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礎を築いたスーパー・チームの軌跡を音で描く:『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』

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マーベル・スタジオ最新作にしてマーベルヒーローたちの原点となったチームの物語を描くファンタスティック4:ファースト・ステップ』。現在公開中の映画作品に先駆けて配信されたオリジナル・サウンドトラックの聴きどころとは?山﨑智之さんにご寄稿いただきました。

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「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」本編映像「守るのは全人類か、愛する“家族”か―」|7月25日(金)劇場公開!

 

映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』が2025725日(金)日米同時公開された。 

1961年に初登場したミスター・ファンタスティック、インビジブル・ウーマン、ヒューマン・トーチ、ザ・シングの4人は、マーベル・コミックスを代表するスーパーヒーロー・チームのひとつとして世界的な人気を博してきた。コミックはもちろん早くから映像化が行われており、1967年からTVアニメ・シリーズ『宇宙忍者ゴームズ』がスタート。実写映画も『ファンタスティック・フォー 超能力ユニット』(2005)とその続編『ファンタスティック・フォー 銀河の危機』(2007)、リブート版『ファンタスティック・フォー』(2015)が公開されてきた。いずれもスケールの大きなスペース・アドベンチャーが繰り広げられてきたが、長期シリーズ化はならず。今回の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は10年ぶりの映画化となる。

人気スーパーヒーロー・チームの復活、しかも満を持してのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)初参入ということもあり、プロモーションにも気合いが入っており20247月のサンディエゴ“COMIC CON 2024”では約2,400台のドローンを使ったドローン・ショーでお披露目が行われた。巨大な敵役ギャラクタスと“4”のロゴマークが夜空に映し出されると、町中に凄まじい歓声が沸き上がっている。そしてドローン・ショーを彩るテーマ・ミュージックとしてプレミア公開されたのが、マイケル・ジアッキーノ作曲によるメイン・テーマ「The Fantastic Four: First Steps Main Theme」だった。

The Fantastic Four: First Steps Main Theme (From "The Fantastic Four: First Steps")

マイケル・ジアッキーノはテレビゲームやTVシリーズの音楽でデビュー。『LOST(2004 -)などを手がけてから『Mr.インクレディブル』(2004)で劇場映画に進出している。

『ミッション:インポッシブル3(2006)『スター・トレック』(2009)『ジュラシック・ワールド』(2015)『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)など超大作シリーズ、『レミーのおいしいレストラン』(2007)『ズートピア』(2016)『リメンバー・ミー』(2017)などのアニメーション映画のヒット作を手がけるなど、彼は現代のハリウッドで最も重要な作曲家の1人として評価される存在だ。

マーベル・ユニバースにおいてもその才能は発揮されており、『ドクター・ストレンジ』(2016)『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)『ソー:ラブ&サンダー』(2022)のドラマを大いに盛り上げてきた。いにしえのハリウッド大作を思わせるスケール感あふれるテーマ曲やオーケストレーション、そしてメロディは、懐かしくも決して古臭くならない。ロケットやアメ車、ブラウン管テレビ、円盤記録媒体などと超先端テクノロジーが共存する別次元アース828”のレトロフューチャーな世界観を音楽で描いたのが『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』のサウンドトラックなのだ。

本作の音楽で志したことについて、ジアッキーノは“huge=デカイことと説明している。100人編成のオーケストラと100人のクワイアをフィーチュアして、ザ・ビートルズが使ったことで有名なアビー・ロード・スタジオでレコーディング。荘厳なファンファーレから「ファンタスティック4!」というコーラスと軽快なビートが強烈な高揚感を持つテーマ曲で彼が意識したのはNASAや映画『ライトスタッフ』、またトゥモローランドエレクトリカルパレードのようなアトラクションだったという。本作の舞台である1960年の世界(ただし我々が住むのとは異なるアース828”だが)といえば、東西冷戦などの社会不安を抱えながらも、未来に希望があった時代だった。星空と前方を見据えたポジティヴな空気が、このテーマ曲には込められている。 

近年のマーベル作品の音楽はストーリーとそれぞれのシーンに効果をもたらすことを主眼としており、12分台で終わってしまう曲も多かったが、本作のサウンドトラック・アルバムはより長めのものがメインで、音楽作品として楽しむことが出来る。メイン・テーマのヴァリエーションも多いものの、それぞれ趣向が凝らされているし、「A Galactic Case Of Munchies」〜「Bowel Before Me」で明らかになるギャラクタスの野望と新たなる要求、「The Light Speed Of Your Life」でのシルバー・サーファーとの緊張感あふれるチェイス(コーラスが見事な効果を出している)からチャイルドシートをめぐるてんやわんやの大騒ぎの「Carseat Drivers」まで、起伏に富んだエキサイティングな展開は音楽だけでも手に汗握るものだ。

Michael Giacchino – Carseat Drivers (From "The Fantastic Four: First Steps"/Audio Only)

クワイアを除けばすべてインストゥルメンタルで、歌詞と呼べるものも「ファンタスティック4!」ぐらいだが、サウンドトラック・アルバムの楽曲にはそれぞれヒネリを加えたタイトルが付けられている。

ロケット打ち上げのときに流れる「Out To Launch」は“out to lunch=昼食中“launch=打ち上げをかけているし、「The Bridges Of Silver Surfer County」は『マディソン郡の橋』のパロディ。「A Galactus Case Of The Munchies」は大麻を吸った人が突如すごい食欲に襲われる“a case of the munchies”とギャラクタスの惑星を食うを合体させたフレーズだ。シリアスなシーンに流れる曲であっても言葉遊び的なタイトルだったりするが、それぞれの曲を区別するものであり、過剰に深刻に捉えるべきではないだろう。1時間55分の映画本編中、1時間25分を占める音楽が収録されているサウンドトラックは、音で描かれる『ファンタスティック4なのだ。

本編ストーリーが終わって4年後、エンド・クレジット中の驚天動地の急展開で本作は幕を下ろすが、そのとき流れる曲はアラン・シルヴェストリによるもの。『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へのカウントダウンは既に始まっている。 

Written by 山﨑 智之


Michael Giacchino
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年7月18日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music / LINE MUSIC

 

マーベル・スタジオ 公式プレイリスト
『Marvel Music』
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