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映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のサントラの魅力と裏話

1985年の夏に全米公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は歴史に残る大ヒット映画になった。マイケル・J・フォックスが演じる1人の若者が、スポーツカーであるデロリアンをタイム・マシンに改造したクリストファー・ロイド演じる友人の発明家によって30年前の過去に送られるこの物語は、非の打ち所のないハリウッド映画の理想形として君臨し続けている。
テンポの速いアクション・コメディに仕上げられた同作は、40年以上ものあいだ観客を魅了し続けているのだ。また、この作品からは2作の続編のほか、コミック、テーマ・パークのアトラクション、さらにはブロードウェイ・ミュージカルまで作られている。
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サントラの収録曲
そう考えれば、この映画のサウンドトラックが時空を超えて愛される1作になっているのも不思議ではない。オリジナルのアナログ盤には、スクリーン上のスリルを加速させる10トラックの楽曲が収録。中でもリンジー・バッギンガムが神経質そうに歌う「Time Bomb Town」や、軽快でポップなレゲエ・サウンドに仕上げられたエリック・クラプトンの「Heaven Is One Step Away」(プロデュースはフィル・コリンズ)は、いまなお80年代のレア音源の収集家たちに珍重されている。
だが聴く者をそれ以上に興奮させるのは、同作の壮大な映画音楽から選び抜かれたトラックだろう。グラミー賞にもノミネートされたこのスコアにより作者のアラン・シルヴェストリは一流の作曲家としての地位を確立し、その後も『フォレスト・ガンプ/一期一会』から『アヴェンジャーズ』まで幅広い作品の音楽を担当するようになったのである。
このアルバムにはまた、マーティ・マクフライが学校のダンス・パーティーで若き日の両親を結び付ける重要シーンに登場する楽曲も収められている。俳優/シンガーのハリー・ウォーターズ・ジュニアは、バンドリーダーのマーヴィン・ベリーに扮してペンギンズの「Earth Angel」をしっとりと歌唱。だが、マーティがチャック・ベリーの録音より3年も前に思いがけず”生み出して”しまった「Johnny B. Goode」の熱烈な演奏は何より忘れ難い。
自身も熱心なギタリストであったにもかかわらず、フォックスは劇中でこの曲を実際には演奏せず、ジャック・マック&ザ・ハート・アタックのマーク・キャンベルによる歌と演奏に当て振りをしただけだった。それでも、彼はこのシーンの撮影に強い思い入れがあるのだという。彼は2025年に出版された回顧録『Future Boy』の中でこう綴っている。
「ほかのどの場面よりも、あのシーンに一番力を注いだ。撮影しているとき以外の自由時間は、ほとんどギターを弾いて過ごした」
そう振り返る彼は当時、同映画とコメディ・ドラマ『ファミリータイズ』に同時並行で取り組んでいた。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの抜擢
だが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が音楽史に名を残し続けているのは、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが提供した2つの名曲によるところも大きい。監督のロバート・ゼメキスは大ヒット・アルバム『Sports』を発表して間もなかったルイスに自らアプローチし、マーティのような10代の若者はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの音楽が好きなはずだと説明。しかしフロントマンのルイスはすぐに首を縦に振ったわけはなかった。当の本人はローリング・ストーン誌の取材でこう話している。
「こんな風に伝えたんだ。“おお、それは光栄な話だ。だけど映画向けの曲作りは経験がないし、〈Back To The Future〉なんてタイトルの曲を自分が書く想像がつかない”ってね」
それでも、どんな曲を提出しても構わないことを確認した彼らは、映画の冒頭近くで流れるノリの良い楽曲「The Power Of Love」と、エンド・クレジットに使用された人気ナンバー「Back In Time」を録音したのだった(ルイスはバンド・コンテストの審査員役で本編にカメオ出演もしている)。
「The Power Of Love」は米ビルボードのホット100チャートで2週に亘り1位を獲得し、米アカデミー賞の歌曲賞にもノミネート(同映画はこれを含め4部門でノミネートを受けた)。それから40年が経ったいまも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のサウンドトラックを聴きさえすれば――”次元転移装置”を使うことなく――この名画を初めて観たあの瞬間にタイム・スリップした気分が味わえるのだ。
Written By Mike Duquette
『バック・トゥ・ザ・フューチャーオリジナル・サウンドトラック』
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