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カニエ・ウェストの映画『JESUS IS KING』公開記念、渡辺志保×ジェーン・スーによるトークショー全文公開

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2019年10⽉25 ⽇にリリースされ全米チャート初登場1位を記録したカニエ・ウェストの最新アルバム『JESUS IS KING』。本アルバムのリリースに合わせて、同タイトルのドキュメンタリー映画『JESUS IS KING』が、北⽶350館以上、北米以外の125館以上のIMAXシアターで公開され大ヒットを記録。そして日本でも12月6日から3日間限定公開となり(1213日~1215日の3日間追加公開決定)、満席になるほどの大盛況となりました。その初日に公開記念で開催された渡辺志保ジェーン・スーの両氏によるトークショーの模様を全文公開します。

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現代芸術映像、IMAXで上映の意味

渡辺:ただいまより『JESUS IS KING』IMAX公開記念トークショウを始めさせていただきます。私は本日の司会進行役を務めさせていただきます渡辺志保と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。こちらにいらっしゃる方はご存知かもしれませんが、この『JESUS IS KING』はカニエ・ウェストの人気ゴスペルイベント、サンデーサービス(Sunday Service)のパフォーマンスを収録したドキュメンタリー映画となっております。

本日はこの作品について、こちらにいらっしゃるジェーン・スーさんにいろいろとお話を伺いながら、これからトークショウを始めてまいりたいと思います。そしてその前に、ご来場の皆様に事前にお願いがございます。本日はマスコミの取材が入っておりますが、映像やお写真などに映り込む場合もございますので、その点ご了承いただければと思います。それでは、お待たせいたしました。ジェーン・スーさん、よろしくお願いします。

スー:よろしくお願いします。こんばんは!

渡辺:こうやってスーさんとね、皆さんの前でお話しをするなんて初めてだから、ちょっと緊張しちゃう……。

スー:「なんでお前?」って皆さん、お思いかもしれないですけども(笑)。すいません。

渡辺:とんでもない。私がblock.fmで『INSIDE OUT』というインターネットラジオ番組を毎週月曜日に放送しているんですけれども。そこでこの『JESUS IS KING』を60分間特集するという放送ちょっと前に行いまして。その時にスーさんがTwitter上でコメントで参加してくださって。

スー:そうそう。その後に志保ちゃんとLINEでやり取りをして。「ちょっとこれ、大至急話した方がいい」っていうことで、近所の喫茶店で2人で『JESUS IS KING』およびカーダシアン家について小一時間話すっていうのをやったんですよね。

渡辺:そうそう。からの、この今日のトークショウということで。もう準備万端という風に申し上げてもいいかもしれないですが。でもこのシアター、すごくないですか?

スー:実はさっき、私たちちょっとここで『JESUS IS KING』の映像を少しだけ。1回、もう映画は見ているんですけども、ここでちょっと見たんですけども。あまりの音のよさと映像の迫力に結構もう本当に「うわっ!」ってなって。今日、ここで見れるのは皆さん、本当にすごいラッキーだと思います。

渡辺:そうそう。で、今年の7月にオープンしたばかりの、本当にもう最新設備と言っていい、整ったシアターなんですけれども。私もやっぱり『JESUS IS KING』を聞いて、そしてこのサンデーサービスって結構、キム・カーダシアンのInstagramとか、いろんなセレブのインスタとか。あとはコーチェラ・フェスティバルだったり。あとはカニエさんが公式に中継をしたりしているのを見ていて。やっぱり「いつか行ってみたいな。いつか私もあの輪の中に入ってハレルヤしたい」みたいに思っていたんですけど。今日はね、たぶんすごい疑似体験感がありますよね。

スー:ここがこうある種の礼拝堂というか、教会に感じられるぐらいの迫力があると思いますし。あとYouTubeとかで結構サンデーサービスの動画が上がってるじゃないですか。あれともまた全然違うというか。

渡辺:ぜんぜん違う。本当に全然違うし、もう全然皆さん、手足が動いてもいいかと思いますし。口ずさんでもいいかと思いますし。そういった楽しみ方も十分にできる内容になっているかなって思います。

