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バッハの不朽の名作《ゴルトベルク変奏曲》とは?:バロック鍵盤芸術最高峰の傑作を探る

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ラン・ランの新作でも話題になっているバッハの不朽の名作《ゴルトベルク変奏曲》

約280年前に書かれたこの曲は、アリアを主題とした30の変奏曲で構成されている。演奏時間は休憩なしで1時間以上を要する。ピアニストやチェンバロ奏者にとって、もっとも大きな挑戦である。一方で、この作品の人気は絶えず、今日もたくさんの人に聴かれ、愛奏され続けているのだ。

世界的ピアニスト、ラン・ランは今年9月4日にニュー・アルバム『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』をリリース。20年以上の研究を経て録音に挑んだという。ここからはラン・ランの演奏によるバッハの《ゴルトベルク変奏曲》を聴きながら、記念碑的な作品の傑作について紹介していこう。


バッハの記念碑的な《ゴルトベルク変奏曲》とは?

伝記によると、ドレスデンのロシア大使であるヘルマン・カール・カイザーリンク伯爵が、不眠症を訴え、「きわめて柔和で、いくぶん快活な性格をもち、眠れない夜には少しでも気を晴らしてくれることができるような」音楽を望んでいたとされている。

そして書きあがったこの変奏曲は、才能のある若いチェンバロ奏者であるヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクによって演奏された。伯爵は非常に喜び、百個のルイドール金貨をみたした金の盃をバッハに贈っている。

“音楽愛好家の魂の喜びのために書かれた”

まるで物語のような話だが(バッハの最初の伝記作家であるヨハン・ニコラウス・フォルケルに感謝したい)、実際、この真偽は定かではない。

この変奏曲が出版された際、カイザーリンク伯爵に献呈されておらず、贈られたとされる盃もバッハの家から見つかっていない。1741年にバッハの《クラヴィーア練習曲集》の第4巻(最終巻)として初版されたとき、作曲家自身は単に音楽が「音楽愛好家の魂の喜びのために書かれた」と序文で述べているのだ。

ゴルトベルクに関して言えば、当時まだ14歳であった。バッハ自身が優れたチェンバロ奏者であり、楽曲の演奏の難しさもよくわかっていたはずなので、もしもゴルトベルクがこの曲を演奏したのであれば、非常に才能があったことになる。

この変奏曲は、特に手が頻繁に交差するため、両手を自在に操ることのできる名手でなくては弾きこなせない。2段鍵盤のチェンバロであれば、演奏者は片手を上の鍵盤、もう片方を下の鍵盤で演奏すればよいので、それぞれの腕の動きを邪魔することなく演奏できる。

しかし、今日を生きるピアニストたちにとっては、非常に演奏が困難となる。鍵盤は一段のみなので、交差の際の動きを理解できていない演奏者は、もつれた編み物のような危険な状態になってしまう。

《ゴルトベルク変奏曲》の基礎はト長調の「アリア」

「ゴルトベルク変奏曲」の基礎となるのは、ト長調の「アリア」であり、事実上、2部分形式のサラバンドである(それぞれの部分で繰り返しがある)。バッハはこの曲で、旋律ではなく、和声の構造に基づいて変奏させている。これは変奏曲全体を通して一定であり、3つの短調で書かれた変奏でも同様である。

Lang Lang – Bach: Goldberg Variations, BWV 988: Aria

つまり、この作品はパッサカリアやシャコンヌのアイデアを大規模に取り入れたものなのだ。これらのバロック時代に人気のあった音楽形式は、それぞれ低声部で同一の音型が繰り返され、その上で変奏が行われていくものであり、通常は低声部を含めた全体を変奏するものではなかったため、前例はほとんどなかった。

考えられるものの1つは、62の変奏を持つヘンデルの《シャコンヌ ト長調》(1733)だ。その8小節の低声部は、バッハの「アリア」の最初の8小節と同様である。《ゴルトベルク変奏曲》は、バッハの当時流行していた楽曲に対しての「あなたにできることは何でもできる、私はもっとうまくやれる」という皮肉を含んだ反応だった可能性がある。

しかし、彼自身の作品の中で最も近い例は、独奏ヴァイオリンのための《パルティータ第2番ニ短調》(1717-1720)のシャコンヌで、連続する8小節の低声部のパターンの上で行われる変奏曲で構成されている。それは非常に強く感情的に訴えるものがあるので、《ゴルトベルク変奏曲》と容易に並ぶ――そして両方の作品の低声部は32回繰り返される。

32小節の低声部を主題とした32曲で構成

これは重要なことだ。なぜなら、このような長いスパンでペース、エネルギー、論理を整理するために、バッハは《ゴルトベルク変奏曲》に彼の数学の原理や数秘術に対する興味を反映した、いくつかの構造的なしかけを行っているのだ。

作品は、まるで小宇宙が大宇宙に影響を及ぼしているかのように、32小節の低声部を主題とする32曲が展開するのだから。全体は2つに分割され、第15変奏は中間点である。3つの短調による変奏曲の最初であり、手の距離がだんだんと離れていく状態で終わる。

第16変奏は新たな始まりだ。壮大なフランス風の二重付点のリズムと華やかな装飾で満たされる劇的なフランス風序曲で、2つ目のセクションではテンポが速くなるというコントラストが作り出されている。

J.S. Bach: Goldberg Variations, BWV 988 – Variatio 16 Ouverture. a 1 Clav.

