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新世代R&Bシーンで頭角を現すエルミーンが語るデビュー作や今夏サマソニでの初来日公演

2026年3月27日にデビュー・アルバム『sounds for someone』をリリースしたUK発、スーダン系のR&B/ソウル界の新星アーティスト、エルミーン(Elmiene)。
彼は、新世代R&Bシーンで急速に頭角を現しており、UK期待の新人登竜門であるBBC Sound of 2024にノミネートされただけではなく、英国のグラミー賞であるBrit Awardの2025年度新人部門にもノミネートされ、「ネオソウルの未来を担う逸材」と称されている。
その歌声はもとよりソングライティングにも注目される彼にインタビューを実施して、2026年3月発売の新作アルバムや、藤井 風とのコラボ、初来日公演となる2026年のSUMER SONICについて語ってもらいました。
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デビューアルバムに込められた意味
―― デビューアルバム『sounds for someone』のリリース、おめでとうございます! 今はどんな気持ちですか?
ワクワクが止まらないですね。このアルバムがうまくいけば、きっとまた次の作品を作れるはずだって思うと、早くも次のアルバムのことを考えちゃって。楽しみで仕方ないんです。もう待ちきれないって感じですね。
―― もう、そんなに先に進んでいるんですね(笑)。
自分でもちょっと怖いんですよ(笑)。
―― もし、今回のデビュー・アルバムを3つの言葉で表現するとしたら、何になりますか?
「適切な問いかけをする(Asking Right Question)」ですね。
―― なるほど文章になりましたね、興味深いですね。
ありがとうございます(笑)。
―― なぜその3つの言葉を選んだのですか?
誰かが「音楽はセラピーで、音楽を通して悩みの答えを見つけられる」と言うのと同じで、僕にとってこのアルバムは、正しい答えそのものというより、正しい答えへと導くガイドのようなものだったと感じているんです。だから、収録曲の一つひとつは、僕が自分の心の平穏を見つけるために、実際に没入して「尋ねるべき正しい質問は何なのか」を理解しようとするための手段なんです。
―― 素晴らしい。そして、アルバムのタイトル『sounds for someone』に込められた意味と、その「Someone」とは誰を想定しているのか教えていただけますか?
『sounds for someone』には多くの意味があります。その「Someone(誰か)」というのは僕にとっては父のことなんですが、リスナーにはその対象を広く捉えてほしかったんです。家族や恋人など、その時の自分にとってふさわしい人を当てはめてほしいなと。あわせて、このアルバムには「誰かのためのサウンド」がある、という考え方も含まれています。つまり、どんな音楽の好みやジャンルであっても、この中のどれか一曲は誰かの好みに合うだろう、ということです。
―― そんなあなたのサウンドは、以前のEPからこのフル・アルバムでどのように進化しましたか?
かなり進化したと思います。今は音楽の作り方について、より意図的というか、意識的になっていますね。以前は感情の爆発のような感じでしたが、今は曲の中で何を伝えたいのか、そしてそれを可能な限り最善かつ効率的な方法で伝えるにはどうすればいいか、ということに多くの時間を費やしています。まるでゲームのようですね。楽曲のコアにたどり着くまで余計なものを削ぎ落としていき、「よし、これだ。これで十分だ」となるまで突き詰める。だから、ストーリーテリングもより研ぎ澄まされていると思います。
―― サウンド的にはどうですか? 何か変わったと思いますか?
サウンド的には、これまでの僕の様々なスタイルの組み合わせだと思います。内省的な曲もあれば、「Marking My Time」や「Endless No Mores」のような曲、「Lonely People」のような曲もありました。もっとアップビートな「Light Work」や「Someday」があれば、「Permanence and Heal」や「Reclusive」のような曲もある。それらが曲と曲の間の穴を埋めてくれたと感じています。僕のあらゆる側面を完璧にミックスしたような仕上がりですね。
プロデューサーと作曲プロセス
―― ラファエル・サディークやノー・IDといったプロデューサーと仕事をされていますが、彼らはこの作品のサウンドにどのように影響を与えたと思いますか?
