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D姐の洋楽コラム:第2回 最強ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの大ヒットと人気の秘密は サントラにありっ!

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アクセス総数5億ページ超の大人気サイト「ABC振興会」を運営しながら、多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆やインタビューなどをこなす米国ハリウッド在住の「D姐」さんの連載コラム「D姐の洋楽コラム」第2回です。コラムの過去回はこちら


第2回 最強ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの大ヒットと人気の秘密は サントラにありっ!

アベンジャーズがマーベル家の長男なら、いわば「家を継ぐなんてちっとも期待されてない三男坊」なキャラの映画だったのにも関わらず、2014年に公開されるや予想以上の大ヒットとなったアメコミ界の伏兵『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編である『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』が遂に公開!ぶっちぎりの全米興行成績一位はもちろん、世界収入でも公開2週あまりで5億ドル(約550億円)の超大台を突破してますけど、アメコミもアクションもコメディも、そしてメロドラマも超えて、いや続編もホント、面白い。だけどやっぱり『ガーディアンズ』といえば、やっぱりサントラがとにかく最高ですよね!

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主人公スターロードの母親が息子のためにつくったミックステープでもあるサントラは、母と故郷・地球に思いを馳せノスタルジーさを醸し出すと同時に、曲の歌詞が場面やスタロの心境を代弁したりと映画では超重要な要素となっていて、前作のサントラは全米1位を獲得。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』がそんじょそこらのアメコミ映画と一線を画したのも、この極上のサントラあってのこと。

LAハリウッドのチャイニーズシアターがあるハリウッド・ハイランドでは、公開日にポップアップブースが出現していて、何かと思ったら、カラオケ・ボックスやヘッドフォン付ドリトスの袋にサントラのMP3が仕込まれて即完売した限定商品(超欲しかった!ちなみに販売価格は29.99ドル=約3300円)の現品が自慢げにおいてあって、PRも音楽絡みになっているのがサントラ人気を物語ってました。

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今作のサントラでは前作以上に歌詞がシーンとマッチしている楽曲に重きをおいているようで、「Fox on the run」はアライグマのロケットがやらかしてのちに逃亡の身になることが示唆してたり、スタロの母を思い出すシーンでは「Brandy (You’re A Fine Girl)」、そしてガーディアンズの結束が最高潮に達したクライマックスでドカーンと流れるのが、全米だけでも2,000万枚をセールスした伝説のアルバム『噂』に収録のフリートウッド・マックの「ザ・チェイン」(1977)。この曲とシンクロしたシーンを思い出すだけでも胸熱になってしまいます。かっこいいなー、この選曲。フリートウッド・マックの場合はドロドロの男女関係のこんがらがった「チェイン(鎖)」でしたけど(笑)。この楽曲の使用許可を出すために、フリートウッド・マックは全員が事前にラッシュでシーンを確認したそうです。そりゃ、いいところで流れるわ。

前作はサントラのセールスが全米1位になっただけではなく、オリジナルソングを含まないサントラが1位になったのは史上初の快挙という記録も樹立したように、どれをとってもオイシイ曲ばかり。ロック、ポップス、R&Bから“ウガチャカ”まで、スタロ母の雑食気味な音楽センスが素晴らしすぎます。

といっても、実際に選曲をしたのは他でもない監督のジェームズ・ガン本人。ガン監督は1970年代のヒットリストをチェックすることから選曲を始めたそうですが、前作の撮影前に自らミックステープをつくって主人公のスターロードを演じるクリス・プラットに渡し、イメージを膨らませてもらっていたそう。ちなみにThe Sweetの「Fox on the run」Cheap Trickの「Surrender」、それからELOの「Livin’ Thing」は、このミクステには入っていたものの前作の最終的なトラックリストからは落ちて、今作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で採用(ELOは「Mr. Blue Sky」で採用)されたという幻の楽曲。これらは監督がどうしても使いたかった3年越しの思いが込められた曲ってことになりますね。

ジャクソン5、デヴィッド・ボウイ、マーヴィン・ゲイ、ランナウェイズ、10ccと説明不要のビッグネームのヒット曲が満載の前作のサントラが超絶センスのなかで、特に『ガーディアンズ』といえばこの曲!というのがBlue Swedeの「Hooked on a Feeling」。映画ではスタロがご丁寧に曲名、アーティスト名、発売年まで叫んでますが、別名「ウガチャカ」と言われるこの曲、もとは『明日に向かって撃て』の主題歌でおなじみの歌手B.J.トーマスのオリジナル曲をウガチャカのフレーズをつけてスウェーデンのバンドBlue Swedeがカヴァーして全米5位のヒットになったもの。だけどこの曲、映画サントラ界に革命をもたらし、『ガーディアンズ』的サントラの祖とも言っても過言ではない1992年のクエンティン・タランティーノ監督『レザボア・ドッグス』でも効果的に使われているのを覚えている人も多いはず。レザボアでは潜入捜査官が大詰めの銀行強盗に決死の覚悟で出かけるシーンで使われてます。その後この曲、妙に流行ったCGベイビーのBGMや、デヴィッド・ハッセルホフがカヴァーして欧州でヒットしたり……新作サントラの最後に収録されている唯一のオリジナル曲の「Guardians Inferno」も歌うのがハッセルホフだったり、偶然の一致なんでしょうか?

