インド音楽の出会いと「Norwegian Wood 」や「Within You, Without You」についてジョージ・ハリスンが語る

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ジョージ・ハリスンがインドの音楽を好きになったのは、彼とほかのザ・ビートルズのメンバーが1967年8月24日にロンドンでマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの講義を聞いてからだと考える人もいるだろう。しかし実のところジョージ・ハリスンが最初に関心を持ったのは、それより前の1965年4月、映画『Help!』の撮影中のことだった。

「僕らはレストランのシーンの撮影を控えて待機中だった。そのシーンはある登場人物がスープの中に投げ込まれるという場面で、パックではインド人のミュージシャンが演奏をしていたんだ。そこで待機してたとき、シタールを手に取って思ったんだ。‘これはおかしなサウンドだな’ってね。これは偶然だったんだけど、そのうちラヴィ・シャンカールの名前が耳に入り始めた。彼の名前を聞くのが3回目にもなると、妙な偶然だなと思った。それからバーズのデヴィッド・クロスビーと話したら、彼もその名前を口に出す。それでラヴィのレコードを買いに行った。そのレコードを聞いてみたら、自分でもうまく説明できないけど、自分の中のある部分を貫かれた。でも、あの音楽はとても馴染みのあるものに感じられたんだ。強いて言えばこういう感じ。自分の中の知性はあれが何なのかわからなかったけど、知性ではない部分があれに親近感を抱いたわけ。向こうから呼びかけられたというか……。それから何カ月か経って、アジアン・ミュージック・サークルという団体の人と会ったら、その人からこう言われた。‘ラヴィ・シャンカールはうちで夕食を食べる予定がありますよ。あなたも来ますか?’って」。

 

1965年10月、ジョージ・ハリスンは『Rubber Soul』の「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」でシタールの演奏を初めて録音した。「シタールは、オックスフォード・ストリートのインディアクラフトという小さな店で買ったんだ。あの店には、小さな彫刻やお香も置いてあった。あのシタールは本当に安っぽいものだったけど、それを買って、ちょっといじくりまわしてみた。そのころちょうど、“Norwegian Wood”のバッキング・トラックを録音中で、あの曲には何かが足りなかった。そういうとき、僕らはたいてい機材をあれこれ試して何か新しいサウンドを出せないだろうかと試してた。そこでぼくはシタールを選んでみた。そのへんに転がってたからね。どう扱えばいいのか実のところわからなかった。かなりその場の勢いでやってた。あのフレーズになる場所を探りながら弾いたんだ。それがうまくはまったというわけ」。

 

ジョージが作った2つ目のインド風の曲は、1966年の『Revolver』の収録曲「Love You To」だった。そして3つ目の作品「Within You, Without You」は『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』オリジナルLPのB面冒頭に入っていた。このアルバムでジョン・レノンポール・マッカートニーの作品でないのはこれ1曲だけだった。

 

ジョージ・ハリスンは、「Within You, Without You」の曲作りをハーモニウムで始めた。アビイ・ロード・スタジオで1967年3月15日の水曜日に録音されたとき、この曲のラベルにはただ「Untitled」としか書かれていなかった。のちにジョージ・ハリスンはこう振り返っている。「あのころは、シタールの持ち方や演奏方法を身につけようとして、ラヴィ・シャンカールのところでかなり時間をかけて頑張ってたんだ。“Within You, Without You”は、ラヴィがオール・インディア・ラジオのために録音した曲をもとにして僕が作った歌。元の曲はとても長くて、たぶん30分か40分はあった。いくつかのパートに分かれてて、それぞれ独自の進行になってた。僕が作ったのはそのダイジェスト版。彼の曲の中で見つけたサウンドと似たものを盛り込んであるんだ。それを3つのパートに分けて録音して、あとで編集でつないである」。

 

ここでジョージ・ハリスンは、インド人の友人にタブラを演奏してもらっている。またザ・ビートルズのエンジニア、ジェフ・エメリックはタブラの録音で見事な手腕を発揮し、曲の魅力を引き立たせている。この日スタジオにいたザ・ビートルズのメンバーはジョージ・ハリスンだけだった。他にもインドの楽器のタンブラは彼とニール・アスピノールが、ソーマンダルとディルルバはロンドン北部のフィンチリー・ロードにあるアジアン・ミュージック・センターのインド人ミュージシャンが演奏した。もう2本のディルルバ(シタールに似ているが、弓で演奏される)は、3月22日にオーバーダビングされている。バイオリンとチェロは4月3日に追加。その日の晩、ジョージ・ハリスンはリード・ヴォーカル、シタール、アコースティック・ギターを録音している。完成した“Within You, Without You”について、ジョン・レノンはこう語っている。「ジョージのベスト・ソングのひとつ。僕の好きなジョージの曲のひとつでもある。あの歌での彼はとても澄み渡っている。心も曲も澄みわたっている」。

ちなみにザ・ビートルズの『The Anthology 2』に収録されたヴァージョンは完全なインストゥルメンタルで、従来のヴァージョンよりも遅いオリジナルのキーとスピードになっている。ジョージ・ハリスンはその後映画『Wonderwall』の音楽を担当し、そちらでもインド音楽を探求していた。

 

Written by Richard Havers



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