ラファエル・サディークが一部に参加してくれて、ノー・IDがエグゼクティブプロデューサーを務めてくれましたが、彼らは本当に、本当に重要な役割を果たしてくれました。
ラファエルは僕のヒーローの一人です。彼のサウンドは試行錯誤の積み重ねですし、ディアンジェロからソランジュまで、僕の憧れるアーティストたちと仕事をしてきましたから。彼のベースギターは信じられないほど素晴らしくて、それが曲の中で活かされています。彼があの場にいてくれるだけでも最高でした。僕が作業していたスタジオに彼もいてくれたので、いろいろアドバイスをくれるんです。ノー・IDも同様で、彼は僕が書きすぎないように止めてくれる、本当に良い人でした。彼は自分を「エディター(編集者)」と呼んでいましたね。彼が「これで十分だ」と感じたら、「よし、次に行こう」と言ってくれるんです。
―― あなたの音楽はとてもオーガニックで温かい感じがしますね。プロダクションや楽器編成の点で、あなたにとって最も重要だったことは何ですか?
僕にとって最も重要だったのは、楽器編成とプロデュースが曲のメッセージと合致していること、そのメッセージを強調するように確認することでした。例えば曲を書くとき、最初のバースで何を伝えたいのかを紹介し、プレコーラスで本物のメッセージに向かって盛り上げていき、サビでその核となるメッセージを届ける。そして2番のバースやブリッジでさらに詳しく説明していく。
楽器編成やプロデュースも、そのメッセージを強調するための要素である必要があります。例えば「Special」という曲なら、キーや楽器、ドラムのすべてが、誰かに「あなたは特別だ」と伝えるような切迫感を表現していなければならない。すべての要素がストーリーの一部であるべきで、そこから離れてはいけないんです。もし離れてしまったら、それは無駄になっちゃいますから。
―― では、曲を作る際には歌詞を先に考えるんでしょうか?
はい、歌詞が先ですね。
―― 今作の中で、作曲したりレコーディングしたりする上で最も難しかった曲は何でしたか?
一番難しかったのは「Reclusive」ですね。あれが一番書くのが大変だったと思います。すごくシンプルに聞こえるし、おそらくアルバムの中で一番人気のある曲の一つになるかもしれませんが、あんなにシンプルなのに、ああいう風に表現するのが本当に大変だったんです。いつもの僕の音楽のように詩的ではなくて、僕の日常を綴った伝記のような曲なんですが、なぜか急に難しく感じられて。というのも、「なんでみんな僕の日常について聞きたがるんだ?」という疑問を受け入れなきゃならなかった。でも、「それでいいんだ」と納得して、ただ紙に書き出して何が起こるか見てみよう、と思いました。
―― アルバムの中で、今の自分を最もよく表していると感じる曲はありますか?
「Special」ですね。あの曲はとても楽しいんです。すごくストレートだから。テーマも理解しやすいし、そのフィーリングや温かさがすごく僕らしい。これからも「Special」のような曲をたくさん書きたいと思っています。あの本当に温かい、まるでノラ・ジョーンズのようなフィーリング。それが僕の目指している方向なんです。
―― リスナーにはアルバムを最初から最後まで聴いた後、どのように感じてほしいですか?
このアルバムの中に、誰かに捧げられる曲があると感じてほしいですね。自分の状況を振り返り、共感できる曲を見つけてほしいと願っています。そして、「ああ、あの人にもこの気持ちを感じてほしいな」と思って、その人に送ってほしい。まるで、お店で買えるグリーティングカードのような、そんな存在になってほしいんです。
藤井 風とのコラボレーションについて
―― あなたは様々なアーティストとコラボレーションされていますが、共作する際に最も大切にしていることは何ですか?
