ザ・ローリング・ストーンズ『Totally Stripped』:日本にも来たツアー音源

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1994年5月、ザ・ローリング・ストーンズは“ヴードゥー・ラウンジ・ツアーと銘打ったコンサート・ツアーを開催することを発表。2ヶ月後に同名アルバムがリリースされた。アルバムのリリースから約1週間後、ストーンズはツアー前の慣わしとなっているウォームアップ・ギグをトロントのRPMクラブで行ない、その2週間弱の後にワシントンのロバート・F・ケネディ・スタジアムでツアー初日を迎えた。

同年8月1日から12月18日までの間、ストーンズはアメリカ及びカナダのスタジアム、ドーム、ボウル、フィールドといった大規模会場を、追加アリーナ公演でのステージも加えながら縦横に巡り、その後南へと移動していった。南半球では夏に当たるこの期間、彼らはメキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、そしてアパルトヘイト廃止となった南アフリカのラグビーの本拠地エリス・パークに赴いている。

南アフリカの次に向かったのは、彼らにとって2度目の訪問となる日本でのコンサートだった。東京ドームでの7日間公演が始まる3日前の1995年3月3日、ストーンズは東京にあった東芝EMIのスタジオで、その後『Stripped』としてリリースされることになるアルバムの制作作業に取りかかった。この時の東京でのセッションと、そしてアルバムに収録されるその他の収録曲のプロデュースのために彼らが招いたのはドン・ウォズ。ウォズは3月1日に行われたグラミー受賞式に出席したその足で東京に直行した。彼とストーンズは、彼にとって初のストーンズとのアルバム制作となった『Voodoo Lounge』で、その年のプロデューサー・オブ・ザ・イヤーとベスト・ロック・アルバムをそれぞれ受賞している。

スタジオでの2日間で主要な音源を録り終えた後にストーンズは東京ドームと福岡でのステージを成功させ、そして大規模な野外コンサートのためにオーストラリアとニュージーランドへ向かい3週間を過ごした。6週間後の1995年5月26日、アムステルダムで最も有名かつ多くのバンドのお気に入りの会場の一つであるパラディソでの2日間公演を皮切りに第4期ヴードゥー・ラウンジ・ツアーが始まった。アルバム『Stripped』に収録され録音および撮影を設定した3つの小規模シアター・ショーのうちの最初のものだった。

19世紀に教会として建てられたこの会場は、サマー・オブ・ラヴの年にヒッピー達の溜まり場となっていたものを翌年に若者達が集まるエンターテイメント用施設としてリニューアルし、収容者数2千人程度ながらも素晴らしいギグを楽しめる会場としてにわかに有名になった場所だ。

ストーンズのパラディソでのステージは、ボ・ディドリー風のビートを援用したバディ・ホリーのカヴァー「Not Fade Away」で始まった。『Totally Stripped』のDVDでそのライヴ・パフォーマンスを見ることができるが、付属のCDで聞くこともできる。パラディソでのステージ前半の多くでロニーがアコースティック・ギターを弾いているが、この曲でも同様にそれがリラックスした良い雰囲気を生んでいる。

「Street Fighting Man」は、パラディソで演奏された楽曲のうちでオリジナルの『Stripped』にも収録されることになった唯一のナンバーで、DVD版ではその映像を確認できる。小規模なステージ上で、ヴードゥー・ラウンジのツアーでもオリジナル・アルバムでもフィーチャーされることのなかった人気曲を、彼らは惜しげもなく披露している。

「Exile on Main St』に収録されていた「Shine A Light」のパフォーマンスも確認できるが、この曲はストーンズがステージで一度もプレイしたことのなかったものだった。演奏に加わったドン・ウォズのソウルフルなオルガンが素晴らしい。パラディソのセットリストは合計20曲であったが、ヴードゥー・ラウンジ・ツアー欧州エリアでの皮切りとなったストックホルムのオリンピック・スタジアムでは、それらのうち7曲しかセレクトされていない。その欧州エリアでのヴードゥー・ラウンジ・ツアーと小規模会場の全てのステージでストーンズがプレイしたのが、ミックが「俺たちのためにボブ・ディランが書いてくれた曲だ」とジョークを言った「Like A Rolling Stone」で、各ステージでのハイライトの一つになっていた。ミックもキースもこの曲の大ファンであり、ミックはこう言っていた。「本気で夢中になれて楽しめた。この曲でハーモニカを吹くのは大好きでね」

アムステルダムでストーンズがプレイした曲のうち7曲は、パラディソ以降に行われた他の会場では登場しなかった。アムステルダムでは、アルバム『Voodoo Lounge』の収録曲でキースのヴォーカルをフィーチャーした「The Worst」が披露されたが、それ以外のステージではセットリストから外されている。その他、アムステルダムのみでしか聞けなかったその他の作品として挙げたいのが「Gimme Shelter」だ。メリー・クレイトンに代わってリサ・フィッシャーを女性ヴォーカルにフィーチャーした、素晴らしいパフォーマンスを楽しめる。キースとロニーによる交錯し合う見事なギタープレイもまた聴きどころの一つになっている。

そうした要素の一つ一つによって、3つのシアターで行われたギグはとてつもなく魅力的だ。ストーンズが各ステージで演奏した曲数を合計すると64曲、そのうち3つのステージ全てで披露した曲はわずかに5曲、都合34曲のうちの半数はたった1箇所でしかプレイしていない。オリジナルの『Stripped』に収録された14曲のうち、この3会場におけるシアター・ギグでの音源が使用されていたのは6曲 (アムステルダム公演からの1曲、ロンドン公演からの2曲、パリ公演からの3曲) だ。

長年のストーンズ・ファンも、この『Totally Stripped』には新たな発見があるはずだ。

Written By Richard Havers


ザ・ローリング・ストーンズ『Totally Stripped』

 

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