D姐の洋楽コラム第5回:祝50周年&『キングスマン』出演!改めて語るエルトン・ジョンの凄さと魅力

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アクセス総数5億ページ超の大人気サイト「ABC振興会」を運営しながら、多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆やインタビューなどをこなす米国ハリウッド在住の「D姐」さんの連載コラム「D姐の洋楽コラム」第5回です。コラムの過去回はこちら


第5回【祝50周年!改めて語るエルトン・ジョンの凄さと魅力】

本人たちがどう感じているかはいざ知らず、ザ・ビートルズザ・ローリング・ストーンズがいたように、いつの時代のスーパースターにも必ず同世代のライバルがいるものだ。ただ単に周囲がライバル視しているだけかもしれない。しかしいずれにしろ、ライバルがいることでより音楽のオリジナリティやクオリティは切磋琢磨され高まり、そしてファン心理は煽られる。

そしてここに今年70歳にして50年以上に渡り第一線で活躍し続けるスーパースター、エルトン・ジョンがいる。大切なことだからもう一度言わせてもらうと、50年以上に渡り、第一線!いや本当に素晴らしい。

しかし果たして、そんなSir.エルトン・ジョンのライバルとは、一体誰だろうか?

同時代・同世代のソロアーティストという点から考えれば、ロッド・スチュワートが挙げられたり、ピアノマンということで米シンガーのビリー・ジョエルを思い浮かべる人も多いかもしれない。

しかしロッドとはお互いを「フィリス」「シャロン」と二人だけのあだ名で呼び合い、ビリーとは合同ツアーだって行っている、むしろ「同士」に近い存在だ。となれば、同じ1947年生まれでキャリアデビューもほぼ同じのデヴィッド・ボウイという見方もできるが、しかし今ひとつしっくりこない。

ではエルトンのライバルが思い浮かばないのは、なぜか。一言で言ってしまえば、エルトンがあまりにも超越しているから、に尽きるのかもしれない。

英米問わず音楽史上において、今までに3億万枚以上のシングル・アルバムを売り上げたのはビートルズを筆頭に6名(組)のアーティストがいるが、そのうち男性ソロアーティストはエルヴィス・プレスリー、マイケル・ジャクソン、そしてエルトン・ジョンの三人のみだ。エルトンの売り上げはザ・ローリング・ストーンズ、クィーン、ピンク・フロイドを凌いでいる。地球上の全レコードの3%はエルトン・ジョンのレコードだったという時期すらあるのだ。

25枚のプラチナ・レコード、35枚のゴールド・レコード、29曲連続トップ40入りの記録、シングルも全米1位を記録した「Bennie and the Jets(邦題:ベニーとジェッツ [やつらの演奏は最高]」「Crocodile Rock)」「Don’t Go Breaking My Heart(邦題:恋のデュエット)」や「Tiny Dancer(邦題:可愛いダンサー)」「Rocket Man」、「Your Song(邦題:僕の歌は、君の歌)」と言った代表作、そして史上最も売れた曲でもある故ダイアナ妃のトリビュートソング「Candle in the Wind」は3,300万枚を売り上げた。

シンガーとしてもソングライターとしても、ピアノプレイヤー、エンターテイナーとしても超一流にして、今なお現役である。エルトンは2004年から米ラスベガスのシーザーズ・ホテル内のベニューであるコロシアムにおいてレジデンシー・コンサートを行っているが、「レッドピアノ」ツアーは75公演が完売する大盛況を博し、現在「ミリオン・ダラー・マン」ツアーとして2011年から再びラスベガスでのレジデンシーツアーを行っている。

私は2013年に行われたラスベガスのフェスで、たまたまエルトン・ジョンのパフォーマンスを見ることができたのだけど、心の底から感動し驚愕し、今まで彼のレジデンシーショーを見たことがなかったことが悔しくてならなかった。