自分自身の明確なサウンドを持っているアーティストが好きですね。そういう方とやるのが一番楽しいです。僕があるアーティストに惹かれるのは、その音楽の中に彼ら自身が聞こえてきて、その人自身の個性に惹かれるからです。だから一緒に仕事をするなら、僕にはできないことができると感じる人とやりたいですね。
―― 普段から、コラボしたいアーティストのリストなどを持っていますか?
本当のことを言うと、僕はコラボするのが下手なんです(笑)。だからいつもその場の思いつきで、「あ、これいいかも」となったり、誰かに「この曲に誰かを参加させるのはどう?」と聞かれて、「あ、いいね。考えてみるよ」って答えたり。僕はいつも自分の音楽を書くことばかり考えている、とても自己中心的な人間だったんです。でも、今はそれを乗り越えつつあると思います。もっと外に出て色々な人と出会い、繋がることで、以前よりも「誰かと一緒に仕事がしたい」という気持ちが強くなっています。
―― 日本のアーティスト、藤井 風さんとのコラボレーションはどのように行われたのですか?
数年前に「Someday」という曲がきっかけで、電話で話したり会ったりしたことがありました。そして、去年の12月に日本へ旅行に行ったとき、「日本にいるんだから、彼に電話しなきゃ」と思って連絡したら、「会おうよ」と言ってくれました。彼が僕のホテルに来てくれて、一緒にたこ焼きを食べに行ったり、町をぶらぶらしたり。それから、ミュージシャン同士なんだからスタジオにも行かなきゃ、となって。スタジオを見つけて、そこで本当に楽しい時間を過ごしました。それ以来、ずっと連絡を取り合っています。LAでも一緒にセッションをしました。良い時間でしたし、素晴らしい友情ですね。
―― LAのスタジオには何日いたんですか?
1日だけでした。彼は次の日には日本へ帰らなきゃいけなくて。でもその限られた時間で、とても素晴らしいセッションができました。
―― 藤井 風さんと仕事をしてみて、彼について最も印象的だったことは何ですか?
彼はハーモニーに対する耳が信じられないほど鋭いですね。それが本当に楽しいんです。ジャズに影響を受けたような感覚を持っていて、ボーカルの重ね方が見事なんです。ハーモニーについて相談すると、いつも一番面白い提案をくれました。それに彼のメロディーは歌っていてすごく心地いいし、ピアノも素晴らしい。一緒に書いた曲でも彼がピアノを弾いてくれたんですが、信じられないほどいい音でした。彼はまさにピアノの達人ですね。
@elmiene El-San Fuji-San Different Too @Fujii Kaze ♬ original sound – elmiene
―― 今後コラボレーションしてみたい日本人アーティストは他にいますか?
ええっと、誰だったかな。日本でテレビを見ていた時にミュージックビデオが流れていて、名前はすぐに出てこないんですが、2003年くらいの曲だったと思います。「これ誰? すごくいいな」って。……あ、思い出しました! 宇多田ヒカルです。彼女は最高ですね。
ルーツと尊敬する人たちとの出会い
―― あなたのルーツについてお伺いします。スーダンは多くの日本のリスナーにとって馴染みの薄い国かもしれませんが、あなたにとってどんな国か教えていただけますか?
どう説明すればいいかな……。スーダンにはものすごいエネルギーがあります。以前、僕は親戚や両親など24人くらいで大きな家に住んでいました。寝る時も、家の外に大きな中庭があって、みんなでベッドを外に並べて星空の下で寝るんです。お茶を飲んだり星を眺めたり。
スーダンには他の場所では感じられないような、温かくて大きなコミュニティがあって本当に楽しいですよ。例えば、外で遊んでいる時に近所から音楽が聞こえてきたら、それがもうパーティーへの招待状なんです。勝手に入っていって「元気?」って言えば、みんな知り合いだし、ご飯を食べて、家に帰る。お母さんに「どこに行ってたの?」と聞かれて「あそこでパーティーがあったんだ」と答える、そんな日常が本当に素晴らしいんです。
―― スティービー・ワンダーと出会った時の話を教えていただけますか?