スー:現代芸術映像っていう感じですよね。本当に。

渡辺:だから結構今回の映画って、なんていうんでしょう? ミュージックビデオの延長線上にあるものとしても捉えられますし。あんまりそのドキュメンタリー度は高くないのかもしれないですが……。

スー:ドキュメンタリーというよりは、もう映像作品ですよね。きちんと作り込まれた。

渡辺:はい。だから私も最初にこういう映画がアメリカの方ではね、あのアルバムの発売日と一緒にやってるよっていうニュースを聞いた時に「なぜIMAX限定?」って思ってたんですよね。普通の単館とかでやってもおかしくないような内容だと思うんですけど。でもやっぱりここに来て、さっきちょっと拝見して。初めて……。

スー:「ああ、これはIMAXで見ないと全然ダメだな」っていう。

渡辺:カニエ・ウェストのこだわりというのがね、ここにまで。

スー:でも、すごいですよね。『JESUS IS KING』が見れるとなったら初日にこれだけ……平日にもかかわらず、人が集まるっていう。

渡辺:ねえ。満席。

スー:サンデーサービスに参加したい人がこれだけいるっていうね。

渡辺:そう。だから皆さん、志はひとつと言うか。ワクワク感は皆さん、共通していらっしゃるのかなと思うんですけれども。でもスーさんもさっきもちょっとお話に入ってたように、ちょいちょいネット上とかソーシャルメディア上でこのサンデーサービスに関しては既にご覧になっている?

スー:そうですね。フォーラムとかでやっている、全部周りに花が植わっていてやっているスタイルのものとか。まああとどんどん、結構固まってきたじゃないですか。最初は結構屋外で、ある種ちょっとゲリラ性もあるような、ゴスペルクワイアとカニエと……っていう感じだったのが、どんどんどんどんと作り込まれていて。いまはもうフォーマットとして結構しっかりしてますよね。

渡辺:どんどん進化していっている感がね。

スー:その様が結構オンタイムで見れるっていうのが今っぽいのかなと思ったりはしていますけどね。固まっていく様が。

 

プロモーションのためにミュージックビデオを作らない

渡辺:それで結構ね、奥さんのキム・カーダシアンとか、あとはお子さんもね、ちょいちょい参加していたりとか。結構回を重ねるごとに楽曲の内容も変わってるし。より自由に娘のノースちゃんが歌っていたりとか。

スー:MVも、もうね。

渡辺:そう。『JESUS IS KING』からいま、「Follow God」と「Closed On Sunday」という2本のミュージックビデオが上がっていて。で、結構意外だなと思ったのは、その「Follow God」のミュージックビデオにはカニエの実のお父さんが出ていて。

Kanye West – Follow God

 

スー:そうなんですよね!

渡辺:これ、なかなかですよね?

スー:ひたすらお父さんとカニエが……。

渡辺:牧場をあの四輪のでっかいごつい車で回るっていう。

スー:そうそう。なんかあれを見た時にジェイ・Zとやっていた時の「Otis」……あの時は結構ブリンブリンな車でやっていたんですけども。「でも、そう考えるとカニエもずいぶんと変わったな」って思って。

渡辺:本当ですね。ちょうど2010年代の幕開けにその「Otis」が発表されていたと思うんですけども。たしかに、あのアジズ・アンサリと一緒にグルグルグルグルと高級車で回っていたけども。いまは、2019年のカニエは違うんだなって。

JAY Z, Kanye West – Otis ft. Otis Redding

 

スー:向いている方向が全然違うんだなっていうのをね、あの2本を見比べることで思いましたね。やっぱり自己顕示とか、ヒップホップの昔からあるフォーマットのブラフも含めてのセルフボースティングっていうことではもうないんだなって。そのフェイズはもうとっくの昔に超えているんだなって。

