2020年ブレイク必至の英・新人10組【全曲動画付】新世代ブリティッシュ・インヴェイジョンを牽引する注目のアーティスト

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Photo: Polydor Records (Mabel, Sam Fender, Grace Carter), Alessandro Raimondo (Celeste), Island Records (Easy Life), Ari Marcopoulos (Ama Lou)

ザ・ビートルズが1964年にアメリカ侵略を果たして以来、その影響力と圧倒的な音楽愛好家の規模により、意欲に溢れた海の向こうの全てのミュージシャンたちにとって、アメリカというマーケットでブレイクすることはひとつの目標だった。

ブルーアイド・ソウルのスターたち(エイミー・ワインハウスサム・スミスアデル)からボーイ・バンド(ワン・ダイレクション、ウエストライフ)、童顔のバラード歌手たち(エド・シーラン、ホージア)、ガレージ・ロッカーたち(シェイム、ザ・ストラッツアイドルズ)、そして革新的なポップ・スターたち(デュア・リパ、エリー・ゴールディング)まで、大英帝国は10年毎に(いや、実のところ毎年)新進気鋭のアーティストたちを着実に輩出し続けているのである。

近年では、スコットランド出身のルイス・キャパルディが全米No.1を獲得し、ジャンルを超えた成功を収めている他、ポップ・パンクの異端児ヤングブラッドの台頭も目覚ましい。ここでご紹介するのは2020年にアメリカでのブレイクに期待がかかる10組の英国出身のミュージシャンたちである。誰か見落としてしまっていると思われた方は、是非下のコメント蘭で知らせて欲しい。

 

2020年ブレイク必至:新世代ブリティッシュ・インヴェイジョンを牽引する注目の10組

 

10. サム・トンプキンス(Sam Tompkins)

このストリート馴れしたクルーナーは、ソウルフルなR&Bとヒップホップのビートを掛け合せて既に巷で話題を呼んでいる。90年代のヒップホップ・ソウルから影響を受けている一方で、サム・トンプキンスは明らかにUKヒップホップ・アンダーグラウンドの愛聴者であり、彼の持つ圧倒的なヴォーカル・レンジはそのフロウと見事にマッチする。

ビービー・レクサやエルトン・ジョンらがファンだと公言する22歳のシンガーの運命の星は今も上昇し続けており、YouTubeによる2020年の「注目すべき人物」のひとりにも選出された。アイランド・レコードからリリースされ、ヒットを記録したデビューEP『From My Sleeve To The World』は、今年このブライトン出身の元ストリート・ミュージシャンが、今年さらなる話題を届けてくれるだろうことを明示している。

要チェック曲:「Not So Grey」

 

9. トム・ウォーカー(Tom Walker)

英国のリアリティTV番組『Love Island』を観たことがない他の国の人たちにとっては、このグラスゴー出身のしわがれ声のシンガーは馴染みがない存在かも知れない。情熱的な咆哮を持ち味としながら、トム・ウォーカーはサム・スミスにインスパイアされたファルセット唱法をいともたやすく繰り出すことが出来る。正統派のソングライティング手法に、ヒップホップに触発されたビートとヴォーカルを融合した彼のスタイルは、『What A Time To Be Alive』というデビュー・アルバムのタイトルにぴったりであり、現代のストリーミング系オーディエンスには打ってつけのなのだ。

エド・シーランの痕跡を辿るように、トム・ウォーカーはストリートで弾き語っていた過去に別れを告げ、2019年のブリット・アウォードでは“ブリティッシュ・ブレイクスルー・アクト賞”部門でトロフィーを持ち帰ることに成功した。

要チェック曲:「Leave A Light On」

 

8. グレイス・カーター(Grace Carter)

グレイス・カーターの告白のようなポップ・ミュージックはパーソナルな体験を語るスタイルながら、普遍的な魅力に溢れている。独学でピアノを覚えたこのシンガーソングライターは、傷心から深く感動的なポップ・バラードを数々紡ぎ出し、ヒット曲「Silence」で多くの人々の耳を捕らえた。デュア・リパとのツアーを終えてより幅広い層からの評価を集めたグレイス・カーターは、BBCの<Sound Of 2019>に選出され、デビューEP『Saving Grace』をリリースした。