またこちらも「ピニャコラーダ・ソング」という別名のほうが有名ですが、そのタイトル通りに脱獄成功シーンで使われているのが「Escape (The Piña Colada Song)」。フツーのアクション映画なら、やった!というエネルギーみなぎる楽曲が使われてもよさそうなところ、こののんびりした能天気なサウンドが使われているのも『ガーディアンズ』っぽくていいですよね。でも本当の歌詞は、長い間付き合っている彼女(or妻)にあきた男が、新聞で見かけた不倫募集の個人広告に応募して倦怠期から脱出しちゃった♡という、とんでもないものなんです。曲を書いたルパート・ホームズはバーブラ・ストライサンドへの楽曲提供やプロデュースで有名な人ですが、実はこれ以前には「炭鉱で遭難して取り残された3人。2人はお腹が空いたのでもう1人を食べて生き延びちゃった☆」という、もっととんでもない曲「Timothy」(ティモシー)をザ・ブイ(The Buoys)というバンドに曲提供して大ヒットしてしまった経歴の持ち主なんです。

オリジナル・スコアのほうを担当しているのは、ガン監督のホラー映画時代からの知り合いでもあるタイラー・ベイツ。彼は『300』や『ウォッチメン』、ロブ・ゾンビの一連の監督作品(ホラー)の映画音楽を担当しただけではなく、マリリン・マンソンの9枚目のアルバム『The Pale Emperor』もマンソンとともに共同プロデュースした人物。一般的に映画のスコアは本編が完成してから音をつけるものですが、『ガーディアンズ』の場合は先にスコアをつくって、そのスコアを本編につけていくという珍しいプロセスをとっているそうで、撮影現場でもスコアを流してその場の雰囲気作りにも役立てたのだそう。ここまで実は音楽にこだわっている映画ってなかなか無いですよね。

ということで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』どのシーンでどの曲が使われているか、ご参考までに。TRはサントラのトラックリスト番号です。


1.I’m Not in Love – 10cc (1975、TR6)
スターロード少年、母との別れとなる病院でのシーン
2. Come and Get Your Love – Redbone (1973、TR8)
オープニングタイトルでスターロードが曲にあわせて一人ダンス
3. Go All the Way – Raspberries (1972、T2)
惑星ゼンダーに向かうミラノ内でステレオから流れる曲
4.Hooked on a Feeling – Blue Swede (1974、T1)
プリズンでセキュリティにウォークマンを奪われたシーン
5.Escape(The Pina Colada Song) – Rupert Holmes (1979、TR10)
プリズンからガーディアンズが脱獄に成功
6.Moonage Daydream – David Bowie (1972、TR4)
人工惑星ノーウェアに向かうシーン
7.Fooled Around and Fell in Love – Elvin Bishop (1975、TR5)
スタロがガモラに聞かせた曲
8.Cherry Bomb – The Runaways (1976、T9)
ヴィラン、ローナンに突撃!のシーン
9.OOH Child – Five Stairsteps (1970、T11)
スタロが突然のダンスオフ
10. Ain’t No Mountain High Enough – Marvin Gaye & Tammi Terrell (1967、TR12)
母の形見の「ミックステープVol2」から流れる曲
11.「I want you Back – The Jackson 5」(1969、TR7)
エンドクレジットでグルートが曲にあわせてダンス
*TR3の「Spirit in the Sky – Norman Greenbaum 」はトレイラーのみで使用されていて、本編では登場しない曲。


ちなみに、アライグマのロケットの正式名は「ロケット・ラクーン(アライグマ)」なんですが、これはザ・ザ・ビートルズのホワイトアルバムに収録されている「Rocky Raccoon / ロッキー・ラクーン」をもじって命名されたもの。ジョージ・ハリスンの「My Sweet Lord」が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』に起用されていますが、いつか「Rocky Raccoon」も、サントラに登場するのでしょうか!?

*おまけ
ハリウッド映画業界の公開日についてちょっと触れておきますと、公開日っていうのは実はかなり重要なファクターで、公開日を見ただけで、「おっ!この映画、当たるな」っていうのが見えてくるんです。とにかく観客動員数が命のアメコミやアクション映画は、ざっくり気合の入った順に【夏休みシーズン&クリスマスシーズン>春休み>サンクスギビングのある11月、その他…】って感じになるんですけど、夏休みシーズンでもその幕開けの5月1週目が一年で最も重要な公開日のひとつ。(昔は5月末のメモリアルデー以降な夏休みシーズンと呼んでいたんですが、今では5月頭にすでに夏シーズン突入)
そして6月、7月、8月まで、夏シーズン公開日でも遅くなるにしたがって優先順位が下がります。ま、強力な競合映画とかぶらないように、夏シーズンでもあえて遅めにするマーケ戦略もありますが。
で、例えばマーベル映画だと、過去5月一週目に公開されたのは『アイアンマン』(三作とも)、『アベンジャーズ』(二作とも)、そして昨年は、アイアンマン、キャップ、スパイダーマン三つ巴の『シヴィル・ウォー』と、マーベルを代表する顔がズラリ。そして前作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』はマーベルのアメコミ映画「マーベル・シネマティック・ユニバース」初の8月公開……つまり、公開日的にもあまり期待されていない扱いだったのですが、今作では堂々の公開日の横綱、5月1週目に抜擢!これって今後も『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの快進撃は約束されたようなもの。サントラで予習復習をしつつ、じっくり『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを楽しんでみてください!


●映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス VOL.2』予告編

 


■著者プロフィール

DaneABC振興会D姐(Dane/あね/ねえ)

米国ハリウッド在住。セレブやエンターテイメント業界のニュースを独自の切り口で紹介する、アクセス総数5億ページ超の大人気サイト「ABC振興会」を運営。多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆、現地ロサンゼルスでのテレビやラジオ、雑誌用のセレブやアーティストのインタビューやレッドカーペット等の取材をこなす。

ABC振興会:http://abcdane.net
Twitter:https://twitter.com/Dane_ABC

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