90年代に東京の来日公演で見たときの彼のパフォーマンスよりも、さらにはるかに歌唱力が上がり、声の奥行き・深み・声量が増大している。当時66歳にして、アーティストとして才能がさらに成長するなんてあり得るんだろうかと耳を疑った。ポップチャートの常連たちの中に混じっての出演だったが、お目当のアーティスト以外の時間はあからさまに興味を失う観客が少なくないのにもかかわらず、真っ赤なピアノを弾きながらエルトンが歌い出すと一瞬にして会場がどよめき、直ぐにその天才シンガーの神々しいとも思える声を拝聴すべく静寂が起こって鳥肌がたった。

エルトン・ジョンは幼い頃からもちろん天才だった。よく言われている伝説だけど、3歳からピアノをはじめ、一年もせずに耳コピができるようになった神童だった。11歳で国立音楽アカデミーに合格して奨学生となり、土曜日はここでクラシック音楽や声楽を勉強した。たまに授業をサボったこともあったらしいが、それでも模範生であったと言われるほど優秀な上、平日に通っていた地元ピナーの中高でも学業成績がA+という秀才だったというから非の打ち所がない。すでに地元のパブなどで15歳の時からピアニストとして活動していたエルトンは、卒業を前にして17歳の時に学校もアカデミーも辞めて、プロとして音楽活動に専念する道を選んだ。

そしてエルトンがエルトンになる前—-本名レジー・ドワイト名義で活動していたバンドが、わずか13歳のときにスタートしたバンドから発展したR&Bバンド「ブルーソロジー」。ジャズのレジェンドであるジャンゴ・ラインハルトのアルバム「Djangology」にあやかって命名されたブルーソロジー(サキソフォン奏者のエルトン・ディーンはエルトンの名前の元ネタ)は、1965年にエージェントと契約するが、これは夜は音楽活動、昼は自ら音楽出版社を回って売り込みをしていたエルトンの営業努力のおかげだろう。バンドはアイズレー・ブラザースやメジャー・ランス等のバックバンドやロング・ジョン・ブラドリー(こちらはジョンの元ネタ)のサポートバンドとして英国ツアーをするようになる。

そんな中、エルトンはNME誌の新人アーティストの募集広告に応募する。これはリバティ・レコードのA&Rマネージャー(ちなみにA&Rは新人アーティストの発掘・契約・リリースを仕切るレコード会社では重要な職務)だったレイ・ウィリアムズによって出稿されたものだったが、オーディションで気に入られたエルトンはウィリアムズから歌詞のストックを渡される。実は同じ広告に応募してきた作詞家のバーニー・トーピンが持ってきたもので、ウィリアムズはエルトンのパフォーマンスを気に入ったが、歌詞が今ひとつだったと感じて、バーニーの歌詞を渡していた。こうして二人は運命的な出会いを果たし、バーニーが作詞した歌詞にエルトンが曲をつけるというソングライティングが始まり、同年エルトンはレジー・ドワイトという名前を正式に「エルトン・ジョン」と改名する。

そしてそれから50年、というのが今年2017年である。

70年代にスパンコールのスーツや南米の秘境に生息する野生鳥のようなゴージャスな衣装という攻めまくったルックスで、ヴォーカリストとしてだけではなく、ピアノをロックのインストルメントとして極めた全盛期のスピリットは今でも変わらない。トレードマークの一つでもあるメガネ(またはド派手な巨大サングラス風アイウェア)は自分で「持ってるメガネの数は25万個」とジョークにするほどだが、元々は子供の頃にバディ・ホリーに憧れて黒縁メガネをかけていたのが原因で、本当に視力が落ちてしまって、それ以来メガネをかけるようになったのだそうだ。

バーニーとともにレコード会社の専属作詞・作曲家として活動したのち、ソロアーティストとして69年にアルバム「Empty Sky(邦題エンプティ・スカイ[エルトン・ジョンの肖像])」でデビューしたが(68年に「I’ve Been Loving You」というシングルでデビューしているが、なぜかリリースするとすぐに店頭から撤収されてしまい、92年のレアものベスト盤までアルバムに収録されなかった幻の一曲である)、今ではミュージシャンとしてだけではなく、92年に設立したAIDS/HIVの啓蒙や研究/撲滅を目指す非営利団体で今までに2億ドル(約220億円)もの寄付を集めたエルトン・ジョンAIDS基金での活動も高く評価されている。

