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テクノロジーと魔法の対決。マーベル最新ドラマシリーズ『アイアンハート』サウンドトラック解説

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最新鋭パワードスーツを発明する若き天才発明家、リリ・ウィリアムズの冒険を描くMCU最新ドラマシリーズ『アイアンハート』。その印象的な音楽を詰め込んだ「vol.1」「vol.2」の2作からなるサウンドトラックが配信中。新鋭作曲家ダラ・テイラーの手掛けた音楽について山﨑智之さんに寄稿いただきました。

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マーベル 最新ドラマシリーズ 『アイアンハート』|予告編|Disney+ (ディズニープラス)

 

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新テレビ・シリーズ『アイアンハート』が2025年6月からディズニープラスで配信中だ。

映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022)で初登場したリリ・ウィリアムズ=アイアンハート(ドミニク・ソーン演じる)を中心とするこのシリーズ。天才発明家である彼女がアーマード・スーツを着用してハイテクと魔術の冒険を繰り広げる。

マサチューセッツ工科大学を退学になった彼女がパーカー・ロビンス(アンソニー・ラモス演じる)率いるギャング組織の奇妙な陰謀に巻き込まれていくサスペンスと、亡くなった親友ナタリーや家族との交流など、起伏に富んだストーリーは、手に汗を握ったり、じんわりと泣かせたりして、全6話のラストまでの急展開はマーベル・ユニバースの“フェーズ5”を締め括るに相応しいものだ。

そんな物語をさらにドラマチックに盛り上げるのが、本作の音楽だ。制作総指揮にあたっているライアン・クーグラーは『ブラックパンサー』『クリード』両シリーズや『罪人たち』を手がけてきたが、音楽を効果的に用いてその世界観をさらに豊かなものにしている。

マーベル 最新ドラマシリーズ 『アイアンハート』|本予告|Disney+(ディズニープラス)

『アイアンハート』の音楽を担当しているのは新鋭作曲家のダラ・テイラーだ。ニューヨーク州出身の彼女は大学卒業後にハリウッドに移り、映画/テレビ音楽に進出。『劇場版 おさるのジョージ いざ出航!キャプテン・ジョージ』(2021)、ジョージ・クルーニー監督の『僕を育ててくれたテンダー・バー』(2021)、『ノエルの日記』(2022)、『スラムドッグス』(2023)、『ストロー:絶望の淵で』(2025)などで頭角を現してきた彼女が満を持してマーベル・ユニバース入りを果たすのが本作なのだ。

『アイアンハートVol.1』『同Vol.2』という2作のサウンドトラック・アルバムが配信される。基本的に『Vol.1』が前半3話、『Vol.2』が後半3話のスコアという構成だが、あまり厳密に線引きすることなく、2作で『アイアンハート』の世界を網羅する構成だ。

多くの曲が1分台ながら、単なるモチーフの羅列に留まることなく、それぞれが音楽として成立しているのがさすが。「Ironheart (Riri’s Theme)」「Villains (Parker’s Theme)」という2大メイン・テーマを軸に、オーケストラ・スコアとシンセサイザー、エレクトロニクス、メタル・パーカッションなどを交えながらムードを盛り上げていく。物語の舞台であるシカゴのストリート・ミュージシャンでよく知られるバケツ・ドラムスが随所で使われているのも、本作の特徴だ。

Dara Taylor – Ironheart (Riri's Theme) (From "Marvel's Ironheart")

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でルドウィグ・ゴランソンが書いたスコアのモチーフはあえて使わず、ダラは新しいリリ像を提示している。メロディックなパートとスタッカート主体の“バッドアス・リリ”サウンドは彼女のキャラクターにさらなる深みをもたらすものだ。なお第3話のスコアでアフリカ系のトーキング・ドラムがフィーチュアされているのは『ブラックパンサー』へのオマージュだといえるだろう。

パーカー=ザ・フッド(アンソニー・ラモス演じる)のテーマも彼のダークでミステリアスな面を表現している。威圧的な導入部、内面の孤独を描いたラストのヴァイオリンの対比も彼の複雑な人間性を描いたものだ。

興味深いのは、ジョー(ジーク・ステイン)が登場するシーンのピアノの低音スタッカートが『アイアンマン』(2008)に登場した父オベイディア・ステインのテーマを意識したものだということ。メロディは異なっているが、似たアプローチを取ったとダラは発言している。

さらに本作ではマーベル・コミックスで人気を誇りながら映画には未登場だった悪魔メフィストが満を持して登場(サシャ・バロン・コーエン演じる)。彼のテーマ曲はダラにとって最難関のひとつだったが、満足のいく仕上がりとなったという。

Something You Won't Even Miss (From "Marvel's Ironheart: Vol. 2 (Episodes 4-6)"/Audio Only)

ダラによるオリジナル・スコアに加えて、新旧アーティストのナンバーが随所で使われているのも『アイアンハート』を楽しむポイントのひとつだ。第1話のオープニングからミネアポリスのシンガー・ソングライター、ディジー・フェイの「Altar」を聴くことが出来るし、第2話では“主題歌”と言っていい重要なポジションでアラニス・モリセットの「You Oughta Know」が使われている。

ギル・スコット・ヘロンの「Home Is Where The Hatred Is」、ニーナ・シモンの「Sinner Man」、チャカ・カーンの「Ain’t Nobody」などのヴィンテージ・クラシックスの選曲はコアな音楽ファンをも唸らせるし、エリカ・バドゥの「The Healer」、スクリレックス、フレッド・アゲイン…&フロウダンの「Rumble」なども歌詞とストーリーがリンクしたり、スコアとの繋ぎが絶妙だったりで、『アイアンハート』ワールドの一部となっている。もちろんいずれも楽曲として優れたものであり、懐かしさに浸ったり新しい発見をしたり、音楽的にたっぷり楽しむことが可能だ。

まさか!?…のラストで、早くもシーズン2への期待が高まる『アイアンハート』。はたしてどんな曲がそのストーリーを高めていくだろうか。その音楽が止むことはない。

Written by 山﨑 智之


Dara Taylor
『アイアンハート Vol. 1(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年6月24日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music / LINE MUSIC

Dara Taylor
『アイアンハート Vol. 2(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年7月1日配信
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