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エドマール・カスタネーダ:ハープという楽器の概念を覆す超絶的プレイ!上原ひろみを驚愕させた、ハープ奏者とは?

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ハープという楽器から、あなたはどんなイメージを思い浮かべるだろうか。華麗、繊細、上品、優雅・・・・リズミカルというよりもメロディアスなプレイが似合い、ビートの利いた曲よりもソフトなバラードで聴き手を夢心地にさせる、ちょっと“高嶺の花”的な楽器。奏者はドレスアップして椅子に座り、指を軽やかに弦の上へと走らせてゆく。

その概念に刺激を与える男が今、熱い注目を集めている。彼の名前はエドマール・カスタネ―ダ、1978年コロンビアのボゴタに生まれた気鋭だ。13歳からハープを始め、南米の伝統音楽“ムシカ・ジャネーラ”を学んだ後、1994年ニューヨークに移住。父親の仕事の都合による渡米だったそうだが、この大都会で彼はジャズという音楽を“発見”する。なかでも伝説的サックス奏者のチャーリー・パーカー、現在も幅広い活動を続けるピアノ奏者チック・コリアのプレイには深い感銘を受けたという。そして高校や大学のジャズ・バンドではトランペットを担当した。その理由はずばり「バンドにハープのポジションがなかったから」。おかげで管楽器に対する知識が深まり、家に帰るとトランペットで試みたフレーズをハープに移し替えて練習を重ねたそうだ。

ジャズ・ハープ奏者の道を行くのはたやすくないとわかってはいたが、それでもレストラン等で演奏する仕事が巡ってくるようになった。雇われるのは彼ひとり。これはつまり、ソロ・パフォーマンスをしなければならないということだ。「なんだ、ワンマン・バンドをやればいいのか」。34本の弦(彼のコロンビアン・ハープは通常より2弦多い)を2本の腕、10本の指でいかに効果的に、立体的に鳴らすか。レストランでの日々が、メロディ、ハーモニー、ベース・ライン、打楽器的な音を同時にプレイする独創的なスタイルを作りあげた。しかも、彼は椅子に座らず立って演奏する。全身でリズムをとりながら、時に楽器を抱擁するように、時に両肩を激しく上下させて音楽に没頭するのだ。

パキート・デリベラ、ウィントン・マルサリス、マーカス・ミラーらといった大御所からも支持を集め、リーダー作もすでに4点発表。なかでもギターの名匠ジョン・スコフィールドを迎えたセカンド・アルバム『エントレ・クエルダス』は世界的な反響を集めた。そして2016年6月、カナダのモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルで上原ひろみと運命の出会いを果たす。初めてエドマ―ルの生演奏を聴いた上原は「ハープってこんなに凄い楽器だったのか!」と仰天したという。ふたりは出会った翌月に「ブルーノート・ニューヨーク」で早くも初共演を果たしたあと、今年5月より新プロジェクト「上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ」としてライヴを重ね、6月の同フェスで一緒のステージに立った。その“音の会話”を会場の熱気とともに真空パックしたのが、アルバム『ライヴ・イン・モントリオール』である。

上原がエドマールとのプロジェクトのために書き下ろした組曲「ジ・エレメンツ」を筆頭に、まさしく感嘆符だらけの内容だ。狂おしいほど情熱的なハープ・プレイ、上原のピアノとの反射神経の塊のようなやりとり、イマジネーション豊かな即興演奏は、おそらくかなりのリスナーが抱えているであろう「ハープでジャズ?」という先入観の「?」を、すぐさま「!」へと変えるに違いない。「フォー・ジャコ」では天才ベース奏者ジャコ・パストリアスを彷彿とさせるベース・ラインをハープから導き出し、かと思えばバラードの「月と太陽」ではハープの持つ華麗で繊細な一面もしっかり届ける。

「(海外で)ライヴを見てくださった方みんなが、早くアルバムが欲しいと言ってくれます」と上原はいう。ふたりは『ライヴ・イン・モントリオール』のリリース後、「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017」で日本プレミア・パフォーマンスを行う。果たしてどんな化学反応が起きるのか、驚きと熱狂のデュオ・パフォーマンスを全身で受け止めたい。

文:原田和典(音楽評論家)


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上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ
ライヴ・イン・モントリオール【初回限定盤】

2017年09月20日発売!

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