渡辺:そうかも。そうね。『JESUS IS KING』のアルバムの中でもやっぱり「僕はもう誰の奴隷でもないし、あなたのエンターテイメントのために歌っているわけではないんだ」みたいなことを言っていたから。どんどんと、その自分の中での解脱というか。

スー:なんか奉納感がすごい出てきましたよね。あの……「ついこの間」って言ってももう10年ぐらいになるんですけども。いわゆるギョッとするニュース……『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の頃とかもそうだったですけども、ギョッとするニュースとかを出して、人の耳目を集めるっていうやり方をかなり意図的にやっていた時期もあったと思うんですけども。それに自分で疲れてしまったのか、取り込まれちゃったのか。もう誰かを驚かせるためとかじゃなくて、自分の中から湧き上がったものを神に奉納するみたいな。だからなんかMVを久しぶりにワーッと見ていて思ったんですけど、もうほとんどリップシンクしないんですよね。

渡辺:ああ、そうかもしれない。音楽のミュージックビデオってだいたい皆さん、音に合わせて口パクで歌っているっていう。まあ、それがテンプレですけどね。

スー:それこそね、「Runaway」ぐらいからリップシンクがほとんどなくなっていて。

渡辺:おっしゃる通りかも。で、前作のアルバム『ye』もミュージックビデオがない。その前の作品『The Life of Pablo』も「Famous」しかないから、もうプロモーションのためにミュージックビデオを作るっていうところにはもういないんですよね。

スー:たぶんね。そう。だからそれこそ「Stronger」の頃とか『Graduation』の頃とかは全然リップシンクしてるし。

渡辺:かつ、やっぱりなんか派手なファッションをしてらっしゃいましたしね。

Kanye West – Stronger

 

スー:いまはサンデーサービスはSKIMSのゆったりしたみたいな。みんな同じ色の服を着てね。

渡辺:コンフォートなね。で、かつ「Closed On Sunday」っていう1週間ぐらい前に発表になったミュージックビデオはまあ、奥さんのキム・カーダシアンと4人の子供も一緒に出ていて。

スー:あとクリス・ジェンナーも出ていますからね。

渡辺:キム・カーダシアンのお母さんのクリス・ジェンナー。そして、そのカーダシアン家の長女であられるコートニー・カーダシアンも。

Kanye West – Closed On Sunday

 

スー:なんかでも、キムと結婚してからやっぱりファミリーみたいなものに対する帰属意識とか。「とにかく内側さえしっかりしていれば、あとはいいんだ」っていうカーダシアン家ならではのあの価値観にカニエもすごい影響を受けてるんじゃないかな?っていう。まあ、ご本人はちょっと前に自分の母親を亡くしたりとかあったじゃないですか。というのもあるんだろうけど、とにかくファミリータイズ。家族の絆みたいなのがカーダシアン家はすごいじゃないですか。

渡辺:ねえ。まあ、それであれだけ巨額の富を築いているぐらいですから。

スー:だからやっぱり思考がだいぶ変わってる。私たちは本当にそれをただ、出されたものを楽しむだけっていうところだと思いますけども。

渡辺:そうですね。だから「Follow God」のミュージックビデオも最後に「このミュージックビデオは自分の父親をこのワイオミングの牧場(ranch)に呼んで撮ったミュージックビデオです」っていう。でも、その父親とこうやって……「自分の父親が最高のベストフレンド(親友)だということに気づくのに42年かかった」というようなディスクリプションが流れますけど。やっぱりカニエ・ウェストって最愛の母・ドンダさんを亡くしたということもあって、きっとその家族を求めるバイブスっていうかね。ずっとそういうモードでいたんですよね、きっと。

スー:なんかその、ジーザス(神)に対しての帰依の感じとかも……まあ、ちょっとニューエイジっぽい感じはありますけども。あれとかも含めて、なんだろな? 相当疲れてたんだろうなって。まあ、ヒップホップのアーティストとかでも、メイスとかも含めていきなりある日突然、ガッと牧師になったりしますよね。もっと昔だとMCハマーとかもそうですし。

