清塚信也、47都道府県ツアー大千穐楽――サントリーホールを包んだ全身全霊の演奏
卓越したピアノ演奏とユーモアあふれるトークで、クラシックの枠を超えて幅広い支持を集める清塚信也が、2026年6月3日に約4年ぶりとなるアルバム『KIYO-LOGUE』をリリース。
そして7月12日、昨年9月から全国を巡ってきた【清塚信也 47都道府県ツアー2025-2026】の大千穐楽公演を、東京・サントリーホールで開催した。
そんな清塚が、全63公演・延べ10万人を動員したツアーの集大成で見せた圧巻のステージを、音楽ライターの上野三樹さんがレポート。当日の公演はU-NEXTにて独占生配信され、7月15日(水)18:00からは見逃し配信もスタートする。
7月12日に清塚信也 47都道府県ツアー2025-2026】の大千穐楽となる、東京・サントリーホール公演が開催された。清塚は前日に行われた『EIGHT-JAM FES』にEIGHT-JAMスペシャルバンドとして出演。
サントリーホール大千穐楽には神戸からの会場入りとなった。
光沢感のある黒いスーツでステージに登場したオープニングから、客席からの大きな拍手に包まれた。おもむろに1曲目の「ベートーヴェン・ファンタジー」を演奏。
美しく壮大な装飾が施されたサントリーホールに響く清塚のピアノに全ての観客が静かに聴き入った。まさにベートーヴェンのヒット・メドレーのようなこの曲は、次第に息を呑むほど凄まじいエネルギーを放つ熱演を生み出していく。
幼少期からクラシック・ピアノの英才教育を受けて培った変幻自在の技巧で、ベートーヴェンのパッションを伝える1曲目を弾き終えると「どうも、天才ピアニストの清塚です」と挨拶した。
清塚は「私は小さい頃から朝5時に起こされ『今は歯を食いしばって、いつかサントリーホールに立てるようになりなさい』と母に言われてピアノの練習に励んできたんですよ」と笑いを交えながら語った。
幼少期から憧れ、これまで幾度となく演奏を重ねてきたサントリーホールは、清塚にとってひときわ思い入れの深い場所なのだ。
今や日本を代表するクラシック・ピアニストでありながら、音楽番組の司会やバラエティ番組への出演などもこなし、トークでも魅了する唯一無二のエンターテイナー・清塚信也。
彼は、今年6月にピアノ演奏に加えてトークもスタジオ収録したアルバム『KIYO-LOGUE』をリリースしたばかり。
この日のプログラムでも前半は、シューマンとブラームスにまつわる恋愛ミステリーを紹介しながら演奏するなど最新アルバムの内容が生で体感できる感動が味わえた。羽のように甘く柔らかなタッチでリストの「愛の夢」を演奏するも、弾き終えるとすぐにマイクを手にして「リストって、1曲に1回は自分のピアノの上手さを見せつけないと気が済まないんですよ。私はこれを『リストの発作』と呼んでいます」と話して会場を沸かせる。
感動したり、興奮したり、どっぷりと音楽世界に浸らせながら、それだけでは終わらない楽しさがあるのが清塚のコンサートの醍醐味だ。
休憩を挟み、「春よ、来い」(松任谷由実)から始まったプログラム後半。トークでは羽生結弦選手とのエピソードも。
更に「ザナルカンドにて」、「闘う者達」、「ディズニー・メドレー」など幅広い選曲。清塚のオリジナル曲「Serendipity」と「人生の光」では自身が曲に込めた真摯なメッセージがしっかりと伝わってくるような祈りに満ちた演奏で、会場全体に一体感を生み出した。
この47都道府県ツアーの各地での模様は自身のYouTube「きよりんチャンネル」でもアップされており、公演中に観客が会場で書いたお便りを紹介するコーナーも見どころのひとつ。
この日も箱に入ったたくさんの紙をランダムに選んで読み上げながら、ユーモアたっぷりにコメントしていく。そのお便りには1人1音の、「好きな音」が書かれていて、それらを使った即興演奏でも楽しませてくれた。
終盤では「長い旅をさせていただけて、感謝しております。これからも皆様の支えになれるよう、活動していきます。言葉のない音楽は、お一人お一人が感じたことが正解です」と挨拶。
そして「コウノドリ・セレクション」として「Maze, Blaze &Raze」、「Sound Seeker」、「Baby, God Bless You」など6曲を披露。清塚の覚悟を、そのまま一音一音に刻み込むかのような演奏。
とりわけこのセレクションでは、まさに命を懸けるように鍵盤へ向かう清塚の姿があり、その鬼気迫るほどの集中力と凄みが、会場全体をのみ込んでいった。
ドラマを彩った多くの名曲たちは今もなお多くのファンに愛され続け、旋律が紡がれるたびに物語の記憶や登場人物たちの姿がよみがえり、客席のあちらこちらで涙を誘う。
静寂の中に響く繊細な音色から、感情が一気にあふれ出すような激しいパッセージまで、そのすべてが胸に迫り、観客はただ息を呑んで聴き入っていた。鍵盤を打つ音はもちろん、足を踏み鳴らす靴音や息遣いまでもが伝わってくるような、清塚の熱気溢れる演奏。その圧倒的な熱量が客席へ押し寄せ、感動が幾重にも重なっていく、壮絶ともいえるフィナーレとなった。
清塚は最後の1音を弾き終わると立ち上がり、満面の笑みで両手を掲げ「ありがとー!」と言いながら、会場を見渡した。鳴り止まないスタンディング・オベーションに応えてのダブル・アンコールまで、忘れられない光景として観客の胸に刻まれたことだろう。
なお、本公演はU-NEXTで生配信され、会場のみならず、全国の視聴者もリアルタイムでステージを見守った。
配信も大きな盛り上がりを見せ、終演後には演奏の迫力や感動を伝える反響が広がるなど、サントリーホールで生まれた熱気は画面を通して多くのファンに共有された。昨年9月の神奈川・横浜みなとみらいホールを皮切りに全63公演、延べ10万人を動員した大規模なツアーにふさわしい、華々しい熱狂に包まれた大千穐楽だった。
Written by 上野三樹
■リリース情報
清塚信也 『KIYO-LOGUE』
2026年6月3日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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