was Born to Love You」のヴォーカル&ピアノ・ヴァージョンだ。1984年、ミュンヘンのミュージックランド・スタジオで録られていた音源からフレディのヴォーカルとピアノ演奏のみを抜き出したもので、お馴染みのヴァージョンのキラキラとした感触とはまるで違った、生々しい力強さ、そして何よりも彼の歌唱の見事さを実感できるトラックになっている。

これに加え、「Rock in Rio Blues」と命名された音源の味わい深さもまた格別だ。これは1985年1月、そのタイトルが示すように、ブラジルはリオデジャネイロで開催された巨大ロック・フェスの際にステージ上で繰り広げられた即興的なジャム・セッションの模様を収めたもの。同フェスの際に限らず、こうしたジャムは当時の日本公演でも披露されているが、インプロヴィゼーションならではのゆったりとした空気感に触れていると、大観衆を前にリオの暑い夜に繰り広げられているセッションの光景がおのずと脳内スクリーンに浮かんでくる。

あれこれと思いつくままに書いてきたが、もちろんこれら3作品のボーナスEPだけが突出して素晴らしいということではなく、いずれの音源も聴きどころが多い。できることならそのすべてに触れてみて欲しいところだし、この機会に、これまでやや疎遠だったアルバムと向き合ってみるのも面白いのではないかと思う。そして、ひとつだけ念押ししておきたいのは、10年前と同様、今回も品切れには注意すべきだということ。自宅のCD棚に同じ作品が重複することの言い訳を考える前に、まずは欲しいものを確実に手に入れようではないか。

Written by 増田勇一


クイーン【リミテッド・エディション】シリーズ全15タイトル発売決定

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SHM-CD2枚組、各2,934円(税込)
2021年5月19日発売

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