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日本の音楽家が紡ぐ『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume 3 サウンドトラック、配信開始

アニメクリエイターたち独自の”ビジョン”を通して描かれる新たなスター・ウォーズの物語、『スター・ウォーズ:ビジョンズ』 Volume 3が10月より配信スタート。9つの短編物語を彩る9作のオリジナル・サウンドトラックも合わせて配信されています。各作品の注目すべきポイントを井筒節さんに解説していただきました。
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スター・ウォーズを、日本にある9つのアニメーション・スタジオが描く『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume 3が、Disney+にて10月より日米同時独占配信開始となった。
今年4月、17年ぶりに日本で開催されたスター・ウォーズ最大の祭典「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン 2025」では、監督陣参加のもと、本作のビジュアルが初公開され、世界中のファンの間に興奮の渦を生み出し、公開が待ち望まれていた。
日本はスター・ウォーズ・サーガ誕生のルーツの一つとして知られるが、『スター・ウォーズ:ビジョンズ』はことさら日本との繋がりが強い。2021年に配信開始されたVolume 1では、世界を牽引する日本の7つのアニメーション・スタジオが、スター・ウォーズの世界を更に深める珠玉の作品を手がけた。Volume 2では、世界のクリエイターが集結。そして、今回、Volume 3において、再び日本 にて、Volume 1にも参加した4つのスタジオと新たな5つのスタジオが、9つの新作を制作した。
自由なイマジネーションや思いで、スター・ウォーズの世界観を更に広げる物語や作画、登場キャラクター、ドロイド、ビークル、ロケーション、アクション等と共に注目を集めているのは、その音楽。ここで、Volume 1、2に続き、各種オンライン・プラットフォームで配信開始されたVolume 3のオリジナル・サウンドトラックについて、作品の概要と共に見ていこう。
1. 神風動画+ANIMA『The Duel: Payback』
Volume 1で『The Duel』を生み出した神風動画が、CGスタジオのANIMAと共に“神風動画+ANIMA”として制作した、水野貴信監督作品。『The Duel』は、精緻な作画とダイナミックなライトセーバー・バトルが話題を呼び、アニー賞一般向けTV/メディア部門やエミー賞ショートアニメーション部門にノミネートされた。本作は、この続編。
日本語版では、物語の鍵を握るグランド・マスター役を、アナキン・スカイウォーカーの吹替で知られる浪川大輔が担当。音楽は、前作に引き続き、『BURN THE WITCH』、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』等の 井内啓二。ジョン・ウィリアムズが生み出した音楽へのリスペクトを随所に感じるサウンドが響く。
2. プロジェクトスタジオQ『四枚羽の詩』
プロジェクトスタジオQ制作、小林浩康監督作品。雪に覆われた惑星に帝国軍が侵攻。反乱軍が危機を迎える中、変形するメカスーツで戦う主人公クラネ。タイトルにある“四枚羽”は、元々Xウイングをモチーフにしたものだが、象徴的な形で登場する。
音楽は、1990年に DEEE-LITEのメンバーとして全米デビュー、NHK 「草間彌生 わが永遠の魂」等の音楽を担当し、YMO結成40周年アルバム「ノイエ・タンツ」では企画監修デザインも務めるなど、多岐にわたるアーティスト活動を繰り広げるテイ・トウワ。鷺巣詩郎、Ayumi Obinata、 Goh Hotoda等の豪華布陣も参加。オーロラの下、スター・ウォーズの音楽を独特な視点で捉え直した、時代を超えた電子サウンドが斬新だ。
3.Production I.G『The Ninth Jedi: Child of Hope』
Production I.G制作、塩谷直義監督作品。Volume 1の『九人目のジェダイ』(神山健治監督)の続編であると共に、来年から配信予定のオリジナル・アニメーション・シリーズ『Star Wars Visions Presents -The Ninth Jedi』ともつながる。斬新なキャラクター・デザインと迫力の映像で、鍛冶屋の娘で強いフォースを秘めた主人公カーラと、給仕用ドロイドのテトの冒険を、“なぜ人は戦争をするのか”を問いかけつつ、描く。
音楽は、大河ドラマ『軍師官兵衛』、連続テレビ小説『半分、青い。』等を手がけた菅野祐悟。「日本版フォースのテーマ」とも言えるような響きなど、新たなビジョンに基づく壮大なスター・ウォーズの音楽が魅力的。エンド・クレジットの音楽にも注目。
4. WIT STUDIO『The Bounty Hunters』
初参加となるWIT STUDIO制作、山元隼一監督作品。女性賞金稼ぎセブンと、変形して様々な形体をとるドロイドIV-A4 の関係と成長を描く。ハン・ソロへのオマージュも。日本語版でセブンを演じたのは、『スター・ウォーズ:アコライト』で双子のメイとオーシャを担当したファイルーズあい。英語版は、『SHOGUN 将軍』のアンナ・サワイ。
音楽は、『竜とそばかすの姫』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞等に輝いた岩崎太整と、『デス・ストランディング』 でThe Game Awards 2019最優秀スコア&ミュージック賞を受賞した ルートヴィヒ・フォルセル。シンフォニックなゲーム音楽のようなサウンドに邦楽器も加えた印象的な音楽。テーマソングには椎名林檎が登場。
5. キネマシトラス『ユコの宝物』
『彷徨う者たち』同様、キネマシトラスが制作した、橘正紀監督作品。お馴染みのタトゥイーンの風景の中、少年ユコとクマ型お世話ドロイドのビリーが、家族のいない謎の少年ソラと出会い、繰り広げる冒険譚。「かわいい」モチーフと軽快なアクションが満載。日本語版では、主人公ユコ役を寺澤百花、リク役を宮野真守が担当。
音楽は、『イクサガミ』、『ガンニバル2』、『機動戦士ガンダム 水星の魔女 』等でも知られる大間々昂。シンフォニックでファンタジー感溢れる音楽が、チャーミングなキャラクターや物語にピッタリ。“ヴィラン”の音楽でさえ、スター・ウォーズらしくもどこか優しげに聞こえる、温かな世界観が魅力的だ。
6. キネマシトラス『彷徨う者たち』