渡辺:カーティス・ブロウもヒップホップチャーチを建てたりしたっていう話もありますからね。

スー:だから、その行き着く先というのは最終的には「自己受容」みたいな形になっていくのかなと思いながら。

渡辺:うん、うん。そうですよね。で、カニエ・ウェストは最初のデビュー当時から「Jesus Walks」という曲なんかもありましたけど。で、だんだんだんだん、そのちょっとクリスチャンとしての自分というかね、神を信じる信仰心というのを露わにしていって。で、今年のアルバムでは『JESUS IS KING』ということで、その一切カースワードも排除したという。

スー:そうなですよね。だから「もう昔の曲はライブでやらない」みたいなね。

渡辺:そう。だから「ワードや内容を変えてパフォームする」っていう風にも言っていましたし。

スー:まあ、でもわからんですよ。前言撤回みたいなことは……だってついこの間までね、全然違うことをやってた人でもあるし。あとは政治的な志向性っていうところでは、いいまだにちょっとね。

渡辺:そうですね。トランプ大統領を熱烈支持して。まあ、そこがやっぱりカニエっぽいなって思うのは、あれだけトランプ大統領への愛情とか憧れを語ってはいるが、自分は大統領選では投票をしていないんですよね。なんかね、そこのちょっと矛盾してるところも……。

スー:フフフ、でも「(大統領選に)出る」って言い出したじゃん?(笑)。

渡辺:そうそう。今度は自分が出馬する方にね。2024年の大統領選に。

スー:ねえ。どうなるのか。

渡辺:プラスね、キム・カーダシアンもいま、法律の勉強をしていて、弁護士になるみたいな話もあって。

スー:そうですね。カーダシアン家の話になると、たぶん3時間ぐらいここで話すことになるんで(笑)。

渡辺:今日、さっきも楽屋でね、今日のコスメティックスの話からこう、ね。

スー:今日、私はキム・カーダシアンとカニエ夫妻に敬意を表するために、キム・カーダシアン・ウェストの化粧品を使って化粧してきました。KKW BEAUTYで。

渡辺:KKW。私はね、リアーナのFENTYでメイクをしてきたので(笑)。

スー:2人とも完全に食われているっていう(笑)。

渡辺:かぶれているっていうね。

スー:要するに、思うつぼですよ。

渡辺:フフフ、もういくらカニエに……っていうね。

スー:靴は間違えてナイキを履いてきちゃったんですけども。

渡辺:カニエはアディダス派ですからね。ドレイクはナイキ派みたいな。ありますよね。

スー:だからその夫婦で音楽とかだけじゃなくて、全く違う事業で……だって、スニーカー(Yeezy)は1000億ぐらい……。

渡辺:そう。もうフォーブスでももう「カニエ・ウェスト・エンパイア」っていう風に言われていますからね。

スー:でも、そこのお金をじゃあなにに使うか?っていうと、たぶんこういうことに使って、自身を癒している方向に行ってるんでしょうね。

渡辺:だから本当に不思議なアーティストだし、なんて言うんでしょう? まあ30分強のドキュメンタリー映画をこれから見ていただくわけですけれども。それにこれだけ多くの人がやっぱり集まる。それだけのカリスマ性もさることながら……。

スー:気になるんじゃないですかね、やっぱり。情報だけああやって入ってきても、それこそインスタの動画だったりするとちょっと画像が粗かったり、全体像がわからなかったり。あとは今回のアルバム自体がちょっと予想をはるかに超えていたというか。ただ、いま配信でみんな、サブスクリプションで音楽を聞くようになってからっていうことを考えると、1枚のアルバムを1枚アルバムのままで聞かせるってもう、ほぼ不可能に近いというか。みんな誰かのプレイリストとか、今日のHOT 100だったりとか。アルバムを聞き始めてもシングルを聞いて飛ばして……みたいなことになっていく中で、いわゆるAメロ、Bメロ、サビ、フックがあって。またバースが来て……っていうようなものを10回繰り返したところでもう聞かないじゃないですか。

渡辺:そうかもしれないですね。

 

ファレルのルサンチマンは晴れたのに、どうしてカニエは晴れないのか?

