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ザ・ビートルズの歴史的名曲「Yesterday」の誕生秘話:ポールやメンバー、関係者の発言で振り返る

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ザ・ビートルズの並外れた基準においても、1965年6月14日に作られたこの曲は、多作なバンドのキャリアを代表する傑作となった。それは女王からMBE(Member of the Order of the British Empire/大英勲章第5位)を受勲されるとの発表があった数日後のことで、メンバーたちはアビイロードのEMIスタジオに再び集結していた。

午後に「I’ve Just Seen A Face」と「I’m Down」の2曲をレコーディングしたその夜に行われたセッションから最大の恩恵を得ることになる。同日午後7時から10時の間に、ポール・マッカートニーが書いた「Yesterday」がレコーディングされたのだ。より正確に説明すると、実際にはポール・マッカートニーが一人でアコースティック・ギターを弾きながらレコーディングを行った。

Yesterday (Remastered 2009)

 

「おっと!僕のソロ作になるってこと?」

ポール・マッカートニーは当時をこう振り返る。

「僕はその日初めてスタジオに持ち込んだその曲をギターで演奏したんだ。するとリンゴが、“それにドラムを合わせるのは難しいよ”と言い出して、ジョンとジョージも、“もう一つギターを追加するのも意味がない気がする”と言ったんだ。そこでジョージ・マーティンが、“とりあえず一人で弾いてみてどんな感じが試してみるのはどう?”と提案するので、僕はみんなを見て、“おっと!僕のソロ作になるってこと?”って訊くと、みんなが、“そうだね、特に僕たちが何かを追加する必要はなさそうだから、とりあえずやってみたら?”って言ったんだ」

そうして彼はその通りにしたのだ。

ザ・ビートルズの楽曲でこれまで最もカヴァーされてきた「Yesterday」の起源についてには幾度となく調べられてきた。英国人女優で、ポール・マッカートニーの当時ガールフレンドだったジェーン・アッシャー。ポールがロンドンのウィンポール・ストリート57番地に建つ彼女の実家の屋根裏部屋で暮らしていた時にこの曲が生まれた。ポールが何度も繰り返し証言してきたように、それは寝ている間に思い浮かんだそうだ。

「目が覚めたら頭の中で素敵なメロディーが流れていた。そして、これは何だろう?って思って、ベッドの右側にある窓辺のアップライトピアノで、Gコード、F#m7、それからBからEmへと繋がり、そしてGに戻るというコード進行を弾いたんだ」

ポール・マッカートニーはしばらくの間、自分で書いたという実感がなかった。無名のスタンダード曲なのかなと思い、会った人みんなに演奏しては聞いたことがあるかどうか尋ねて回った。もちろん誰も聞いたことがなかった。

「ついには、まるで警察に拾い物を届けるような気分になった。誰かが数週間以内に自分のものだと主張しないのであれば、もう自分のものにしようって思ったんだ」

「おとぎ話のように聞こえるけど、真実なんだ」

それが実際にいつ起こったのかについては意見が分かれる。ポール・マッカートニーの友人たちや伝記作家のバリー・マイルズらは、レコーディングの数週間前に書かれたものだと言う。しかしジョン・レノンは、何ヶ月間も前だと記憶している。

「ポールはその曲をほとんど書き上げていたんだけど、僕たちにはどうしてもタイトルが思いつかなかった。曲作りやレコーディング・セッションで集まるたびにその話題が持ちあがったんだ。とりあえず(仮で)“Scrambled Egg”という名前がつけられ、それは内輪のジョークになった。ワンワードのタイトルにしようと決めてからもどうしても何が良いのか決められなかった。そしてある朝、ポールが目覚めると、曲もタイトルも仕上がっていたんだ。曲が完成した!おとぎ話のように聞こえるけど、それが真実なんだ」

ジョージ・マーティンの記憶によると、曲は何らかの形で1年以上は存在していたそうだ。

「初めて“Yesterday”を聴いたのは、1964年1月パリのジョルジュサンク・ホテルで、まだポールが‘Scrambled Egg’と呼んでいた頃だったよ」

1965年に、ザ・ビートルズにとって2作目となる映画『Help!』の撮影中も、ポールはまだこの曲に取り掛かっており、監督を務めたリチャード・レスターは当時をこう振り返っている。