この変奏曲は3つにグループ化される。円を描くように3つおきにカノンが置かれ、その模倣声部の音程は毎回徐々に広い間隔になっていくのだ。

最初の第3変奏では1度(同じ音)、続く第6変奏のカノンでは2度、第9変奏では3度……と、音程のずれが順次上行するように配列されている(最終的に3曲ごとに登場するカノン変奏の音程の開きは第27変奏で9度に達する)のだ。

これらに加えて、バッハは自由変奏を配置している。多くの場合は舞曲風で、ジーグ(第7変奏)やフゲッタ(第10変奏、ヴィルトゥオジティを魅せるチャンスだ)などがある。3番目の数字はしばしば聖三位一体を象徴しているため、これらのグループ分けは数秘術的に非常に重要である可能性がある。

作品が象徴しているだろうものは他にもまだある。こうしたことは、バロック時代の絵画では普通に行われていることであった。音楽もまた、多くの知識層の聴衆にとって標準的であったと思われる古典や聖書からの引用が含まれ、当時の聴衆によって“深読み”されることがよくあったのだ。

今日の私たちのほとんどは、それらの知識を共有するのに十分恵まれているわけではない。たとえば、約20年前に発表されたある学術理論では、プトレマイオス宇宙論の9つの次元を通じた地球から恒星に至る寓話である可能性があり、それぞれの自由形式の変奏曲は、それぞれの惑星の段階を象徴している。

叙情的な第13変奏は、愛の女神の惑星である金星を表している。第25変奏は、しばしば「黒真珠」と呼ばれる、これは土星を指していると思われ、親密な痛み、死、そして喪に服する不協和音に満ちている。そして、第29変奏はきらめく星々がトリルによって示されている。

家族や友人たちと共に音楽を作ることは何よりも最高だと示している

作品のクライマックスに、バッハは最後のカノンの代わりに「クオドリベット」(羅:quod libet、“好きなように”の意)を書いた。これは、複数人がそれぞれ違う歌を同時に歌うという遊び(バッハは家族で集まるとよくこれに興じたといわれている)であった。

バッハはここで当時の流行歌「キャベツとカブに追い出された」と「長いことご無沙汰だったね」の2つを組み合わせた。おそらく、それは家族や友人たちと共に音楽を作ることは何よりも最高だと示しているのである。

Lang Lang – Bach: Goldberg Variations, BWV 988: Variatio 30 Quodlibet. a 1 Clav.

最後には、私たちが人生で経験したことをパノラマのように見る感覚で「アリア」が戻ってくる。しかしその経験は文脈によって変化していく。T.S.エリオットの「リトル・ギディング」(『四つの四重奏』から)を引用するとしたら:

“…the end of all our exploring
Will be to arrive where we started
And know the place for the first time.”
“…そしてすべての探求の終わりは
出発した場所に辿り着いて
その場所を初めて知ることであるだろう“

最終的には、誰もがバッハの《ゴルトベルク変奏曲》から何か違うものを読み解くだろう

最終的には、誰もがバッハの《ゴルトベルク変奏曲》から何か違うものを読み解くだろう。私たちはその哲学をほめたたえたり、単にそのインスピレーションの洪水を楽しんだりすることができる。歴史的に正確な詳細をすべて観察することも、その可能性に制限がないと判断することもできる。見通しがどうであれ、おそらくこの宇宙にはすべてのための十分な余地がある。

おすすめの録音
ラン・ランは、バッハの記念碑的な《ゴルトベルク変奏曲》を録音することで、生涯にわたる夢を実現した。彼は2つのそれぞれの魅力を補完し合う録音をリリースした。

まずはベルリン、イエス・キリスト教会で行われたセッション録音。次に、バッハがオルガン奏者として働き、現在では埋葬されているライプツィヒのトーマス教会で録音されたライヴ録音だ。2つの録音は、ラン・ランの解釈の芸術を垣間見ることが出来る「デラックス・エディション」で購入することが可能だ。

『エコノミスト』は、「これらの2つのヴァージョンは、バッハの崇高に暗号化された謎への新しい扉を開くだろう」と述べ、『ニューヨーク・タイムズ』はこの録音について「深いものを感じた」と書いている。

おすすめの動画
2019年にクラシックの名曲29曲を約5分でマッシュアップし、3台のピアノで演奏するミュージック・ビデオ“クラシック・マッシュアップ”でピアニストとして共演したラン・ランと霜降り明星・粗品。先日、公開となった2人の音楽対談映像では、《ゴルトベルク変奏曲》について、白熱したトークが繰り広げられている。

ラン・ラン×粗品『音楽を語る』

『ラン・ラン×粗品 音楽を語る』

Written By uDiscover Team


■リリース情報ラン・ラン『バッハ: ゴルトベルク変奏曲』
2020年9月4日発売
CD / iTunes / Amazon MusicApple Music / Spotify



 

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1 Comment

1 Comment

  1. 藤田伊織

    12月 6, 2020 at 4:27 pm

    ランランの演奏はん確かに素晴らしい。
    『バッハは最後のカノンの代わりに「クオドリベット」(羅:quod libet、“好きなように”の意)を書いた。バッハはここで当時の流行歌「キャベツとカブに追い出された」と「長いことご無沙汰だったね」の2つを組み合わせた』その通りだが、この歌そのものは歌詞としては結構下世話なものでああったようだ。「キャベツとカブ」しか食事に出ないので、勢力が付かず、役に立たなかった。とか、ご無沙汰だったのは、あっちの関係だった。とかです。そこからメロディーだけを取り出してバッハはクオドリべトにしたというわけです。子供にはわからないように。大人たちはクスクスいするように。
    これ以外にも、いくつも謎がある。そうしたことは、私のウェブページを見れば、わかるし、それぞれ、自分自身のゴールドベルク変奏曲を作るきっかけにもなる。『知の音楽 ゴールドベルク変奏曲』ご覧ください。

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