スー:というところで、ああいう塊としてのガッというアルバムを出してきたっていうのは、超個人的なことをやってるんだと思うんですけど、すごいやっぱりシーンに合っているなっていう感じがしましたね。止められないじゃないですか。30分だと。

渡辺:本当、そうですね。で、かつやっぱりおっしゃる通り、カニエ・ウェストのここ最近の創作物とかを見ていても、やっぱり超個人的なんですよね。本当に。

スー:スーパー個人的ですよね。

渡辺:やっぱりそれってジェイ・Zとか、あとはスーさんともDMのやり取りをしたその発端ではファレル・ウィリアムスのお名前を出してらっしゃって。やっぱりファレルとかジェイ・Zとはそこが違うっていう。

スー:そうそう。ファレルのルサンチマンは晴れたのに、どうしてカニエのルサンチマンは晴れないのか?っていう話を私たち、喫茶店でずっとしていたんですよね。

渡辺:そう。で、それはカニエ・ウェストのそのエゴの巨大さによるものなんじゃないかと。でもそれをこうやってみんなに……ヘイトされるか愛されるのかは別にしても、みんなの注意を引き付けて、それを芸術作品に高める、昇華するっていうのは本当に天才だなと思うし。私も『JESUS IS KING』のアルバムを聞いて、なんていうか自分では消化しきれない、ちょっとモヤっとしたものが残るっていうか。普通のラップ作品ではないですから。「なんだろうな、なんだろうな、これ?」って思うんだけど。でも、たぶん同じように感じる方はたくさんいらっしゃるのかなと思うんですが。カニエ・ウェストもその、「こういう作品を出しますよ」って言って、じゃあ「100%、OKです!」ってOKを出すディレクターさんとかプロデューサーさんとかはあんまりいないんじゃないかと思うんですよね。

スー:でも全部自分でやってるから。

渡辺:そう。だからその心意気がやっぱりすごいなっていう。その作品をね、どんな形であれ世に出すことを全く恐れないっていう。

スー:だから極端な評価、両極端な評価っていうのがきちっと取れることの方がたぶん、いま人の口にはのぼりやすいんだとは思うんですけど。ただせっかく、そのサンデーサービス……今年の1月からでしたっけ? それを始めて。なんか志保ちゃんはいろいろと知ってそうだから。せっかくいろんな人が来てくださっているので。サンデーサービスとはなんぞやっていうところで言うと、志保ちゃんから見ると、カニエのやらんとしていることはなんなんですかね?

渡辺:なんなんですかね? でも、やっぱりその自分の信仰しているもの。自分が信じているもの。そして恐らく去年、一昨年とカニエ・ウェストは自分が精神疾患のために病院に入院したりとか、トランプ支持とか、奴隷制について発言して大バッシングを受けたりとか。

スー:あれはね、ちょっとびっくりしましたね。

渡辺:大バッシングを受けたりして、相当なダメージをたぶんね、この1、2年でさらに負ってしまったんじゃないかなと思うんですよね。で、そんな彼がたぶん、自分自身も神様を信じること。そしてそれを自分の中でアートにすることで、さっきもちょっと話の中にも出ましたけど。それで大分いま、楽な方向に自分もね、行ってるんじゃないかなと。それでそれを自分の最も得意とする音楽というフォーマットに落とし込んだ時にたどり着いたのがこのサンデーサービスという催しなんじゃないかなって思いますね。

スー:だからその「1回しかない」みたいなことに対してのこだわりが結構強く……まあ、ライブといえばライブですけど。

渡辺:ナマモノっていうね。

スー:今回、でも映像、監督はどなたが撮っているんですか?