ブライトンを拠点に活動する彼女は、「Fired Up」と「Amnesia」という2曲のホットな両A面シングル・ヒットで快進撃を続けており、今年に入ってからは過去一年で最大のブレイクを果たしたスコットランド出身アーティスト、ルイス・キャパルディと共にツアーも行っている。

要チェック曲:「Fired Up」

 

7. イージー・ライフ(Easy Life)

レスター生まれでジャンルの枠を飛び越えたこの5人組バンドのイージー・ライフは、原題の音楽的サウンドを定義して様々なジャンルの良いとこどりを具現化しているような存在だ。2017年の結成以来、イギリスで数々のシングルやミックステープをリリースしてきたイージー・ライフは、先頃デビューEP『Junk Food Mixtape』を発表した。

「みんなの大好きなお馴染みのジャズ・レコードに、最新鋭のプロダクション・テクニックが生む卑猥な魔法をミックスしている」と今作について自ら解説するイージー・ライフは、J・ディラにインスパイアされたビートから、インディーズっぽいエレクトロニカやファンクのインストゥルメンタル、そして極めて独特の英国的センス漂う辛辣なストーリーテリングに至るまで、各メンバーの芸術的役割をまとめあげた集合体なのだ。

昨年のフェスティバルで大いに話題を振りまいた彼らは、いよいよ2020年、全米で単独ツアーを敢行しようとしており、現時点で最も勢いのあるUKアーティストの一組である。

要チェック曲:「Sangria (featuring Arlo Parks)」

 

6. サム・フェンダー(Sam Fender)

北イングランドに深く根ざしたルーツを持ちながら、デビュー・アルバム『Hypersonic Missiles』が全英No.1を獲得したという事実からもわかる通り、サム・フェンダーのサウンド自体はハートランド・ロック寄りである。彼の守護神であるブルース・スプリングスティーン同様、22歳のシンガー・ソングライターもまた、労働者階級の人々の物語にエモーショナルな知性を融合させ、あえて典型的な恋煩いのバラードではなく、目の覚めるようなパブロックのヒット曲に仕立てているのだ。

少なくとも見える範囲ではアコースティック・ギターは1本も持たないまま、フェンダーから繰り出されるアンセム調のメロディーは、有害なる男らしさ(「Dead Boys」)から政治(「Hypersonic Missiles」) 、一夜限りの関係(「Will We Talk」)まで、様々な問題に斬り込む。7年間パブ・サーキットで下積みを送った彼の成功はあくまで地道なものであり、そのDIY的アプローチにおいても、このところシーンに氾濫しているありふれた吟遊詩人たちの群れとは一線を画している。

要チェック曲:「Hypersonic Missiles」

 

5. メイベル(Babel)

ジョルジャ・スミスからエラ・メイまで、イギリスは長きにわたって新たなR&Bアーティストを育てるだけの肥沃な土壌を持っていたが、23歳のシンガー、メイベルもその伝統を担うひとりである。80年代・90年代のポップ・ミュージックにおける先駆的存在、ネナ・チェリーとレコード・プロデューサーのキャメロン・マクヴィーの娘として生まれたメイベルは、2019年のデビュー・アルバム『High Expectations.』から「Don’t Call Me Up」や「Mad Love」といったヒット・シングルをポップ&R&Bのプレイブックに提供している。

メイベルは既に現在第一線で活躍するUKミュージシャンたちの間ではお馴染みの存在になっているが(2019年には自身初の全米シングル・チャート入りも果たした)、彼女の弾むようなダンスホール・サウンドは今年、確実に全米チャートを席巻することになるだろう。 

要チェック曲:「Don’t Call Me Up」

 

4. アマ・ルー(Ama Lou)

