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初来日公演が迫るパール・ジャムのエディ・ヴェダーと映画『ソング・サング・ブルー』の深い関係

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Photo: Jim Bennett/Getty Images

パール・ジャム(Pearl Jam)のフロントマンであるエディ・ヴェダー(Eddie Vedder)が、キャリア初となるソロ来日公演を2026年4月14日から名古屋・大阪・京都・東京にて行うことが決定した。

この来日公演のタイミングで、ヒュー・ジャックマンとケイト・ハドソンがニール・ダイアモンドのトリビュートバンドの夫婦を演じる映画『ソング・サング・ブルー』日本劇場公開されるが、この中ではエディ・ヴェダーが登場することもファンの間では話題となっている。

この映画、そしてパール・ジャムとニール・ダイアモンドとの関係などについて、パール・ジャムを追い続けている新谷洋子さんに解説いただきました。

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実際にいたトリビュートバンド夫妻

他の国にも似たカルチャーがあるのだろうが、往年のスターを真似るインパーソネーター、或いはトリビュート・アクトと総称されるミュージシャンによるパフォーマンスは、アメリカのステート・フェア(州ごとに開催されるお祭り的なイベント)やカジノでの定番エンターテインメントだ。

見た目やファッションや所作を真似ることはもちろん、名曲の数々を忠実に再現する演奏力やヴォーカル力も求められるわけで決して生易しい生業ではないし、中には音楽界で成功する夢に破れた人たち、まだその夢を諦めていない人たちも多数含まれているのだろう。この映画『ソング・サング・ブルー』の冒頭でも、エルヴィス・プレスリーにリトル・リチャード、バディ・ホリー、ジェームス・ブラウンなどなど、“レジェンド”たちがステート・フェアに一堂に会している。

しかし、ハワイアン音楽界のスター=ドン・ホーとしてステージに立つはずだったその男マイク・サルディナ(ヒュー・ジャックマン)は、「自分がやりたいことはこれじゃない」とふと我に返る。そして同様にインパーソネーターとしてパッツィー・クラインの曲を歌っていた女性クレア(ケイト・ハドソン)に魅了されてコンビを結成。インパーソネーターではなくインタープレターを志し、男女デュエットによる独自の解釈で、敬愛するニール・ダイアモンドの音楽を人々に届けようと思い立った。

以後ライトニング(=マイク)&サンダー(=クレア)と名乗り、地元のウィスコンシン州ミルウォーキーを中心に絶大な人気を博して、家族と音楽とミュージシャン・コミュニティへの愛を通じて度重なる試練を乗り越えたふたりのラヴストーリーは、まさに映画になるべくしてなったと言えよう。何しろ彼らの姿をフィルムに刻んだのは、本作の監督クレイグ・ブリュワー(『ハッスル&フロウ』『ルディ・レイ・ムーア』)が最初ではない。

8年にわたってライトニング&サンダーを追いかけた映像作家のグレッグ・コーズが、同名のドキュメンタリー映画(現在YouTubeで無料ストリーミングされている)を自主制作で完成させたのは2008年のこと。ブリュワー監督は当時大きな話題を呼んだ同作を下敷きに、ヒュー・ジャックマンとケイト・ハドソンを主演に選んで、ここにきてふたりの人生をハリウッド・ムービーへと発展させたのである。両作品が共有するタイトルは、ニールの1972年発表の全米ナンバーワン・シングルに因む。

【和訳】Neil Diamond – SONG SUNG BLUE / ニール・ダイアモンド – ソング・サング・ブルー│映画『ソング・サング・ブルー』4月17日日本劇場公開決定 #映画ソンブル

 

パール・ジャムのファンも必見の理由

従って本作は、ライトニング&サンダーはもちろんのこと、半世紀以上のキャリアを誇り1億3千万枚のアルバム・セールスを誇るスーパースターでありながら日本人にはあまり馴染みのないニールの曲の磁力に触れることができる、ミュージック・ラヴァーなら誰しも観て損はない1本なのだが、パール・ジャムのファンであれば、さらに見るべき理由がある。

なぜってマイクとクレアのキャリアに多大なインパクトを与え、2本の映画の誕生に大きく貢献し、かつ劇中に登場もするのはほかでもなく、間もなくソロ・アーティストとして初来日を果たすパール・ジャムのフロントマン、エディ・ヴェダーなのである。ブリュワー監督は米『Entertainment Weekly』誌の取材に対し、「エディはライトニング&サンダーのMVPだ」と語っているくらいだ。

そんな両者の出会いは1995年に遡る。つまり、パール・ジャムが前年11月にサード・アルバム『Vitalogy』で2枚連続の全米ナンバーワンを獲得したのち初めて日本にやってきた年だ。この年の全米ツアーと言えばチケットマスター社との闘い(注:同社がコンサート・チケット市場を独占してチケット代を釣り上げているとしてバンドは独禁法違反ではないかと提訴した)の最中、独自のチケット販売方法を模索して同社と専属契約を結んでいない会場を選んで行なった上に、エディが体調を崩すなどして途方もない苦労を伴ったのだが、こうした状況下でありながらも、友人を介して知ったライトニング&サンダーに惚れ込んだエディはふたりに共演を持ちかける(劇中で描かれている通り、マイクはパール・ジャムが何者だか知らなかったそうだ)。