何度か交流がありました。最初に会ったのは去年のハイドパークです。僕がオープニングアクトで彼がヘッドライナーだった時、バックステージで少しだけお会いしました。あの時はすごく緊張して、スティービー・ワンダーに会えるなんて信じられない!という感じでした。
2回目に会ったのは、彼の奥さんのタメカがLAの感謝祭に招待してくれた時で、スティービーの家に行きました。本当に楽しかったです。みんなでリラックスして、一緒にピアノを弾いたり、「Rocket Love」という曲を一緒に歌ったり、夕食を食べたり。すごく親密な時間で、彼の家族と一緒に過ごせたことは、本当に大きな名誉でした。
―― あなたの歌声はディアンジェロやスティービー・ワンダーといった伝説的なアーティストと比較されますが、どう感じていますか?
非常にプレッシャーになる比較ですね(笑)。でも、僕の音楽活動における唯一の目標は、R&Bとソウルミュージックの系譜に加わることでした。スティービーからディアンジェロ、プリンス、ラファエルまで、僕はただその歴史の一部になりたかった。だから、比較を重荷としてではなく、人々がそう感じてくれることを本当に嬉しく思います。彼らの章を次の世代へと引き継いでいく責任も感じています。将来、R&Bに夢中な子供たちが僕を見て、そこからスティービーやディアンジェロへと遡っていくような、そんなインスピレーションの道筋になれたらいいなと思っています。
―― ヴァージル・アブローがあなたの音楽を使用した瞬間は大きな転機だったと思います。今、あの経験を振り返ってどう思いますか?(ファッションデザイナーの故ヴァージル・アブローによる最後のルイ・ヴィトンのショーに楽曲「Golden」が起用されている)
振り返ってみると、あれがすべての始まりでした。ディアンジェロのカバーが僕をその場所へ導いてくれました。ヴァージルのあの瞬間は、音楽活動において「良い曲や才能」はもちろん、いかに「偶然」や「幸運」が完璧に組み合わさるかが重要かを教えてくれました。まさに完璧な教訓でした。「良い音楽を書き、それを適切な人々に聞かせれば、何かが起こるかもしれない」という。
音楽を誰かに聞かせるのは種を蒔くようなもので、いつかそれが思わぬ形に成長するかもしれない。人生がどう動くかということを学んだ、本当に素晴らしい経験でした。
初の来日公演に向けて
―― 今年8月のSUMMER SONIC 2024での初来日パフォーマンスについて、今どんな気持ちですか?
すごく楽しみです! 僕は子供の頃からずっと日本に行きたかったんです。というのも、僕は『ONE PIECE』の大ファンで。6歳の頃から毎週読んでいるんです。少年ジャンプが僕のすべてでした。だから日本に行くのはずっと夢だった。去年の12月の旅行が「第一章」で、その時に「ここでパフォーマンスできたら最高だろうな」と確信したんです。
サマソニでのショーをきっかけに、日本ツアーもできたらいいなと思っています。前に行った時は広島を訪れたんですが、宮島の鳥居も京都も本当に美しかった。日本には見どころがたくさんあるので、仙台にも行ってみたいし、また何度も来なきゃ、と思っています。サマソニが、僕のさらなる日本への旅の始まりになれば嬉しいです。
―― 最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
僕のアルバムを待ってくれている日本の皆さんと繋がれるのが、本当に待ちきれません。僕は皆さんの文化から本当に多くの影響を受けてきました。漫画、アニメ、ゲーム……。僕の音楽の書き方や立ち居振る舞いまで影響しています。『ONE PIECE』の白ひげは僕が世界で一番好きなキャラクターで、彼からも刺激を受けています。皆さんが僕に与えてくれたものに、僕なりの音楽で恩返しできるのを楽しみにしています!
Written By uDiscover Team

2026年3月27日発売
CD・LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify /Amazon Music / YouTube Music





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