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エルトン・ジョン「Step Into Christmas」:キャリア絶頂期に誕生したクリスマス・ソングの名曲

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1973年、エルトン・ジョン(Elton John)は、ほとんどのアーティストが生涯に一度でも経験できれば幸運と言えるほどの輝かしい一年を過ごした。アルバム『Don’t Shoot Me I’m Only The Piano Player』、さらに高い評価を得た『Goodbye Yellow Brick Road』が立て続けに米英チャートを制覇。

その勢いのまま、自身初のホリデイ・ソング「Step Into Christmas」を録音・リリースする機会にも恵まれ、まさにキャリアが“成層圏レベル”へ到達した一年となった。

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Elton John – Step Into Christmas

ジョンと長年ソングライティングを共にしてきたバーニー・トーピン(Bernie Taupin)は、クリスマス・ソングを制作するという構想に胸を躍らせていた。1970年の「Rock ‘N’ Roll Madonna」以来、アルバム未収録のシングルを書き下ろしてリリースすることはなく、クリスマス市場向けに特化した楽曲を創り上げるという挑戦を心から楽しんでいた。エルトンはAmerican Songwriter誌のインタビューで当時を振り返り、「クリスマス・ソングを作ろうと思ったんだ。あの頃はいつもレコードを制作していたし、バーニーはクリスマス・ソングが大好きだから喜んで賛成してくれた」と語っている。

もっとも、ジョンとバーニーには記憶に残るクリスマス・ソングを作る意欲(そして確かな才能)はあったものの、時間だけは彼らに味方していなかった。『Goodbye Yellow Brick Road』が1973年10月に発売され、ハロウィーンを過ぎた頃になってようやく制作に取り掛かる余裕ができたという状況だった。しかし幸運にも、ギタリストのデイヴィー・ジョンストンがすでに完璧なギターパートを用意していたことから、制作は順調にスタートした。

当時のセッションについて、デイヴィーはエルトン・ジョン公式サイトのインタビューで次のように明かしている。

「アコースティックとエレクトリックを組み合わせた、かなりイカしたギターリフを思いついて一気に走り出したんだ。ロジャー・ポープがタンバリンを叩き、そこにキキ・ディーのバンドのメンバーがスタジオにいて、キキとジョー・パートリッジがバックボーカルに加わってくれた。(プロデューサーの)ガス・ダッジョンと(エンジニアの)デヴィッド・ヘンツェルが最初のサビの“the admission’s free”のすぐ後に入る“トナカイ”の音を思いついたんだ」

こうして1973年11月11日、ロンドンのトライデント・スタジオで行われたたった1日の集中セッションで、「Step Into Christmas」とB面曲「Ho, Ho, Ho (Who’d Be A Turkey At Christmas)」の録音とミックスが完了。そして数日後には、祝祭ムードにあふれた「Step Into Christmas」ミュージック・ビデオも撮影された(エルトンは2023年のYouTubeショートで、「究極のクリスマス・パーティだった」と振り返っている)。完成したシングルは同年11月23日、感謝祭の翌日に全米の店頭に並んだ。

Elton John – Ho! Ho! Ho! (Who'd Be A Turkey At Christmas) (Audio)

時間に追われた制作だったものの、エルトンとバーニーは決して妥協しなかった。フィル・スペクターが手掛けた1963年の傑作クリスマス・アルバム『A Christmas Gift For You From Phil Spector』から着想を得て、ガス・ダッジョンによるプロダクションは“ウォール・オブ・サウンド”を彷彿とさせる豊かなサウンドを構築し、陽気な雰囲気や祝祭的なコーラス、「雪が降り続くのをいつまでも眺めていよう」「飲んで食べて楽しもう」といった季節感あふれる歌詞など、クリスマスに必要な要素をすべて詰め込んだ楽曲が完成した。

The Ronettes – Sleigh Ride (Official Audio)

それを踏まえると、この曲が米ビルボードのクリスマス・シングル・チャートで即座に1位を獲得したことや、その後も米英のクリスマス・チャートにほぼ毎年再登場していることは驚きではない。

エルトンは2023年のYouTubeインタビューで、制作時の喜びをこう語っている。

「楽しみたかったし、クリスマスらしいものを全部詰め込みたかった。フィル・スペクターの音楽を意識して真似てもみたんだ。曲もビデオも、とにかく作っていて最高に楽しかったのを覚えているよ」

Written By Tim Peacock



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2025年10月24(金)発売
2LP・2CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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