そして7月、ミルウォーキー最大級の音楽イベント『Summerfest』の一環で行なわれたパール・ジャム公演にゲストとして登場。2万人以上のオーディエンスの前でニールの「Forever In Blue Jeans」をエディと歌うに至った。ちなみにエディは当初、ほかでもなく「Song Sung Blue」を一緒に歌おうと提案したものの、「こういう場所に合うのは“Forever In Blue Jeans”だ」とマイクが説得したのだとか。劇中でエディを演じる俳優ジョン・ベックウィズは見た目こそさほど似ていないものの、あの頃のエディの雰囲気をうまく醸しており、ステージで着用しているザ・クランプスのTシャツも、当日エディが着ていたシャツを模している。

Eddie Vedder clip from Song Sung Blue

 

エディが手助けしたライトニング&サンダー

では、エディはそもそもなぜライトニング&サンダーに惹かれたのか? 明確な回答はどちらの映画からも得られないのだが、恐らく、成功を掴むまでの下積みが長かったことや、同じ中西部出身であること(エディの故郷はミルウォーキーからさほど遠くないイリノイ州エヴァンストンだ)も無関係ではないのだろう。

パール・ジャムとの共演を機にライトニング&サンダーは一挙に知名度を上げ、ドキュメンタリーの中でマイクは、「この業界で一番リスペクトしている」とエディをベタ褒め。エディはその後もふたりを応援し続け、2006年にマイクが55歳で亡くなった際には彼が欲しがっていたギブソン社のエヴァリー・ブラザーズ・モデルのギター(エディが愛用していたもの)を長い手紙を添えてクレアに贈ったことも、ドキュメンタリーには記録されている。

それだけではない。エディは、スラムダンス映画祭での初上映直前までドキュメンタリーでのニールの楽曲使用の許諾を得られずにいたコーズ監督の相談を受け、すぐにニールのマネージャーとコンタクトをとった。そしてニール自身に映画を見せたところ、彼は楽曲の使用を快諾。エディの仲介無しにあの映画は成立しなかったし、本作にも引き続き協力を惜しまず、バンドの代表曲のひとつ「Alive」(1991年発表のファースト『TEN』より)を提供している。

パール・ジャムがこの曲をライセンスするの今回が初めてなのだが、アルバム音源ではなくライヴ・ヴァージョンを提供したというのも、『TEN』のミックスに不満を抱いてわざわざリミックス盤(2009年の『TEN Redux』)も発表した彼ららしい。

エンドロールには、2017年3月にシアトルで録音されたとクレジットされており、タイミング的に、ロックの殿堂入りセレモニーでのパフォーマンスに向けたリハーサル音源なのだろうか? とにかく未発表のレアなヴァージョンであり、もちろんランダムに選ばれたわけでもない。ブリュワー監督は“I’m still alive”というリフレインに、逆境に屈しないマイクとクレアの情熱を重ねたに違いないし、そう、映画の主役はあくまでライトニング&サンダーでありニールの音楽なのだが、エディ/パール・ジャムという陰の立役者がいたことも心に留めて本作を観てもらえたらと思う。

最後にもうひとつ『ソング・サング・ブルー』とパール・ジャムの接点を挙げておこう。それは、クレア役で第98回アカデミー賞や第83回ゴールデングローブ賞の主演女優賞候補に挙がったケイトだ。シンガー・ソングライターとしても活動しており、見事なパフォーマンスを披露する彼女は大のパール・ジャム・ファン。3月にデジタルラジオ局SiriusXMの番組『Pearl Jam Radio』にゲストDJとして出演し、ライトニング&サンダーとバンドの関係を語りながら、13のお気に入り曲をプレイした。ヒットソングだけでなく「Parting Ways」や「Off He Goes」といった愛すべきアルバムトラックも含む、ファンならではのセレクションだったことを指摘しておきたい。

Written By  新谷 洋子


エディ・ヴェダー 来日公演情報

・名古屋4/14 (⽕) Niterra ⽇本特殊陶業市⺠会館フォレストホール
・⼤阪 4/16 (⽊) フェスティバルホール
・京都 4/17 (⾦) ロームシアター京都 メインホール
・東京 4/20 (⽉) 東京ガーデンシアター

公演詳細はこちら



エディ・ヴェダー『Earthling (Japan Tour Edition)』

2026年4月10日発売
日本独自企画盤/SHM-CD仕様

最新ソロ・アルバム『Earthling』(2022)の来日記念
初CD化音源8曲収録のディスク(2020年『Matter of Time EP』+ 2曲)付き
CD予約

パール・ジャム『武道館ライヴ!』
2026年4月10日発売
2003年3月3日の日本武道館公演を収録したライヴ・アルバムが、エディ・ヴェダーの来日公演に合わせて待望の再発。全30曲、2時間20分の熱演を完全収録
CD予約


ニール・ダイアモンド『Neil Diamond Originals – Song Sung Blue』
2025年12月12日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

映画『ソング・サング・ブルー』
2026年4月17日 日本劇場公開
公式HP

『ソング・サング・ブルー』本予告【4/17(金)全国ロードショー】



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