エルトン・ジョンAIDS基金(EJAF)は、血友病の輸血からHIV感染してしまい、体調がよくなった後もHIV感染を理由に学校側から登校拒否をされた18歳の少年が1990年に亡くなった事件をきっかけに、彼の裁判をサポートした一人となったエルトンが発足したものだが、今では毎年アカデミー賞のアフターパーティとして盛大に行われるパーティを開催して資金集めをしていることで有名だ。音楽界はもとより映画界からも多数セレブが出席し、近年ではこのパーティでエド・シーランがパフォーマンスしたことでも話題になったが、今では当たり前のように存在しているセレブによるチャリティ団体の先駆けとなったのが、このEJAFである。

*エミネムもEJAFに賛同してチャリティー企画を行っている

さらには今年、映画にも出演した。エルトンといえば1975年のザ・フーの映画版「トミー」で演じた「ピンボールの魔術師」が有名だが、本格的な映画出演はそれ以来となる。ちなみに同じ役は最初、ロッド・スチュワートにオファーがあり、ロッドがエルトンに出演した方がいいかどうか相談したところ、「そんな企画には関わらない方がいい」と一喝されたが、一年後、今度はエルトンにオファーがあり、彼は二つ返事で出演することにしてしまったという経緯がある。

 

今回エルトンが出演したのは2015年に公開され世界中で予想以上の大ヒットを記録した『キングスマン』の続編である『キングスマン:ゴールデンサークル』だ。今作では本人役ながらちゃんと演技もアクションもしていてかなりオイシイ役どころ。実は監督・プロデューサーであるマシュー・ヴォーンのたってのリクエストで、オリジナルの『キングスマン』の出演をオファーされていたが、エルトンは出演を断った。しかし映画をみて「こんなに素晴らしい映画の出演を断ったなんて、自分はなんてバカなんだろう」と大後悔したという。ヴォーン監督はエルトンが諦めきれず、続編でオファーをしたところ、即答で出演了解の返事が来たという。出番は短めのカメオ出演ながら、ジュリアン・ムーアを相手に大活躍、本作ではエルトンの楽曲も聞けるのでお楽しみに。

彼の50年以上に渡る功績と生涯がハリウッド映画化されると伝えられて久しいが、エルトンを演じるのはトム・ハーディから『キングスマン』シリーズ主人公の若手人気俳優で、歌もうまいタロン・エガートンに変更になったとも伝えられているが、こちらも楽しみだ。


エルトンが若い世代の音楽もジャンルを問わず積極的に聞いていて、彼がMCを務めるApple Music/Beat1のラジオ番組「Rocket Hour」はめちゃくちゃ選曲のセンスがいいのも、個人的にエルトンが大好きな理由の一つでもあるのだけど、とにかくワンアンドオンリーの存在で我が道を行くSirエルトン・ジョン、これからも輝かしい功績をさらに重ねてくれることだろう。



エルトン・ジョン究極の最新ベスト・アルバム
エルトン・ジョン『Diamonds』

2017年11月10日発売

フィジカルは3形態で発売
・2枚組CD(国内盤のみSHM-CM)
・3枚組CDボックス・セット(輸入盤のみ、限定商品)
・2枚組見開きアナログ盤(輸入盤のみ)

 


■著者プロフィール

ABC振興会D姐(Dane/あね/ねえ)

米国ハリウッド在住。セレブやエンターテイメント業界のニュースを独自の切り口で紹介する、アクセス総数5億ページ超の大人気サイト「ABC振興会」を運営。多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆、現地ロサンゼルスでのテレビやラジオ、雑誌用のセレブやアーティストのインタビューやレッドカーペット等の取材をこなす。

ABC振興会:http://abcdane.net
Twitter:https://twitter.com/Dane_ABC

*毎週金曜日FM OH!17:00〜鈴木しょう治さんの「MUSIC+ FRIDAY」のコーナー「ハリウッド・ニュース from LA」に出演中

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