Ama, who?』とはこの将来を約束された若きスターのデビューEPのタイトルなのだが、その答えはまもなく自ずと導き出されるだろう。そのパンチの効いた声と見事なまでのヴォーカル・リフで、ロンドン出身の21歳、アマ・ルーはひしめき合うR&B界の新人たちの間でも既に知られた存在だった。

デビュー・シングル「TBC」を発表した2016年のうちに、彼女はドレイクからお墨付きをもらい、ジョルジャ・スミスと共にツアーを廻り、インタースコープと契約を交わした。故郷のストーク・ニューイントンに寄せるキャッチーな 「NORTHSIDE」は、既に数百万回というストリーミング再生を記録し、彼女を2020年注目のアーティストのひとりへと押し上げている。

要チェック曲:「NORTHSIDE」

 

3. アルフィー・テンプルマン(Alfie Templeman)

洗練されたポップ・スターばかりの2010年代に終わりを告げ、来るべき世代の若者たちがマルチな才能を持ったDIYアーティストたちによる新たな波を迎え入れようとしている今、彼らのレーダーが次に捕らえるのはアルフィー・テンプルトンで間違いないだろう。

彼のソングライティングとプロダクションにおける腕前は明らかで、この10代のベッドルーム・プロデューサーはマック・デマルコやテイム・インパラのケヴィン・パーカーといった独自のスタンスで活動を続けているアーティストたちからヒントを得ているのだ

現在17歳のシンガー・ソングライターは自身の作品で、全ての楽器を独りでこなし、そのローファイかつ80年代にインスパイアされたシンセ・ポップ・ソングはZ世代の若者たちのみならず、ザ・キュアーのファン世代をも魅了するに違いない。英国で行なわれた数々のフェスティバルに出演し、発表するEPを次々にヒットさせる今年最も注目を集めるUKアーティストにとって、2020年はいよいよ目覚ましい活躍の年になりそうだ。

要チェック曲:「Who I Am」

 

2. べアバッドゥービー(Beabadoobee)

同世代のアーティストたちと同様に、このZ世代のシンガーソングライターもまた90年代のインディーズ・ロックに夢中になった末に、そのジャンルにドリーミーでメランコリックな独自の解釈を加えて表現している。フィリピン生まれ、ウェスト・ロンドンに育ったベアバッドゥービー(本名ベア・クリスティ)は、既に何枚もの優れたEPを発表し、ロック・バンドThe 1975を擁するレーベルであるDIRTY HITと新たに契約を交わしたことで、海外メディアからも高い評価を獲得している。

彼女は、同じベッドルーム発のポップ・スターであるクライロと共にツアーを敢行し、2019年にはアメリカでのライヴ・デビューも飾った。繊細なインストゥルメンテーションとリリシズム、そしてギター・ワークという心を踊らせる3つの要素が揃ったベアバッドゥービーのデビュー・アルバムは、2020年最もリリースが待望される作品のひとつだ。

要チェック曲:「Coffee」

 

1. セレステ(Celeste)

数々の“要注目”UKアーティスト・リストでもトップを飾っているのが、LA生まれ、ブライトン育ちのセレステだ。ジャズのセンスをR&B色の強いポップ・ミュージックに応用し、到底25歳とは思えないような成熟した音楽性を放つシンガーソングライターである。

このソウルフルなシンガーが最初に人々の注目を集めたのは、2017年のデビューEP『The Milk And Honey』で、2018年にはポリドールと正式契約。エラ・フィッツジェラルドビリー・ホリデイといった偉大な女性ジャズ・ヴォーカリストの作品を小さい頃から聴いて育ったというセレステは、自らの音楽の中に昔ながらのソウル・サウンドを採り入れ、ライヴ・パフォーマンスでもその魅力を十二分に発揮した。

彼女は既にブリット・アワードのライジング・スター部門を受賞している他、ヒット曲を集めた『Compilation 1.1』をリリースしており、2020年後半に予定されているデビュー・アルバムのリリースを前に、私たちがこの飛ぶ鳥を落とす勢いのR&Bスターの歌声を聴く機会はますます増えていきそうだ。

要チェック曲:「Strange」

 

Written By Laura Stavropoulos



 

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