渡辺:監督はですね、ファッションフォトグラファー。そしてこれまでにレディ・ガガの「Born This Way」とか、あとはカニエ・ウェストの作品もミュージックビデオで言うと「Bound 2」。そして「BLKKK SKKKN HEAD」。両方ともアルバム『Yeezus』からの楽曲ですけれども。そういった楽曲のミュージックビデオの監督も務めたニック・ナイトさんという方が撮られた。ディレクターを務められた作品ということで。で、さっきからサンデーサービスなどもこう名前が出てますけれども。移動型ゴスペルイベントみたいな感じで。元々はカニエ・ウェストたちが住んでいる西海岸のカラバサスというところで行われていたんですけども。

Kanye West – BLKKK SKKKN HEAD (Explicit)

 

スー:ちょっと待ってください。カラバサスってものすごい高級住宅街ですよね?

渡辺:そうです。だから、田園調布のいちばん上みたいな。普通の人は入れない。というか、私も行ったことがないから想像の域を出ない……『Keeping Up With The Kardashians(カーダシアン家のお騒がせセレブライフ)』のリアリティーショーの中でしか見たことがない桃源郷みたいなところなんですけど。その超高級住宅地で最初は催されていて。それこそ、だからブラッド・ピットが遊びに行ったりとかね。

スー:もうすごく限定された人しか最初は参加できなかったんだ。

渡辺:そうそう。セレブリティしか呼ばれないみたいな。それがだんだん、移動式になりまして。で、一般的にチケットが発売されるようなこともあったんですけど。今日、これから見ていただくこの『JESUS IS KING』の映画にフィーチャーされているサンデーサービスの内容というのは今年の夏にアリゾナで行われた、その時のサンデーサービスの様子を映画にまとめているというね、そういったことです。

スー:まあ30分強のショートフィルムなんですけど、かなり見応えというか。

渡辺:そう。だから没入感がすごいと思いますね。特にこのIMAXの大きいスクリーンで見る。そしてこのスピーカー、音響もね、本当に素晴らしい設備ですから。最初に申し上げた通り、まるでサンデーサービスに参加しているかのような感じで味わえるんじゃないかなと思いますね。

スー:ゴスペル系のアーティストをフィーチャーし始めたのって、でももうちょっと前ですよね。

渡辺:カニエ・ウェストがね。そうそう。『The Life of Pablo』という2016年のアルバムがあって。そこで結構、カーク・フランクリンとかケリー・プライスとか。で、その時のゴスペル感ってやっぱりそのガワだけのゴスペル感みたいな。それで言ってることはすごいドギツい、いままで通りのカニエみたいな。テイラー・スウィフトを攻撃したりとか。そういう感じだったんですけど。この『JESUS IS KING』はその外側も中身も全て洗礼を受けた、バプタイズド(baptized)されたって言うかね。

スー:カーク・フランクリンとかケリー・プライスが「ゴスペル」って言った時に非常に記号的じゃないですか。ゴスペルとポップミュージックの接点というところに関して言えば、非常に記号的なアーティストと組んでたのが、今回はそういうことではないんだよっていうのが、歌っているリリックとかに関しても出てますか?

渡辺:そうそう。この映画の中でね、ちゃんと字幕もありますし。聖書からの引用、そういったところもわかりやすく示されているので、また改めて『JESUS IS KING』という作品……この映像作品も全てひっくるめてカニエ・ウェストが何を表現したかったのか?っていうのが非常に明確にわかるんじゃないかなとは思いますね。

スー:ということで、そろそろ……。

渡辺:なんかすいません(笑)。進行役が変わってしまった感じが……スーさんにおんぶにだっこという感じがしてしまうんですけども。

スー:いやいや、大丈夫です。

渡辺:でも本当にね、カニエ・ウェストにはこれからも驚かされ続けるんですかね、やっぱり?