垪和等監督によるVolume 1『村の花嫁』の続編。オーダー66 を生き抜き、ジェダイであることを隠して辺境の星々を旅していた主人公エフ。災害から避難する人々を助けるために帝国軍に捕らえられ、因縁の相手と対峙することに。エフの物語を通して、人道危機で家族や大切な人を失った人々の姿を描き出す。
音楽は、『Florence』や『メイドインアビス』を手がけたケビン・ペンキンが続投。Emi Evans、斎藤毅も、Vocals & Lyricsで参加した。美しさと悲しみを湛えた港町に誘うような音楽から始まり、全編を通して響く弦やコーラス等様々な楽器の掛け合いが印象的。
7. TRIGGER『The Smuggler』
『The Smuggler』は、Volume 1にも参加したTRIGGERの新作。 Volume1で息をのむライトセーバー戦や、師弟関係をめぐる物語を描いた『The Elder』を制作し、世界から賞賛された大塚雅彦監督が続投。一方、シリアスな時代劇的テイストから活劇風にタッチが変わった。帝国とのトラブルを抱える密輸業者チタが、身を隠す王子たちと出会い、共にならず者たちと戦う物語。
音楽は、『The Elder』に続き大島ミチル。『ゴジラ対モスラ対メカゴジラ』、NHK連続テレビ小説『純情きらり』等多くの作品の他、吉永小百合が続ける原爆詩の朗読の音楽も担当してきた。ギター・サウンドやヒロイックな音楽が独特な世界観を生み出す。
8. ポリゴン・ピクチュアズ『極楽鳥の花』
『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』、『スター・ウォーズ レジスタンス』の制作に参加してきたポリゴン・ピクチュアズの『スター・ウォーズ:ビジョンズ』初参加作品。吉平 “Tady” 直弘が監督。ジェダイ修行の中、戦闘により両目を負傷したパダワンの少女ナキメ。恐怖の中、ダークサイドへと誘惑される。“目に見えないもの”を描くことで、フォースの神髄を視覚化した。3DCG アニメーションを駆使し、日本の古代神話や精神を“光と闇”に反映させた野心的作品。
音楽は、『オーバーロード』、『幼女戦記』、『GAMERA -Rebirth-』等の片山修志。鐘の音が見知らぬ世界に誘うような独特の世界観で音を綴る。心象を音に映し出したような音色が、キャラクターと視聴者を結ぶ。
9. デイヴィッドプロダクション『BLACK』
デイヴィッドプロダクション制作。監督は、スタジオジブリ『紅の豚』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『君たちはどう生きるか』、クエンティン・タランティーノ監督『Kill Bill』アニメ・パート等を手掛けた大平晋也。ストームトルーパーを主人公に、独特なタッチとカラー、圧倒的な世界観、そして独自の視点で、芸術的に描く。メインキャラクターではなくモブとして消えていく登場人物や戦争の闇を描きたかったという。
ジャジーでコンテンポラリーな響きの音楽は、藤原さくら。映像と共に体感すると、新たなスター・ウォーズの世界観を感じられるだろう。
新たに発表されたこれら日本発のスター・ウォーズ・ミュージックを、スター・ウォーズ公式プレイリストや、スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン 2025オリジナル・サウンドトラック・ボックスセット、そして『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume 1、Volume 2のサウンドトラックと共に、楽しもう!
Written by 井筒 節

『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – The Duel: Payback(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Towa Tei
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – 四枚羽の詩(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Yugo Kanno
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – The Ninth Jedi: Child of Hope(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Taisei Iwasaki, Ludvig Forssell
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – The Bounty Hunters(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Takashi Ohmama
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – ユコの宝物(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Kevin Penkin
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – 彷徨う者たち(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Michiru Oshima
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – The Smuggler(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Shuji Katayama
『スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – 極楽鳥の花(オリジナル・サウンドトラック)』
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

Sakura Fujiwara
Two of Me(From スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol. 3 – BLACK)
2025年10月31日配信
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

スター・ウォーズ公式プレイリスト
『スター・ウォーズ ベスト』
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