「撮影期間中に、どこかのステージにピアノが置いてあって、彼はずっとその“Scrambled Egg”を弾いていました。そして僕は彼に“いい加減その曲を弾くのをやめないのならピアノをステージからどかさなければいけない。完成させるか諦めるかののどっちかにしてくれ!”と言ったのを覚えています」

Yesterday (Anthology 2 Version)

 

「徐々につなぎ合わせていった」

そして彼は曲を完成させた。映画の撮影が終わるとポールとジェーンは、友人のザ・シャドーズのブルース・ウェルチが所有するポルトガルの別荘で休暇を過ごした。空港を降りて、290キロの旅路の中で、ポールはようやくその曲を完成させたのだ。ポールはこう回想する。

「ものすごく熱くてホコリっぽい道のりだった。ジェーンは寝ていたけど、僕は眠れなくて、その長距離のドライブでは寝るか脳を働かせるかのどっちしかない。僕は“Yesterday”についてあれこれ考えて、突然オープニングの一節になるある言葉が思い浮かんだ。そこからアイデアを発展させていったんだ。(最初の歌詞の)“スクランブル・エッグ、なんとかかんとか…” の歌詞の音節にメロディーに合わないといけないから、“Yesterday”、“Suddenly”、“Merrily”とかが浮かんで良い感じになってきた。それから“All my troubles seemed so far away”で続ければ、韻を踏みやすい。そしてそこから徐々につなぎ合わせていったんだ。“Suddenly”もまた韻を踏みやすいので、色んな可能性が生まれたよ」

ブルース・ウェルチはそれを裏付けている。

「帰る準備をしていたら、ポールにギターを持っているかと訊かれたんだ。リスボンの空港からアルブフェイラまでの運転中に彼はどうやらずっと歌詞を考えていたらしい。僕のギターを借りて、その場で今皆さんが知る“Yesterday”を弾き始めたんだ」

「ストリングスを追加する以外に何も考えられない」

1965年6月の月曜日にその曲のレコーディングが行われると、ザ・ビートルズとプロデューサーのジョージ・マーティンはどうするか悩んだ。ジョージ・マーティンはポールにこう告げたのを覚えている。

「“ストリングスを追加する以外に何も考えられないけど、それに対してのきみの意見も想像できる”と私が言うと、ポールはそれに対して、“(ムード音楽の)マントヴァーニのような曲は望んでないよ”と答えた。そこで僕が“それならカルテットのような少人数の弦楽器奏者はどうだろう?”と提案してみたら、ポールは良い考えだと賛成してくれたんだ」

当時のポールは、ザ・ビートルズがロックバンドだというアイデアに反対していたために、最初のヴァージョンは今とは若干違っていた。しかし、ジョージ・マーティンのことを信頼していた彼は、マーティンと共に彼の自宅でアレンジに取り掛かった。

6月17日に行われた午後のセッションにて、ストリングス・カルテットのアレンジがレコーディングされ、「Yesterday」は完成した。そのようにしてアレンジが増補されたのはザ・ビートルズにとって初めてのことだったが、それが最後になることはなかった。

「Yesterday」は1965年の夏にUKで発売されたアルバム『Help!』に収録され(映画では使用されていないが)、同年9月13日にはアメリカでシングル・リリースされた。4週間にわたって1位を獲得し(UKでは1976年3月までシングル発売されなかったが、リリースされると8位に登場した)、間違いなくザ・ビートルズの代表曲であり続けている。

ジョン・レノンは1980年のインタビューでこう語っている。

「レストランへ行くといつも“Yesterday”を演奏してくれるんだ。スペインではバイオリンで“Yesterday”を演奏した男性に頼まれて、彼のバイオリンにヨーコと僕がサインしたことがあった。僕が書いた曲じゃないってわからなかったんだろね。彼はきっと“I Am The Walrus”を弾くわけにはいかなかったんだよ」

Written By Paul McGuinness

Yesterday (With Spoken Word Intro / Live From Studio 50, New York City / 1965)


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