スー:というか、それしか選択肢はないですよね。だってアルバム……今日、本当は『College Dropout』のTシャツを着てこようと思ったんですけども、もうボロボロになってて(笑)。もう熊がベラーッてなっていて。「これは人前に着ていくものではないな」と思ってやめたんですけど。まあ、あの時からもうやっぱり驚かされて。あの高速回転……チャカ・カーン本人は決していいとは思ってないという噂もあるサンプリングも含めて驚かされてきたと思うんですけど。そこからもうずっと驚いて驚いてきているので、もうそれを受け取るしかないですよね。

渡辺:なので2020年。そして2024年のアメリカ大統領選に向けてもですね、カニエ・ウェストの……。

スー:その前に来年! 来年ですよ。来年の大統領選がどうなるかによって、カニエの動向も相当変わると思うので。

渡辺:たしかにね。思想がまたゴロッと変わるかもしれないですし。というわけで、我々はもう見守るしかないというような感じでしょうか。はい。ありがとうございました。というわけでね、ジェーン・スーさんにもいろいろと興味深いお話を伺いましたが。実は今日、皆様に大ニュースがございます。今回の『JESUS IS KING』上映の大ヒットを受けて、急拠本作の追加上映が決まりました。すごい! 来週の金曜日。13日から15日、日曜日までの3日間。連日1回のみの上映になります。詳細は当劇場のホームページをチェックしてください。というわけで、今日も満席で。

スー:わからないですよ。これが口コミを呼んで。池袋ですから、『カメラを止めるな!』みたいなことになる可能性も……?

渡辺:「◯日間連続上映」とかね。そういうことになるかもしれない。ありがとうございます(笑)。というわけで、これよりフォトセッションに移らせていただきます。そしてマスコミ以外のお客様も、よろしければこのフォトセッションの間ですね、撮影OKでございますので。ぜひぜひTwitterやInstagramにアップしていただければと思います。というわけでフォトセッション、こちらですかね。

(フォトセッション終了)

スー:というわけで志保ちゃん。我々もこの後、皆さんと一緒に見させていただくわけですよね?

渡辺:そうなんですよ。この後、このまま上に行って私たちも拝見するということで。ちょっとね、涙を禁じえないかもしれない。

スー:というか、動いちゃうかもしれない?

渡辺:動いちゃうかもしれない。口ずさんじゃかもしれないということで。はい。ありがとうございます。というわけで皆様、本日は『JESUS IS KING』IMAX公開記念トークショウ付き上映会にご来場いただきまして、誠にありがとうございました。この後、いよいよ映画本編の上映となります。どうぞ引き続きお楽しみくださいませ。そしてまだ具体的な日にちは決まってないんですけれども、アルバム『JESUS IS KING』の国内盤のCDも出るということで。

スー:あら!

渡辺:ただ、いまカニエさんご本人待ちということで。

スー:というか、先週まで東京にいたんだからさ! いてよ!

 

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So many moods #Tokyo

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渡辺:いてよ!っていうね。お呼びできたらね(笑)。

スー:東京にいすぎでしょ?っていうね(笑)。

渡辺:まあ、国内盤CDも近い将来リリースされますということです。というわけで今日はジェーン・スーさんをお招きしたトークショー、司会は渡辺志保が務めさせていただきました。ありがとうございました!

スー:ありがとうございました。

書き起こし by みやーん


IMAX映画『ジーザス・イズ・キング』
上映館:グランドシネマサンシャイン
鑑賞料⾦:特別鑑賞料⾦1,500円/プレミアムクラス3,000円/グランドクラス4,500円
グランドシネマサンシャインHP
https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/gdcs/

『ジーザス・イズ・キング』
製作︓カニエ・ウェスト
監督︓ニック・ナイト
出演︓カニエ・ウェスト、サンデーサービス聖歌隊(The Sunday Service Choir)
製作総指揮︓ダミエン・スミス
IMAX 製作︓ジョナサン・ジョセル
主題歌・挿⼊歌︓ “SELAH” (IMAX VERSION) 、“SAY YOU WILL”、他11 曲
配給︓IMAX
2019|31 分38 秒|カラー|英語|アメリカ|G|原題・英題︓Jesus is King

© 2019 IMAX Corporation and West Brands, LLC. All Rights Reserved. Roden Crater © James Turrell


カニエ・ウエスト『JESUS IS KING』
2019年10月25日発売
配信視聴はこちら
https://umj.lnk.to/KanyeWest_JesusIsKing



 

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